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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) J7
管理番号 1354985 
判定請求番号 判定2019-600010
総通号数 238 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2019-10-25 
種別 判定 
判定請求日 2019-04-11 
確定日 2019-09-12 
意匠に係る物品 美容用ローラー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1426576号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明により示された「美容用ローラー」の意匠は、登録第1426576号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び理由
1 請求の趣旨
本件判定請求人(以下「請求人」という。)は、
「イ号意匠及びその説明書に示す意匠は、登録第1426576号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める。」
と申立て、その理由として、要旨以下のとおり主張した。

2 請求の理由
(1)判定請求の必要性
本件判定被請求人(以下「被請求人」という。)は、本件判定請求に係る登録意匠「美容用ローラー」(甲第1号証、以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。
請求人は、イ号意匠及び説明書(甲第2号証)に示す製品(イ号意匠)を、商品名「タッチビューティ TOUCHBeautyマイクロカレントフェイシャルローラーTB-1682」として、アマゾンジャパン合同会社が運営するECサイトに出品していたが、アマゾンジャパン合同会社に対して本件登録意匠に係る意匠権を侵害している可能性があるという申し立てがあり、イ号意匠の出品が削除された。
請求人としてはイ号意匠が被請求人の意匠権を侵害しているとは思えないため、特許庁による厳正中立的な立場からの判定によりイ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さないことを明らかにし出品を再開可能とするため、特許庁の判定を求める。

(2)本件登録意匠の手続の経緯
出 願 平成23年 5月2日(意願2011-010197号)
登 録 平成23年10月7日(意匠登録第1426576号)

(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「美容用ローラー」とし、1対のローラー及びその1対のローラーを支持するハンドル先端の二又部(以下「本件部分」という。)が部分意匠として登録されたものである(甲第1号証参照)。

ア 本件部分の用途及び機能について
ハンドルの二又部はローラーを回転可能に支持するためのものであり、1対のローラーは肌に押し当てて回転させることにより肌をマッサージするためのものである。

イ 本件部分の位置、大きさ及び範囲について
本件部分の1対のローラーは細長棒状のハンドルの先端に連結されており、当該一対のローラーの物品全体における範囲は、平面視で物品全体の長手方向の長さを1とした場合に、長さが0.25、幅が0.59の範囲を占める。また、1つ当たりのローラーの径は0.25である。

ウ 本件部分の形態について
本件部分は、1対のローラー、及び、当該ローラーを支持するハンドル先端の二又部からなり、各ローラーは略球形であり、各ローラーの表面全体には、各辺同士が隣接するように配列された複数の三角形の模様が細かく施されており、ハンドルの二又部及び当該二又部に連結する一対のローラーの開き角度は80°であり、ハンドルは正面視において大きな曲率で円弧伏にカーブしている。

(4)イ号意匠の説明
イ号意匠は、「イ号意匠及び説明書」(甲第2号証)に示すとおりであり、意匠に係る物品は「美容用ローラー」である。

ア イ号意匠における本件部分に相当する部分の認定
イ号意匠における本件部分に相当する部分(以下「イ号部分」という。)は、1対のローラー及びその1対のローラーを支持するハンドル先端の二又部である。
1対のローラーは細長棒状のハンドルの先端に連結されており、当該一対のローラーの物品全体における範囲は、平面視で物品全体の長手方向の長さを1とした場合に、長さが0.17、幅が0.38の範囲を占める。また、1つ当たりのローラーの最大径は0.15、長さが0.19となる。

イ イ号部分の用途及び機能について
イ号部分のハンドルの二又部は、ローラーを回転可能に支持するためのものであり、1対のローラーは、肌に押し当てて回転させることにより肌をマッサージするためのものである。

ウ イ号部分の形態について
イ号部分は、1対のローラー、及び、当該ローラーを支持するハンドル先端の二又部からなり、各ローラーは、半球部及び円錐台部が結合した茄子のような形状であり、円錐台部は径の小さい上底側が二又部の各先端に連結されており、径の大きい下底側が当該径と同一径を有する半球部と連結されており、各ローラーの円錐台部の外周面には、ローラーの回転方向に沿って同心円状の凹凸部が略等間隔に数本形成されており、ハンドルの二又部及び当該二又部に連結する一対のローラーの開き角度は70°であり、ハンドルの基部側は直線状に伸びており、正面図に示すように、二又部は基部側に対して130°の角度で前傾している。

