• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D5
管理番号 1350701 
審判番号 不服2018-16527
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-11 
確定日 2019-03-19 
意匠に係る物品 取付用洗面器 
事件の表示 意願2017- 28858「取付用洗面器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成29年12月25日 意匠登録出願
平成30年 4月26日付け 拒絶理由通知書
平成30年 6月11日 手続補正書
平成30年 6月11日 意見書
平成30年 9月 6日付け 拒絶査定
平成30年12月11日 審判請求書

第2 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「取付用洗面器」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであり、具体的には以下のとおりである。
「本願意匠と引用意匠とは、主に、排水溝周辺の態様、カウンター部に設けられた複数の小孔の有無、シンク部手前側縁部及びシンク部内部奥側立ち上がり面の湾曲の有無、各面における縦横の構成比率において相違していますが、全体形状を略扁平横長直方体形状とし、平面に、手前側にシンク部、奥側にカウンター部を設け、シンク部の内部形状は略扁平横長直方体形状であり、シンク部の底面及び内側外周面はほぼ平坦面であり、カウンター部はごく僅かに一段下がった面で構成され、カウンター部の上面はほぼ平坦面であり、シンク部の縁部分はカウンター部に連なる薄い板状であり、平面視における上面縁部分が略ロ字状を形成している点が顕著に共通し、看者に強い共通感を与えますので、本願の意匠は、引用意匠に類似するものと認められます。
なお、カウンター部背面側が板状に上方向に突出するか否かについての相違は、いずれの態様のものも、本願出願前よりごく一般的に見受けられる態様のものであることより、形状に差異があるとしても、その意匠効果は特段認めらません。
欧州共同体意匠公報 2016年 2月 2日
洗面台(登録番号002963769-0013)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH28200646号)」

なお、上記欧州共同体意匠公報によれば、登録番号002963769-0013の意匠に係る物品の英語名が「Washbasin units」(仮訳:「洗面台ユニット」)とされており、略横長直方体状で暗調子で表されている台部と、その上に載った明調子の洗面器から成るところ、原査定における拒絶の理由において引用された意匠は、上記の「本願意匠と引用意匠とは、・・・全体形状を略扁平横長直方体形状とし、平面に、手前側にシンク部、奥側にカウンター部を設け」ているとの記載により、登録番号002963769-0013の意匠における洗面器の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)であると認められる。

第4 本願意匠と引用意匠の対比
1 意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「取付用洗面器」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「洗面器」であって、引用意匠も台部に取り付けられたものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

2 本願意匠と引用意匠の形態
両意匠の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。
(1)形態の共通点
(A)全体の構成についての共通点
全体が、平面視略横長長方形状で、下側(使用者にとって手前側)の約3/4がシンク部であり、上側(使用者にとって奥側)の約1/4がカウンター部であって、シンク部底面部の左右方向中央に排水孔が配されて、正面と両側面の高さ幅が一定に表されている。
(B)シンク部の態様についての共通点
シンク部の奥側壁面部は急傾斜状に形成されて、シンク部の左右壁面部も急傾斜状に形成されている。なお、引用意匠のシンク部の左側の壁面部は、前記公報の登録番号002963769-0013.1及び0013.3の図(別紙第2参照)斜視方向の図であるために隠れて表れていないが、「取付用洗面器」の物品分野においては左右の壁面部の形状が左右対称であることが普通であるので、右側の壁面部と同様に急傾斜であると推認される。
(C)カウンター部の態様についての共通点
カウンター部の上面は平坦状に形成されて、その高さはシンク部の高さよりも低くなっており、カウンターの左右端が凸リブ状に突出して、その凸リブ状突出部がシンク部両側の上端部に連続している。
(2)形態の相違点
(a)シンク部の形状についての相違点
(a-1)シンク部手前側及び奥側の湾曲の有無
平面から見て、本願意匠では、シンク部手前側及び奥側の壁面が下向き弧状に緩やかに湾曲し、2つの湾曲が平行曲線状に表されているが、引用意匠では、シンク部手前側及び奥側は湾曲しておらず、直線状に表されている。
(a-2)シンク部の角部の形状
シンク部手前側の左右の角部は、本願意匠では平面視略小弧状であるのに対して、引用意匠では平面視略直角状である。また、シンク部の奥側壁面部と左右壁面部が成す角は、本願意匠では平面視略小弧状であるのに対して、引用意匠では平面視略直角状である。
(a-3)シンク部底面部の形状と、周囲との連結形状
本願意匠のシンク部底面部は、排水孔に向けてごく緩やかに下降傾斜しており、シンク部底面部と、シンク部の4方向の壁面との連結は、断面視小弧状に形成されている。これに対して、引用意匠のシンク部底面部の具体的形状は断面図が無いために不明であり、引用意匠のシンク部底面部と、シンク部手前側壁面部との連結形状は、前記公報の登録番号002963769-0013.1及び0013.3の図(別紙第2参照)が斜視方向の図であるために隠れて表れていないので、不明である。また、シンク部底面部と、シンク部の奥側壁面部及び左右壁面部との具体的連結形状も不明である。
(b)カウンター部の形状についての相違点
(b-1)カウンター部の高さ
本願意匠のカウンター部の高さは、シンク部左右壁面部の高さの5/6程度低くなっているが、引用意匠のカウンター部の高さは、シンク部左右壁面部の高さよりごく僅かに低い程度である。
(b-2)小円形孔の有無
本願意匠のカウンター部には、横一列状に等間隔に小円形孔が設けられているが、引用意匠には小円形孔は無い。
(c)背板の有無
本願意匠のカウンター部は、背面側端部が上方に屈曲して背板に連続しており、側面から見て突出した背板の高さはシンク部左右壁面部の高さの約1/3であって、「B-B断面図」におけるカウンター部上面から突出した背板の高さとカウンター部の高さの比は、約3:5である。これに対して、引用意匠では、カウンターの背面側端部が凸リブ状に突出して、左右端のリブ状突出部に連続しており、本願意匠のような背板は無い。
(d)排水孔の形状と位置
本願意匠の排水孔は円形状であって、シンク部の奥側寄りに配されているが、引用意匠の排水孔は横長長方形状であって、シンク部の略中央に配されており、同形状の蓋で覆われている。
(e)全体の平面視縦横比
本願意匠の全体の平面視縦横比(縦幅は最大幅)は約3:8であるが、引用意匠のその比は約1:2(引用意匠の平面形状は斜視方向で表されているのでこの比は正確ではない。)である。

