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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) D6
管理番号 1351493 
判定請求番号 判定2018-600035
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 判定 
判定請求日 2018-12-19 
確定日 2019-05-27 
意匠に係る物品 平面型ディスプレイ用スタンド 
事件の表示 上記当事者間の登録第1496670号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 甲第3号証の1によって示されたイ号意匠は、登録第1496670号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び理由
1 請求の趣旨
本件判定請求人(以下「請求人」という。)は、甲第3号証の1に示すイ号意匠は、意匠登録第1496670号の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求め、要旨、以下のとおり主張した。

2 請求の理由
(1)判定請求の必要性
請求人は、本件判定請求に係る登録意匠「平面型ディスプレイ用スタンド」(甲第1号証および甲第2号証、以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。
本件判定被請求人(以下「被請求人」という。)が現在販売しているイ号意匠(甲第3号証の1)のFLスタンド(イ号物件)は、本件登録意匠の意匠権を侵害するものであるので、請求人は、平成30年7月9日付でその旨の警告書(甲第4号証)を被請求人に送付した。
これに対して、被請求人は、「イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない」旨主張するので(甲第5号証)、特許庁による厳正中立的な立場からの判定を求めた次第である。

(2)本件登録意匠の手続の経緯
出 願 平成25年6月20日(意願2013-13964)
登 録 平成26年4月 4日(意匠登録第1496670号)

(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は、甲第1号証(以下、「本件公報」という。)の【意匠に係る物品の説明】にあるとおり、「液晶テレビやプラズマテレビといった平面型ディスプレイを支持する」ための「平面型ディスプレイ用スタンド」を意匠に係る物品とし、本件公報の【図面】の実線で示された部分意匠であるところ、その形態の要旨を、次のとおりとする。
すなわち、
ア 基本的な構成態様は、下部にキャスターが取り付けられた左右一対のパイプ部材、該パイプ部材の長手方向後端部同士を略コ字状に連結する横架部材及び該パイプ部材の長手方向後端に連結され且つその先端が下方に向けて略L宇状に伸ばされた左右一対の可動棹からなる「キャスター付き基台」と、横架部材上に立設された「支柱」と、その支柱の中央部に取り付けられAV機器等が載置される「載置台」と、上記の支柱の上部に取り付けられ平面型ディスプレイが取着される「ディスプレイ固定部」とで構成され、本件公報の【図面】の実線で示された「キャスター付き基台」の部分を部分意匠とする。
イ 具体的な構成態様は、上記の可動棹は、上記のパイプ部材の長手方向後端との連結部分を枢軸として水平回動する(動的意匠)。

(4)イ号意匠の説明
イ号意匠は、甲第3号証の1における「70V型 ヨコ設置例」の写真(図)並びに甲第3号証の2における「AV関連機器総合カタログ」との記載によれば、意匠に係る物品が本件登録意匠と同じ「平面型ディスプレイ用スタンド」であると認められる。また、甲第3号証の1で示されたその意匠の形態の要旨は、次のとおりである。
ア 基本的な構成態様は、下部にキャスターが取り付けられた左右一対のパイプ部材、該パイプ部材の長手方向後端部同士を略コ字状に連結する横架部材及び該パイプ部材の長手方向後端に連結され且つその先端が下方に向けて略L字状に伸ばされた左右一対の可動棹からなる「キャスター付き基台」と、横架部材上に立設された「支柱」と、その支柱の中央部に取り付けられAV機器等が載置される「載置台」と、上記の支柱の上部に取り付けられ平面型ディスプレイが取着される「ディスプレイ固定部」とで構成されている。
イ 具体的な構成態様は、上記の可動棹は、上記のパイプ部材の長手方向後端の内側面がわに連結され、その連結部分を枢軸として可動棹が水平回動する(動的意匠)。

(5)本件登録意匠とイ号意匠の比較説明
ア 両意匠の共通点
(ア)両意匠は、意匠に係る物品が「平面型ディスプレイ用スタンド」で一致している。また、本件登録意匠で保護される部分(キャスター付き基台)と、イ号意匠においてこれに相当する部分(キャスター付き基台)とは、その用途及び機能が同一である。
(イ)基本的構成態様において、両意匠とも、下部にキャスターが取り付けられた左右一対のパイプ部材、該パイプ部材の長手方向後端部同士を略コ字状に連結する横架部材及び該パイプ部材の長手方向後端に連結され且つその先端が下方に向けて略L字状に伸ばされた左右一対の可動棹からなる「キャスター付き基台」と、横架部材上に立設された「支柱」と、支柱の中央部に取り付けられAV機器等が載置される「載置台」と、支柱の上部に取り付けられ平面型ディスプレイが取着される「ディスプレイ固定部」とで構成されている。
(ウ)具体的な構成態様において、両意匠とも、パイプ部材の長手方向後端部に連結された可動棹は、その水平部分の長さがパイプ部材の1/3程度の長さであり、パイプ部材との連結部分を枢軸として水平回動する(動的意匠)。