(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
ア 意匠に係る物品について
両意匠は、意匠に係る物品が「美容用ローラー」で一致している。

イ 本件部分とイ号部分(以下、「両部分」ともいう。)の用途及び機能
ハンドルの二又部はローラーを回転可能に支持するためのものであり、1対のローラーは肌に押し当てて回転させることにより肌をマッサージするためのものである点で一致している。

ウ 両部分の位置、大きさ及び範囲について
両部分の位置、大きさ及び範囲を対比すると、以下の共通点と差異点がある。
(ア)両部分の共通点
両部分は細長棒状のハンドルの先端に位置している点で共通する。
(イ)両部分の相違点
一対のローラーの物品全体における範囲は、平面視で物品全体の長手方向の長さを1とした場合に、本件部分は長さが0.25、幅が0.59の範囲を占めるのに対して、イ号部分は長さが0.17、幅が0.38の範囲を占める。
したがって、本件部分の一対のローラーはイ号部分よりも物品全体に対して占める範囲が大きい。
また、ローラーの大きさは、平面視で物品全体の長手方向の長さを1とした場合に、本件部分における1つ当たりのローラーの径は0.25であるのに対して、イ号部分における1つ当たりのローラーの最大径は0.15、長さが0.19である。
したがって、本件部分のローラーはイ号部分のローラーよりも物品全体の中で大きく見える。

エ 両部分の形態について
両部分の形態を対比すると、主として、以下の共通点と差異点がある。
(ア)両部分の共通点
本件部分とイ号部分とは、1対のローラー、及び、当該ローラーを支持するハンドル先端の二又部からなる点
(イ)両部分の相違点
(あ)本件部分の各ローラーは略球形であるのに対して、イ号部分の各ローラーは、半球部及び円錐台部が結合した茄子のような形状であり、円錐台部は径の小さい上底側がハンドルの二又部の各先端に連結されており、径の大きい下底側が当該径と同一径を有する半球部と連結されている点
(い)本件部分の各ローラーの表面全体には、各辺同士が隣接するように配列された複数の三角形の模様が細かく施されているのに対して、イ号部分の各ローラーの円錐台部の外周面にはローラーの回転方向に沿って同心円状の凹凸部が略等間隔に数本形成されている点
(う)本件部分のハンドルの二又部及びローラーの開き角度は80゜であるのに対して、イ号部分のハンドルの二又部及びローラーの開き角度は70°である点
(え)本件部分に連続するハンドルの全体形状は、正面視で大きな曲率で円弧状にカーブしているのに対して、イ号部分に連続するハンドルの基部側は直線状に伸びており、イ号部分は基部側に対して130°の角度で前傾している点

(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由の説明

ア 本件登録意匠に関する先行周辺意匠
甲第3号証 先行周辺意匠公報 意匠登録第1344356号

イ 本件登録意匠の要部
上記先行周辺意匠を考慮すると、本件部分の創作の要部はローラーの構成態様にあることは明らかである。

ウ 本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討する。
(ア)両意匠の共通点について
1対のローラー、及び、当該1対のローラーを支持する二又部を先端に備えたハンドルからなる美容ローラーは、公知の意匠であることから(甲第3号証参照)、共通点(5)ウ(ア)、(5)エ(ア)が類否判断に与える影響は小さい。
(イ)両意匠の差異点について
一対のローラーは、両部分の外郭形状を概ね決する部分であり、かつ、物品の機能を発揮するために必要不可欠な部分であって、需要者の注意を惹く部分であるため、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
上述した、物品全体に対する一対のローラーの範囲及び大きさの差異点(5)ウ(イ)、ローラーの形態の差異点(5)エ(イ)(あ)?(い)、両部分のローラーの開き角度の差異点(5)エ(イ)(う)を考察すると、本件登録意匠は幅広でずんぐりとした印象を与えるのに対して、イ号意匠はシャープで洗練された印象を与える。
また、上述したハンドルの差異点(5)エ(イ)(え)によっても、本件登録意匠は丸みを帯びずんぐりとした印象を与えるのに対して、イ号意匠は直線的でシャープな印象を与える。
したがって、両意匠の差異点により看者に与える印象は大きく異なる。
(ウ)以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の差異点の類否の判断に与える影響は大きなものであって、共通点を凌駕しているものといえ、本件登録意匠とイ号意匠は非類似である。

