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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J3
管理番号 1348771 
審判番号 不服2018-9088
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-02 
確定日 2019-01-11 
意匠に係る物品 拡大鏡 
事件の表示 意願2016- 26128「拡大鏡」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年(2016年)12月1日の意匠登録出願であって、平成29年(2017年)10月30日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月20日に意見書が提出されたが、平成30年(2018年)3月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「拡大鏡」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「1.図面上、実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」とし、さらに、願書の記載によれば、「 2.本件「意匠に係る物品」のレンズ部は透明である。3.透明部分を「透明部を示す参考正面図」において薄墨で示す。4.「背面図」において、レンズ部内、左右両側部に現れる細線は、レンズ部背面側にある「稜線」を表す。5.レンズ部正面側に当該「稜線」はないが、透明なレンズ部を通して、「細線」がレンズ部正面側にも現れる。レンズ部正面側から見える細線を、「参考斜視図」において赤色で示す。6.背面図以外の各図における、レンズ部正面側に表された細線は、いずれも透明なレンズ部を通して見えている細線を示している。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2015年2月6日に受け入れた
ALFAMIRAGECO.、LTd発行の内国カタログ「Alfa Mirage Collection Vol.6」
第8頁下から3段目左端所載
拡大鏡(製品名・HAZUKI LOUPE3)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC27002036号)
※なお、主な類否判断の対象となるのは、引例意匠の、本願意匠が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に対応する部分である。

第4 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「拡大鏡」であり、引用意匠の意匠に係る物品も「拡大鏡」であって、いずれも眼鏡型の拡大鏡であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致するものである。

(2)本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分を「両部分」という。)の用途及び機能については、いずれも、鼻パッド部を除いた残余の部分(リム部、レンズ部、テンプル部)であるから、その用途及び機能は一致し、また、位置、大きさ、及び範囲についても一致するものである。

(3)両部分の形態
両部分の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
ア.両部分の形態の共通点
(共通点1)全体の基本構成
両部分は、略細棒状のリム部と、左右対称形で折りたたみ可能な略細棒状のテンプル部を、平面視、両側を緩やかに湾曲した略U字状に一体形成し、リム部の下側に大略横長矩形状の透明なレンズ部を取付けたフロント部(いわゆるナイロールタイプ)とし、左右端部のレンズ部とリム部の間に隙間を空けている点、
(共通点2)レンズ部
両部分は、左右のレンズが一体化したワンレンズタイプで、正面視、左右端部を下方に緩やかな曲線状とし、下端部を外側から真ん中近くまでやや下方傾斜し、中央部を鼻梁にあわせて凹入状に切り欠き、レンズ中央に縦に分割線を形成している点、
(共通点3)リム部
両部分は、中央部が下方に湾曲状に膨出している点、
(共通点4)テンプル部
両部分は、テンプルエンドが斜め下方向に湾曲している点。

イ.両部分の形態の相違点
(相違点1)レンズ部
本願部分は、平面視において、リム部の形状に合わせて背面側に湾曲し、両端部を僅かにリム部から分離して、全体として緩やかな弧状とし、正面視において、上端部外側(リム部から分離している部分)が下方にやや弧状とし、横幅はリム部の幅よりやや短く、背面部側の両端部寄りに外側に湾曲した稜線を1本ずつ形成しているのに対し、引用部分は、全体が略平坦面状で、上端部は、中央部付近をリム部と固着しているが、端部から中央部付近手前まではリム部から分離して大きな隙間を空け、正面視、略水平状で外側端部は角が立っており、横幅は、引用意匠が斜視図のみの開示で正面から見た図がないため不明であり、左右端部寄りに稜線は形成していない。
(相違点2)リム部
本願部分は、形状のみで色彩は施していないのに対し、引用部分は、赤色に着色している。
(相違点3)テンプル部
本願部分は、平面視において、テンプルエンドがやや太幅で縦長のS字曲線を描いた後、幅を狭めながら外側にやや湾曲し、下端部近くで再び幅を広げつつ内側に湾曲してリム部に繋げているのに対し、引用部分は、引用意匠が斜視図のみの開示で平面から見た図がないため不明である。
また、本願部分は、形状のみで色彩は施していないのに対し、引用部分は、リム部と同じ赤色に着色している。