イ 両意匠の差異点
(ア)本件登録意匠は、破線で描かれた支柱の中央部に破線で描かれた4つの円形の切欠きが設けられると共に、破線で描かれた支柱の左右両側面に破線で描かれた略コ字状の把手が設けられているのに対し、イ号意匠は、支柱の中央部の円形の切欠きが1つであり、支柱の左右両側面に把手が取付けられていない。
(イ)本件登録意匠は、破線で描かれたディスプレイ固定部の左右両端部に破線で描かれた縦枠が有るのに対し、イ号意匠にはそのような縦枠が存在しない。
(ウ)本件登録意匠は、可動棹がパイプ部材の長手方向後端に連結されており、その可動棹を回動させて拡げた際に、パイプ部材と可動棹の水平部分とが同軸上に配置されるのに対し、イ号意匠は、可動棹がパイプ部材の長手方向後端部の内側面がわに連結されているため、その可動棹を回動させて拡げた際に、パイプ部材の軸と可動棹の水平部分の軸とが完全な同軸上にはならない。

(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
本件登録意匠の要部は、部分意匠として意匠登録を受けた「キャスター付き基台」の部分であり、とりわけ「パイプ部材の長手方向後端に連結された可動棹が、そのパイプ部材との連結部分を枢軸として水平方向に回動する」ことにより美観が変化する点である。このような可動棹を有する先行周辺意匠が発見されなかったからこそ本件登録意匠が成立しており、この可動棹の形態が、公知意匠にはない新規な創作部分であって、取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分である。
そこで、上記の「イ.両意匠の差異点(ウ)」で示した本件登録意匠における可動棹の取付け位置とイ号意匠における可動棹の取付け位置との違いが両意匠の類否に与える影響について検討すると、これらの違いは「平面型ディスプレイ用スタンド」全体との関係のみならず「キャスター付き基台」の部分全体との関係で見ても、「位置」「大きさ」「範囲」の共通性の中に埋没する程度のものであって、看者である需要者に異なる美感を起こさせるほどのものと言うことはできない。

(7)むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので、請求の趣旨どおりの判定を求める。

3 証拠方法
被請求人の製造・販売するイ号物件が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属することを証明するために甲第1号証乃至第7号証を提出する。
甲第1号証:意匠登録第1496670号公報の写し
甲第2号証:意匠登録第1496670号の意匠登録原簿謄本
甲第3号証の1:被請求人が管理するインターネットホームページ上に掲載の電子カタログにおけるイ号物件掲載ページのコピー
甲第3号証の2:被請求人が管理するインターネットホームページ上に掲載の電子カタログにおける表紙のコピー
甲第3号証の3:被請求人が管理するインターネットホームページ上に掲載の電子カタログにおける奥付のコピー
甲第4号証:請求人が平成30年7月9日付けで発信した警告書の写し
甲第5号証:被請求人が平成30年7月20日付けで発信した回答書の写し

第3 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
被請求人は、甲第3号証の1に示すイ号意匠は、意匠登録第1496670号の登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求め、要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。

2 答弁の理由
(1)答弁の理由の概要
本件判定の対象物として請求されたイ号意匠は、電子カタログ中の掲載頁及びこの掲載された製品の形状を元にして説明されているのは明らかである。この掲載頁のプリントによるイ号意匠の資料は若干不鮮明であり、またこれによる説明には不十分な点、誤りがある。そこで、被請求人から改めて、掲載頁のカラー複写を乙第1号証として、またその詳細を明らかにした図面を乙第2号証として提出してイ号意匠を明らかにして答弁する次第である。なお、乙第2号証は、乙第1号証に示された電子カタログ中の「FLスタンド<スタンダードタイプ>」そのものを図示したもので、訂正あるいは変更してはいないことを付言する。
そこで、イ号意匠と本件登録意匠とを対比するに、全体の形態である基本的構成態様において相違し、また部分意匠である本件登録意匠に係る可動棹の形状、その揺動形態も異なるので、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないのは明らかである。