(7)むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないので、請求の趣旨どおりの判定を求める。

3 証拠方法
甲第1号証 本件登録意匠公報(意匠登録第1426576号)
甲第2号証 イ号意匠及び説明書
甲第3号証 意匠公報 (意匠登録第1344356号)
甲第4号証 意匠登録原簿謄本(意匠登録第1426576号)


第2 被請求人の答弁
特許庁より被請求人に対し、令和1年5月9日に判定請求書副本を発送し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。


第3 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「美容用ローラー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし、「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を実線で、それ以外の部分を破線で表している。一点鎖線は、意匠登録を受けようとする部分とそれ以外の部分との境界のみを表すものである。」(以下、実線で表され、一点鎖線で区画された部分を「本件部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

(1)意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は、「美容用ローラー」である。

(2)本件部分の用途及び機能
本件部分は、ハンドル先端部から二俣に分かれたローラー支持軸に取り付けられた一対のローラー部を肌に押し当てて回転させることによりマッサージを行う、美容用ローラーの用途及び機能の一部を構成するものである。

(3)本件部分の位置、大きさ及び範囲
本件部分の位置、大きさ及び範囲は、平面視、ハンドル部上面の「ソーラーパネル内蔵部」からわずかにローラー部側寄りに表された一点鎖線から先のローラー部側で、正面視において長手方向全体の長さを1とした場合に、ローラー部先端からの長さを約0.35、底面視における2つのローラーの最大幅を、約0.59とするものである。

(4)本件部分の形態
本件部分の形態は、主に以下のとおりである。

ア 全体の構成
ハンドル先端部から二俣に分かれるローラー支持軸及びその先端の一対のローラー部による構成としている。

イ ローラー部
(イ-1)ローラー部は略球体状であって、先端側は略半球状、支持軸側は略円錐台状とし、中間の最大径位置を細幅の帯状円環部(以下「中央円環部」とし、
(イ-2)正面視、ローラー部回転軸方向の最大長さを1とした場合、その回転軸に対する垂直方向の最大幅(直径)を約0.93とし、ローラー部全体としては回転軸方向にわずかに長い略球体状とするもので、
(イ-3)支持軸とのはめ込み部の態様について、ローラー部の支持軸はめ込み側は、支持軸より一回り大きく、支持軸に対して略垂直状に薄い平面が露出したローラー部基端部を形成し、当該基端部と支持軸の間に隙間を有している。
(イ-4)表面の態様
(a)先端側の略半球状部は、ローラー部回転軸先端を頂点とし、その頂点から20本の放射状分割線が等間隔に表れ、ローラー部基端部と略同径の大きさの位置に設けられた環状線(以下「先端寄り環状線」という。)まで伸び、先端寄り環状線と中央円環部の間に更に4本の環状線を等間隔に有し、
(b)中央円環部は、略半球状部の環状線の間隔の約4分の1程度の細幅とし、
(c)略円錐台状部は、中央円環部と平行に4本の環状線を等間隔に有し、
(d)先端寄り環状線からローラー部基端部にかけて、各環状線の前後には複数の小三角形面が上下の向きを交互に変えて周方向に連続して表れている。

ウ 支持軸
(ウ-1)
(a)二俣に分かれた支持軸の開き角度は、約90度(底面図で計測)である。
(b)また、ハンドル先端部はローラー部へ向かって湾曲して窄まり、支持軸との接合部を最も幅の狭いものとするくびれ部を構成し、くびれ部におけるハンドル先端部と支持軸の角度を約115度(底面図で計測)としている。
(ウ-2)正面視、ハンドル先端部からローラー部方向に窄まりながら全体が円弧状にカーブしている。

エ ハンドル先端部及び支持軸に表れる線模様
正面視、ハンドル先端部の高さ幅の中央やや下側からローラー部に向かって湾曲線が表れており、左側面視においても2本の支持軸の中央から一対のローラー部へ向かって湾曲線が表れている。