第5 類否判断
1 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 取付用洗面器の意匠の類否判断
取付用洗面器は、洗面棚や洗面台などに設置されるものであり、通常の使用状態において需要者が取付用洗面器を観察するに当たっては、その取付用洗面器を主として平面方向又は正面方向から眺めることとなり、カウンター部上面の構成態様、背板の形状、シンク部の形状などについて特に注意を払うことになる。したがって、取付用洗面器の意匠の類否判断においては、これらの形状を特に評価し、かつそれ以外の形状の評価も併せて、各評価を総合して意匠全体として形態を評価する。

3 両意匠の形態の共通点の評価
両意匠の共通点で指摘した、(A)全体の構成についての共通点及び(C)カウンター部の態様についての共通点については、全体が平面視略横長長方形状であって、手前側がシンク部、奥側がカウンター部であり、正面と両側面の高さ幅が一定に表されるとともに、カウンター部の上面が平坦状に形成されてその高さがシンク部の高さよりも低くなり、カウンターの左右端が凸リブ状に突出してシンク部両側部上端部に連続している意匠は、「取付用洗面器」の物品分野において本願の出願前に広く知られており(例えば、特許庁意匠課公知資料番号HB12009851の意匠。別紙第3参照。)、シンク部底面部の左右方向中央に排水孔が配されていることもごく普通に見受けられる。そうすると、「取付用洗面器」の需要者は、これらの態様に対して殊更注意を惹くということはできない。そして、「取付用洗面器」の物品分野においては、本願の出願前に、シンク部とカウンター部の構成比率には様々なものが見受けられるから、平面視下側の約3/4がシンク部であり、上側の約1/4がカウンター部である態様に殊更注意を惹くということはできない。したがって、共通点(A)及び(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また、シンク部の奥側壁面部が急傾斜状に形成され、シンク部の左右壁面部も急傾斜状に形成されている共通点(B)についても、シンク部の壁面部を急傾斜状に形成した意匠が、「取付用洗面器」の物品分野において本願の出願前に広く知られているから(例えば、意匠登録第1330063号の意匠。別紙第4参照。)、需要者は壁面が急傾斜である態様に殊更注意を惹くことはないので、共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