(2)乙第1号証、乙第2号証によるイ号意匠の説明
イ号意匠は平面型ディスプレイ用スタンドであり、その形態は分節して説明すると以下の通りである。
a-1.下部の前後端にキャスターが取り付けられた前後方向に沿う左右一対のパイプ部材、このパイプ部材の後端側の相互間を連結する横架部材があって、パイプ部材・横架部材の交差部に設けた後述する軸支プレートに可動棹を水平方向に揺動自在に軸支してあり、
a-2.横架部材上に立設された左右一対の支柱があって、この支柱相互間の約下半分部分に背板が固定されていて、この背板には2個の円形孔が開口されており、
a-3.支柱の下部側に、左右縁部に側面三角形状の側片が設けられている載置台(棚板)が設けられており、
a-4.支柱の上部に設けた支持部(モニター金具受け)に、水平方向に沿って上下で対状にし、また直立方向に沿って左右で対状に配置した支持材から正面井桁状を呈するディスプレイ固定部(モニターブラケット受け・モニターブラケット)があり、
b-1.前記パイプ部材の後端及び横架部材の交差部における後部側に、面取り縁によってほぼ五角形を呈する前記の軸支プレートが連結されており、
b-2.この軸支プレートを揺動支点として水平方向に揺動自在に可動棹を支承してあって、この可動棹は、軸支プレートに揺動自在に支承されている水平部分、設置面にアジャスタを介して接地される垂直部分、これらの水平部分、垂直部分をつなぐ傾斜状の傾斜部分から側面から見て倒〔状の亀甲形を呈しており、
b-3.この可動棹は、軸支プレートを揺動支点としてパイプ部材に当接する位置で後方に延びる位置と、横架部材に沿って当接するよう側方に延びる位置との間で揺動し、かつそれぞれの位置で固定されるよう軸支プレート上から挿入する固定用ツマミを備えており、
b-4.側方に位置させた可動棹と横架部材との間には可動棹側面に固定した緩衝小突部が配置されている。
なお、これは電子カタログ中に掲載している取扱説明書における製品紹介、梱包部品の図示例(乙第3号証)からも明らかであり、請求人においても電子カタログ中でアクセスすることで容易に入手可能な資料である。

(3)本件登録意匠の説明
判定請求書によれば、本件登録意匠の説明としてA.基本的な構成態様として「キヤスター付き基台」、「支柱」、「載置台」、「ディスプレイ固定部」から成ること、B.具体的な構成態様として前記の可動棹は、基台におけるパイプ部材の長手方向後端との連結部分を枢軸として水平回動する(動的意匠)としている。
そこで、上述したイ号意匠との対比を容易にするため、本件登録意匠を更に分節して説明すると、以下の通りである。
A-1.下部の前後端にキャスターが取り付けられた前後方向に沿う左右一対のパイプ部材、このパイプ部材の後端側の相互間を連結する横架部材があって、パイプ部材の後端に水平方向に揺動自在にした可動棹を軸支してあり、
A-2.横架部材上に立設された左右一対の支柱があって、この支柱の中央部には左右にコ字状のハンドルが付設されていると共に、約3/5程度の高さを有する背板が固定されていて、この背板には4個の円形孔が開口されており、
A-3.支柱の下部側に、下面に支えがある平坦面状の載置台が設けられており、
A-4.支柱の上部には、この上部に設けた支持ベースに、水平方向に沿って上下で対状にした上下支持材と、この上下支持材の端部左右で垂直方向に沿って連結した左右支持材とから長方形枠状を呈するディスプレイ固定部が固定されており、
B-1.(イ号意匠のb-1に相当する軸支プレートは存しない)、
B-2.パイプ部材の後端を揺動支点として水平方向に揺動自在に可動棹を軸支してあって、この可動棹は側面から見てL字状に形成されており、
B-3.この可動棹は、パイプ部材の後端後方に延びる位置と、横架部材に当接して側方に延びる位置との間で揺動し、
B-4.(イ号意匠のb-3に相当する固定ツマミによる仮止め構造、b-4に相当する緩衝小突部は存しない)。

(4)イ号意匠と本件登録意匠との対比
ア 基本的構成態様
イ号意匠、本件登録意匠は共に物品が平面型ディスプレイスタンドに係るところ、「キャスター付き基台」、「支柱」、「載置台」、「ディスプレイ固定部」から成るも、両者間ではキャスター付き基台における可動棹、支柱、載置台、ディスプレイ固定部それぞれにおいて形状が異なり、物品全体の形態においても類似しない。

イ 基本的構成態様においての差異点
キャスター付き基台における可動棹につき、イ号意匠では、パイプ部材・横架部材の交差部に設けた軸支プレートに可動棹を軸支してあるのに対し、本件登録意匠では、パイプ部材の後端に可動棹を軸支してある。すなわち、本件登録意匠にはない軸支プレートがイ号意匠では設けられており、揺動支点が異なることからも一見しても共通する美感は生じない。なお、可動棹についての差異については更に後述する。
支柱につき、イ号意匠では、左右の支柱の間に設けた背板の円形孔は2個であり、また左右側方に出張るハンドルはないのに対し、本件登録意匠では背板の円形孔は4個であり、左右側方にハンドルが突設されている。これらの差異も、共通する印象は生ぜず、一見しても異なる美感を呈する。
載置台につき、イ号意匠では、左右縁部に側面三角形状の側片が設けられているのに対し、本件登録意匠では、平坦面状に形成されている。すなわち、イ号意匠は前記背板と共に載置面を囲むような枠状に形成されていることで載置した物品の脱落を阻止できるようになっているのに対し、本件登録意匠は載置した物品の脱落防止は考慮されていないことで安全性・安定性に欠けるといえ、これらの形状の相違は需要者に異なる美感を印象づける。
ディスプレイ固定部につき、イ号意匠では、正面から見て支持材が井桁状を呈するのに対し、本件登録意匠では、長方形枠状を呈するから、共通する美感は全く存しない。
以上のように、基本的構成態様とする構成各部では、イ号意匠と本件登録意匠とでは異なる美感を生じさせることは明らかである。

