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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H6 |
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管理番号 | 1356884 |
審判番号 | 不服2019-8163 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-19 |
確定日 | 2019-11-13 |
意匠に係る物品 | 非接触型アイシータグインレット |
事件の表示 | 意願2018-11947「非接触型アイシータグインレット」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成30年(2018年)5月31日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 平成30年11月20日付け :拒絶理由の通知 平成30年12月26日 :意見書の提出 平成31年 3月28日付け :拒絶査定 令和 1年(2019年)6月19日 :審判請求書の提出 令和 1年10月 1日 :電話応対 令和 1年10月 2日 :補正書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2009年10月2日に受け入れた エイリアンテクノロジーUHF帯ICタグ 第1頁所載 アンテナの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HC21014270号) における本願意匠に相当する部分の意匠。 第4 当審の判断 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「非接触型アイシータグインレット」であり,シート上にプリントされたアンテナと,当該アンテナに電気的に接続されたICチップとを搭載しており,UHF帯の電波によって非接触で情報通信を行うことができるものである。 (2)本願部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,アンテナとICチップ部分であり,約2:7の横長長方形のシートの中央に位置する,縦が全体の約5分の3,横が全体の約5分の4とした大きさ及び範囲であって,非接触型アイシータグインレットにおけるアンテナとICチップの用途及び機能を有している。 (3)本願部分の形状 本願部分の形状は, ア.基本的構成態様として, (ア)中央にICチップを搭載した凸形のループ状導体を配置し, (イ)ループ状導体の左右に,凸形の頂部を共有して左右に延伸する線状導体を左右対称的に配置し, (ウ)当該各線状導体については,中間にジグザグ状の蛇行域を形成して端部に幅広の長方形域を設けている。 イ.具体的構成態様として, (エ)ループ状導体の頂部の横幅は,ループ状導体の幅の約5分の1としており, (オ)線状導体は,端部長方形域の内側下端部に接続しており, (カ)端部長方形域は,約1:3の縦長長方形である。 (キ)端部長方形域,線状導体及びループ状導体の横長さの比率を,約2:6:7としている。 (ク)端部長方形域の高さに対する,ループ状導体の高さを,約2分の1にしている。 2 引用意匠 (1)意匠に係る物品 原審における拒絶の理由として引用された文献に表れている意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC21014270号)の意匠に係る物品は「UHF帯ICタグ」である。 (2)引用部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲 引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,UHF帯ICタグにおけるアンテナとICチップ部分であり,約1:6の横長長方形のシートにおける中央に位置する,縦が全体の約8分の5,横が全体の約9分の8とした大きさ及び範囲であって,UHF帯ICタグにおけるアンテナとICチップの用途及び機能を有している。 (3)引用部分の形状 引用部分の形状は, ア.基本的構成態様として, (ア)中央にICチップを搭載した凸形のループ状導体を配置し, (イ)ループ状導体の左右に,凸形の頂部を共有して左右に延伸する線状導体を左右対称的に配置し, (ウ)当該各線状導体については,中間にジグザグ状の蛇行域を形成して端部に幅広の長方形域を設けている。 イ.具体的構成態様として, (エ)ループ状導体の頂部の横幅は,ループ状導体の幅の約3分の1としており, (オ)線状導体は,端部長方形域の内側の上下中央に接続しており, (カ)端部長方形域は,約3:2の横長長方形で,内側の上下に深さの異なる2か所の陥入凹部を形成しており, (キ)端部長方形域,線状導体及びループ状導体の横長さの比率を,約2:2:3としている。 (ク)端部長方形域の高さに対する,ループ状導体の高さを,約6分の5にしている。 3 両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は「非接触型アイシータグインレット」であり,引用意匠の意匠に係る物品は「UHF帯ICタグ」である。 (2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の対比 本願部分は,非接触型アイシータグインレットのアンテナとICチップという用途及び機能を有しており,引用意匠は,UHF帯ICタグのアンテナとICチップという用途及び機能を有している。 そして,その位置,大きさ及び範囲は,本願部分は,約2:7の横長長方形のシートにおける中央に位置する,縦が全体の約5分の3,横が全体の約5分の4とした大きさ及び範囲であるのに対して,引用意匠部分は,約1:6の横長長方形のシートにおける中央に位置する,縦が全体の約8分の5,横が全体の約9分の8とした大きさ及び範囲である。 (3)両部分の形状の対比 両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について 基本的構成態様として, (ア)中央にICチップを搭載した凸形のループ状導体を配置し, (イ)ループ状導体の左右に,凸形の頂部を共有して左右に延伸する線状導体を左右対称的に配置し, (ウ)当該各線状導体については,中間にジグザグ状の蛇行域を形成して端部に幅広の長方形域を設けている。 