2 イ号意匠
本件判定請求の対象であるイ号意匠は、判定請求書と同時に提出された甲第2号証「イ号意匠及びその説明書」(別紙第2参照)で示されたものであって、商品名を「タッチビューティー TOUCHBeautyマイクロカレントフェイシャルローラーTB-1682」とし、その形態を甲第2号証における各図及び説明に表されたとおりとしたものである。

ここで、イ号意匠において本件登録意匠の「本件部分」に相当する部分を「イ号部分」とし、「本件部分」とあわせて「両部分」といい、イ号意匠について以下のとおり認定する。

(1)意匠に係る物品
イ号意匠の意匠に係る物品は、「美容用ローラー」である。

(2)イ号部分の用途及び機能
イ号部分は、ハンドル先端部から二俣に分かれたローラー支持軸に取り付けられた一対のローラー部を肌に押し当てて回転させることによりマッサージを行う、美容用ローラーの用途及び機能の一部を構成するものである。

(3)イ号部分の位置、大きさ及び範囲
イ号部分の位置、大きさ及び範囲は、平面視、ハンドル先端部と二俣に分かれるローラー支持軸との接合部のやや内側(ローラー部と逆側)から先のローラー部側で、正面視において長手方向全体の長さを1とした場合に、ローラー部先端からの長さを約0.35、底面視における2つのローラーの最大幅を、約0.40とするものである。

(4)イ号部分の形態
イ号部分の形態は、主に以下のとおりである。

ア 全体の構成
ハンドル先端部から二俣に分かれるローラー支持軸及びその先端の一対のローラー部による構成としている。

イ ローラー部
(イ-1)ローラー部は略雫形状であって、先端側は略半球状、支持軸側は略円錐台状とし、
(イ-2)正面視、ローラー部中心軸方向の最大長さを1とした場合、その回転軸に対する垂直方向の最大幅(直径)を約0.73とし、ローラー部全体としては回転軸方向に伸びた略雫形状とするもので、
(イ-3)支持軸とのはめ込み部の態様について、ローラー部の支持軸はめ込み側は、支持軸と略同径で、支持軸と連続して繋がった態様としている。
(イ-4)表面の態様
ローラー部先端の頂点から、正面視におけるローラー部回転軸の長さに対して約4分の1まで凹凸等のない滑面部を有し、そこから支持軸側に凹凸を等間隔に数本(甲第2号証の製品写真【正面・底面・右側面側からの斜視図】では、ローラー部に4つの凹部が見受けられる。)、波面状に設けている。

ウ 支持軸
(ウ-1)
(a)二俣に分かれた支持軸の開き角度は、約70度(底面図で計測)である。
(b)また、ハンドル先端部はローラー部へ向かって湾曲して窄まり、支持軸との接合部を最も幅の狭いものとするくびれ部を構成し、くびれ部におけるハンドル先端部と支持軸の角度を約140度(底面図で計測)としている。
(ウ-2)正面視、ハンドル先端部からローラー部方向にかけて、略「へ字の頂部を含む左側」状にゆるやかに屈曲し、屈曲部の角度を約130度とし、支持軸はローラー側へ向かって幅を徐々に広げ、略雫形状に膨れるローラー部へ連続して繋がる態様としている。

エ 暗調子の帯状模様
暗調子の帯状模様が、平面視、ハンドル先端部の高さ幅に対し約3分の1の幅で水平状に二俣の支持軸中央部までやや先細りに伸延し、底面側に回り込んだ後、ハンドル側へ向かって広がり、底面視においてハンドル先端部の高さ幅の約8割を占めるに至っており、正面視においても一部表れている。

3 対比
(1)意匠に係る物品の対比
本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「美容用ローラー」であり、意匠に係る物品が一致する。

(2)両部分の用途及び機能の対比
両部分の用途及び機能は、いずれもハンドル先端部から二俣に分かれたローラー支持軸に取り付けられた一対のローラー部を肌に押し当てて回転させることによりマッサージを行う、美容用ローラーの用途及び機能の一部を構成するものであり、一致する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、いずれもハンドル先端部から先のローラー部側で、正面視において長手方向全体の長さを1とした場合に、ローラー部からの長さを約0.35とするもので、その位置及び範囲が一致する。
一方、大きさについて、底面視における2つのローラーの最大幅を見ると、本件部分は、長手方向全体の長さを1とした場合に、ローラーの最大幅を約0.59とするものであるが、イ号部分は約0.40とする点で相違している。

