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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D9 |
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管理番号 | 1354981 |
審判番号 | 不服2019-3796 |
総通号数 | 238 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-20 |
確定日 | 2019-08-26 |
意匠に係る物品 | 家具用配線具 |
事件の表示 | 意願2017- 20624「家具用配線具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年(2017年)9月21日の意匠登録出願であって、平成30年7月19日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月5日に意見書が提出されたが、同年12月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成31年3月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、その意匠は、意匠に係る物品を「家具用配線具」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることができない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2017年8月18日に受け入れたカタログ、Concepts+Solutions in Furniture Hardware 第13頁所載の「机用配線カバー」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC29500518号)であって、その形態は、同カタログに記載されたとおりとしたものであり、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分を、本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)としたものである(別紙第2参照)。 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「家具用配線具」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「机用配線カバー」であるが、いずれもオフィスデスク等の天板に設けた配線用孔に嵌め込むようにして取り付ける本体の部分と、本体の開口部をカバーするキャップの部分からなる配線具であって、コードやケーブルを整理して配線することができるものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するものである。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれもキャップにおけるケーブル類を通すための切り欠き部分を除いた部分であり、本体の開口部を塞ぐことができる部分であるから、両部分の用途及び機能は、一致するものである。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は、いずれも配線具の本体上面部分に位置し、キャップ全体から切り欠き部分を含む平面視四分円の部分を除いた部分であるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は、一致するものである。 4 両部分の形態の対比 両部分の形態を対比する(なお、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめることとする。)と、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)両部分は、配線用孔に嵌め込む本体と本体の開口部をカバーするキャップからなる家具用配線具のキャップの部分であるところ、両部分は、部分全体の形態であるキャップの形態が、本体の開口部を覆う板状体の部分(以下「上面板部」という。)、及び上面板部の底面側に形成された本体と嵌合する部分(以下「嵌合部」という。)を一体的に形成した構成である点で共通する。 (共通点2)両部分は、上面板部の形態を、平面視が略U字状の切り欠き部分が形成された四分円の部分を除いた、円形の約3/4を占める略扇形状とし、その中心角の部分を略円弧状に形成した薄い板状体としたものであって、平坦な上面部分と垂直な外側面部分の角部を断面視円弧状に形成している点で共通する。 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)本願部分の嵌合部の形態及びその配置態様が、その下端部を断面視略L字状になるように外側に向けて折曲した、底面視略円弧状の横長湾曲板状体を、本体開口部の内側面に接する位置に、対向して2つ配設しているのに対し、引用部分の嵌合部の形態及びその配置態様が、上面板部より一回り小さな略扇形状の肉厚な板状体を、その外周部分が本体開口部の内側面に接するように配設している点で、両部分は相違する。 (相違点2)本願部分の上面板部の外周部分の形態が、略U字状の切り欠き部分を除いた部分を下方に湾曲させて、底面部に凸状の突出部分(以下「外周凸部」という。)を、底面視略C字状になるように形成しているのに対し、引用部分の上面板部の外周部分の形態が、略U字状の切り欠き部分を除いた部分を湾曲させず、底面部に突出部を形成していない点で、両部分は相違する。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するから、類似するものである。 2 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、用途及び機能が一致するから、同一である。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。 4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)は、部分全体の形態に係るものであって、両部分の構成態様の基調を形成するものであるが、この家具用配線具の物品分野において、上面板部の底面側に本体との嵌合部を設けた態様は、ごく普通に見られる特段特徴のない構成態様にすぎず、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから、この(共通点1)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)は、上面板部の形態に係るものであるが、この種物品分野において、略円形板状体のキャップに略U字状の切り欠き部分を形成したものがごく普通に見られるものであるから、この形態から略U字状の切り欠き部分が形成された四分円の部分を除いた略扇形状の板状体である上面板部の形態についても、ごく普通に見られる特段特徴のない態様であるといえる。 よって、該部位の形態は、上面部分と外側面部分の角部を断面視略円弧状に形成している点も含めても、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点2)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 (2)両部分の形態の相違点 (相違点1)は、需要者が本物品の設置時等に特に注視する部分といえる本体とキャップの取り付け部分に係る嵌合部の具体的な形態及びその配置態様についてであって、本願部分が本体開口部の内側面段差部分に、横長湾曲板状体からなる嵌合部の下端部に形成された断面視略L字状の折曲部を嵌め込んで回転自在に嵌合するものとの印象を与えるのに対して、引用部分は本体開口部の内側面全体に肉厚な板状体からなる嵌合部を嵌着するものとの印象を与えるものであるから、両部分は嵌合部の美感に大きな相違がある。 (相違点2)は、需要者が本物品の使用時に注視する部分といえる本体とキャップの隙間の部分に係る形態であって、本願部分の外周部分は本体開口部を完全に覆い、隙間の部分に埃等が入り込まないものとの印象を与えるのに対して、引用部分の外周部分は本体開口部を完全に覆うことができず、隙間の部分が露見し、ここにモノが当たることで隙間が拡がりやすく、キャップも外れやすいものとの印象を与えるから、両部分は上面板部の外周部分の美感に大きな差異があるといえる。 5 両意匠の類否判断 両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、部分意匠全体として総合的に観察した場合、両部分は、需要者が本物品の設置時等に注視する部分と認められる本体とキャップの取り付け部分に係る嵌合部の美感に大きな差異があり、使用時に注視するといえる上面板部の外周部分の美感にも大きな差異があるから、これらを総合すると、両部分は全体として美感に大きな差異があるといえる。 そうすると、部分全体の態様、及び上面板部の形態の共通性を考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似し、両部分の用途及び機能が同一であり、両部分の位置、大きさ及び範囲も同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-08-06 |
出願番号 | 意願2017-20624(D2017-20624) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(D9)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松下 香苗 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2019-09-13 |
登録番号 | 意匠登録第1642835号(D1642835) |