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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) C3
管理番号 1356888 
判定請求番号 判定2019-600011
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 判定 
判定請求日 2019-04-24 
確定日 2019-11-11 
意匠に係る物品 コードレスクリーナースタンド 
事件の表示 上記当事者間の登録第1608951号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明により示された「コードレスクリーナースタンド」の意匠は,登録第1608951号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 手続の経緯
平成29年12月20日 意匠登録出願(意願2017-29693)
平成30年 6月22日 意匠権の設定の登録(第1608951号)
平成31年 4月24日 判定請求
令和 1年 6月19日付け 審尋(判定請求人に対して)
令和 1年 6月27日 回答書提出
令和 1年 8月16日 答弁書提出

第2 判定請求人の請求の趣旨及び理由
1 請求の趣旨
請求人は,イ号意匠及びその説明書に示す意匠は,登録第1608951号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求め,その理由として,要旨以下のとおりの主張をした。

2 請求の理由
(1)判定請求の必要性
本件判定請求人は,本件判定請求に係る登録意匠「コードレスクリーナースタンド」(以下「本件部分」という。)の意匠権者である。
請求人は,イ号意匠に係るコードレスクリーナースタンドが国内で販売され請求人の意匠権が侵害されているとの認識に至り,本件判定被請求人 株式会社 シアターハウスが現在販売しているイ号意匠(甲第2号証)のコードレスクリーナースタンド(イ号意匠物件)は,本件登録意匠の意匠権に属するものであると通知したが,本件判定被請求人は,「イ号意匠は,本件登録意匠に類似する意匠の範囲に属さない。」実用新案登録第3204981号を主張。
上記事由により特許庁による判定を求める。

(2)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,登録第1608951号の願書及び図面に記載のとおり,意匠に係る物品を「コードレスクリーナースタンド」とし,実線で表された部分を部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本件部分」という。)としたものである。
ア 本件部分の用途及び機能について
本件部分は,コードレスクリーナースタンドのブラシ収納棚の筐体外郭及び筐体内郭部である。コードレスクリーナースタンドにおけるブラシ収納棚の正面・平面・底面・側面における棚板実装部における外郭形状と,ブラシ収納部の内郭形状を決するものである。
イ 本件部分の位置,大きさ及び範囲について
本件部分は,筐体外郭部及び筐体内郭部の円弧状より成り立つ。
より詳細には下記(ア)ないし(ク)を含む実線での範囲を占める。
(ア)筐体の正面部縁部を占める部分。
(イ)筐体の平面部縁部を占める部分。
(ウ)筐体の側面部縁部を占める部分。
(エ)筐体の底面部縁部を占める部分。
(オ)上記(イ)(エ)表面部,筐体の全長略1/8内側にて,筐体の全長略1/6を占める部分。
(カ)上記(イ)(エ)表面部,上記(オ)と結合された凹部,筐体の全長略1/14の半環状の貫通外郭部を占める部分。
(キ)上記(イ)(エ)表面部,上記(カ)と結合された環状部,筐体の全長略1/8の環状の貫通外郭部を占める部分。
(ク)上記(イ)(エ)表面部,上記(キ)と結合された環状部,筐体の全長略1/4の環状の貫通外郭部を占める部分。
ウ 本件部分の形態について
本件部分は,以下の態様を備えている。
(あ)上記(ア)は,平面状よりなりたち,上記(イ)(エ)に対し直角水平直線状に形成されており,上記(ウ)に対し直角垂直直線状に形成され,上記(イ)(ウ)(エ)との交角が鋭角をなすように形成されている。
(い)上記(イ)は,平面状よりなりたち,上記(ア)(ウ)に対し直角水平直線状に形成され,上記(ア)(ウ)との交角が鋭角をなすように形成されている。
(う)上記(ウ)は,平面状よりなりたち,上記(イ)(エ)に対し直角に水平直線状に形成されており,上記(ア)に対し直角に垂直直線状に形成され,上記(ア)(イ)(エ)との交角が鋭角をなすように形成されている。
(え)上記(エ)は,平面状よりなりたち,上記(ア)(ウ)に対し直角に水平直線状に形成され,上記(ア)(ウ)との交角が鋭角をなすように形成されている。
(お)上記(オ)は,円弧線をなし,(カ)との交角が鋭角をなし,上記(イ)(エ)に対し垂直貫通をなす円弧状に形成されている(以下「第1円弧部」という。)。
(か)上記(カ)は,半円形状をなし,第1円弧部との交角が鋭角をなすよう形成され,上記(イ)(エ)に対し垂直貫通をなす直角半円状に形成されている(以下「第1凹部」という。)。
(き)上記(キ)は,円弧線をなし,半円部との交角が鋭角をなすように形成され,上記(イ)(エ)に対し垂直貫通をなす円弧状に形成されている(以下「第2円弧部」という。)。
(く)上記(ク)は,円弧線をなし,(キ)との交角が鋭角をなし,上記(イ)(エ)に対し垂直貫通をなす円弧状に形成されている(以下「第2凹部」という。)。
(け)(ア)ないし(ク)について,図面上,色彩は施されていない。また願書及び図面中に,色彩及び素材に関する記述はない。

