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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) K1
管理番号 1356887 
判定請求番号 判定2019-600007
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 判定 
判定請求日 2019-02-14 
確定日 2019-10-28 
意匠に係る物品 腰つり用工具くぎ類収納バッグ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1414841号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明により示された「腰つり用工具くぎ類収納バッグ」の意匠は,登録第1414841号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び理由

1 判定請求の趣旨

イ号写真に示す意匠は、登録第14148411号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める。


2 請求の理由

(1)判定請求の必要性

請求人は、被請求人から平成28年11月9日付けにて書面「ご通知」を受領した(甲第2号証)。
この通知書において、被請求人は、被請求人の販売するバッグの開口部が「斜め」であるのが特徴であるとし、同商品は、平成19年頃より市場に流通しており、しかも意匠登録第1414841号として登録している、とし、その上で、請求人の商品について、上記意匠権を侵害している、と主張している。
請求人は、請求人の商品は意匠登録第1414841号の意匠に類似するものではなく、意匠権を侵害するものではない、と判断するので、本件判定を請求するものである。

(2)本件登録意匠の手続の経緯

本件判定の対象である意匠登録第1414841号の意匠(以下、本件登録意匠という。)は、平成22年(2010年)9月15日に意願2010-022201号として出願され、平成23年(2011年)4月22日に登録された意匠である(甲第1号証)。

(3)本件登録意匠の説明

本件登録意匠は、意匠に係る物品を「腰つり用工具くぎ類収納バッグ」とし、その意匠は、意匠に係る物品の説明及び図面の記載より、以下の構成からなるものである。
(ア)本件登録意匠は、形状と色彩と模様とからなる構成であり、
(イ)形状は、
背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板にベルト通しが形成され、本体収容部及び前部収容部は、上端縁を左側が低くなるように斜めにし、収容部の側面にペン差しが設けられ、ベルト通しは、背板の上端を背面側に折り返して、折り返し部の両側が下方に向かうに従い下すぼまりになるとともに、中央部に馬蹄形の刳り込み部が形成されてなり、
(ウ)模様及び色彩は、
本体収容部と前部収容部の上端縁に、白黒の斜め縞のテープによりパイピングがされるとともに、背板、本体収容部、前部収容部の、正面視で右端から4分の1の位置にそれぞれ上端から下端に達する赤いリボン状布部材が施され、背板、本体収容部、前部収容部及びペン差しの前面及び側面及び内面のその余の部分が黒く形成されているのに対し、本体収容部の背面が赤い色で形成されている。

(4)イ号意匠

これに対し、判定の対象の製品は、「腰つり用収納バッグ」であって、その意匠(以下、イ号意匠という)は、
(ア)イ号意匠は、形状と色彩と模様とからなる構成であり、
(イ)形状は、
背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板にベルト通しが形成され、本体収容部及び前部収容部は、上端縁を左側が低くなるように斜めにし、収容部の側面にペン差しが設けられ、ベルト通しは、背板の背面に2本の帯体の上端及び下端をそれぞれリベットで止めて、左右に平行なベルト通しが形成されてなり、
(ウ)模様及び色彩は、
本体収容部と前部収容部の上端縁に、青色一色の縁布でパイピングがされるとともに、前部収容部の横幅の略4分の1となる茶色い略正方形の薄板の四隅をリベットで止めしてなる形態であり、背板、本体収容部、前部収容部及びペン差しの前面及び側面及び内面及び本体収容部の背面のすべてが、黒い色一色で形成されている。

(5)本件登録意匠とイ号意匠との対比

ア 本件登録意匠とイ号意匠の共通点
本件登録意匠とイ号意匠とは、以下の点で共通する。
(ア)背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板にベルト通しが形成され、本体収容部及び前部収容部は、上端縁を左側が低くなるように斜めにし、収容部の側面にペン差しが設けられている点。