イ.相違点について 具体的構成態様として, (ア)ループ状導体の幅に対する頂部の横幅につき,本願部分は,約5分の1としているのに対して,引用部分は,約3分の1としている点。 (イ)線状導体の接続箇所につき,本願部分は,端部長方形域の内側下端部であるのに対して,引用意匠は,端部長方形域の内側の上下中央である点。 (ウ)端部長方形域の形状につき,本願部分は,約1:3の縦長長方形であるのに対して,引用部分は,約3:2の横長長方形で,内側の上下に深さの異なる2か所の陥入凹部を形成している点。 (エ)端部長方形域,線状導体及びループ状導体の横長さの比率につき,本願部分は,約2:6:7としているのに対して,引用部分は,約2:2:3としている点。 (オ)端部長方形域の高さに対する,ループ状導体の高さにつき,本願部分は,約2分の1にしているのに対して,引用部分は,約6分の5にしている点。 4 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠の意匠に係る物品は「非接触型アイシータグインレット」であって,UHF帯の電波によって情報通信を行うことができるものである。 一方,引用意匠の意匠に係る物品は「UHFICタグ」であるから,UHF帯の電波を用いるICタグである。 そうすると,両意匠共に,UHF帯の電波を用いるICタグと認められるから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。 (2)両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲の評価 両部分は,非接触型アイシータグインレットまたはUHF帯ICタグという共通する物品における,アンテナとICチップ部分であるから,両部分の用途及び機能は共通している。 そして,本願部分も,引用意匠部分も,横長長方形のシートにおける中央に位置するものであるから,両部分の位置は共通している。 次に,本願部分は,約2:7の横長長方形のシートに対して,縦が全体の約5分の3,横が全体の約5分の4とした大きさ及び範囲であり,引用意匠部分は,約1:6の横長長方形のシートに対して縦が全体の約8分の5,横が全体の約9分の8とした大きさ及び範囲であるから,両部分の大きさ及び範囲の相違は僅かなものであり,かつ,両部分の大きさ及び範囲は,共にこの種物品分野においてありふれた大きさ及び範囲を逸脱するものではないから,両部分の大きさ及び範囲については,互いに別異な印象を与える程のものとは認められない。 よって,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲は共通していると認められる。 (3)両部分における形状の評価 ア.共通点について 共通点(ア)については,概念的な共通点であり,具体的な形状及び大きさとしては,相違点(ア),(エ)及び(オ)の相違を内包しているものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。 共通点(イ)及び(ウ)については,共通感を醸し出してはいるが,本願出願前からこの種物品分野においては,散見される形状であり,両意匠のみの特徴ある共通点とはいえず,両部分の形状の類否判断に与える影響は限定的である。 イ.相違点について 相違点(ア)については,本願部分は,突状部が余りにも小さいために,あたかも横長長方形に見て取れる本願部分と,はっきりと凸形に見える引用部分とでは,別異の印象を与えるものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。 相違点(イ)については,相違点(ウ)と相まって,端部長方形域の内側の形状において,本願部分は,簡素な印象を与えるのに対して,引用部分は,複雑な印象を与えるものといえるから,両部分の類否判断に与える影響は大きい。 相違点(エ)及び(オ)については,本願部分は,扁平なループ状導体の部分と蛇行域が等幅で,端部長方形域が目立たないものと印象付けられるのに対して,引用部分は,中央に位置するループ状導体は大きく,左右端に位置する端部長方形域が目立つ大きさであり,その内側形状が複雑になっていると印象付けられるものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。 そして,相違点(ア)ないし(オ)は,両部分の形状の類否判断に与える影響が全て大きいものと評価できるものであり,部分全体において,両意匠に別異の印象を生じさせるものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響を決定付けるものである。 ウ.両部分における形状の類否判断 以上のとおり,共通点(ア)ないし(オ)は,両部分の形状の類否判断に与える影響は,小さい,又は限定的なものであり,これらの共通点によっては,両部分の形状の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(ア)ないし(オ)は,総じて需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両部分の形状の類否判断を決するものといえる。 よって,本願部分の形状と引用部分の形状は,部分における全体観察においては類似するとは認められない。 (4)両意匠における類否判断 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲が共通しているが,上記のとおり本願部分と引用部分の形状は類似するとは認められないものであるから,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。 5 結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-10-29 |
出願番号 | 意願2018-11947(D2018-11947) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前畑 さおり |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
正田 毅 橘 崇生 |
登録日 | 2019-11-29 |
登録番号 | 意匠登録第1648694号(D1648694) |
代理人 | 特許業務法人みのり特許事務所 |