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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7
管理番号 1345917 
審判番号 不服2018-1419
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-02 
確定日 2018-10-02 
意匠に係る物品 介護用椅子 
事件の表示 意願2016- 16567「介護用椅子」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成28年8月3日の意匠登録出願であって,その後の手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 5月31日付け:拒絶理由の通知
平成29年 7月11日 :意見書の提出
平成29年10月31日付け:拒絶査定
平成30年 2月 2日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「介護用椅子」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「断面図を含む実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を以下「本願部分」という。別紙第1参照)。
本願部分は,具体的には,本願意匠のうち肘掛けの部分を除く,フレーム,座面及び背もたれの部分であり,その形状は,主に以下の点が認められる。
(1)前脚部から背もたれ支持部までを構成するメイン・フレームは,一続きの丸パイプを屈曲させたものであって,側面視で中央を水平部としたクランク状を呈し,水平部の前方が座面中央近傍で前下方に屈曲して前脚部を形成し,水平部の後方が座面後端近傍で後上方に屈曲して背もたれ支持部を形成して,背面視で略倒コ字状を呈して左右一体にしている点。
(2)後脚フレームは,左右一対の屈曲した丸パイプから成り,側面視で短い水平部の後方が座面後端近傍で後下方に屈曲して略ヘ字状を呈し,水平部前方端部にヒンジを設けてメイン・フレーム水平部の略中央下側で接続している点。
(3)4本の脚部は,略中央から先端側の径が僅かに大きく,その脚部の下端に,下部が略円盤状に広がったキャップを設け,前脚部の後面と後脚部の前面に,縦一列に孔と推察される6つの小円を等間隔に設け,先端側脚部の上端に短円筒状のカバーを設けている点。
(4)4本の横桟を,メイン・フレーム前方屈曲部付近,メイン・フレーム水平部中央付近,後脚フレーム水平部先端付近,及び後脚フレーム屈曲部付近に設けて,左右のフレームを接続している点。
(5)後脚フレーム屈曲部付近の横桟は,左右一対の短い略板状片で座面下部後端の突出部と接続している点。
(6)座面は,平面視が略隅丸台形の板状であり,上面に小円孔を4つ設け,上面と下面内側の二層構造で,上面側が下面側の上面から周面にかけて被覆している点。
(7)背もたれは,正面視が倒立略隅丸台形の板状であり,中央の上寄りに横長の長円孔を設け,前面と後面内側の二層構造で,前面側が後面側の前面から周面にかけて被覆している点。
(8)背もたれは,略円筒状のカバー部材で背もたれ支持部と接続している点。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する,というものである。
引用意匠は,日本国特許庁発行の公開特許公報(公報発行日:平成19年2月15日)に記載された,特開2007-37608の図1ないし5に示された「浴室用折り畳み椅子」の意匠であり,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合は,同公報に記載されたとおりのものである(引用意匠において本願部分に該当する部分を以下「引用部分」という。別紙第2参照)。
引用部分の具体的な形状は,主に以下の点が認められる。
(1)前脚部から背もたれ支持部までを構成するメイン・フレームは,一続きの丸パイプを屈曲させたものであって,側面視で中央を水平部としたクランク状を呈し,水平部の前方が座面中央近傍で前下方に屈曲して前脚部を形成し,水平部の後方が座面後端近傍で後上方に屈曲して背もたれ支持部を形成して,背面視で略倒コ字状を呈して左右一体にしている点。
(2)後脚フレームは,左右一対の屈曲した丸パイプから成り,側面視で短い水平部の後方が座面後端近傍で後下方に屈曲して略ヘ字状を呈し,水平部前方端部にヒンジを設けてメイン・フレーム水平部の略中央下側で接続している点。
(3)4本の脚部は,略中央から先端側の径が僅かに大きく,その脚部の下端に,下部が略円盤状に広がったキャップを設け,前脚部の後面と後脚部の前面に,縦一列に6つの小円孔を等間隔に設け,先端側脚部の上端に短円筒状のカバーを設けている点。
(4)3本の横桟を,メイン・フレーム前方屈曲部付近,メイン・フレーム水平部中央付近,及び後脚フレーム屈曲部付近に設けて,左右のフレームを接続している点。
(5)後脚フレーム屈曲部付近の横桟は,左右一対の短い略板状片で座面下部後端の突出部と接続している点。
(6)座面は,平面視が略隅丸台形の板状であり,上面に小円孔を6つ設け,上面と下面の二層構造で,層の境界が周面の略中央に表れ,境界に小さな段差が生じている点。
(7)背もたれは,正面視が上部中央の凹んだ略横長長円形の板状であり,中央の上寄りに横長の長円孔を設け,前面と後面の二層構造で,層の境界が周面の略中央に表れ,境界に小さな段差が生じている点。
(8)背もたれは,略三角形状の金具で背もたれ支持部と接続している点。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「介護用椅子」である。
引用意匠は,引用意匠掲載の公開特許公報によれば,発明の名称を「浴室用折り畳み椅子」とし,「使用者は,座部に座った姿勢のまま横方向に移動することができ,浴室用椅子からバスタブへ移乗するに際して介護者に大きな負担を強いることがない。」と記載されていることから,介護に利用する椅子である。
そうすると,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共に介護用椅子と認められる。