イ 本件登録意匠とイ号意匠の差異点
本件登録意匠とイ号意匠とは、以下の点で異なる。
(イ)本件登録意匠のベルト通しは、背板の上端を背面側に折り返して、折り返し部の両側が下方に向かうに従い下すぼまりになるとともに、中央部に馬蹄形の刳り込み部が形成されてなるのに対し、イ号意匠のベルト通しは、背板の背面に2本の帯体の上端及び下端をそれぞれリベットで止めて、左右に平行なベルト通しが形成されてなる。
(ウ)本件登録意匠の本体収容部と前部収容部の上端縁には、白黒の斜め縞のパイピングがされるとともに、背板、本体収容部、前部収容部の、正面視で右端から4分の1の位置にそれぞれ上端から下端に達する赤いリボン状布部材が施されているのに対し、イ号意匠の本体収容部と前部収容部の上端縁には、青色一色の縁布で縁取りがされるとともに、前部収容部の横幅の略4分の1となる茶色い略正方形の薄板の四隅をリベットで止めしてなる形態である点。
(エ)本件登録意匠では、背板、本体収容部、前部収容部及びペン差しの前面及び側面及び内面のその余の部分が黒く形成され、本体収容部の背面が赤い色で形成されているのに対し、イ号意匠の背板、本体収容部、前部収容部及びペン差しの前面及び側面及び内面及び本体収容部の背面のすべてが、黒い色一色で形成されている点。


(6)公知意匠

意匠法は、意匠出願前にいわゆる公知の意匠及び刊行物に記載の意匠並びにこれらに類似する意匠は登録できない旨を規定している(意匠法第3条第1項)。
そこで、本件登録意匠の出願前公知であった公知意匠を検討する。
ア 背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板の上端背面にベルト通しが形成され、収容部の側面にペン差しが設けられている形態を備えた腰袋が、特開2005-342208号公報(公開日、平成17年(2005年)12月15日)の図1、図2に記載されている。(甲第3号証)
イ 背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板の上部背面にベルト通しが形成された形態の工具・部品類収納具が、実用新案登録第3111228号公報(発行日、平成17年(2005年)7月14日)の図1に記載されている。(甲第4号証)
ウ 背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板の上端背面にベルト通しが形成され、本体収容部の側面にペン差しが設けられている形態を備えた作業用腰袋が、公開実用平成2-149514号公報(公開日、平成2年(1990年)12月20日)の図1、図6、図7に記載されている。(甲第5号証)
エ 背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板の上端を後方に折り返してベルト通しが形成され、本体収容部及び前部収容部の、上端縁を左側が低くなるように斜めにし、本体収容部の前面にペン用ポケットを設けた形態の腰バッグが、特開2008-301863号公報(公開日、平成20年12月18日)の図1、図2に記載されている。(甲第6号証)
オ 背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板の上端を後方に折り返してベルト通しが形成され、本体収容部の、上端縁を左側が低くなるように斜めにし、収容部の側面にペン差しを設けた形態の手ハッカー用ホルダが、公開実用昭和59-24280号公報(公開日、昭和59年2月15日)の第1図に記載されている。(甲第7号証)

