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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M2
管理番号 1353226 
審判番号 不服2019-2156
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-15 
確定日 2019-07-01 
意匠に係る物品 湯水混合水栓 
事件の表示 意願2017- 18840「湯水混合水栓」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成29年8月31日の意匠登録出願であって、平成30年6月29日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年8月10日に意見書が提出されたが、平成30年11月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年2月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「湯水混合水栓」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」、本願意匠とあわせて「両意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
引用意匠は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成17年4月4日)に記載された、意匠登録第1234808号(意匠に係る物品、湯水混合水栓)の意匠であり、その形態は、同公報に記載されたとおりのものであり、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分を、本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。

第4 対比

1 意匠に係る物品の対比
両意匠の意匠に係る物品は、いずれも、本体部、吐水部、操作用のハンドル及び配管接続用のクランクから成る「湯水混合水栓」であり、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。

2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分は、一体的に構成された、本体部、吐水部、及び配管接続用のクランクを覆う筐体の上半部であって、内部機構を保護する用途及び機能を持つものであるのに対して、引用部分は、本体部の筐体であって、内部機構を保護する用途及び機能を持つものである。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
本願部分は、一体的に構成された、本体部、吐水部及び配管接続用のクランクを覆う筐体の前面、上面及び両側面の上側略半分であって、正面視して、上下幅の約5分の3で、平面視して、前端から後端付近までを占める大きさ及び範囲であるのに対し、引用部分は、本体部の前面、上面及び側面であって、前端から後端の略中央に位置し、正面視して、上下幅の約3分の1で、平面視して、前端から後端までの約3分の1弱の大きさ及び範囲である。

4 両部分の形態の対比
(1)両部分の形態の共通点
(共通点1)両部分は、前面を半円弧状とし、水平な上面と垂直な両側面から成る点で共通する。
(2)両部分の形態の相違点
(相違点1)本願部分の構成比が、平面視して、縦横が約1対1.7で、正面視して、縦横が約1対4.2であるのに対し、引用部分は、平面視して、縦横が約1対2.3で、正面視して、縦横が約1対3.2である点で、両部分は相違する。
(相違点2)本願部分が、薄板状の部材で構成されているのに対して、引用部分が、継ぎ目のない単一の部材で構成されている点で両部分は相違する。
(相違点3)本願部分の正面は、下端に僅かに余地部を残して水平な分割線を形成し、上下方向に半円弧状の湾曲面を成し、左右中央を底面の前面寄りに位置する吐水口を略円弧状に囲むように膨出させた垂直面としているのに対し、引用部分は、全体を上下方向に半円弧状の湾曲面としている点で、両部分は相違する。
(相違点4)本願部分の両側面は、後端からハンドル部にかけて水平な分割線を形成し、当該分割線は、上端からハンドル径の約2分の1の位置に表れるのに対して、引用部分は、分割線を有さない点で、両部分は相違する。

第5 判断

1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するから、同一である。

2 両部分の用途及び機能の類否判断
両部分は、内部機構を保護する用途及び機能を持つものであって、主たる用途及び機能が共通するから、両部分の用途及び機能は、類似する。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
本願部分は、一体的に構成された、本体部、吐水部及び配管接続用のクランクを覆う筐体の上半部であるのに対して、引用部分は、前端側の吐水部と後端側の配管接続用のクランクの中間に位置する本体部のみの筐体であることから、両部分の位置、大きさ及び範囲は大きく相違しており、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲は一致しない。

4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価
(1)両部分の形態の共通点
共通点1は、両部分の、前面、上面、及び両側面の形態に関するものであるが、同様の形態は、この種物品の本体部には極普通にみられるものであるから、共通点1が部分全体の美感に与える影響は小さい。

(2)両部分の形態の相違点
相違点1の構成比は、本願部分が、扁平で奥行きのある印象のものであるのに対して、引用部分は、厚みがあって奥行きのない印象のものであるから、両部分は全体の基本的な構成が大きく相違していて視覚的印象が明確に異なるから、相違点1が部分全体の美感に与える影響は大きい。
相違点2ないし4における具体的な形態は、本願部分が、正面下端に分割線を形成しつつ中央に垂直面として円弧状の膨出部を設け、両側面に分割線を形成しており、薄板で構成された視覚的印象を有する筐体の上半部カバーとの印象のものであるのに対して、引用意匠は、分割線等がなく、単一部材で形成された視覚的印象を有する本体部との印象のものであるから、相違点2ないし4が部分全体の美感に与える影響は大きい。

5 両意匠の類否判断
両部分の共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、本願部分が、一体的に構成された、本体部、吐水部及び配管接続用のクランクを覆う筐体の上半部であるのに対して、引用部分は、吐水部及び配管接続用のクランク部とは別個に構成された本体部であって、両部分は、位置、大きさ及び範囲が一致せず、全体の構成比や具体的な形態についても相違することから、視覚的印象にも大きな差異があり、両部分は全体として美感に大きな差異があるといわざるを得ないものである。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であって、両部分の用途及び機能が類似するものの、両部分の位置、大きさ及び範囲が一致せず、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第6 むすび

以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-06-18 
出願番号 意願2017-18840(D2017-18840) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (M2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樫本 光司 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 温品 博康
佐々木 朝康
登録日 2019-07-12 
登録番号 意匠登録第1638206号(D1638206) 
代理人 前田 大輔 
代理人 中村 知公 
代理人 朝倉 美知 
代理人 小西 富雅 
代理人 伊藤 孝太郎 

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