2 本願部分と引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の位置,大きさ及び範囲は,介護用椅子のフレーム,座面及び背もたれの部分であり,その用途及び機能は,介護用椅子のフレーム,座面及び背もたれの用途及び機能を有する。

3 両部分の形状の対比
(1)形状の共通点
(共通点1)メイン・フレームの形状につき,一続きの丸パイプを屈曲させ,側面視で中央を水平部としたクランク状を呈し,水平部の前方が座面中央近傍で前下方に屈曲して前脚部を形成し,水平部の後方が座面後端近傍で後上方に屈曲して背もたれ支持部を形成して,背面視で略倒コ字状を呈して左右一体にしている点において,両部分は共通する。
(共通点2)後脚フレームの形状につき,左右一対の屈曲した丸パイプから成り,側面視で短い水平部の後方が座面後端近傍で後下方に屈曲して略ヘ字状を呈し,水平部前方端部にヒンジを設けてメイン・フレーム水平部の略中央下側で接続している点において,両部分は共通する。
(共通点3)4本の脚部の形状につき,略中央から先端側の径が僅かに大きく,その脚部の下端に,下部が略円盤状に広がったキャップを設け,前脚部の後面と後脚部の前面に,縦一列に6つの小円孔を等間隔に設け,先端側脚部の上端に短円筒状のカバーを設けている点において,両部分は共通する。
(共通点4)左右のフレームを接続する横桟につき,メイン・フレーム前方屈曲部付近,メイン・フレーム水平部中央付近,及び後脚フレーム屈曲部付近に設けている点において,両部分は共通する。
(共通点5)左右のフレームを接続する横桟と座面との接続につき,後脚フレーム屈曲部付近の横桟は,左右一対の短い略板状片で座面下部後端の突出部と接続している点において,両部分は共通する。
(共通点6)座面の形状につき,平面視が略隅丸台形の板状である点,及び上面に複数の小円孔を設けている点において,両部分は共通する。
(共通点7)背もたれの形状につき,中央の上寄りに横長の長円孔を設けている点において,両部分は共通する。

(2)形状の相違点
(相違点1)本願部分は,後脚フレーム水平部先端付近に,左右のフレームを接続する横桟があるのに対し,引用部分にはそれがない点において,両部分は相違する。
(相違点2)本願部分の座面は,上面と下面内側の二層構造で,上面側が下面側の上面から周面にかけて被覆しているのに対し,引用部分の座面は,上面と下面の二層構造で,層の境界が周面の略中央に表れ,境界に小さな段差が生じている点において,両部分は相違する。
(相違点3)本願部分の座面上面の小円孔は4つであるのに対し,引用部分は6つである点において,両部分は相違する。
(相違点4)本願部分の背もたれは,正面視が倒立略隅丸台形であるのに対し,引用部分の背もたれは,正面視が上部中央の凹んだ略横長長円形である点において,両部分は相違する。
(相違点5)本願部分の背もたれは,前面と後面内側の二層構造で,前面側が後面側の前面から周面にかけて被覆しているのに対し,引用部分の背もたれは,前面と後面の二層構造で,層の境界が周面の略中央に表れ,境界に小さな段差が生じている点において,両部分は相違する。
(相違点6)本願部分の背もたれは,略円筒状のカバー部材で背もたれ支持部と接続しているのに対し,引用部分の背もたれは,略三角形状の金具で背もたれ支持部と接続している点。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,共に介護用椅子であり,一致する。