(7)公知意匠と、共通点・差異点との対比

ア 意匠に係る物品について
上記ア?オに記載された各公知文献の意匠に係る物品は、本件登録意匠に係る物品と用途及び機能を共通にしていて同一若しくは類似物品である。
イ 形態について
本件登録意匠とイ号意匠の共通点との関係
(ア)に記載の公知文献(甲第3号証)には、背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板にベルト通しが形成され、収容部の側面にペン差しが設けられている点について記載されている。
(イ)の公知文献(甲第4号証)には、背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板にベルト通しが形成された点について記載されている。
(ウ)の公知文献(甲第5号証)には、背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板にベルト通しが形成され、収容部の側面にペン差しが設けられている。
(エ)の公知文献(甲第6号証)には、背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板にベルト通しが形成され、本体収容部及び前部収容部は、上端縁を左側が低くなるように斜めにし、本体収容部の側面にペン差しが設けられている。
(オ)の公知文献(甲第7号証)には、背板と、本体収容部と、前部収容部とを有し、背板にベルト通しが形成され、本体収容部は、上端縁を左側が低くなるように斜めにし、収容部の側面にペン差しが設けられている。
以上のとおりであり、本件登録意匠とイ号意匠との共通点Aについては、公知文献(甲第3?7号証)に記載されていることから、公知の形態である。
ウ 共通点に関する形態のまとめ
したがって、本件登録意匠のイ号意匠との共通点Aの形伏は格別斬新な形態ではない。
特に、被請求人が「ご通知」において特徴であると主張しているバッグの開口部が「斜め」であることは、本件登録意匠の出願日である平成22年(2010年)9月15日以前に公知の形態であって、何ら新規な形態ではない。
このことは、被請求人が、前記甲8号証において、被請求人の販売するバッグの開口部が「斜め」であるとするとともに、同商品は、平成19年頃より市場に流通している旨を主張していることからも明らかである。
エ 差異点に関する検討
これに対し、本件登録意匠の、
(ア)ベルト通しの具体的形態、すなわち、背板の上端を背面側に折り返して、折り返し部の両側が下方に向かうに従い下すぼまりになるとともに、中央部に馬蹄形の刳り込み部が形成されてなる点、
(イ)本体収容部と前部収容部の上端縁に、白黒斜め縞模様のパイピングがされている点、
(ウ)背板、本体収容部、前部収容部の、正面視で右端から4分の1の位置にそれぞれ上端から下端に達する赤いリボン状布部材が施されている点、
(エ)背板、本体収容部、前部収容部及びペン差しの前面及び側面及び内面のその余の部分が黒く形成されているのに対し、本体収容部の背面が赤い色で形成されている点については、少なくとも前記文献からは公知であるとは言えず、本件登録意匠の特徴部分を構成するものである。
以上のとおりであるから、本件登録意匠が登録された所以は、単にそのバッグの開口部が「斜め」である形状にあるのではなく、形状と模様及び色彩の結合した形態にある。特に前記(7)のエ(ア)?(エ)に記載の形態は、この種物品において従来ない斬新なものであり、物品の周面に顕著に現れる形態であるので看者の注意を強く惹くところである。

(8)まとめ

以上のとおり、被請求人の主張している「斜め」の形態が本件登録意匠の出願前に公知であること、その他の共通点についても公知の形態であること、本件登録意匠の公知でない形態においてイ号意匠は異なること、イ号意匠は、本件登録意匠の斬新な形態を備えておらず、模様及び色彩においても、本件登録意匠とイ号意匠とは、全く異なる形態であることを総合すると、本件登録意匠とイ号意匠とは、差異感が共通感を凌駕するものである。したがって、本件登録意匠とイ号意匠とは類似するものであるとはいえないものである。
よって、本件判定請求について、請求の趣旨のとおりの判定を求めるものである。

3 証拠方法

甲第1号証の1 意匠登録第1414841号公報
甲第1号証の2 意匠登録第1414841号原簿の写し
甲第2号証 平成28年11月9日付け書面「ご通知」の写し
甲第3号証 特開2005-342208号公報
甲第4号証 実用新案登録第3111228号公報
甲第5号証 公開実用平成2-149514号公報
甲第6号証 特開2008-301863号公報
甲第7号証 公開実用昭和59-24280号公報


第2 判定被請求人の答弁

特許庁より被請求人に対し、平成31年4月11日に判定請求書を送達し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からの応答はなかった。


第3 当審の判断

1 本件登録意匠

本件登録意匠は、平成22年(2010年)9月15日に意匠登録出願され(意願2010-022201)、平成23年(2011年)4月22日に登録(登録第1414841号)の設定がなされ、同年5月30日に意匠公報が発行されたものであって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「腰つり用工具くぎ類収納バッグ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を「形態」という。)を願書及び願書に添付した写真に現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

すなわちその形態は、

(1)基本的構成態様
全体は、黒色と赤色に色分けした厚手の生地からなり、正面、底面及び背面は、略縦長矩形状の生地を側面視、略縦長倒「コ」字状に屈曲して一体状に形成し、その両側端のやや内側に若干縁部を残して略縦長長方形状の側板を取り付けて前後に扁平な箱体(以下「本体収容部」という。)とし、その正面部に、本体収容部よりやや高さが低く奥行きが半分程度の前後に扁平な箱状のポケット(以下「前ポケット部」という。)を横幅と底面を揃えて段差状に取り付け、本体収容部と前ポケット部(以下「両収容部」ともいう。)の上端は、正面視、左下がりに角度を揃えて傾斜している。また、本体収容部の背面部上端を上方に延出して背面側下方に折り曲げてベルト通しとしている(以下、ベルト通しを「ベルト通し部」といい、これ以外の背面部全体を「背板部」という。)。
また、本体収容部の両側面部に工具差し部を設け、前ポケット部の右側面部にペン差し部を設けている。

