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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B5 |
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管理番号 | 1356879 |
審判番号 | 不服2019-5635 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-26 |
確定日 | 2019-10-29 |
意匠に係る物品 | サンダル |
事件の表示 | 意願2018- 7673「サンダル」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年(2018年)4月9日(パリ条約による優先権主張2017年10月9日、アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって、同年9月21日付けの拒絶理由の通知に対し、同年12月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成31年(2019年)1月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は本願の願書の記載によれば「サンダル」(平成30年(2018年)12月27日の手続補正により、願書の「意匠に係る物品」の欄の記載を「履物」から「サンダル」へ変更した。)であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって、願書の「意匠の説明」には「破線で表した部分以外(当審注:以下「本願部分」という。)が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」と記載されている(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 原査定の拒絶の理由に引用された意匠は、下記のサンダルの意匠(以下「引用意匠」という。)であり、その形態は下記掲載ページに現されたとおりであって、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分は、本願部分に相当する部分(以下「引用部分」という。)である(別紙第2参照)。 <引用意匠> 電気通信回線の種類:インターネット 掲載確認日(公知日):2015年 5月27日 受入日:特許庁意匠課受入2015年 7月 3日 掲載者:TJX Cos., Inc. 表題:”Crocs” Blue Molded Sandals - TK Maxx 掲載ページのアドレス:http://www.tkmaxx.com/girls-shoes+sandals/blue-molded-sandals/invt/26024693 に掲載された「サンダル」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ27009454号) 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「サンダル」であり、一致する。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分の用途及び機能は、ヒールストラップが可動するサンダルの基本的な用途及び機能を有している。 これに対し、引用部分においては、本願部分に相当する部分が現れていない箇所があるが、引用部分の用途及び機能も、ヒールストラップが可動するサンダルの基本的な用途及び機能を有しており、本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能は、一致する。 なお、引用部分において表れていない箇所については、ヒールストラップが可動するサンダルの分野における通常の知識に基づく推認を前提にして、認定及び判断する。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は破線部を除いた全体形状であり、その位置、大きさ及び範囲は、一致する。 4 両部分の形態の対比 以下、本願意匠の向きに合わせて引用意匠を認定する。 (1)形態の共通点 両部分の形態の共通点は以下のとおりである。 (共通点1)部分全体の構成態様 全体は、ヒールストラップ部の付いた厚ゴム底のスリッパ型のサンダルから装飾的な以下アないしカの部分を除いたものとし、 ア サンダル外側の甲の表面部に表れる略楕円形状の部分 イ 厚ゴム底の周側面の上部外周に設けられた筋状凹凸模様部 ウ 厚ゴム底の周側面の背面略中央において一段外側に突出するように設けられた略長方形状の部分 エ サンダル内側において足裏と接する箇所の凹凸模様部 オ サンダル内側におけるヒールストラップの留め具の部分 カ 靴底部における凹凸模様部 甲の表面に複数の円形孔を略千鳥状に形成し、留め具周囲は留め具を囲むように略U字状に形成しつつ筋状凸部を設けたヒールストラップ部を設け、そのヒールストラップ部を甲部に左側面視略円形状の留め具で留めて、上下幅が一定で外側を一周する厚ゴム底の周側面部を設けている。厚ゴム底の周側面部の下には、靴底部に連なるテーパー面が形成されており、左側面視細幅帯状にあらわされている。 (共通点2)甲部の態様 甲部の外形は、左側面から見て、かかと付近が略水平であり、ヒールストラップ部の留め具付近から右方に向けて上方に緩やかな弧状で立ち上がるくちまわり部を設け、くちまわり部が最も高くなった位置からつま先部にかけては、右方に向けて下方に緩やかな弧を描きつつ略水平まで下がった後、そこから上方に緩やかに立ち上がり、小さな半径の弧を描きつつ略鉛直になるまで下がっている。甲の表面部には、複数の略円形孔が略千鳥状に形成されている。 (共通点3)ヒールストラップ部の態様 ヒールストラップ部は、留め具で留められた箇所からヒールストラップ部の中央付近までは同幅で形成され、ヒールストラップ部中央部で幅が広がるように形成されつつ、ヒールストラップの周方向中央に筋状凸部を設けている。 (共通点4)厚ゴム底の周側面部の態様 厚ゴム底の周側面部は、左側面視上下方向の幅が一定であり、左端から右端寄りまでは略水平で、右端部は上方に立ち上がるように形成されている。 (2)形態の相違点 両部分の形態の相違点は以下のとおりである。 (相違点1)厚ゴム底の周側面部の左側面視上下幅の意匠全体に占める割合 左側面において、本願部分は、厚ゴム底の周側面部の上下幅と、(破線部も含む)靴底部から甲のくちまわり部の最も高い箇所までの上下幅との比が、約2:5であるのに対し、引用部分のそれは約2:9であるから、本願部分の厚ゴム底の周側面部の上下幅が意匠全体に占める割合は、引用部分のそれに比べると大きい。