2 両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両部分の位置,大きさ及び範囲は,介護用椅子のフレーム,座面及び背もたれの部分であり,その用途及び機能は,介護用椅子のフレーム,座面及び背もたれの用途及び機能を有するから,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は,一致する。

3 両部分の形状の共通点及び相違点の評価
(1)フレームに係る共通点及び相違点の評価
共通点1ないし5のフレームの形状についての共通点は,介護用椅子の分野において,両意匠以外にも多く見られる形状であるから,この共通点のみをもって,両部分の類否が決定付けられるほどとはいえない。
また,相違点1の後脚フレーム水平部先端付近の横桟の有無は,座面下部の見えにくい部分の相違点であるから,類否判断に及ぼす影響は小さい。

(2)座面及び背もたれに係る共通点及び相違点の評価
介護用椅子において,座面及び背もたれは,使用時に身体に接し,座り心地や安全性に大きく関わる部分であるから,需要者はその具体的形状に注目するといえる。
まず,需要者は,座面の上面だけでなく,座ったときに身体が接すると考えられる周面の形状にも注目するところ,座面については,相違点2のとおり,両部分は周面に層構造が表れるか否かが異なっており,座面周面の形状が,本願部分は全周にわたって滑らかに連続しているのに対し,引用部分は二層に分かれて段差が生じており,需要者に明確に異なる視覚的印象を与えるといえるから,平面視の形状が略隅丸台形で共通するとしても(共通点6),両部分は,座面の美感に一定の差異があるといえる。
なお,共通点6及び相違点3に係る座面上面の小円孔については,座面全体の印象を左右するほどではなく,類否判断に及ぼす影響は小さい。
次に,需要者は,使用時に上半身を支持する背もたれ上部の形状に注目するところ,背もたれについては,まず,相違点4のとおり,両部分は正面視の形状が異なっており,背もたれ上部の形状を,本願部分は略水平に幅広く形成しているのに対し,引用部分は横並びの2つのこぶ状に形成しており,需要者に異なる視覚的印象を強く与えるといえる。
加えて,需要者は,手を掛けることが考えられる背もたれ周面の形状にも注目するところ,相違点5のとおり,背もたれ周面に層構造が表れるか否かが異なっており,背もたれ周面の形状が,本願部分は全周にわたって滑らかに連続しているのに対し,引用部分は二層に分かれて段差が生じており,需要者に明確に異なる視覚的印象を与えるといえる。
さらに,需要者は,椅子の後ろに立って介護する際に観察される背もたれ後面の形状にもある程度注目するところ,相違点6のとおり,両部分は背もたれ後面の略円筒状のカバー部材の有無が異なっており,背もたれ支持部との接続箇所にカバー部材を設けている本願部分は引用部分と異なり,視覚的にすっきりとした印象を持つといえる。
そうすると,中央の上寄りに横長の長円孔を設けている部分的な共通点はあるとしても(共通点7),両部分は,背もたれの美感に大きな差異があるといえる。

4 両意匠の類否判断
両部分の形状の共通点及び相違点の評価に述べたとおり,両部分は,需要者の注目する座面の美感に一定の差異があり,同じく需要者の注目する背もたれの美感に大きな差異があることから,これらの相違点は,フレームの形状などの共通点が及ぼす影響を上回り,両部分の類否判断を決定付けるものであり,両部分は,全体として異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が一致するとしても,その部分の形状において,需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しない。

第6 むすび
以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-09-19 
出願番号 意願2016-16567(D2016-16567) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 橘 崇生
竹下 寛
登録日 2018-11-16 
登録番号 意匠登録第1619930号(D1619930) 
代理人 前田 浩夫 
代理人 鎌田 健司 
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