(2)具体的構成態様
ア 全体
(ア)全体の長さの比率と両収容部の傾斜角度
縦(高さ)、横、奥行きの長さの比率は、約2:1.6:1で、両収容部の傾斜角度は、約20度である。
色彩は、概ね、背面部、両収容部の内側を赤色、それ以外を黒色に色分けしている。具体的には、背板部、ベルト通し部の裏側、本体収容部内の正面部及び両側面部と右側の工具差し部内、前ポケット部内の背面部(本体収容部の正面部のこと)以外の4面を赤色とし、それ以外は黒色としている。
(イ)模様
本体収容部の正面部及び収容部内の背面部、前ポケット部の正面部において、いずれも正面視、やや右寄りに赤色の縦帯状模様を位置を揃えて形成している。また、前記本体収容部内の縦帯状模様は、そのまま背面側のベルト通し部下端まで延出している。
本体収容部内の背面部の上端寄りに、縦帯状模様よりやや細幅の赤色の横帯状模様を、該縦帯状模様と直交するように形成している。
両収容部及び右側の工具差し部の上端の縁部全体に白色の斜め縞模様を形成している。
(ウ)底面部
略中央に、両収容部を跨いで略横長隅丸長方形状の皮革部材を設け、その右脇に略小円形のメッシュハトメを両収容部の底面部に1つずつ取り付けている。

イ 本体収容部
(ア)正面部
上端両隅に略横長長円形状の皮革部材を側面側に回り込んで配置し、その両端をリベット留めしている。
(イ)右側面部
略中央に、工具差し部と上端右隅近傍縦にDカンを取り付けている。
工具差し部は、略縦長のポケット状で、下端部を弧状としている。
(ウ)左側面部
略中央に、工具差し部と上端左隅に小さな円孔を形成している。
工具差し部は、上半分を皮革部材で被覆した略矩形状の生地を平面視、略U字状に湾曲して略トンネル状としている。
(エ)収容部内
背面部の上下中央やや上方寄りに、略小円盤状金具(リベット)を横一列に4個取り付けている。

ウ 前ポケット部
(ア)正面部
下端両隅に、正面視、略4分の1円弧状で、正面、側面、底面の三方を包み込むように被覆した皮革部材を設け、上端右隅に、正面部全体との面積比が約27:1で、縦横の長さの比率が、約3:8の略横長長方形状のブランドロゴ表示部を取り付けている。当該ブランドロゴ表示部は、全体がブロンズ色で、両端部をリベット留めしている。
(イ)右側面部
略中央に、ペン差し部を設け、下端部を皮革部材で略矩形状に被覆している((ア)の皮革部材のこと。底面部の両端も同じ。)。
ペン差し部は、略縦長のポケット状で、ペンを2本差せるよう真ん中を縦に縫い付けている。
エ ベルト通し部
高さは、全高の約25分の11で上端から真ん中やや上寄りまでの高さとし、両端はやや内側に傾斜状で、下端中央は馬蹄形に大きく括れ、その下端の左右の付け根と両隅に略円形の係止金具を取り付けている。

オ 背板部
上下中央やや下方寄りに、2本の黒色の横帯状模様を上下にやや近接して形成し、その間にジグザク状の模様を施している。

2 イ号写真に示す意匠

本件判定請求の対象であるイ号写真に示す意匠は、判定請求書と同時に提出されたイ号物件(写真)により示されたものであって、意匠に係る物品は「腰つり用収納バッグ」であると認められ、その形態を、イ号物件(写真)に表されたとおりとしたものである(以下、「イ号意匠」という。(別紙第2参照))。