なお、引用意匠は、やや斜め上方向から見た形態として現されているので、垂直方向の比率は正確ではない。 (相違点2)厚ゴム底の周側面部の左側面視右端の具体的形状 厚ゴム底の周側面部の左側面視右端については、本願部分のそれが略鉛直であるのに対し、引用部分のそれは凸状に膨出している。 (相違点3)甲の表面部の平面視形状 本願部分の甲の表面部の平面視形状が、前後中央からつま先部にかけて左右広がり、小指部分は緩やかな弧状で、親指部分は半径の小さい弧状としつつ前方に突出させた形状であるのに対して、引用部分のそれは不明であり、また、本願部分の略円形孔は13個であるが、引用部分の略円形孔の総数は不明である。さらに、本願部分には、甲のくちまわり部寄りに、甲のくちまわり部と平行に立ち上がる分割線が形成されているのに対して、引用部分では、ヒールストラップ部が甲のくちまわり部寄りを覆っているので、そのような分割線が形成されているかは不明である。 (相違点4)ヒールストラップ部の大きさの部分全体に占める割合 本願部分のヒールストラップ部中央部の幅と左側面視左右全長との比が約1:10であるのに対し、引用部分のそれは約1:8であり、ヒールストラップ部が部分全体に占める割合は本願部分の方が小さい。 第5 判断 1 「意匠に係る物品」の欄の変更 出願人は、平成30年(2018年)12月27日の手続補正により、願書の「意匠に係る物品」の欄を「履物」から「サンダル」へ変更する補正を行っているが、この手続補正は、出願当初の願書の記載又は願書添付図面の要旨を変更するものではないと認められる。 2 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が一致するから、同一である。 3 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、上述の「第4 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比」で認定したとおり一致するから、同一である。 4 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲は、上述の「第4 3 本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲の対比」で認定したとおり一致するから、同一である。 5 両部分の形態の共通点及び相違点の評価 (1)両部分の形態の共通点 共通点1ないし共通点3で摘示した点については、ヒールストラップが可動するサンダルの分野の意匠において、本願の出願前に例を示すまでもなくありふれているので、この点が両部分の美感に与える影響は小さい。 また、共通点4の態様、すなわち、厚ゴム底の周側面部の左側面視上下方向の幅が一定であり、左端から右端寄りまでが略水平で、右端部が上方に立ち上がるように形成した態様は、目につきやすい箇所に係るものであり、かつ、需要者の注意を惹く箇所に係るため、この点が両部分の美感に与える影響は一定程度認められる。 そうすると、両部分の形態の共通点は、厚ゴム底の周側面部の態様の共通点について一定程度評価されるものの、両部分の美感に与える影響は総じて小さいといえる。 (2)両部分の形態の相違点 これに対して、両部分の形態の相違点1ないし相違点3は、以下のとおり両部分の美感に与える影響が大きいということができる。 まず、相違点1で摘示した、厚ゴム底の周側面部の左側面視上下幅が意匠全体に占める割合の相違について、本願部分の当該部分ほど厚ゴム底の周側面部の左側面視上下幅を大きく形成しているサンダルの意匠は本願の出願前に見られないため、この態様は本願部分が持つ固有の新規な特徴であると認められることに加え、上述の「第5 4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価」の共通点4の評価で摘示したように、当該箇所は、目につきやすい箇所であり、かつ、需要者の注意を惹く箇所であるため、相違点1が両部分の美感に与える影響は極めて大きいといわざるを得ない。 次に、厚ゴム底の周側面部つま先部の具体的形状に係る相違点2についても、つま先部は目につきやすい箇所であり、かつ、需要者の注意を惹く箇所であるため、相違点2が両部分の美感に与える影響は大きいということができる。 また、これら相違点1及び相違点2があいまった点も、本願部分が持つ固有の新規な特徴であると認められるため、この相違点が共通点4を凌駕して両部分の美感に与える影響は大きいといわざるを得ない。 さらに、相違点3については、甲の表面部の平面視形状が(引用部分の対比箇所の形状が不明なことによって)相違する点は、サンダルの平面視形状が目につきやすいものであるために両部分の美感に与える影響は大きく、甲のくちまわり部と平行に立ち上がる分割線の有無の相違も、需要者に異なる視覚的印象を与えることから両部分の美感に与える影響は大きいといえる。 他方、ヒールストラップ部の大きさの部分全体に占める割合に係る相違点4については、ヒールストラップ部が目につきやすいものであることを勘案しても、約1:10と約1:8の差は大きいとはいえず、両部分の美感に与える影響は一定程度に止まる。 そうすると、相違点4が両部分の美感に与える影響は一定程度に止まるとしても、相違点1、相違点2及びこれらがあいまった相違点が両部分の美感に与える影響が大きく、それに加えて、相違点3が両部分の美感に与える影響も大きいといえるから、両部分の美感に与える影響は総じて大きいというほかない。 6 両意匠の類否判断 このように、両部分の形態の相違点が両部分の美感に与える影響が総じて大きいのに対して、両部分の形態の共通点が両部分の美感に与える影響は総じて小さく、両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、相違点は共通点を圧して需要者に異なる美感を起こさせるといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は類似するが、その形態においては、相違点が共通点を圧して需要者に異なる美感を起こさせるから、両意匠は類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-10-16 |
出願番号 | 意願2018-7673(D2018-7673) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(B5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 並木 文子 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 小林 裕和 |
登録日 | 2019-11-29 |
登録番号 | 意匠登録第1648637号(D1648637) |
代理人 | 瀧澤 文 |
代理人 | 小林 浩 |
代理人 | 鈴木 康仁 |
代理人 | 大森 規雄 |