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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 K3
管理番号 1345929 
審判番号 不服2018-8530
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-21 
確定日 2018-10-15 
意匠に係る物品 苗木保護カバー 
事件の表示 意願2017- 7288「苗木保護カバー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、平成29年(2017年)4月6日の意匠登録出願であって、平成29年12月21日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年2月9日に意見書が提出されたが、平成30年3月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年6月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「苗木保護カバー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原審の拒絶の理由及び引用した意匠
原審の拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願の意匠は、意匠に係る物品を『苗木保護カバー』とし、全体形状が円筒体で、内側に螺旋状の芯材を取り付けて形成されています。
ところで、この種物品分野において、全体形状を円筒体とすることは、本願出願前より公然知られているところです(例えば、意匠1)。
また、円筒体の本体を保持するために、内側に螺旋状の芯材を取り付けることは、この種物品分野に限らず、本願出願前よりごく一般的に見受けられるありふれた手法です(例えば、意匠2、意匠3、意匠4)。
そうすると、本願出願前より公然知られた円筒体の意匠1の形状を基本とし、内側にありふれた手法で螺旋状の芯材を取り付けた程度にすぎない本願の意匠は、当業者であれば容易に創作をすることができた意匠と認められます。

意匠1(当審注:別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2014-161302
【図1】に表された「苗木等保護具」の意匠

意匠2(当審注:別紙第3参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年1月31日に受け入れた
FLEXIBLE DUCTING 第5頁所載
「可撓管」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD18027450号)

意匠3(当審注:別紙第4参照)
特許庁意匠課が2006年11月10日に受け入れた
kanamoto アスベスト対策機器 レンタルカタログvol.02 第5頁所載
「ダクト」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC18050431号)

意匠4(当審注:別紙第5参照)
電気通信回線の種類:インターネット
掲載確認日(公知日):2014年5月27日
受入日:特許庁意匠課受入2014年7月11日
掲載者:W.W.Grainger,Inc.
表題:OMNIAIRE Flexible Duct 14 dia.,Mylar,25ft. L - Negative Air Machine A
掲載ページのアドレス:http://www.grainger.com/product/OMNIAIRE-Flexible-Duct-14-dia-49K268?s_pp=false に掲載された
「ダクト」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ26018708号)」

第4 請求人の主張
1 「創作容易」について
本願意匠が創作容易と言えるためには、「(本願)意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができた」ことが必要である(意匠法第3条第2項)。
これを本願意匠と引用意匠との対比でみると、「全体形状が円筒体」とすることについては、意匠1から公然知られた意匠であるとしても、意匠2ないし4に係る物品は、いずれも「ダクト」であり、本願意匠の物品とはその属する分野が全く異なり、関連性は非常に乏しいものである。
すなわち、所謂「ダクト」は、「気体を運ぶ管」であり、主に建築物内で冷暖房等の空調、換気、排気、排煙などの目的で使用される空気の通路となる導管である。全国ダクト工業団体連合会のHP(http://www.duct-jp.net/)にあるダクト教本によれば、ダクトの種類は1.空気調和用ダクト、2.換気用ダクト、及び3.排煙用ダクトの3種類あると説明されており、各々の説明を見ると、「1.空気調和用ダクト」は、「空気調和機を通した空気を輸送するもの」であって「温風、冷風を通し、室内の温度調節を目的とし」、「2.換気用ダクト」は、「外気の供給・汚染空気の排出及びこれに類する給排気を行うための」ものであって「室内空気の交換が主目的であ」り、「3.排煙用ダクト」は、「火災時に発生する煙、または有害ガスを効果的に除去するため」のものであると記載されている。
これに対し、本願意匠の物品は、農業分野に属するものであって、苗木を覆うことにより獣害から苗木を保護するためのものであり、両物品は、物品の製品領域(業種、目的、用途ほか)や技術分野、流通経路、顧客(ユーザ)も異なっており、明らかに分野を異にするものである。
したがって、本願意匠は、意匠1、並びに意匠2、意匠3及び意匠4を基に、本願意匠に係る物品分野における当業者が容易に創作をすることができたとはいえないものである。

2 「ありふれた手法」について
拒絶理由通知において、「円筒体の本体を保持するために、内側に螺旋状の芯材を取り付けることは、この種物品分野に限らず、本願出願前よりごく一般的に見受けられるありふれた手法です(例えば、意匠2、意匠3、意匠4)。そうすると、本願出願前より公然知られた円筒体の意匠1の形状を基本とし、内側にありふれた手法で螺旋状の芯材を取り付けた程度にすぎない本願の意匠は、当業者であれば容易に創作することができた意匠と認められます。」との判断がなされている。
この点について、意匠審査基準「23.7 当業者にとってありふれた手法であることの提示」の項によれば、「創作容易な意匠というためには、当業者にとってありふれた手法によって創作されたという事実を要する」と規定されている。
更に、「例えば、玩具業界において、本物の自動車をそっくりそのまま自動車おもちゃに転用するという手法等の場合」のような、ありふれた手法であることが顕著な事実が認められる場合を除き、「意匠法第3条第2項の規定により拒絶の理由を通知する場合は、原則、当業者にとってありふれた手法であることを示す具体的な事実を出願人に提示することが必要である。」旨が規定されている。
当該審査基準に照らしてみると、農業分野の物品であり、本願意匠の物品である「苗木保護具」に、所謂「ダクト」の意匠が転用ないし適用されることが「当業者にとってありふれた手法」であることが顕著な事実と認められる程度の事実はないといえる。かつ、上述の拒絶理由通知において、所謂「ダクト」の意匠が、農業分野の物品であり、本願意匠の物品である「苗木保護具」に転用ないし適用されることがありふれた手法であることを示す具体的な事実は、提示されていない。

