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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 K1
管理番号 1344893 
審判番号 不服2018-8211
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-14 
確定日 2018-09-25 
意匠に係る物品 研磨用ディスク 
事件の表示 意願2017- 13456「研磨用ディスク」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年(2017年)6月22日(パリ条約による優先権主2016年12月22日、アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって、平成29年11月17日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年2月27日に意見書が提出されたが、平成30年3月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「研磨用ディスク」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。『意匠登録を受けようとする部分を示す参考斜視図』において、斜線を施した部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原審の拒絶の理由及び引用した意匠
原審の拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

本願意匠は、意匠に係る物品を「研摩用ディスク」とし、その形態は、全体が円盤状で、実線で表された正面の外側縁に均一太幅輪状の荒目の研摩面を部分意匠として意匠登録を受けようとするものである。
ところで、この種物品分野において、(1)円盤本体の正面外側縁に均一太幅輪状の荒目の研摩面を設けることは、本願出願前にごく普通に見受けられるありふれた手法である。(例えば、意匠1、意匠2、意匠3)。また(2)研摩面を本願の意匠程度の荒目の凹凸面としたものも、本願の出願前に広く知られている(例えば、意匠1、意匠2)。
そうすると、本願の意匠は、ありふれた手法で研摩面を設け、その研摩面を広く知られた荒目の凹凸面とした程度にすぎなから、当業者であれば容易に創作をすることができた意匠と認められる。

意匠1(別紙第2参照)
電気通信回線の種類:インターネット
掲載確認日(公知日):2015年6月2日
受入日:特許庁意匠課受入2015年7月3日
掲載者:株式会社ホームメイキング
表題:大見工業 ラウンドカッター用替刃 電着ダイヤ刃 35mm R35他 | ホームメイキング【電動工具・大工道具・工具・建築金物・発電機の卸値通
掲載ページのアドレス:http://www.homemaking.jp/product_info.php?products_id=149763
に掲載された「回転切断砥石」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ27010085号)

意匠2(別紙第3参照)
特許庁意匠課が2006年4月14日に受け入れた
パワーダイヤディスク 第1頁所載
「携帯用電気研磨器用砥石」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC18014976号)

意匠3(別紙第4参照)
特許庁意匠課が2003年4月30日に受け入れた
HERWIG BOHRTECHNIK 第5頁所載
「回転円盤砥石」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD15006319号)

第4 請求人の主張
1 この種物品に係る意匠の創作について
確かに、「円盤本体の正面外側縁に均一太幅状の粗目の研磨面を設けること」は、研磨ディスク、砥石に係る意匠においてはよく見られる。これは、回転工具に取り付けて回転させて、被加工物を研磨等するという、研磨ディスクや砥石の機能から「円盤本体の正面外側縁に均一太幅状の粗目の研磨面を設けること」が必然的に導き出されるためである。
この種物品は、機能上必然的に導き出された「円盤本体の正面外側縁に均一太幅状の粗目の研磨面を設けること」を創作の前提とし、物品の機能を発揮するうえで重要な部分である研磨面に工夫を凝らして創作される。特に、研磨面に配されるチップは、研磨ディスク、砥石としての使い勝手や性能を左右する部分であるため、この種物品に係る意匠が創作される際には、チップの形状、配置、大きさ等といった細部にも注意が払われる。
このように当業者は、研磨面に配されたチップの形状、配置、大きさ等を工夫することで、使い勝手、性能のよい研磨ディスク、砥石を開発し、他社製品との差別化を図っている。その結果、研磨面に配されたチップの形状、配置、大きさ等の研磨面の具体的態様に創作の特徴が表れるのである。
そして、本願意匠は、チップの形状、配置、大きさ等に工夫を凝らして、研磨面を「様々な角度、様々な方向に傾斜させた同じ大きさの2種類のチップ(明色の扁平な略三角柱状のチップと暗色の扁平な略三角柱状のチップ)を配した構成」としたものであり、その結果、緻密で鋭利な独特の美感を呈している。