すなわちその形態は、

(1)基本的構成態様
全体は、黒色の厚手の生地からなり、正面及び両側面は、略横長矩形状の生地を、平面視、略横長倒「コ」字状に屈曲して一体状に形成し、その背面端部に背面視、略縦長長方形状の背板部と、底面部に底面視、略横長長方形状の底板を取り付けて、全体として前後に扁平な本体収容部とし、その正面部に、本体収容部よりやや高さが低く奥行きが5分の2程度の前後に扁平な前ポケット部を横幅と底面を揃えて段差状に取り付け、両収容部の上端は、正面視、左下がりに角度を揃えて傾斜している。また、背板部の背面側上端寄りに同幅の太帯体を2つ並列に設けてベルト通し部としている。
また、本体収容部の左側面部に工具差し部を設けている。

(2)具体的構成態様
ア 全体
縦(高さ)、横、奥行きの長さの比率は、約1.7:1.4:1で、両収容部の傾斜角度は、約20度である。
正面視、下端部両隅を孤状に面取りし、両収容部の上端の縁部全体及び工具差し部の上端の縁部全体を青色に着色している。

イ 本体収容部
(ア)工具差し部
左側面部の左右幅一杯に、略横長矩形状の生地を弛みをもたせて取り付けた略トンネル状で、工具を2本差せるよう真ん中を縦に縫い付けている。
(イ)底面部
真ん中に、小円孔を1つ設けている。
(ウ)収容部内
背面部の上下中央やや上方寄りに、略小円盤状金具(リベット)を横一列に4個取り付けている。

ウ 前ポケット部
正面部中央に、正面部全体との面積比が約8:1で、縦横の長さの比率が、約10:11の略隅丸横長長方形状のブランドロゴ表示部を取り付けている。当該ブランドロゴ表示部は、全体が黄土色で、四隅をリベット留めしている。

エ ベルト通し部
それぞれ、背板部の約5分の3の高さで、横幅は、約3分の1の正面視、略縦長長方形状の太帯体で、その上端を内側に折り曲げて背板部に固着し、下端は両隅に略円形の係止金具により取り付けている。

オ 背板部
背面視、左端部上隅及び右端部やや上寄りに、それぞれ略隅丸横長長方形状の皮革部材を正背面を挟み込むよう上下2箇所でリベット留めし、左端部の皮革部材は略変形縦長長円形状のカラビナを巻き込むように取付けている。

3 本件登録意匠とイ号意匠の対比

(1)意匠に係る物品
本件登録意匠は「腰つり用工具くぎ類収納バッグ」であり、イ号意匠は「腰つり用収納バッグ」であって、表記は異なるが、本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、主に、建築現場等の屋外作業において、ズボンのベルトに通し腰回りにぶら下げて使用する工具類等を収納する腰袋であり、用途及び機能が共通するので、両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると、主として以下の共通点及び相違点が認められる。

ア 共通点
(ア)全体形状
黒色の色彩を基調とし、本体収容部の正面部に、これよりやや高さが低い前後に扁平な前ポケット部を、横幅と底面を揃えて段差状に取り付け、背板部上部にベルト通し部を設け、本体収容部の側面部に工具差し部を備えている点、
(イ)両収容部の傾斜角度
両収容部の上端を、正面視、左下がりに約20度の角度で傾斜している点、
において共通する。

