• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1
管理番号 1356885 
審判番号 不服2019-5524
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-25 
確定日 2019-11-12 
意匠に係る物品 ハサミ 
事件の表示 意願2017- 27595「ハサミ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年(2017年)12月11日の意匠登録出願であって、平成30年(2018年)9月27日付けの拒絶理由の通知に対し、同年11月7日に意見書が提出されたが、平成31年(2019年)2月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、意匠に係る物品を「ハサミ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2010年3月4日に受け入れた
「日経トレンディー 2010年 3月 4日」
第64頁所載
はさみの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HA22002603号)(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「ハサミ」であり、引用意匠の意匠に係る物品も、「はさみ」であって、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも、スライダを引き下げて把持部内部に収納されたハンドルを引き出すキャップ付きの携帯用のハサミであるから、一致するものである。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、本審決において、引用意匠の向きを本願意匠の向きに揃えたものとし、キャップをした状態の刃先側を正面上方、柄側を正面下方として認定するものとする。

ア 共通点
(ア)全体は、刃部、軸部及び把持部からなるハサミ本体と刃部及び軸部を覆うキャップ部からなる正面視、縦長の棒状で、把持部の上側に、把持部の長さよりやや短い長さのキャップ部を取り付けている。
(イ)把持部の正背面部左右中央にそれぞれ、縦溝状のスライダ開口部とノブ状のスライダからなるスライド部を形成するとともに、把持部両側面に、ハンドルを引き出すための縦溝状の側面開口部を設け、ハンドルを引き出した状態においては、可撓性のあるロープ状のハンドルをアーチ状に引き出して、正背面視略円弧状としている 。
(ウ)刃部は、同形同大の2枚の略細長三角形板からなる平坦面状で、それぞれ把持部内側のほぼ下端まで延びている。

イ 相違点
(ア)全体形状について、本願意匠は、上方に向かって徐々に先細り状の略円柱形状で、上下端を略半球状に形成しているのに対し、引用意匠は、全体を正背面に偏平な略四角柱形状とし、正背面の横幅及び把持部の側面幅をほぼ一定とする一方、キャップ部の側面幅を上方に向かってやや先細り状となるよう形成するとともに、上下端を正面視略半円弧状として、側面視において端部を丸く面取りしている。
(イ)キャップ部について、本願意匠は、クリップ部は設けていないのに対し、引用意匠は、正面部左右中央に上端近傍から下部にかけて縦長棒状のクリップ部を設けている。
(ウ)把持部上端の軸部について、本願意匠は、把持部より一回り小径で頭部を略半球状に形成しているのに対し、引用意匠は、軸部を正面視略半球状としその真ん中に円形突起状の連結ピンを取り付けたものであって、連結ピンの周りには軸部の外形に沿って円形の浅い凹陥部を形成している。
(エ)キャップ部下端部の形状について、本願意匠は、把持部上端の軸部をすっぽり覆う略円筒形状であるのに対し、引用意匠は、キャップ部の正面側を略半円状に延出して舌状の係止片を形成し、連結ピンに係止できるよう係止片の真ん中に円形孔を設けている。
(オ)把持部の側面開口部について、本願意匠は、側面視縦に半割される把持部の左側下寄りに把持部の長さの約1/2の長さの縦溝を形成しているのに対し、引用意匠は、同様に半割される把持部の両方に中央部から下寄りに把持部の長さの約3/4の長さの縦溝を形成し、その右側に、それぞれハンドル部突出防止用のセパレーターを設けている。
(カ)色彩について、本願意匠は、色彩のない形状のみの意匠であるのに対し、引用意匠は、把持部及びキャップ部を黄緑色、クリップ部、スライダ部、側面開口部のセパレーター及び軸部の連結ピンを黒色、刃部を銀色、ハンドル部を白色透明としている。

2 類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)形態の共通点及び相違点の評価
ア 共通点の評価
まず、共通点(ア)は、全体の基本構成に係るものであるが、両意匠の形態を概括的に捉えた場合における共通点であるとともに、この種物品の分野において、全体を棒状としたキャップ付きの携帯用ハサミは、両意匠の他にもごく普通に見られることから、共通点(ア)に係る態様は、両意匠のみに共通する態様とはいえず、該共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
次に、共通点(イ)は、本願出願前に他にも見られる態様である(参考意匠)ことに加え、相違点(オ)のとおり、把持部両側面に設けられた側面開口部の具体的な態様について相違するため、共通点(イ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

参考意匠(別紙第3参照)
本願出願前の平成21年(2009年)8月6日に特許庁が発行した登録実用新案公報に記載された実用新案登録第3152672号の「ハサミ」の意匠(図1)

そして、共通点(ウ)については、刃部が2枚の略細長三角形板から成るものは、この種物品分野において、広く知られたありふれた形態であり、また、刃部が把持部内側の下端まで延びる平坦面である点は、需要者の関心の高い刃部の態様ではあるが、把持部内側は使用時にのみ観察される部分であり、さほど目立つものではないため、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度に止まる。

イ 相違点の評価
まず、相違点(ア)の全体形状についてであるが、両意匠は収納時の携帯性を考慮したものであるから、キャップ被覆時の態様は需要者の関心が非常に高いものであるところ、全体が先細りの略円柱状である本願意匠の態様は、需要者にシンプルで柔らかい視覚的印象を与えているのに対し、全体が略四角柱状である引用意匠の態様は、需要者に硬く角張った印象を与えており、一見して、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものである。
次に、相違点(イ)のクリップ部の有無について、引用意匠のクリップ部は、キャップ部の長さに比肩する長さで、かつハサミ全体の長さの約1/3の長さを占め、意匠全体の中で存在感が際立っており、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
また、相違点(ウ)は、意匠全体としてみれば局所的な部位の相違ではあるものの、キャップの着脱時において需要者の注意をひく部分といえ、両意匠の類否判断に一定の影響を与える。
さらに、相違点(エ)は、相違点(ウ)と同様に、キャップの着脱時に需要者の注意をひく部分であるのに加え、キャップ被覆時においても、目につきやすく、正背面の長さ方向略中央において造形上のアクセントとなっており、相違点(ア)と相まって、より一層需要者に異なる美感を与えるものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
そして、相違点(オ)については、本願意匠は、右利き用であるためセパレーターを組み込む必要がなく、スラッとしたシンプルな視覚的印象を与えているのに対して、引用意匠は、両利き用であるためにセパレーターが設けられ、凹凸感のある複雑な視覚的効果を発揮している点において、需要者に異なる美感をもたらしており、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
一方、相違点(カ)については、この種物品分野において、種々の色彩を施した製品バリエーションが用意されるのは通常であり、また、クリップ部等を本体と異なる色彩であらわすこともよく見受けられるので、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
以上のとおり、相違点(ウ)及び(カ)が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度に止まるか限定的であるものの、相違点(ア)、(イ)、(エ)及び(オ)が両意匠の類否判断に与える影響はいずれも大きいものであり、とりわけ相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいものであるから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。

3 小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は共通するが、形態においては、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、美感を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2019-10-23 
出願番号 意願2017-27595(D2017-27595) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K1)
最終処分 成立 
前審関与審査官 長谷川 翔平 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 内藤 弘樹
渡邉 久美
登録日 2019-11-29 
登録番号 意匠登録第1648575号(D1648575) 
代理人 船津 暢宏 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