(3)両部分の形態の対比
両部分の形態を対比すると、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
ア 両部分の形態の共通点
(共通点)全体の構成
全体を、ハンドル先端部から二俣に分かれるローラー支持軸及びその先端の一対のローラー部による構成としている点。

イ 両部分の形態の相違点
(ア)ローラー部
(相違点1)
本件部分のローラー部は、略球体状であって、先端側は略半球状、支持軸側は略円錐台状とし、中間の最大径位置を細幅の帯状円環部(以下「中央円環部」とするものであるのに対し、イ号部分は、略雫形状であって、中央円環部を有していない点。

(相違点2)
本件部分は、正面視、ローラー部回転軸方向の最大長さを1とした場合、その回転軸に対する垂直方向の最大幅(直径)を約0.93とする回転軸方向にわずかに長い略球体状としているのに対し、イ号部分は、約0.73とする回転軸方向に伸びた略雫形状としている点。

(相違点3)
本件部分は、ローラー部支持軸はめ込み側に、支持軸より一回り大きく、支持軸に対して略垂直状に薄い平面が露出したローラー部基端部を形成し、当該基端部と支持軸の間に隙間を有しているのに対し、イ号部分は、ローラー部支持軸はめ込み側を支持軸と略同径とし、支持軸と連続して繋がった態様としている点。

(相違点4)
本件部分は、先端側の略半球状部のローラー部回転軸先端を頂点とし、その頂点から20本の放射状分割線が等間隔に表れ、先端寄り環状線まで伸び、先端寄り環状線と中央円環部の間に4本の環状線を等間隔に有し、略円錐台状部にも中央円環部と平行に4本の環状線を等間隔に設け、先端寄り環状線からローラー部基端部にかけて、各環状線の前後には複数の小三角形面が上下の向きを交互に変えて周方向に連続して表れているのに対し、イ号部分は、ローラー部先端の頂点から、正面視におけるローラー部回転軸の長さに対して約4分の1まで凹凸等のない滑面部を有し、そこから支持軸側に凹凸を等間隔に数本、波面状に設けた態様としている点。

(イ)支持軸
(相違点5)
平面視、(a)本件部分は、2本の支持軸の開き角度を約90度としているのに対し、イ号部分は、約70度とし、(b)ハンドル先端部と支持軸によるくびれ部の角度を、本件部分は約115度としているのに対し、イ号部分は、約140度としている点。

(相違点6)
正面視、本件部分は、ハンドル先端部からローラー部方向に窄まりながら全体が円弧状にカーブしているのに対し、イ号部分は、ハンドル先端部からローラー部方向にかけて、略「へ字の頂部を含む左側」状にゆるやかに屈曲し、支持軸とハンドル先端部とで約130度となる屈曲部を構成し、支持軸はローラー側へ向かって幅を徐々に広げ、略雫形状に膨れるローラー部へ連続して繋がる態様としている点。

(ウ)模様等
(相違点7)
本件部分は、正面視、ハンドル先端部の高さ幅の中央やや下側からローラー部方向に向かって湾曲線が表れており、左側面視においても2本の支持軸の中央から一対のローラー部へ向かって湾曲線が表れているが、イ号部分にはそのような線模様はない点。

(相違点8)
本件部分にはないが、イ号部分には、暗調子の帯状模様が、平面視、ハンドル先端部の高さ幅に対し約3分の1の幅で水平状に二俣の支持軸中央部までやや先細りに伸延し、底面側に回り込んだ後、ハンドル側へ向かって広がり、底面視にいてハンドル先端部の高さ幅の約8割を占めるに至っており、正面視においても一部表れている点。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分は、位置及び範囲については一致している一方、大きさについては、本件部分の方が全体に占める大きさがやや大きいものとなっているが、ハンドル部との相対的なものであり、ハンドル部の対応にはこの種物品分野において種々のものが存在することを考慮すると、類否判断への影響は限定的である。

