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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1348774 
審判番号 不服2018-12298
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-13 
確定日 2019-01-18 
意匠に係る物品 自動二輪車 
事件の表示 意願2017- 24184「自動二輪車」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年(2017年)10月31日の意匠登録出願であって、平成30年5月25日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年6月29日に意見書が提出されたが、平成30年8月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年9月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「自動二輪車」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
引用意匠は、特許庁意匠課が平成29年(2017年)9月29日に受け入れた、電気通信回線の種類:インターネット、掲載確認日(公知日):平成29年(2017年)9月11日、掲載者:ヤマハ発動機株式会社、表題:ビッグロゴの採用などカラーリング&グラフィックを変更 ”エンデューロ”向けモデル4機種の2018年モデルを発売 - 広報発表資料 | ヤマハ、掲載ページのアドレス:https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2017/0613/yz-ed.htmlに掲載された「自動二輪車」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ29029641号)であり、その形態を、同掲載ページに記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「自動二輪車」であるから、両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致する。

2 形態の対比
本願意匠と引用意匠の形態を対比すると、両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、引用意匠の図面について図の表示と図中の向きを本願意匠の図面に合わせることとし、本願意匠の左側面図の側を自動二輪車の前方側、本願意匠の右側面図の側を自動二輪車の後方側、本願意匠の正面図の側を自動二輪車の車体左側、本願意匠の背面図の側を自動二輪車の車体右側として、以下記載する。
(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体を、ストロークの長いフロントサスペンションを持ち、アップタイプのロングフロントフェンダーを取り付け、オフロードタイヤを装着したオフロード又はエンデューロタイプの自動二輪車の形態としたものである点で共通する。
(共通点2)両意匠は、フレームの形態を、エンジンの前方側に突設した排気管を挟み、エンジン及びエンジン補機類を車体左右から抱えるようにしてフレームを配したものである点で共通する。
(共通点3)両意匠は、車体前方部分の形態を、フレームの前方側に、左右一対の倒立式フロントフォークを取り付け、その上端部にハンドル、その下端部にスポークホイールを装着したオフロードタイヤ及びディスクブレーキを取り付け、左右フロントフォークの中間部付近には大型のフロントフェンダーをタイヤから離して上方に配設し、その上部にゼッケン取り付け板を配した点で共通する。
(共通点4)両意匠は、車体上方部分の形態を、上端部に燃料キャップを配した燃料タンクと薄いシートを一体的になるように前後に配し、シートの後方から板状のリアフェンダーを略水平に突設し、燃料タンクの側面から前方に向かって車体外側に拡がる形態のカバー(以下「燃料タンクカバー」という。)を設け、車体右側のシート下方部分にマフラーやエンジン補機類を覆うカバー(以下「サイドカバー」という。)を設けた点で共通する。
(共通点5)両意匠は、車体後方部分の形態を、フレームの後方側に、斜め下方に向かって配した左右一対のリアアームをモノクロスサスペンションで揺動可能に取り付け、リアアーム後端部にスポークホイールを装着したオフロードタイヤ、ディスクブレーキ及びスプロケットを取り付け、スプロケットにチェーン駆動によって動力を伝達する構成としている点で共通する。
(共通点6)両意匠は、エンジン周囲の形態を、エンジン後方にエンジン補機類を配し、エンジン前方から左右フレームの間を抜けて排気管を突設し、車体右側のフレームの外側に大きく屈曲しつつ膨らんだ形態のチャンバーを設け、このチャンバーから後方斜め上方に向かって排気管より大径のサイレンサーを設けている点で共通する。