イ 相違点
(ア)全体形状について
全体の縦(高さ)、横、奥行きの長さの比率において、本件登録意匠は、約2:1.6:1であるのに対し、イ号意匠は、約1.7:1.4:1で、本件登録意匠の方がイ号意匠よりも縦長である点、
(イ)本体収容部について
本件登録意匠は、略縦長矩形状の生地を、側面視、略縦長倒「コ」字状に屈曲し、その両側端のやや内側に若干縁部を残して略縦長長方形状の生地を取り付けたものであるのに対し、イ号意匠は、略横長矩形状の生地を、平面視、略横長倒「コ」字状に屈曲し、その端部に背面視、略縦長長方形状の背板部と、底面部に底面視、略横長長方形状の底板を取り付けたものである点、
(ウ)ベルト通し部について
本件登録意匠は、本体収容部の背面部上端を上方に延出して背面側下方に折り曲げたものであるのに対し、イ号意匠は、背板部の背面側上端寄りに同幅の太帯体を2つ並列に設けたものである点、
(エ)本体収容部及び前ポケット部の左右側面部について
(エ-1)本件登録意匠は、本体収容部の右側面部に縦長ポケット状の工具差し部と左側面部にトンネル状の工具差し部を設けているのに対し、イ号意匠は、本体収容部の左側面部のみに2連トンネル状の工具差し部を設けている点、
(エ-2)本件登録意匠は、前ポケット部の右側面部に縦長ポケット状のペン差し部を設けているのに対し、イ号意匠は、何も設けていない点、
(オ)色彩及び模様について
(オ-1)全体の色彩について、本件登録意匠は、背板部、ベルト通し部の裏側、本体収容部内の正面部及び両側面部と右側の工具差し部内、前ポケット部内の背面部以外の4面を赤色としているのに対し、イ号意匠は、全体が黒色である点、
(オ-2)両収容部の模様について、本件登録意匠は、本体収容部の正面部及び本体収容部内の背面部、前ポケット部の正面部に、赤色の縦帯状模様を位置を揃えて形成しているのに対し、イ号意匠は、このような模様は形成していない点、
また、本件登録意匠は、本体収容部内の背面部の上端寄りに、縦帯状模様よりやや細幅の赤色の横帯状模様を、該縦帯状模様と直交するように形成しているのに対し、イ号意匠は、このような模様は形成していない点、
(オ-3)本件登録意匠は、両収容部及び右側の工具差し部の上端の縁部全体に白色の斜め縞模様を形成しているのに対し、イ号意匠は、両収容部の上端の縁部全体及び工具差し部の上端の縁部全体を青色に着色している点、
(カ)ブランドロゴ表示部について
本件登録意匠は、前ポケット部の正面部全体との面積比が約27:1で、縦横の長さの比率が、約3:8の略横長長方形状で、上端右隅に取り付けているのに対し、イ号意匠は、同じく面積比が約8:1で、縦横の長さの比率が、約10:11の略隅丸横長長方形状である点、
また、本件登録意匠は、全体がブロンズ色で、両端部をリベット留めしているのに対し、イ号意匠は、全体が黄土色で、四隅をリベット留めしている点、
において相違する。

4 類否判断

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し、本件登録意匠の出願前に存在する公知意匠を参酌し、需要者の注意を引きやすい部分を考慮した上で、本件登録意匠とイ号意匠が類似するか否かについて判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠は、意匠に係る物品が共通する。