ウ 具体的構成態様
ところで、本件登録意匠は部分意匠であり、その意匠として登録を受けた部分は基本的構成態様中の請求人が説明するところの「キャスター付き基台」部分である。そして、判定請求書によれば、これが本件登録意匠の要部であるとし、「パイプ部材の長手方向後端に連結された可動棹が、そのパイプ部材との連結部分を枢軸として水平方向に回動する」ことで美感が変化する点であり、また、可動棹の形態が公知意匠にはない新規な創作部分であって、取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分である、とする。
そこで、可動棹の形態につき、イ号意匠と本件登録意匠とを対比すると以下の通りである。
なお、いわゆるキャスター付き基台におけるパイプ部材、横架部材はこの種のスタンドにおいて極めてありふれた形状、形態であり、類否判断では大きな割合を占めるものではない。
しかして、可動棹の軸支部位置につき、イ号意匠では、パイプ部材の後端及び横架部材の交差部における後部側にほぼ五角形を呈する軸支プレートが連結されていて、この軸支プレートに可動棹が軸支されているのに対し、本件登録意匠では、パイプ部材の後端に直接に可動棹が軸支されている。したがって、両意匠は軸支プレートの有無によってその美感は顕著に異なることは明らかである。この点につき、判定請求書によるイ号意匠についての説明は、本件登録意匠と同様に「パイプ部材との連結部分を枢軸として水平回動する」(判定請求書第4頁第14行目)としているが明らかな誤りである。
可動棹自体の形状につき、イ号意匠では、側面から見て倒〔状の亀甲形を呈しているのに対し、本件登録意匠では、略L字状に伸ばされている。したがって、両者は一見して異なる美感が印象づけられるのは明らかであり、共通する印象は全くない。このような可動棹の形状についても、判定請求書によるイ号意匠についての説明は、本件登録意匠と同様に「その先端が下方に向けて略L字状に伸ばされた」(判定請求書第4頁第7行目)としているが、これも同様に明らかな誤りである。
可動棹の揺動形態につき、イ号意匠では、前記の軸支プレートに揺動自在に軸支されていて、パイプ部材に当接する位置で後方に延びる位置と、横架部材に沿って当接するよう側方に延びる位置との間で揺動し、かつそれぞれの位置で固定されるよう軸支プレート上から挿入する固定用ツマミを備えているのに対し、本件登録意匠では、パイプ部材の後端に軸支されていることから、後方に伸ばされた位置ではパイプ部材と同一軸線上になり、横架部材側に折り畳まれるよう収納した状態の位置では横架部材に当接して重なり状になる。したがって、イ号意匠の可動棹の揺動態様は本件登録意匠のそれとは懸絶しており、しかもイ号意匠では本件登録意匠にはない固定ツマミが採用されていることでその揺動操作作業も全く異なり、これらの間には共通する美的印象は存しないのは明らかである。この点につき、判定請求書によるイ号意匠についての説明は、「可動棹がパイプ部材の長手方向後端部の内側面側に連結されているため、その可動棹を回動して拡げた際に、パイプ部材の軸と可動棹の水平部分の軸とが完全な同軸上にはならない」(判定請求書第4頁第27行目から第5頁第1行目まで)とするが、不十分な説明、判断である。
また、イ号意匠では可動棹側面に緩衝小突部が配置されているのに対し、本件登録意匠ではこれがないので、この点でも両者は異なる。
以上説明したように、請求人が主張する、本件登録意匠における新規な創作部分であって取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分である、とする可動棹の形態にあっては、イ号意匠では本件登録意匠とは異なる機能的形態に基づく美的処理が施されていることで、一見しても全く別の美感を感じさせるから、イ号意匠は本件登録意匠と類似しないことは明らかである。

(5)部分意匠類否判断について
本件登録意匠は部分意匠であるところ、これに基づく類否判断は、(ア)意匠に係る物品、(イ)部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の機能・用途、(ウ)その物品全体の中に占める部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の位置、大きさ、範囲、(エ)部分意匠として意匠登録を受けようとする部分自体の形態、等の要素を総合的に判断して決定するとされている。また、部分意匠制度は、独創的で特徴ある部分を摸倣しながら全体としては非類似の意匠を実施することで、全体意匠に係る意匠権の侵害を避けることが可能であった点を防止するものとして、特徴ある部分のみの登録を認めるとしたのである。
したがって、部分意匠としての類否を判断する場合、全体意匠としての形態の対比もさることながら、保護されるべき部分としての形態の類否が検討されなければならないのは当然のことである。すなわち、物品における部分としての位置、大きさ、範囲を元にその部分における相互間の類否を判断することなく、全体の類否を論ずべきではないのである。
とすれば、イ号意匠と本件登録意匠とを対比するにつき、上述したように破線で示された全体の基本的構成態様において、対比される個々の構成部分が顕著に相違していることも明らかである。しかも、実線で示された意匠の要部として認められ得る部分意匠としての本件登録意匠である、いわゆるキャスター付き基台部分につき、上述したように可動棹の揺動支点形状、可動棹自体の形状、揺動形態等において両者は共通点と認められる形態は全くない。そればかりでなく、顕著といえるほどの差異点が明瞭に認識されるのであり、その機能に基づく美的処理、その美感は全く異なるから、イ号意匠は本件登録意匠及びその類似意匠の範囲に属しないのは明らかである。
したがって、請求人が判定請求書第5頁21行目乃至第26行目に記載するように、「可動棹の取付け位置との違いが両意匠の類否に与える影響について検討するに、これらの違いは『平面型ディスプレイスタンド』全体との関係のみならず、『キャスター付き基台』の部分全体との関係で見ても、『位置』『大きさ』『範囲』の共通性の中に埋没する程度のものであって、看者である需要者に異なる美感を起こさせ」ないとの主張は理解できない。

