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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1344898 
審判番号 不服2018-5118
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-13 
確定日 2018-09-25 
意匠に係る物品 包装用缶 
事件の表示 意願2017-13378「包装用缶」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年(2017年)6月21日付けの意匠登録出願であって,同年10月30日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月5日に意見書が提出されたが,平成30年1月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年4月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,その後,平成30年8月16日に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用缶」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2008-137679
【図4】及び関連する記載にあらわされたびんの意匠

第4 対比
1.意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「包装用缶」であり,引用意匠に係る物品は「びん」である。

2.両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
(1)共通点について
ア.口部(リップ部+かぶら部),ネック部,肩部,胴部及び底面部から成るものである点,
イ.ネック部が,略円錐台形状である点,
ウ.肩部は,少なくとも凹みR面及び凸R面から成るものである点,
エ.胴部は,略円筒形で,下端にて下窄まり状である点,
が認められる。

(2)相違点について
ア.胴の直径に対する全高につき,本願意匠は,約1:2.2であるのに対して,引用意匠は,約1:2.3である点,
イ.胴の直径に対する胴部の高さにつき,本願意匠は,約1:1.2であるのに対して,引用意匠は,約1:1.4である点,
ウ.口部の構成につき,本願意匠は,(A-A端面図によると)材料である金属板を上端で先窄まりにした上で,外側へカールさせて作ったリップ部のみであるのに対して,引用意匠は,縦断面形状が「D」字状の膨らみのリップ部と,その直下に下膨れの倒「へ」字状の膨らみであるかぶら部から成る点,
エ.ネック部の形状につき,本願意匠は,上側を僅かに鉛直部としてからその下を円錐台形状としているのに対して,引用意匠は,純粋な円錐台形状である点,
オ.肩部の形状につき,本願意匠は,中ぐらいのRの凹みR面と大きなRの凸R面から成るのに対して,引用意匠は,ごく小さなRの凹みR面,円錐斜面状部及び小さなRの凸R面から成る点,
カ.胴部下端の下窄まり部につき,本願意匠は,下端際で窄まり始めるのに対して,引用意匠は,やや高い位置から緩く窄まっている点,
キ.底面の形状につき,本願意匠は,窄まった胴体下端を極小Rを介して,ごく僅かな鉛直立ち上がり部を設けて,上側に緩く凸曲面の底面としているのに対して,引用意匠は,不明である点,
が認められる。

第5 判断
1.意匠に係る物品に対する判断
本願意匠に係る物品は「包装用缶」であり,引用意匠に係る物品は「びん」であり,共に,円筒状の胴部をもった細口のものであり,共に,液体の商品を販売するために用いるものと認められるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

2.両意匠における形状の評価
(1)共通点
共通点ア.については,飲料など,液体の商品を販売するために用いるびんや缶においては,ごくごくありふれた基本的構成態様であるから,両意匠の類否判断に与える影響はほとんどない。
共通点イ.ないしエ.については,これらの共通点も,この種物品分野においては,常套的手段による造形処理であって,数多く見られるありふれた形状であるから,両意匠の類否判断に与える影響はほとんどない。

(2)相違点について
相違点ア.については,僅かな差異であって,並べて比べなければ気付かない程度の差であるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点イ.については,相違点オ.と合わさって,引用意匠の方が,胴部が長く,肩部の位置が高いと認識され,その分ネック部が短いと感じられ,両意匠に別異の印象を与えるものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点ウ.については,かぶら部の存在によって,びんらしく見えるところから,びんにおいては,その存在を好まれる傾向があると認められるところ,相違点ウ.は,かぶら部の有無という相違であるから,限られた部位における相違とはいえ,口部という目の行きやすい箇所の相違であり,両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度認められる。
相違点エ.については,大概のびんでは,ネック部に鉛直部を設けることはないのであるから,本願意匠の形状は,数少なく,対比すると別異の印象を生じさせるものであるから,限られた部位における相違とはいえ,両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度認められる。
相違点オ.については,本願意匠は,R面のみの構成であるから,軟らかい印象であるのに対して,引用意匠は,円錐斜面状部をもっており,硬い印象を生じさせるものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度認められる。
相違点カ.については,胴体下端の下窄まり部の始まる位置の相違であるが,その差は僅かであるし,目の行きにくい箇所の相違であるから,両意匠の類否判断に与える影響は,小さい。
相違点キ.については,目の行きにくい箇所の相違であるから,両意匠の類否判断に与える影響は,限定的である。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり,共通点ア.ないしエ.は,両意匠の類否判断に与える影響はほとんどなく,これらの共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものとまではいえないのに対して,相違点イ.及び同オ.による肩部の高さ位置と形状の相違と,相違点ウ.及び同エ.による口部及びその周辺(ネック部上側)の形状の相違によって,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両意匠の類否判断を決するものといえる。
よって,本願意匠の形状と引用意匠の形状は,類似しないと認められる。

3.両意匠における類否判断
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通するが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠とは類似しない。

第6 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-09-11 
出願番号 意願2017-13378(D2017-13378) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2018-10-05 
登録番号 意匠登録第1616817号(D1616817) 
代理人 吉田 正義 

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