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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1343953 |
審判番号 | 不服2018-2261 |
総通号数 | 226 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-19 |
確定日 | 2018-08-30 |
意匠に係る物品 | 包装用容器 |
事件の表示 | 意願2017- 7953「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成29年(2017年)4月13日の意匠登録出願であって,その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 9月29日付け 拒絶理由の通知 平成29年11月 7日 意見書提出 平成29年11月21日付け 拒絶査定 平成30年 2月19日 審判請求 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成28年5月23日)に記載された,意匠登録第1549906号(意匠に係る物品,包装用容器)の意匠であり,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1.意匠に係る物品について 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「包装用容器」である。 2.形態について (1)共通点 (A)全体を平面視角丸正方形の浅い椀状とし,鍔部と帯状部で容器の上縁を形成し,椀状の胴部の下端に高台(糸尻)状の底部を設けたものであり,(B)正面視における全体の高さと横幅(容器上端の横幅)との比率を約2対5とし,(C)帯状部の縦幅と底部の高さとを同程度とし,(D)鍔部は,頂部を凸弧状に丸くし,端部を外方向へ水平に僅かに延ばしたものであって,(E)容器内側の上端寄りに,帯状部内側の形状による平面視角丸正方形の段部が表れ,(F)底部は,底面の中央が浅くへこんだものである。 (2)相違点 (ア)正面視における全体の横幅と底部の横幅との比率について,本願意匠は,約3対2としたものであるのに対して,引用意匠は,約2対1としたものである。 (イ)容器全体の高さに対する帯状部の縦幅及び底部の高さのそれぞれが占める割合について,本願意匠は,両部共に約6分の1としたものであるのに対して,引用意匠は,両部共に約8分の1としたものであって,本願意匠は引用意匠よりも,帯状部と底部が太く(高く)表れている。 (ウ)帯状部の突出の大きさについて,正面視において,本願意匠は,帯状部の横幅が胴部上端の横幅の約1.08倍としたものであるのに対して,引用意匠のそれは,約1.04倍としたものであって,本願意匠は引用意匠よりも,帯状部が約2倍大きく突出している。 (エ)胴部の形態について,本願意匠は,上端側を平面視角丸正方形とし,下端側を平面視円形としたもの,具体的にいえば,上半部が角丸正方形を保ちながら徐々に縮径し,下半部にて徐々に正円形に変形していく形態としたものであるのに対して,引用意匠は,胴部の全高にわたり,平面視角丸正方形を保ちながら徐々に縮径し,下端寄りにて縮径率が大きくなったものである。 (オ)底部の形態について,本願意匠は,底面視円形としたものであるのに対して,引用意匠は,底面視角丸正方形としたものである。 第5 判断 1.意匠に係る物品について 両意匠の意匠に係る物品は,いずれも包装用容器であるから,同一である。 2.形態について (1)共通点の評価 共通点(A)は,全体を概括したものであり,この種物品においては従来から見られるものであるから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。 共通点(B)は,全体の正面視縦横比に係るものであり,全体のプロポーションを決める要素であるが,この種物品においてはよく見られる浅い椀状と認識する程度のものであるから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度に止まる。 共通点(C)は,帯状部の縦幅と底部の高さとを同程度とした点であるが,帯状部と底部とを関連させて観察する必然性がなく,需要者が注視する点とはいえないから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。 共通点(D)は,鍔部の形態に係るものであるが,意匠全体から見れば部分的であり,この種物品においてごく普通に見られるものであるから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。 共通点(E)は,容器内面の形態に係るものであるが,両意匠のみの特徴といえるものではないから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。 共通点(F)は,底部の底面中央にへこみを設けた点であるが,意匠全体から見れば部分的であり,この箇所にへこみを設けた形態は従来から見られるものであるから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。 (2)相違点の評価 相違点(ア)の全体の横幅と底部の横幅との比率の相違は,本願意匠に引用意匠よりも安定感のある印象を与え,両意匠について異なる印象をもたらすものであるから,この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は,大きい。 相違点(イ)の容器全高に対する帯状部の縦幅及び底部の高さの相違と相違点(ウ)の帯状部の突出の大きさの相違とは,相まって,両意匠について異なる印象,つまり,本願意匠は,帯状部及び底部が太く,帯状部が大きく突出しており,容器全体としてがっしりとした印象を与えるのに対して,引用意匠は,帯状部及び底部が細く,帯状部が小さく突出しており,容器全体としてしなやかな印象を与えるものであるから,両相違点が両意匠の類否判断に与える影響は,大きい。 相違点(エ)の胴部の形態の相違は,広い面積を占める胴部に係る相違であり,その面の具体的な形態は大きく異なるものであるから,この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は,大きい。 相違点(オ)の底部の形態の相違は,どちらもごく普通に見られる態様での相違であり,商品を入れた使用時には,目に付きにくい箇所であるものの,使用前に伏せて重ねた状態などでは,この外観形態は良く目に付くことを考慮すれば,この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度認められる。 3.類否 両意匠について意匠全体として総合的に観察した場合,上述の両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づけば,共通点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものではなく,一方,相違点(ア)ないし(オ)は,需要者に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって,両意匠は,意匠に係る物品は同一であるが,その形態において,需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと認められる。 第6 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似する意匠ではなく,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-08-20 |
出願番号 | 意願2017-7953(D2017-7953) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 成田 陽一 |
特許庁審判長 |
温品 博康 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2018-09-14 |
登録番号 | 意匠登録第1615365号(D1615365) |
代理人 | 梅澤 修 |