(6)結論
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないので、答弁の趣旨の通りの判定を求める次第である。

3 証拠方法
乙第1号証:被請求人が管理するインターネットホームページ上に掲載の電子カタログにおいて、請求人がイ号意匠とする「FLスタンド<スタンダードタイプ>」のカラー複写
乙第2号証:同じく電子カタログ掲載の「FLスタンド<スタンダードタイプ>」図面(本件意匠と同様に、可動棹を含むキャスター付き基台を実線で表示し、支柱、載置台、ディスプレイ固定部を破線で表示すると共に、可動棹の収納状態をも示す)
乙第3号証:同じく電子カタログ掲載の「FLスタンド<スタンダードタイプ>」の取扱説明書の複写(抄)

第4 請求人の弁駁
1 弁駁の趣旨
請求人は、請求の趣旨どおりの判定を求め、被請求人の答弁に対し、要旨以下のとおり主張した。

2 答弁書に対する弁駁
(1)不適切な証拠に基づく答弁
本件判定請求に対する被請求人からの判定請求答弁書(以下、「本件答弁書」ともいう。)によれば、本件判定の対象物として請求されたイ号意匠に関する甲第3号証の1は「若干不鮮明であり、これによる(請求人の)説明には不十分な点、誤りがある」として、甲第3号証の1に相当する乙第1号証を提出するのに加え、乙第2号証としてイ号意匠の詳細を明らかにしたとされる図面を提出し、これらの証拠に基づいてイ号意匠と本件登録意匠とは、「全体の形態である基本的構成態様において相違し、また部分意匠である本件登録意匠に係る可動棹の形状、その揺動形態も異なるので、イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないのは明らかである。」(本件答弁書第2頁第23行目乃至第26行目)としている。
ここで、新たに提出された上記の乙各号証に関して、本件答弁書には「なお、乙第2号証は、乙第1号証に示された電子カタログ中の『FLスタンド<スタンダードタイプ>』そのものを図示したもので、証正あるいは変更していないことを付言する。」(本件答弁書第2頁第20行目乃至第22行目)とある。
そこで、本件答弁の際に新たに提出された各証拠について検討すると、乙第2号証からは、本件答弁書の第3頁第22行目乃至第23行目に「b-4.側方に位置させた可動棹と横架部材との間には可動棹側面に固定した緩衝小突部が配置されている」と記載された「緩衝小突部」が認められる。
しかしながら、乙第1号証からはそのような「緩衝小突部」が全く視認できない。例えば、乙第3号証の第3頁上段の「■『レッグ』の後ろ脚を広げる」とタイトル付けれた図のうち、右側の「2.」図の引出線によって「後ろ脚」と記された可動棹の内側側面に「緩衝小突部」が視認できることを鑑みれば、少なくとも乙第1号証の「背面側の脚を折りたたみ可能」とタイトル付けられた図のうち、上段の可動棹部分を拡大した図でも引出線で「調整可能なアジャスター」と記された可動棹の内側側面の該当部分に「緩衝小突部」が視認できて然るべきである。
さらに云えば、被請求人は本件答弁書において、「なお、これ(注:緩衝小突部)は電子カタログ中に記載している取扱説明書における製品紹介、梱包部品の図示例(乙第3号証)からも明らかであり、判定請求人においても電子カタログ中でアクセスすることで容易に入手可能な資料である。」(本件答弁書第3頁第25行目乃至第27行目)と言及しているが、乙第3号証の第2頁の「製品紹介」、「梱包部品」の何れの図示例からも「緩衝小突部」は視認できない。