(2)形態の相違点
(相違点1)本願意匠の車体右側のフレームの形態が、斜めに傾いた略U字状の細い丸パイプからなり、これに細い角パイプのサブフレームをリアアーム付近で略Y字状になるように接合して形成したものであるのに対し、引用意匠の車体右側のフレームの形態が、斜めに傾いた略横コの字状の角パイプからなり、これに細い丸パイプのサブフレームをリアアーム付近で略Y字状になるように接合して形成したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本願意匠の車体右側の燃料タンクカバーの形態が、何も模様が施されていない略矩形状の燃料タンクカバーを、前方に向かって車体外側に拡がるように配設しているのに対し、引用意匠の車体右側の燃料タンクカバーの形態が、略水平な複数の略筋状模様及びアルファベットの「VZ」をその表面に施した、前方及び下方に略鋭角三角形状の突出部を設けた略変形台形状の燃料タンクカバーを、ラジエターを覆うようにして配設している点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本願意匠の車体右側のサイドカバーの形態が、中央の頂点部分が車体外側に突出した略矢羽状の何も模様が施されていないサイドカバーを、サイレンサーの上半分を覆うように略水平に配設しているのに対し、引用意匠の車体右側のサイドカバーの形態が、下斜め半分が湾曲しながら突出した略横長三角形状の、前方側を暗色、後方側を明色に塗り分けられているサイドカバーを、車体外側に突出した部分のみがサイレンサーの上半分を覆うように後方が跳ね上がるようにして斜めに配設している点で、両意匠は相違する。
(相違点4)本願意匠のリアアームの形態が、太さがほぼ均一な角状アームとしているのに対し、引用意匠のリアアームの形態が、前方に向かって漸次太くなる形態の角状アームとしている点で、両意匠は相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するから、同一である。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、前照灯のないところから競技用のオフロード又はエンデューロタイプの自動二輪車であるといえるから、需要者は、その走行性能に関わるエンジン、フレーム及びサスペンション等の部分を特に注意して観察するということができる。
したがって、自動二輪車における走行性能に関わる部位が需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。
(1)形態の共通点
(共通点1)は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)ないし(共通点6)における各部の形態は、この種競技用のオフロード又はエンデューロタイプの自動二輪車において既に見られる形態であるから、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、これらの(共通点2)ないし(共通点6)が意匠全体の美感に与える影響は小さいといえる。

(2)形態の相違点
(相違点1)は、需要者の注意を強く惹く走行性能に関わる部分であるフレームの具体的な形態に係るものであって、本願意匠が、強度の点ではやや弱いといえる細い丸パイプからなる形態であるのに対して、引用意匠は、強度のある角パイプからなり、この種物品の需要者が注目する部分であって、これらが与える印象の相違は大きいから、両意匠は車体右側のフレームの具体的な形態の美感に大きな差異がある。
(相違点2)は、車体右側の燃料タンクカバーの形態に係るものであって、本願意匠は、車体右側にはラジエターを設けておらず、小型の燃料タンクカバーを配したものであって、軽量で簡易なカバーであるとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、ラジエターを覆うために大型の燃料タンクカバーを配したものであって、ラジエターに冷却用の空気を導くといった需要者の注意を引く走行性能に影響するカバーであるとの印象を与えるから、その表面の模様の有無を含め、両意匠は車体右側の燃料タンクカバーの形態の美感に大きな差異がある。
(相違点3)は、車体右側のサイドカバーの形態についての相違点であるが、その中央部分が車体外側に突出した装飾的な略矢羽状の本願意匠の形態と、サイレンサーを覆う部分を湾曲させて車体外側に突出したデザインよりもサイレンサー保護の機能性を重視したような引用意匠の形態とは、需要者に異なる印象を与えるから、その表面の明暗調子の有無を含め、両意匠は車体右側のサイドカバーの形態の美感に大きな差異がある。
(相違点4)は、リアアームの形態についての相違点であるが、太さが均一な角状アームである本願意匠の形態と、前方に向かって漸次太くなる角状アームの引用意匠の形態では、強度の観点でこの走行性能に関わる部位を注視する需要者に異なる印象を与えるから、両意匠はリアアームの形態の美感に一定の差異がある。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記2の前文のとおり、自動二輪車の走行性能に関わる部位が需要者の注意を強く惹く部分であるところ、上記2(2)のとおり、この物品の需要者の注目する車体右側のフレームの具体的な形態、車体右側の燃料タンクカバーの形態及び車体右側のサイドカバーの形態の美感には大きな差異がある。また、リアアームの形態においても美感に一定の差異がある。
そうすると、両意匠は、全体の態様や各部の形態が共通することを考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-01-08 
出願番号 意願2017-24184(D2017-24184) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤澤 崇彦 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2019-02-01 
登録番号 意匠登録第1625208号(D1625208) 
代理人 梅澤 修 

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