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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1356028 
審判番号 不服2019-5235
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-19 
確定日 2019-10-17 
意匠に係る物品 電気接続用端子 
事件の表示 意願2017- 28558「電気接続用端子」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成29年12月21日の意匠登録出願であって、平成30年9月25日付けの拒絶理由の通知に対し、同年11月16日に意見書が提出されたが、平成31年1月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠

本願は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「電気接続用端子」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で描かれた部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠とあわせて「両意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2010年2月19日に受け入れた外国カタログ「NanPi YiJie ElectRonic pRoduct CO.,LTD」第7頁所載の「接触子」の意匠において円形に突出した部分(以下、「引用部分」といい、本願部分とあわせて「両部分」という。)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HD22000449号)である(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
両意匠を認定した上で、両意匠についての類否判断を行い、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するか否かの判断を行う。

1 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
両意匠の意匠に係る物品は、本願意匠が「電気用接続端子」であり、引用意匠が「接触子」であるが、いずれも、機器の電気接続のため、電線の末端に取り付けられる給受電用接続具であり、一方の接続端子部に他方の接続端子部やバッテリーなどが圧接することにより電気信号、電気エネルギーを伝えるための端子金具であるから共通するものである。

(2)両部分の用途及び機能の対比
両部分は、いずれも給受電用接続具の接続端子部に係る部分であり、一方の接続端子部に他方の接続端子部やバッテリーなどが圧接することにより電気信号、電気エネルギーを伝える端子部とする用途および機能を持つものであるから、一致するものである。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、一体的に形成された接続端子金具のうち、被接続部との接続端子部に係る、略扁平円錐台状に突出させた部分であって、当該突出させた端子部の突出方向に正対する面を上端面とした場合、本願部分は、接続端子部の下端部に当該接続端子部に連接するやや拡開した円筒状の立ち上がり部を有し、その一部を本願部分に含むものであるのに対し、引用部分は、接続端子部のみからなるものであるから、相違するものである。

(4)両部分の形態の対比
両部分の接続用に突出させた端子面の突出方向に正対する面を上端面とした場合、本願部分は、略扁平円錐台状部分の上端面全面を略漏斗状に凹嵌した形状、すなわち、略扁平円錐台状部分のみを中央断面視した場合、略扁平M字状を呈する突出部(以下、「M字状突出部」という。)及び当該部分の下端部にやや拡開した円筒状の立ち上がり部を設けたものであり、立ち上がり部における本願部分の高さは、M字状突出部とほぼ同高とするものである。また、M字状突出部について、上端部と下端部の直径の比率は略3:5とするものであって、上端部の屈曲態様については、本願部分は小Rにより形成されている。
一方、引用部分は、同M字状突出部のみからなるものであるが、同下端部に立ち上がり部を有さないものである。また、M字状突出部について、上端部と下端部の直径の比率は略3:5とするものであって、上端部の屈曲態様については、やや大きいRにより形成されている。

ア 両部分の形態の共通点
(共通点1)両部分は、中央断面視において、M字状突出部を有するものであり、当該部分の上端部と下端部の直径の比率を略5:3に形成している点が共通する。

イ 両部分の形態の相違点
(相違点1)本願部分は、M字状突出部の下端部に、同突出部と同高のやや拡開した円筒状の立ち上がり部を有するものであるのに対し、引用部分は、M字状突出部の下端部が、そのまま基台部に連接して形成されており、当該立ち上がり部を有さない形状である点で相違する。
(相違点2)両部分のM字状突出部における上端部の態様については、本願部分が小Rにより形成されているのに対し、引用部分はやや大きいRにより形成されている点で相違する。

2 両意匠の共通点及び相違点の評価
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するから、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分は、給受電用接続具の接続端子部に係る部分であり、一方の接続端子部に他方の接続端子部やバッテリーなどが圧接することにより電気信号、電気エネルギーを伝えるという用途および機能が共通するから、両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
本願部分は、一体的に構成された接続端子のうち、被接続部との接続端子部に係る部分であるが、本願部分はM字状突出部の下端部に立ち上がり部を設け、そのうちの一部を、意匠登録を受けようとする部分とするものであるのに対し、引用部分は、当該立ち上がり部が含まれないことから、物品全体の形態の中における両部分の位置、大きさ及び範囲は相違する。

(4)両部分の形態の評価
登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行われる(意匠法第24条第2項参照)。本件意匠に係る物品である「電気接続用端子」は、電気機器の電気接続のため、電線の末端に取り付けられ、当該端子を介して電気信号、電気エネルギーを伝えるために用いられるものであるから、本件意匠に係る「需要者」とは、そのような業務に携わる者及びこれらの物品を取り扱う者である。

ア 両部分の形態の共通点
共通点1は、この種物品分野における接続端子部の形状として従来から見受けられる態様であり(参考意匠)、当該部分は両部分の類否判断に一定程度の影響を与えると認められるものの、類否判断に支配的な影響を与えるには至っていない。

参考意匠(別紙第3参照)
参考意匠は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年5月9日に受け入れた外国雑誌「Global Sources Electronic Components」第12号第29巻第176頁所載の「バッテリー用ばね端子」の意匠において円形に突出した部分の意匠である(特許庁意匠課公知資料番号第HB20004397号)。

イ 両部分の形態の相違点
相違点1であるM字状突出部の下端部に立ち上がり部を設ける態様は、この種物品分野において新規な態様であって、本願意匠のその他の部分である、基台部の形状が板バネ状を呈することとも相俟って、本願部分と引用部分とは、異なる使用状態を呈するものであることが推認され、需要者は、当該部分を特に注意をもって観察すると認められる。このため、当該部分が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
相違点2の、M字状突出部の上端部態様については、小Rとするかやや大きいRとするかの態様の相違が見受けられるものの、当該R態様については、板材の厚み等に起因して、従来種々の大きさのR態様が存在するものであって、当該相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

3 両部分の類否判断
両部分の共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両部分は、接続端子部として一定の共通点を有するものの、本願部分の下端部態様が大きく相違するものであって、需要者が特に注視する、M字状突出部の下端部に設けられた立ち上がり部の有無が大きく相違するものであり、両部分は全体として美感に大きな相違があるといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であって、両部分の用途および機能が類似するものの、両部分の位置、大きさ及び範囲が一致せず、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第5 むすび(結論)
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-10-04 
出願番号 意願2017-28558(D2017-28558) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 木村 恭子
佐々木 朝康
登録日 2019-11-01 
登録番号 意匠登録第1646230号(D1646230) 

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