(4)両部分の形態の評価
両意匠の意匠に係る物品である「美容ローラー」は、一対のローラー部を肌に押し当てて回転させることによりマッサージを行うものであり、需要者はマッサージ効果を発揮するためにローラー部がどのような態様となっているのか、さらにはマッサージ機能を発揮するためにどのような構造をしているのか、といった点に強い関心を持つとともに、美容機器としてその形態が有する印象にも着目するものということができる。

ア 共通点の評価
(共通点)について、この種物品分野において、ハンドル先端部から二俣に分かれるローラー支持軸の先にローラーを有するものは本件登録意匠出願前から見受けられるが(下記参考意匠参照)、全体の基本構成に係るものであるから、この共通点が類否判断に与える影響は、一定程度認められる。

参考意匠(別紙第3参照)
大韓民国意匠商標公報(公開日:2006年(平成18年)年3月10日)に掲載された、「マッサージ機」(登録番号30-0408623)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH18509471号)の意匠

イ 相違点の評価
(ア)ローラー部
(相違点1)ないし(相違点4)は、ローラー部の具体的態様における差異であるが、直接肌に触れる部分であり、また、マッサージ効果という機能の観点においても影響が出る部分であることから、需要者の関心を強く惹く部分ということができ、類否判断に与える影響は大きい。

(イ)支持軸
(相違点5)の、(a)支持軸の開き角度の違いは、ローラー部の大きさとのバランスもあり、それほど大きく目立つものではなく、類否判断に与える影響は限定的である。
一方、(b)ハンドル先端部と支持軸によるくびれ部の角度の違いは、本件部分をハンドル部と支持軸部及びローラー部全体が詰まったずんぐりとした印象を与えるのに対し、イ号部分を細みのすらりとした印象とするものであり、類否判断に一定の影響を与えている。

(相違点6)は、本件部分のずんぐりとした印象と、イ号部分の細身のすらりとした印象を強調するだけでなく、支持軸とローラー部の関係において、本件部分は、ローラー部へ向かって窄まっているのに対し、イ号部分の指示部は逆に広がっており、ローラー部との接合態様が大きく異なっている点で、類否判断に与える影響は大きい。

(ウ)模様等
(相違点7)は、両部分のハンドル部及び支持軸全体が有機的な曲面で構成される中、本件部分の正面視及び左側面視に見られる湾曲線は、それほど目立つものではなく、類否判断に与える影響は小さい。

(相違点8)は、使用時に目につく部分に表れており、類否判断に一定程度影響を与えるものと認められる。

5 両意匠の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、両部分の形態を総合して観察した場合、両部分は、上記(共通点)の評価のとおり、全体の構成における共通点は、基本構成に係るものであるから、類否判断に一定程度の影響を与えるものではあるが、各部の具体的態様をみると、ローラー部の態様は、(相違点1)ないし(相違点4)に示すとおり、大きく異なっており、このローラー部の態様の差異は、(相違点6)ともあわせ、本件部分が支持軸側にローラー部基端部を有し、棒状の支持軸に球体が差し込まれた印象を与えているのに対し、イ号部分は、支持軸とローラー部が連続的に一体となって形成されていることから、両部分の印象をさらに大きく異ならせている。また、(相違点5)(b)及び(相違点8)も類否判断に一定程度の影響を与えており、これら相違点が相まって生じる視覚的効果が、共通点のそれを凌駕して、類否判断に大きな影響を及ぼしているものと認められる。

そこで、両意匠の類否を総合的に判断する。両意匠は、「意匠に係る物品」及び両部分の「用途及び機能」が同一で、「位置、大きさ及び範囲」のうち、「位置及び範囲」が一致し、「大きさ」の差異も類否判断に与える影響は限定的で、「形態」における共通点が類否判断に与える影響も一定程度認められるものではある。

しかしながら、両部分の「形態」における相違点が類否判断に与える影響は大きく、両意匠の類否を総合して判断した場合、需要者に与える美感が異なるものであるから、本件登録意匠とイ号意匠は類似しないものと認められる。


第4 むすび
以上のとおりであるから、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。

判定日 2019-09-02 
出願番号 意願2011-10197(D2011-10197) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (J7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 下村 圭子平田 哲也 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 北代 真一
正田 毅
登録日 2011-10-07 
登録番号 意匠登録第1426576号(D1426576) 
代理人 桐生 美津恵 
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