(2)形態の共通点の評価
まず、両意匠における形態の共通点が類否判断に及ぼす影響について検討する。
共通点(ア)の全体形状について
黒色の色彩を基調とし、本体収容部の正面部に前ポケット部を横幅と底面を揃えて段差状に取り付け、背板部上部にベルト通し部を設け、本体収容部の側面部に工具差し部を備えた態様は、両意匠の形態を概括的に捉えた共通点に過ぎず、両意匠のみに共通する態様とはいえず、この点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(イ)の両収容部の傾斜角度について
上端を正面視、左下がりに約20度の角度で傾斜した態様は、当該物品の分野において、本件登録意匠の出願前からすでに普通に見受けられるものであって(例えば、特開2008-301863号の図4に示された「腰バッグ」の意匠、別紙第3参照)、両意匠のみに共通する特徴とはいえないことから、共通点(イ)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、共通点(ア)及び共通点(イ)は、いずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるから、これらの共通点を総合しても、両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(3)形態の相違点の評価
次に、両意匠の形態における相違点が類否判断に及ぼす影響について検討する。
相違点(ア)全体形状について
全体の縦、横、奥行きの長さの比率について、この種の収納バッグの分野においては、両意匠の長さの各比率は、いずれも常識的な長さの比率の範囲内のものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(イ)本体収容部について
正面、底面及び背面を側面視、略縦長倒「コ」字状に屈曲しその両側に側板を取り付けたものである本件登録意匠と、正面及び両側面を平面視、略横長倒「コ」字状に屈曲し底板を取り付けたイ号意匠とは、本体収容部の基本的な構造が全く異なり、また、本件登録意匠は、側板を両側端のやや内側に取り付けているため、正面、底面、背面の各面の端部が縁部として屈曲状に表れ、全体的に硬く角張った印象を醸し出しているのに対し、イ号意匠は、縁部はなく正面と両側面が一体状で、全体的になめらかで柔らかい印象であるから、需要者に与える視覚的印象は大きく異なるものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きい。
相違点(ウ)ベルト通し部について
ベルト通し部は、使用時において背面側に隠れてしまう部位ではあるが、通常、腰にぶら下げて使用するこの種収納バッグにおいて、ベルトに直接装着するベルト通し部の態様は、需要者が注視する部分であるといえるところ、本体収容部の背面部上端を下方に折り曲げてなる本件登録意匠と、背板部上端寄りに同幅の太帯体を2つ並列に設けたイ号意匠は、形態が相違し、需要者に異なる視覚的印象を与えるものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(エ)本体収容部及び前ポケット部の左右側面部について
この種の工具類等を収納するバッグにおいては、工具類をすばやく抜き差しできるよう収納バッグ側面に工具差し部やペン差し部を設けたものが両意匠以外にも普通にみられるものであるが、工具差し部等の形態、配置される部位、数の相違は、作業の利便性にも関わるものであるから、需要者の関心が高いものといえるところ、両意匠におけるこれらの態様はそれぞれ相違するものであることに加え、工具差し部等が両側面部に設けられている本件登録意匠は、左右のバランスが取れた安定感をもたらしているのに対し、イ号意匠は、左側面部にのみ設けているため、偏りのある不安定な印象をもたらしており、工具差し部等の個々の形態や配置される部位等の相違のみならず、意匠全体としてみた場合においても、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(オ)色彩及び模様について
相違点(オ-1)は、両意匠ともに黒色を基調としたものであって、本件登録意匠の赤色の範囲は主に両収容部内部の箇所で限定的であることから、外観上、さほど目立つものではなく、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。一方、相違点(オ-2)について、本件登録意匠の本体収容部、本体収容部内の背面部、前ポケット部の右寄りに位置を揃えて施した赤色の縦帯状模様及び本体収容部内の背面部の上端寄りに施した赤色の横帯状模様は、全体を黒色に着色したなかにおいて造形上のアクセントとなっており、両収容部に模様を一切施していないイ号意匠とは一見して需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。また、相違点(オ-3)についても、本件登録意匠の両収容部の縁部に形成される白色の斜め縞模様は、白色と黒色の細かいストライプで、相違点(オ-2)の赤色の帯状模様に比べるとさほど目立つものではないのに対し、イ号意匠は、両収容部の縁部の他、工具差し部の縁部も青色に着色し、縁部の縦幅も大きいため、全体を黒色に着色したなかにおいて非常に目立つものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(カ)ブランドロゴ表示部について
両意匠ともに、前ポケット部の正面部に取り付けているものであるが、正面部全体との面積比、縦横の長さの比率、取付け位置、表面の色彩等において相違しており、とりわけ、正面部全体との面積比及び縦横の長さの比率の相違が顕著であるから、需要者に与える視覚的印象は大きく異なるものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

そうすると、相違点に係る態様が相まって生じる視覚的な効果は、両意匠の類否判断を決定付けるものである。

5 小括

以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品については共通するものの、形態については、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は大きく、相違点が相まって生じる視覚的効果は、共通点のそれを凌駕して、類否判断に大きな影響を与えているものであるから、意匠全体として需要者に与える美感が異なるものであって、本件登録意匠とイ号意匠とは類似しないものである。

第4 むすび

以上のとおりであって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。

判定日 2019-10-18 
出願番号 意願2010-22201(D2010-22201) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (K1)
最終処分 成立 
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
佐々木 朝康
登録日 2011-04-22 
登録番号 意匠登録第1414841号(D1414841) 
代理人 塩田 哲也 
代理人 福島 三雄 
代理人 福島 正憲 
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