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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1354983 
審判番号 不服2019-4139
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-29 
確定日 2019-08-27 
意匠に係る物品 包装用缶 
事件の表示 意願2018-3562「包装用缶」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成30年(2018年)2月21日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

平成30年 8月23日付け:拒絶理由の通知
平成30年10月 5日 :意見書の提出
平成31年 1月24日付け:拒絶査定
平成31年 3月29日 :審判請求書の提出
令和 元年 7月 3日 :手続補正書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用缶」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1126656号
(意匠に係る物品,包装用缶)の意匠の蓋を除いた部分

第4 当審の判断
1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「包装用缶」である。

(2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
本願意匠は,包装用缶の部分についての意匠であり,本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,包装用缶の上蓋を除いた部分であり,包装用缶における本体周面及び底面の位置,大きさ及び範囲であって,包装用缶における本体周面及び底面の用途及び機能を有している。

(3)本願部分の形状
本願部分の形状は,缶上部の直径と高さの比率が約1:2の有底円筒形で,上から順に鉛直面の大径部,縮径部及び鉛直面の小径部となっており,それぞれの高さの比率は約1:1:1となっている。
ア 大径部の上端には,鉛直面の中径部と拡径部があり,本の僅かな拡径部により,大径部は,中径部より僅かに径が大きい。
イ 縮径部は,上側約4分の1が,半径の小さい外に向かって凸の曲面で,下側約4分の3が,半径の大きい内に向かって凸の曲面になっている。
ウ 本体下端部には,下蓋を巻締めた,巻締め部がやや突出して存在している。

2 引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「包装用缶」である。

(2)引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲
引用意匠中,本願部分に対応する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,包装用缶の上蓋を除いた部分であり,包装用缶における本体周面及び底面の位置,大きさ及び範囲であって,包装用缶における本体周面及び底面の用途及び機能を有している。

(3)引用部分の形状
引用部分の形状は,缶上部の直径と高さの比率が約1:2の有底円筒形で,上から順に鉛直面の大径部,縮径部及び鉛直面の小径部となっており,それぞれの高さの比率は,約4:5:8となっている。
ア 大径部の上端には拡径部があり,やや大きな拡径部により,大径部は,拡径部上端より径がやや大きい。
イ 縮径部は,上下共に同等の半径によって,上側約2分の1が,外に向かって凸の曲面で,下側約2分の1が,内に向かって凸の曲面になっており,略S字状を呈している。
ウ 本体下端部は,本の少しすぼまって底面につながっている。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「包装用缶」である。

(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の対比
両部分は,いずれも包装用缶における本体周面及び底面の位置,大きさ及び範囲であって,包装用缶における本体周面及び底面の用途及び機能を有している。

(3)両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア 共通点について
(ア)缶上部の直径と高さの比率が約1:2の有底円筒形である点。
(イ)上から順に鉛直面の大径部,縮径部及び鉛直面の小径部となっている点。
(ウ)大径部の上端には拡径部がある点。

イ 相違点について
(ア)大径部,縮径部及び小径部のそれぞれの高さの比率につき,本願部分は,約1:1:1であるのに対して,引用部分は,約4:5:8である点。
(イ)中径部につき,本願部分は,最上端部に中径部があるのに対して,引用意匠は無い点。
(ウ)拡径部及び大径部の径につき,本願部分は,本の僅かな拡径部であるから,本願部分の上端の径からそれほど大径としているものではないのに対して,引用部分は,やや大きな拡径部によって,引用部分の上端からは大きくしている点。
(エ)縮径部につき,本願部分は,上側の短く半径の小さい曲面と,下側の長く半径の大きい曲面で,緩やかに,僅かに縮径しているのに対して,引用部分は,短い長さの間で,急に変化させて大きく縮径している点。
(オ)本体下端部につき,本願部分は,やや突出しているのに対して,引用部分は,本の少しすぼまっている点。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の,意匠に係る物品は,いずれも「包装用缶」であるから,一致している。

(2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価
両部分は,いずれも包装用缶における本体周面及び底面の位置,大きさ及び範囲であって,包装用缶における本体周面及び底面の用途及び機能を有しているから,一致している。

(3)両部分における形状の評価
ア 共通点について
共通点(ア)については,この種物品分野においては,過去よりよく見られる形状であるから,両意匠のみの特徴ある共通点とはいえず,両部分の類否判断に与える影響はほとんどない。
共通点(イ)については,包装用缶においては,珍しい形状であるから,両部分の類否判断に与える影響は一定程度認められる。
共通点(ウ)については,拡径部を有するという概略的な共通点であり,具体的には相違点に挙げたとおり,その大きさに相違が認められるから,共通点ウは,両部分の類否判断に与える影響は僅かである。

イ 相違点について
相違点(ウ)及び同(エ)によって,引用部分は,拡径部がより太く見え,相違点(ア)を加えると,引用部分は,上端から短い間(引用部分の高さの約2分の1の間)で形状変化が大きいといえるのに対して,本願部分は,上端から長い間(本願部分の高さの約3分の2の間)で緩やかで小さい形状変化と認められるところ,これらの相違点は,包装用缶の周面全体にわたる形状であるから,両意匠の類否判断に与える影響はとても大きい。

ウ 両部分における形状の類否判断
以上のとおり,共通点(ア)ないし(ウ)は,両意匠の類否判断に与える影響は,一定程度にとどまるか,ほとんどないか,又は僅かなものであり,これらの共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(ア),同(ウ)及び同(エ)は,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,その他の相違点を挙げるまでもなく,両意匠の類否判断を決するものといえる。
よって,本願部分の形状と引用部分の形状は,部分における全体観察においては類似しないと認められる。

(4)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が一致しているが,上記のとおり本願部分と引用部分の形状は類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠とは類似しない。

5 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-08-13 
出願番号 意願2018-3562(D2018-3562) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 重坂 舞 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2019-09-06 
登録番号 意匠登録第1642420号(D1642420) 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 

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