2.類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、一致している。

(2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は一致している。

(3)両部分の形態
ア.両部分の形態の共通点
共通点1は、全体の基本構成に係るものであるが、リム部とテンプル部を一体形成し、リム部の下側にレンズ部を取り付けたものは、この種物品分野においてごく普通に見られる態様であるから(例えば、意匠登録第1406941の眼鏡型ルーペの意匠、参考意匠1、別紙第3参照。)、部分全体の美感に与える影響は小さいものである。
共通点2及び共通点4は、最も目につきやすいフロント部の大半を占めるレンズ部の態様であるが、左右のレンズが一体化したワンレンズタイプで、下端部を外側から真ん中近くまでやや下方傾斜し、中央部を鼻梁にあわせて凹入状に切り欠き、レンズ中央に縦に分割線を形成した態様は、この種物品分野におけるワンレンズタイプのレンズ部の形状としてごく一般的なものにすぎず(参考意匠1)、また、テンプルエンドを斜め下に湾曲して耳かけ部とすることもごくありふれたものであるから、これらの共通点は、両意匠のみの特徴とはいえないから、部分全体の美感に与える影響は小さい。
共通点3は、フロント部で、目につきやすいリム部の態様であるが、この種物品分野において、リム部の中央部を下方に湾曲状に膨出したものが、本願の出願前に公然知られているものであるから(意匠登録第1564049の拡大鏡の意匠、参考意匠2、別紙第4参照。)、共通点3が、両意匠のみの特徴とはいえず、部分全体の美感に与える影響は小さい。

イ.両部分の形態の相違点
相違点1のレンズ部の形状について、本願部分は、リム部の形状に合わせて背面側にやや湾曲し弧状面としているのに対し、引用部分は、略平坦面状のため、フラットルーペのような平らな面が強調され、また、引用部分は、中央部付近を除いてリム部から分離しているため、レンズ部のみ前方に突出したような印象で、両部分を意匠全体として比較した際には、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、この相違が、両部分の類否判断に与える影響は極めて大きいものである。
相違点2及び相違点3について、すなわち、リム部及びテンプル部の態様であるが、まず、色彩の相違については、本願部分は、形状について意匠登録を受けようとするものであって、具体的な色彩が施されていないとしても、実際の製品においては何らかの色彩が施されるのが通常であり、その差異のみによって、両意匠を別異のものとする程の大きな差異であるということはできないから、この相違が、両部分の類否判断に与える影響は小さいものである。
次に、テンプル部の平面視の形状であるが、引用部分は、斜視図のみの開示のうえ、写真が小さく不明瞭のため、比較検討することができないが、本願部分のような態様は、この種物品分野において、本願の出願前に公然知られているものであるから(参考意匠2)、本願部分のみの特徴とはいえず、この相違が、両部分の類否判断に与える影響は小さいものである。

以上のとおり、相違点2及び相違点3が両部分の類否判断に与える影響は小さいものの、相違点1が両部分の類否判断に与える影響は極めて大きいものであるから、相違点全体が相まって両部分の類否判断に与える影響は大きいといわざるを得ない。

3.小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は一致し、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が一致するが、形態においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、相違点の印象は、共通点の印象を凌駕し、両部分は、意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-12-13 
出願番号 意願2016-26128(D2016-26128) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 日比野 杏香加藤 真珠 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 内藤 弘樹
宮田 莊平
登録日 2019-02-01 
登録番号 意匠登録第1625339号(D1625339) 
代理人 香原 修也 
代理人 土野 史隆 
代理人 古井 かや子 

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