3 まとめ
以上により、仮に、本願の意匠に係る「苗木保護カバー」の物品分野において、全体形状を円筒体とすることが本願出願前より公然知られているところ(例えば、意匠1)であるとしても、当該円筒体の本体を保持するために、内側に螺旋状の芯材を取り付けることは、当業者にとって本願出願前よりごく一般的に見受けられるありふれた手法であるとはいえないものである。
したがって、本願の意匠に係る「苗木保護カバー」の全体形状を円筒体とすることが本願出願前より公然知られているところ(例えば、意匠1)であるとしても、当該意匠1の形状を基本とし、意匠2、意匠3及び意匠4に基づいて本願意匠の創作をすることは、「当業者であれば容易に創作することができた」とは認められないものである。

第5 当審の判断
請求人の主張を踏まえ、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について、すなわち、本願意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて、以下検討し、判断する。
1.本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、略円筒形状の苗木保護カバーの内側面に沿って二本の支柱を埋設し、その支柱の上部に苗木保護カバー上部をクリップで固定して苗木の周囲を覆い、獣害から苗木を保護するための「苗木保護カバー」である。

(2)本願意匠の形態
本願意匠医の形態は、テープ状の不織布の下端部付近を螺旋状の芯材の内側に配し、上端部付近を上部の一周した位置にある螺旋状の芯材の外側に配し、このテープ状の不織布の上端部と下端部を螺旋状の芯材を挟み込んで融着し、略縦長円筒形状としたものである。

2.原審の拒絶の理由における引用意匠
(1)意匠1
意匠1は、「苗木等保護具」に係る物品であり、その形態は、支柱に固定した螺旋状の支持材の周囲に保護ネットを巻き付けて略円筒形状としたものである。

(2)意匠2
意匠2は、「可撓管」に係る物品であり、その形態は明確に表れていないが、螺旋状に配した芯材の外周部分に略円筒形状の金属製のカバー材を被せて略縦長円筒形状としたものである。

(3)意匠3
意匠3は、「ダクト」に係る物品であり、その形態は明確に表れていないが、螺旋状に配した芯材の外周部分に略円筒形状の布製と思われるカバー材を被せて略縦長円筒形状としたものである。

(4)意匠4
意匠4は、「ダクト」に係る物品であり、その形態は明確に表れていないが、螺旋状に配した芯材の外周部分に略円筒形状のビニール素材と思われるカバー材を被せて略縦長円筒形状としたものである。

4.本願意匠の創作容易性の判断
本願意匠は、意匠に係る物品を「苗木等保護具」とするものであるところ、この苗木等保護具の属する物品分野において、保護ネットの内側に螺旋状の芯材を固定し、全体を略円筒状に形成したものは、意匠1で示したように公然知られた形態であると認められ、ダクト等の空気の通路となる導管の分野において、円筒管の内部に螺旋状の芯材を本願意匠のような配置態様で設け、全体を可撓性のある略円筒形状に形成したものも、意匠2ないし4で示したように本願意匠出願前に存在した形態であると認められる。
しかしながら、内部にある苗木等のために通気性が必要な苗木等保護具と、空気の通路として使用されるために気密性の高いダクトとは、その用途及び機能が異なる他、その製造、販売に従事する者も異なるから、本願意匠のような螺旋状の芯材の形態が、あらゆる物品分野で見られる広く知られた形態であるのであればまだしも、本願意匠の属する苗木等保護具の当業者の間で、空気の通路となる導管の物品分野に属する意匠2ないし4の形態が公然知られていたとは認めることはできない。
また、苗木等保護具の形態においても、テープ状の不織布の下端部付近を螺旋状の芯材の内側に配し、上端部付近を上部の一周した位置にある螺旋状の芯材の外側に配し、このテープ状の不織布の上端部と下端部を螺旋状の芯材を挟み込んで融着し、上下方向に伸縮可能な略縦長円筒形状に形成したものは、引用しているいずれの意匠(意匠1ないし4)にも見当たらないものであり、この態様はこの種物品分野において公然知られた形態ではないから、本願意匠は、本願意匠独自の独創的な着想により、特徴的な態様を創出したものであると認められるものであって、本願意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたとはいえないものである。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、当審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-09-19 
出願番号 意願2017-7288(D2017-7288) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (K3)
最終処分 成立 
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2018-11-02 
登録番号 意匠登録第1618783号(D1618783) 
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