(2)意匠の類否判断について
仮に「乙第2号証は、乙第1号証に示された電子カタログ中の『FLスタンド<スタンダードタイプ>』そのものを図示したもので、訂正あるいは変更していない」ものであるならば、乙第1号証で示されるイ号意匠と乙第2号証で示されるイ号意匠とは完全に一致したものとなる。そうすると、片や乙第1号証では視認出来ず、片や乙第2号証では視認出来るような「緩衝小突部」など、看者である取引者・需要者の注意を引くようなものとは云えず、本件登録意匠とイ号意匠との間の類否判断に何ら影響を及ぼすものではない。
また、被請求人は、この「緩衝小突部」の他にも「軸支プレート」、「倒〔状の亀甲形」、「固定用ツマミ」と言った可動棹における細かな形態の違いに加え、基本的構成態様における「背板の円形孔の数」や「載置台」等々の形態の違いについて縷々述べると共に、「イ号意匠では本件登録意匠とは異なる機能的形態に基づく美的処理が施されていることで、一見しても全く別の美感を感じさせるから、イ号意匠は本件登録意匠と類似しないことは明らかである。」(本件答弁書第7頁第7行目乃至第9行目)と主張している。このような主張は、本件登録意匠の出願前に可動棹を備えたキャスター付き基台からなる平面型ディスプレイ用スタンドの公知意匠が存在していた場合には、傾聴する余地は有ったであろう。しかしながら、本件判定請求書でも述べているように、本件登録意匠のような可動棹を有する先行周辺意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前に発見されていない。
ところで、意匠の類否判断は、肉眼をもってする間接対比観察であって、全体観察による総合判断である(=意匠の全体観察)。このため、「部分的に違う点はあっても、全体として似ておれば類似するといわれている」(高田忠著『意匠』(有斐閣、1969年)154頁)。加えて、本件登録意匠は、上述の通り、動的意匠であることから「その動作の中の基本的な姿勢が類似すれば動作が突飛なものでない限り全体として類似の傾向を強める」(高田忠著『意匠』(有斐閣、1969年)201頁)。
したがって、これらの点も考慮すれば、本件判定請求書でも述べたとおり、先行資料が存在しない新規な形態要素であるキャスター付き基台の可動棹が本件登録意匠の要部であり、本件登録意匠とイ号意匠との形態の違いが有ったとしても、それらの違いは、その可動棹が与える共通の美感を凌駕するほどのものではなく、本件登録意匠とイ号意匠とは類似するものである。
さらに別の観点から云えば、部分意匠制度とは、本件答弁書の第7頁第18行目乃至第21行目でも指摘されているように、「独創的で特徴ある部分を取り入れつつ意匠全体での侵害を避ける巧妙な模倣」に対応することを目的に導入された制度である。
繰り返しになるが、本件登録意匠において取引者・需要者の最も注意を惹きやすい意匠の要部は、「部分意匠として意匠登録を受けた『キャスター付き基台』の部分であり、とりわけ『パイプ部材の長手方向後端に連結された可動棹が、そのパイプ部材との連結部分を枢軸として水平方向に回動する』ことにより美観が変化する点」(判定請求書第5頁第4行目乃至第7行目)、つまり「可動棹それ自体」である。

(3)結論
よって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するので、弁駁の趣旨の通りの判定を求める次第である。

第5 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「平面型ディスプレイ用スタンド」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下、「本件意匠部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

(1)意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は、「平面型ディスプレイ用スタンド」である。

(2)本件意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
本件意匠部分は、平面型ディスプレイ用スタンドにおけるキャスター付き基台部分であって、フレーム部により平面型ディスプレイ用スタンドの全体を支え、キャスターにより移動可能とし、フレーム部後端に取り付けられた可動棹によって壁から離れた場所に設置する際の安定性を向上させる用途及び機能を有するものである。

(3)本件意匠部分の形態
本件登録意匠部分の形態は、主に以下の点が認められる。

ア 全体の基本構成について、キャスター付き基台部の後方左右に、水平方向に揺動可能な略L字型の可動棹が取り付けられている。
イ 基台部は、下部の前後端にキャスターが取り付けられた左右一対のパイプ部材と、そのパイプ部材の長手方向後端側を平面視コ字状に連結する横架部材から構成されている。
ウ パイプ部材は、断面正方形の柱状である。
エ 横架部材は、正面視してパイプ部材よりも縦幅が短い偏平四角柱状で、パイプ部材と段差を設けて取り付けられている。
オ 可動棹は、断面コの字状の水平部材の端部に偏平四角柱状垂直部材が直角に接合され、その偏平四角柱状部材の下方に円盤状アジャスターが設けられている。
カ 可動棹は、パイプ部材の長手方向後端との連結部分を揺動支点として、パイプ部材の長手方向後方に延びる位置と、横架部材に当接して側方に延びる位置との間で水平回動し、可動棹がパイプ部材の長手方向後方に伸ばされた位置では、可動棹とパイプ部材は同一軸線上となる。

2 イ号意匠
本件判定請求の対象であるイ号意匠は、判定請求書と同時に提出された甲第3号証の1(別紙第2参照)で示されたものであって、商品名を「FLスタンド<スタンダードタイプ>」と称する「平面型ディスプレイ用スタンド」であり、その形態を甲第3号証の1における各図に現されたとおりとしたものである。
なお、被請求人は、請求人により提出された甲第3号証の1と同一の電子カタログの複写である乙第1号証に加えて、乙第2号証及び乙第3号証も合わせてイ号意匠を認定し、本件登録意匠と対比した上で、イ号意匠は本件登録意匠とは非類似である旨主張するが、乙第2号証及び乙第3号証に記載された各図に表された緩衝小突部や底面視の形態は、甲第3号証の1及び乙第1号証の各図にはみられず、乙第2号証及び乙第3号証に示された意匠と、甲第3号証の1及び乙第1号証に示された意匠は同一とはいえないことから、当審においては、甲第3号証の1に基づき、以下イ号意匠の認定を行う。
また、イ号意匠において本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分を「イ号意匠相当部分」とし、本件意匠部分及びイ号意匠相当部分をあわせて「両意匠部分」として、以下記載する。