4 両意匠の形態の相違点の評価
これに対して、両意匠の形態の相違点については、以下のとおり評価され、相違点を総合すると、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
まず、シンク部手前側及び奥側の湾曲の有無の相違点(a-1)について、本願意匠におけるシンク部の手前側と奥側の双方の壁面が下向き弧状に緩やかに湾曲している形状は、2つの湾曲が平行曲線状に表されている点で需要者にまとまった1つの美感を与えているというべきである。これに対して、シンク部手前側及び奥側が湾曲せず直線状に表された引用意匠の形状は「取付用洗面器」の物品分野において本願の出願前にありふれた形状である。そうすると、「取付用洗面器」の需要者は、本願意匠の上記形状に対して特に注目するというべきであり、相違点(a-1)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に、相違点(a-2)で指摘した、シンク部手前側の左右の角部が平面視略小弧状であるか(本願意匠)、略直角状であるか(引用意匠)の相違は、「取付用洗面器」の手前側の角部が需要者の体に触れ得る部分であって、角が丸いか否かは体に当たった場合の影響の程度に関わるから、需要者は上記相違に注目するというべきであり、シンク部の奥側壁面部と左右壁面部が成す角が平面視略小弧状であるか(本願意匠)、略直角状であるか(引用意匠)の相違とあいまって、需要者に異なる視覚的印象を与えているというべきである。したがって、相違点(a-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
また、相違点(c)で指摘した背板の有無の相違については、本願意匠におけるカウンター部上面から突出した背板の高さとカウンター部の高さの比が約3:5であるところ、本願意匠を平面方向又は正面方向から眺める需要者は、カウンター部の高さの約3/5の高さを有する背板に対して注目するというべきである。そして、この相違点(c)は、本願意匠のカウンター部の高さが引用意匠に比べて低くなっている相違点(b-1)とあいまって、背板が無く、カウンター部の高さがシンク部左右壁面部の高さよりごく僅かに低い程度である引用意匠とは異なる視覚的印象を需要者に与えている。したがって、相違点(b-1)及び相違点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。
他方、引用意匠においてシンク部底面部の具体的形状や、シンク部底面部とシンク部の4方向の壁面との連結形状が不明であるのに対して、本願意匠のシンク部底面部が排水孔に向けてごく緩やかに下降傾斜して、シンク部底面部と、シンク部の4方向の壁面との連結が断面視小弧状に形成されている相違点(a-3)については、本願意匠に見られる、シンク部底面部が排水孔に向けてごく緩やかに下降傾斜している形状や、シンク部底面部と壁面との連結が断面視小弧状に形成されている形状が「取付用洗面器」の物品分野において本願の出願前にありふれた形状であるから、需要者が特に着目するとはいい難いので、相違点(a-3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また、本願意匠のカウンター部に小円形孔が設けられている点も、カウンター部に給水栓などが設置されることはありふれており(別紙第3参照)、大きな孔でもないので需要者が本願意匠の小円形孔に着目するとはいい難い。したがって、小円形孔の有無の相違点(b-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
加えて、排水孔がシンク部の奥側寄りに配されているか(本願意匠)、略中央に配されているか(引用意匠)の相違も、「取付用洗面器」の物品分野においてはどちらもありふれているから、需要者が排水孔の位置の相違に着目するとはいい難く、本願意匠の排水孔が円形状である点も、円形状である排水孔はごくありふれているので、引用意匠に対する相違として需要者が本願意匠の排水孔の形状に着目することはない。したがって、排水孔の形状と位置の相違点(d)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
最後に、全体の平面視縦横比が約3:8であるか(本願意匠)、約1:2であるか(引用意匠)の相違も、後者の比率は約4:8に相当するところ、両者の相違が需要者の視覚的印象を大きく異にするとはいい難く、「取付用洗面器」の物品分野において様々な縦横比が本願の出願前に見受けられることを踏まえると、全体の平面視縦横比の相違点(e)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。

5 総合判断
以上のとおり、両意匠の形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて小さいのに対して、両意匠の形態の相違点(a-1)、相違点(a-2)、相違点(b-1)及び相違点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きく、その余の形態の相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても、形態の共通点を圧して、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。

6 小括
したがって、両意匠の意匠に係る物品は同一であり、両意匠の形態についても、相違点は共通点を圧して両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすので、両意匠を全体として比較した際には両意匠を別異のものと印象付けるものであるから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は原査定の引用意匠に類似することを理由にして、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-03-06 
出願番号 意願2017-28858(D2017-28858) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D5)
最終処分 成立 
前審関与審査官 樫本 光司 
特許庁審判長 木本 直美
特許庁審判官 宮田 莊平
小林 裕和
登録日 2019-04-05 
登録番号 意匠登録第1630323号(D1630323) 
代理人 秋元 輝雄 
代理人 秋元 正哉 
代理人 吉澤 大輔 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