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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B5
管理番号 1347712 
審判番号 不服2018-10806
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-07 
確定日 2018-12-07 
意匠に係る物品 靴 
事件の表示 意願2017- 16041「靴」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年12月8日(パリ条約による優先権主張2016年7月28日、米国)に出願した意願2016-026626号の一部を意匠法第10の2第1項の規定に基づいて分割して,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成29年7月25日の新たな意匠登録出願であって,平成29年12月11日付けの拒絶理由の通知に対し,平成30年4月13日に意見書が提出されたが,平成30年4月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成30年8月7日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「靴」とし,その形状,模様若しくは色彩またはこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩またはこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。本願意匠において,一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界を示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることができない意匠)に該当する,というものである。
引例意匠は,独立行政法人工業所有権総合情報館が2002年3月4日に受け入れたフィガロジャポン 2002年3月5日4号 第61頁所載された運動靴の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA14003865号)であり,その形態を同雑誌に所載されたとおりとしたものであり,引用意匠において本願部分と対比,判断する部分を,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
1 意匠の認定
(1)本願意匠
ア 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「靴」である。

イ 本願部分の用途及び機能
本願部分は,靴本体を支える靴底の側周面の一部の用途及び機能を有するものである。

ウ 本願部分の位置,大きさ及び範囲
本願部分は,靴底の側周面の外側部のうち,つま先と踵間の踵寄り約3/11,かつ,靴底幅の上下方向約中央に位置する,その直径を靴底幅の略半分とする略円形状の範囲を占める。

エ 本願部分の形態
僅かに盛り上がる湾曲面に,その対角線の比率を約4対3とする略菱形状の凹部(以下「凹部」という。)を,短い対角線と靴底接地面との角度が約65度となるように,斜め上下左右に連続させて規則的に配し,凹部と凹部の間を略菱形の格子状をなす凸部(以下「凸部」という。)とし,凸部の幅を凹部の一辺の長さの約1/4としている。

(2)引用意匠
ア 意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は,「運動靴」である。

イ 引用部分の用途及び機能
引用部分は,靴本体を支える靴底の側周面の一部の用途及び機能を有するものである。

ウ 引用部分の位置,大きさ及び範囲
引用部分は,靴底の側周面の外側部のうち,つま先と踵間の踵寄り約3/11,かつ,靴底幅の上下方向約中央に位置する,その直径を靴底幅の略半分とする略円形状の範囲を占める。

エ 引用部分の形態
その対角線の比率を約7対3とする略菱形が連続する網状の凸部(以下「網状凸部」という。)を,短い対角線と靴底接地面との角度が約90度となるように配し,網状凸部の間には略菱形状に靴底の側周面が表れ,網状凸部の幅を網状凸部内側の一辺の長さの約1/4としている。靴底の側周面の湾曲の態様は確認できない。

2 対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「靴」で,引用意匠の意匠に係る物品は「運動靴」であり,表記は異なるが,歩行時や走行時に使用者が足を保護するために着用するものであることから,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,用途及び機能が共通する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は,いずれも靴本体を支える靴底の側周面の一部の用途及び機能を有するものであることから,用途及び機能が一致する。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の対比
両部分は,靴底の側周面の外側部のうち,つま先と踵間の踵寄り約3/11,かつ,靴底幅の上下方向約中央に位置する,その直径を靴底幅の略半分とする略円形状の範囲を占めるものであることから,位置、大きさ及び範囲が一致する。

(4)両部分の形態の対比
ア 両部分の形態の共通点
(共通点1)全体について,略菱形状の凸部が配されている点,
(共通点2)略菱形状の凸部の幅は,略菱形状の凹部の一辺の約1/4としている点。

イ 両部分の形態の相違点
(相違点1)本願部分は,僅かに盛り上がる湾曲面上に形成されているのに対して,引用部分は,靴底の側周面の湾曲の態様は確認できない点,
(相違点2)本願部分は,対角線の比率を約4対3とする略菱形状の凹部を連続して規則的に配し,凹部と凹部の間を略菱形の格子状をなす凸部としているのに対して,引用部分は,対角線の比率を約7対3とする略菱形の網状凸部を配し,網状凸部の間には靴底の側周面が略菱形状に表れている点,
(相違点3)本願部分は,凹部に関して,その短い対角線と靴底接地面との角度が約65度となるように,斜め上下左右に連続して配しているのに対して,引用部分は,網状凸部に関して,その短い対角線と靴底接地面との角度が約90度となるように配している点。

3 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,用途及び機能が共通するから,類似する。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能が一致するから,同一である。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲の評価
両部分の位置,大きさ及び範囲は,物品全体の形態の中における位置,大きさ及び範囲が一致するから,同一である。

(4)両部分の形態の共通点及び相違点の評価
ア 両部分の形態の共通点の評価
共通点1は,全体の態様に係るものではあるが,この種物品にはよく見られる靴底の側周面の態様を概括的に捉えたものであって,部分全体の美感に与える影響は小さい。
共通点2である略菱形状の凸部の幅を略菱形状の凹部の一辺の約1/4としている点については,凸部は細い線状であるという視覚的印象を需要者に与えることから,部分全体の美感に一定の影響を与える。

イ 両部分の形態の相違点の評価
相違点1である,本願部分は僅かに盛り上がる湾曲面上に形成されているのに対して,引用部分は具体的な態様は確認できない点については,靴を着用したときの安定感や衝撃からの保護の状態に注目をする需要者の注意を惹く部分であることから,部分全体の美感に一定の影響を与える。
相違点2における,本願部分は対角線の比率を約4対3とする略菱形状の凹部を連続して規則的に配し,凹部と凹部の間を略菱形の格子状をなす凸部としているのに対して,引用部分は,対角線の比率を約7対3とする略菱形の網状凸部を配し,網状凸部の間には靴底の側周面が略菱形状に表れるものとしている点については,本願部分が細かい凹部が連続して彫り込まれ,凸部が平滑面として残されているような視覚的印象を与えるのに対して,引用部分は網状の凸部が伸展され張り込まれ,凹部が平滑面として残されているような視覚的印象を有しており,相違点3である略菱形状の凸部が配されている角度の違いとあいまって,靴底の側周面について,着用後の汚れの付き方や着用時の摩擦への強度に注目をする需要者が特に注意を惹かれる相違点であることから,部分全体の美感に与える影響は大きい。

(5)両意匠の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に観察した場合,両部分は,略菱形状の凸部と凹部の具体的な態様について,美感に大きな相違があり,全体の概括的な態様や線状をなす凸部の態様が共通することを考慮したとしても,意匠全体として観察した際には,異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が類似し,両部分の用途及び機能が同一で,両部分の位置,大きさ及び範囲が同一であるが,その形態においては,相違点が全体において支配的なものとなっており,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであって,両意匠は類似しない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-11-27 
出願番号 意願2017-16041(D2017-16041) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
木本 直美
登録日 2019-01-11 
登録番号 意匠登録第1623575号(D1623575) 
代理人 奥山 尚一 
代理人 有原 幸一 
代理人 松島 鉄男 
代理人 田中 祐 
代理人 徳本 浩一 

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