(1)意匠に係る物品
イ号意匠の意匠に係る物品は、「平面型ディスプレイ用スタンド」である。

(2)イ号意匠相当部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
イ号意匠相当部分は、平面型ディスプレイ用スタンドにおけるキャスター付き基台部分であって、フレーム部により平面型ディスプレイ用スタンドの全体を支え、キャスターにより移動可能とし、フレーム部後端に取り付けられた可動棹によって壁から離れた場所に設置する際の安定性を向上させる用途及び機能を有するものである。

(3)イ号意匠相当部分の形態
イ号意匠相当部分の形態は、主に以下の点が認められる。

ア 全体の基本構成について、キャスター付き基台部の後方左右に、水平方向に揺動可能な略L字型の可動棹が取り付けられている。
イ 基台部は、下部の前後端にキャスターが取り付けられた左右一対のパイプ部材と、そのパイプ部材の長手方向後端寄りを平面視略コ字状に連結する横架部材から構成されており、平面視において横架部材より上方に突出したパイプ部材を視認することができる。
ウ パイプ部材は、断面正方形の柱状である。
エ 横架部材は、正面視してパイプ部材と縦幅が同じ偏平四角柱状で、パイプ部材と段差を設けずに同一面状に取り付けられている。
オ 可動棹は、水平部と、垂直部と、これら水平部及び垂直部に対して45度傾斜した傾斜部から構成され、水平部、傾斜部、垂直部は一体として成形されており、垂直部の下方に円盤状アジャスターが設けられている。
カ 可動棹は、パイプ部材と横架部材の交差部に設けられた略五角形板状の軸支プレートを揺動支点として、パイプ部材に当接する位置で後方に延びる位置と、横架部材に沿って当接するよう側方に延びる位置との間で水平回動し、それぞれの位置では、軸支プレート上から挿入する固定用ツマミにより固定される。可動棹がパイプ部材の長手方向後方側に伸ばされた位置では、可動棹はパイプ部材の内側に当接し、パイプ部材とは同一軸線上とはならない。

3 対比
(1)意匠に係る物品の対比
両意匠の意匠に係る物品は「平面型ディスプレイ用スタンド」であり、意匠に係る物品が一致する。

(2)両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の対比
両意匠相当部分は、いずれも平面型ディスプレイ用スタンドにおけるキャスター付き基台部分であって、フレーム部により平面型ディスプレイ用スタンドの全体を支え、キャスターにより移動可能とし、フレーム部後端に取り付けられた可動棹によって物品全体の安定性を向上させる用途及び機能を有するものであり、用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が一致する。

(3)両意匠部分の形態の対比
ア 両意匠部分の形態の共通点
(共通点1)両意匠部分は、全体の基本構成について、キャスター付き基台部の後方左右に、水平方向に揺動可能な略L字型の可動棹が取り付けられている点において共通する。
(共通点2)両意匠部分は、基台部が、下部の前後端にキャスターが取り付けられた左右一対のパイプ部材と、そのパイプ部材の長手方向後端側を平面視略コ字状に連結する横架部材から構成されている点において共通する。
(共通点3)両意匠部分は、パイプ部材が、断面正方形の柱状である点において共通する。
(共通点4)両意匠部分は、可動棹の垂直部材の下方に円盤状アジャスターが設けられている点において共通する。

イ 両意匠部分の形態の相違点
(相違点1)本件意匠部分の基台は、平面視において横架部材の上方に突出するパイプ部材は可動棹に隠れて視認できないのに対し、イ号意匠相当部分の基台は、平面視において横架部材の上方に突出するパイプ部材が視認できる点において、両意匠部分は相違する。
(相違点2)本件意匠部分の横架部材は、正面視してパイプ部材よりも縦幅が短い偏平四角柱状で、パイプ部材と段差を設けて取り付けられているのに対し、イ号意匠相当部分の横架部材は、正面視してパイプ部材と縦幅が同じ偏平四角柱状で、パイプ部材と段差を設けずに同一面状に取り付けられている点において、両意匠部分は相違する。
(相違点3)本件意匠部分の可動棹は、水平部材の端部に偏平四角柱状垂直部材が直角に接合されているのに対し、イ号意匠相当部分の可動棹は、水平部と、垂直部と、これら水平部及び垂直部に対して45度傾斜した傾斜部から構成され、水平部、傾斜部、垂直部は一体として成形されている点において、両意匠部分は相違する。
(相違点4)本件意匠部分の可動棹は、パイプ部材の長手方向後端との連結部分を揺動支点として、パイプ部材の長手方向後方に延びる位置と、横架部材に当接して側方に延びる位置との間で水平回動し、パイプ部材の長手方向後方に伸ばされた位置では可動棹とパイプ部材と同一軸線上となるのに対し、イ号意匠相当部分の可動棹は、パイプ部材と横架部材の交差部に設けられた略五角形状の軸支プレートを揺動支点として、パイプ部材に当接する位置で後方に延びる位置と、横架部材に沿って当接するよう側方に延びる位置との間で水平回動し、それぞれの位置では、軸支プレート上から挿入する固定用ツマミにより固定され、パイプ部材の長手方向後方側に伸ばされた位置では、可動棹とパイプ部材と同一軸線上とはならない点において、両意匠部分は相違する。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の評価
両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は同一である。