2 本願意匠が公然知られた形状に基づいて容易に創作できたかについて
拒絶理由通知において、引用意匠を挙げて、「研磨面を本願意匠程度の粗目の凹凸面としたものも、本願の出願前に広く知られている」との指摘がされている。しかし、この種物品の創作的特徴は、上記1で述べた通り、チップの形状、配置、大きさ等といった研磨面の具体的態様に表れるものであるから、本願意匠が創作容易であることを示すには、研磨面の態様を「本願意匠程度の粗目の凹凸面」と一括りに捉えるのではなく、本願意匠と引用意匠の研磨面の具体的態様を直接対比する必要がある。
本願意匠と引用意匠は、全体形状及び正面部の外側縁に均一太幅輪状の研磨面を配した構成が共通しているが、引用意匠のいずれも、研磨面に「暗色の下地の上に様々な角度、様々な方向に傾斜させた同じ大きさの2種類のチップ(明色の扁平な略三角柱状のチップと暗色の扁平な略三角柱状のチップ)を配した構成」を表していない。
全体形状及び正面部の外側縁に均一太幅輪状の研磨面を配した構成は、この種物品の機能から導き出される必然的な構成であり、創作の前提になるものであるが、チップの形状、配置、大きさ等といった研磨面の具体的態様は、それぞれの創作の特徴が表れるものである。よって、本願意匠が創作容易であるというには、引用意匠の研磨面の具体的態様から「暗色の下地の上に様々な角度、様々な方向に傾斜させた同じ大きさの2種類のチップ(明色の扁平な略三角柱状のチップと暗色の扁平な略三角柱状のチップ)を配した構成」を導き出せなくてはならない。しかし、引用意匠のいずれも、「暗色の下地の上に様々な角度、様々な方向に傾斜させた同じ大きさの2種類のチップ(明色の扁平な略三角柱状のチップと暗色の扁平な略三角柱状のチップ)を配した構成」を表していない。よって、本願意匠は引用意匠が示す公然知られた意匠に基づいて容易に創作できたとはいえない。

3 むすび
以上の通り、本願意匠は、出願前の公然知られた形状に基づき、当業者において容易に創作をすることができた意匠に該当しないものである。
よって、請求の趣旨の通りの審決を求める。

第5 当審の判断
請求人の主張を踏まえ、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について、すなわち、本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて、以下検討し、判断する。
1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、研磨工具に取り付けて金属等を研磨するために用いたり、切断工具に取り付けて金属等を切断したりすることもできる「研磨用ディスク」である。

2 本願部分
(1)部分意匠としての用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分の用途及び機能については、研磨工具に取り付けて高速回転する研磨面であって、その表面の凹凸部分によって金属等を研磨することができるものである。
また、本願部分の位置、大きさ及び範囲は、略円板状の研磨用ディスクの正面側外側縁部分に形成された均一な太幅の中空円板状の研磨面の表面部分である。

(2)形態
本願部分の形態は、均一な太幅の中空円板状の表面部分に、扁平な略正三角形板状の研磨用チップを、様々な方向に傾斜させて固着したものであって、暗調子で表された多数の研磨用チップの中に、明調子で表された少数の研磨用チップがランダムに配置された態様としたものである。

3 原審の拒絶の理由における引用意匠
(1)意匠1
意匠1は、「回転切断砥石」に係る物品であり、その形態は、略円板状の切断砥石の前面側外側縁部分に均一太幅輪状の砥石部分を形成したものであって、砥石部分の形態は明確に表れていないが、その表面部分に角部が尖ったやや大粒の砥粒を多数固着したものである。

(2)意匠2
意匠2は、「携帯用電気研磨器用砥石」に係る物品であり、その形態は、肉厚な略円板状の研磨器用砥石の前面側外側縁部分に均一太幅輪状の砥石部分を形成したものであって、砥石部分の形態は明確に表れていないが、その表面部分に細かな砥粒を多数固着したものである。

(3)意匠3
意匠3は、「回転円盤砥石」に係る物品であり、その形態は、略円板状の回転円板砥石の前面側外側縁部分に均一太幅輪状の砥石部分を形成したものであって、砥石部分の形態は、その表面部分に角部の尖った大小様々な砥粒を多数固着したものである。

4 本願意匠の創作容易性の判断
本願意匠は、意匠に係る物品を「研磨用ディスク」とするものであり、その肉厚な略円板状の研磨用ディスクの正面側外側縁部分に形成された均一な太幅輪状の研磨面の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であるところ、この均一な太幅の中空円板状の表面部分に、研磨用の砥粒を多数固着したものは、意匠1ないし3で示したように公然知られた形態であるといえる。
しかしながら、本願意匠に係る研磨用ディスクの属する分野における通常の知識を有する者が本願意匠を創作する際には、物品の機能を発揮するうえで重要な部分である研磨用ディスクの研磨面の形態について考慮するものであり、研磨面における砥粒の具体的な形態についても重視して検討するものであるところ、本願意匠の研磨面の形態は、従来のものには見られない扁平な略正三角形板状の研磨用チップを砥粒とし、これを様々な方向に傾斜させて固着して形成したものであって、このような形態は引用している意匠1ないし3には見当たらず、公然知られたものとはいえないものであるから、本願意匠における該部位の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといえるものであって、暗調子で表された多数の研磨用チップの中に、明調子で表された少数の研磨用チップがランダムに配置された態様も含め、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたとはいうことができない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-09-11 
出願番号 意願2017-13456(D2017-13456) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (K1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2018-10-26 
登録番号 意匠登録第1618483号(D1618483) 
代理人 阿部 寛 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 野間 悠 

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