(3)両意匠部分の形態の評価
ア 共通点の評価
共通点1について、本件登録意匠出願前にこの種物品分野において、キャスター付き基台部の後方左右に、水平方向に揺動可能に取り付けられた略L字型の可動棹はみられないことから、需要者は共通点1について注目するものといえるが、需要者は可動棹の存在自体やその概括的な形状だけでなく、その具体的な形態及び基台との連結態様についても着目するものであるから、共通点1が両意匠部分全体の美感に与える影響は、一定程度にとどまる。
共通点2について、この種物品分野において、一般的にみられ特徴的なものとはいえないから、需要者の注意をさほど引くものではなく、共通点2が両意匠部分全体の美感に与える影響は小さい。
共通点3について、この種物品において基台部のパイプ部形状として断面正方形の柱状のものは一般的であり、特徴的なものとはいえないから、需要者の注意をさほど引くものではなく、共通点3が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
共通点4について、垂直部材の下方に円盤状アジャスターが設けられている点については、転倒防止用支持部材においてはありふれていることから、需要者の注意をさほど引くものではなく、共通点4が両意匠部分全体の美感に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
相違点1及び2について、両意匠部分の横架部材が組み込まれた基台部は、ありふれた形態であって需要者が注目するものではない上に、イ号意匠相当部分の平面視における横架部材上方へのパイプ部材の突出の程度並びに両意匠部分の横架部材の形状の相違及びパイプ部材との段差の有無は僅かな違いに過ぎないことから、相違点1及び2が両意匠部分全体の美感に与える影響は小さい。
相違点3について、両意匠部分の可動棹はこの種物品分野において特徴的であってその形態について需要者が着目するものであるところ、本件意匠部分の可動棹は水平部材と垂直部材が垂直に組み合わされているのに対し、イ号意匠相当部分の可動棹は水平部と垂直部の間に、これら水平部及び垂直部に対して45度傾斜した傾斜部が設けられており、この傾斜部はイ号意匠相当部分の可動棹全体の中で大きな部分を占め目立つものであって、この傾斜部の有無によって、両意匠の可動棹の視覚的印象は大きく異なる。これに加え、両意匠部分の可動棹は、異なる部材を接合して成形されているか(本件意匠部分)、水平部、傾斜部及び垂直部の全体が一体に成形されているか(イ号意匠相当部分)についても大きく異なる。したがって、両意匠部分は、可動棹の美感に大きな差異があるといえ、相違点3が両意匠部分全体の美感に与える影響は大きい。
相違点4について、イ号意匠のパイプ部材と横架部材の交差部に設けられた略五角形板状の軸支プレート及び固定用ツマミは、需要者が可動棹部分を観察する際に目に付きやすい位置にあることから、軸支プレート及び固定用ツマミの有無は、需要者の注意を引くものである。また、可動棹をパイプ部材の長手方向後方側に伸ばさされた方向に固定する場合の可動棹の位置が、パイプ部材と同一軸線上となるか(本件意匠部分)、パイプ部材に当接する位置でパイプ部材とは同一軸線上とならないか(イ号意匠相当部分)は、パイプ部材との連続性の有無という大きな視覚的印象の違いを生じさせている。したがって、両意匠部分は、可動棹と基台との連結部の美感に大きな差異があるといえ、相違点4が両意匠部分全体の美感に与える影響は大きい。

類否判断
両意匠部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠部分全体として総合的に観察した場合、両意匠部分は、上記共通点1の評価のとおり、キャスター付き基台部の後方左右に、水平方向に揺動可能に取り付けられた略L字型の可動棹の存在が需要者の注意を一定程度引くものの、上記相違点3及び相違点4の評価のとおり、その可動棹の具体的形態及び可動棹と基台との連結部の形態において大きく相違することから、両意匠部分は可動棹及び可動棹と基台との連結部において美感に大きな差異があり、両意匠部分全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲についても同一であるが、両意匠部分の形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

5 むすび
以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。

判定日 2019-05-17 
出願番号 意願2013-13964(D2013-13964) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (D6)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 松下 香苗 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 木村 智加
江塚 尚弘
登録日 2014-04-04 
登録番号 意匠登録第1496670号(D1496670) 
代理人 原田 寛 
代理人 森 義明 
代理人 中村 政美 
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