(3)イ号意匠の説明
ア イ号意匠は,甲第2号証に示すとおりであり,意匠に係る物品は「コードレスクリーナースタンド」である。
本件登録意匠との類比考察における知見を図るため,本件部分,本件登録意匠【甲第1号証】と本件相当部,イ号意匠物品【甲第2号証】に示す。
イ号意匠における本件部分に相応する部分(以下「本件相当部分」という。)は,下記(A)ないし(G)と認定できる。
(A)は,筐体の正面部を占める部分であって,本件部分の(ア)に相当する形状を有する部分である。
(B)は,筐体の平面部を占める部分であって,本件部分の(イ)に相当する形状を有するものである。
(C)は,筐体の側面部を占める部分であって,本件部分の(ウ)に相当する形状を有する部分である。
(D)は,筐体の底面部を占める部分であって,本件部分の(エ)に相当する形状を有する部分である。
(E)は,筐体の底面部を占める部分であって,本件部分の(オ)に相当する形状を有する部分である。
(F)は,筐体の底面部を占める部分であって,本件部分の(カ)に相当する形状を有する部分である。
(G)は,筐体の底面部を占める部分であって,本件部分の(キ)に相当する形状を有する部分である。
イ 本件相当部分の用途及び機能について
本件相当部分は,コードレスクリーナースタンドの筐体の外郭部及び内郭部であって,コードレスクリーナースタンド正面・側面視における外郭形状と,ブラシ収納棚設置部における内郭形状を決するものである。
ウ 本件相当部分の形態について
本件相当部分は,以下の態様を備えている。
(a)上記(A)は,平面状よりなりたち,上記(B)(D)に対し直角水平直線状に形成されており,上記(C)に対し直角垂直直線状に形成され,上記(B)(C)(D)との交角が鋭角をなすように形成されている。
(b)上記(B)は,平面状よりなりたち,上記(A)(C)に対し直角水平直線状に形成され,上記(A)(C)との交角が鋭角をなすように形成されている。
(c)上記(C)は,平面状よりなりたち,上記(B)(D)に対し直角に水平直線状に形成されており,上記(A)に対し直角に垂直直線状に形成され,上記(A)(B)(D)との交角が鋭角をなすように形成されている。
(d)上記(D)は,平面状よりなりたち,上記(A)(C)に対し直角に水平直線状に形成され,上記(A)(C)との交角が鋭角をなすように形成されている。
(e)上記(E)は,円弧線をなし,(F)との交角が鋭角をなし,上記(B)(D)に対し垂直貫通をなす円弧状に形成されている。
(f)上記(F)は,半円形状をなし,上記(E)との交角が鋭角をなすよう形成され,上記(B)(D)に対し垂直貫通をなす直角半円状に形成されている。
(g)上記(G)は,円弧線をなし,上記(F)との交角が鋭角をなすように形成され,上記(B)(D)に対し垂直貫通をなす円弧状に形成されている。

(4)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
ア 意匠に係る物品について
両意匠は,意匠に係る物品が「コードレスクリーナースタンド」で一致している。
両意匠は,「コードレスクリーナースタンド」としての機能及び用途を有する点において相違はなく,物品の類比を左右するものではない。
イ 本件部分及び本件相当部分の機能及び用途について
共通点:本件部分及び本件相当部分(以下「両部分」という)の機能及び用途について,両部分は,コードレスクリーナースタンド正面視・側面視における外郭形状と,ブラシ収納部の内郭形状を概ね決するものである点において合致している。
差異点:本件部分に形成された第2凹部は電動ブラシを収納する際にブラシ後部の電動配線を格納する部分が形成されているが,本件相当部分にはこれに相当する機能を有する部分がない。
ウ 両部分の位置,大きさ及び範囲について
両意匠は,両部分の位置,大きさ及び範囲において共通している。
イ号意匠は本件部分を,そのまま含んでいる。
エ 両部分の形態について,下記の共通点,差異点が認められる。
(ア)共通点
共通点1:(A)について,平面状よりなりたち,(B)(D)に対し直角水平直線状に形成されており,(C)に対し直角垂直直線状に形成され,(B)(C)(D)との交角が鋭角をなすように形成されている点。
共通点2:(B)について,平面状よりなりたち,(A)(C)に対し直角水平直線状に形成され,(A)(C)との交角が鋭角をなすように形成されている点。
共通点3:(C)について,平面状よりなりたち,(B)(D)に対し直角に水平直線状に形成されており,(A)に対し直角に垂直直線状に形成され,(A)(B)(D)との交角が鋭角をなすように形成されている点。
共通点4:(D)について,平面直線状よりなりたち,(A)(C)に対し直角に水平直線状に形成され,(A)(C)との交角が鋭角をなすように形成されている点。
共通点5:(E)について,円弧線をなし,(F)との交角が鋭角をなし,(B)(D)に対し垂直貫通をなす円弧状に形成されている点。
共通点6:(F)について,半円形状をなし,(E)との交角が鋭角をなすよう形成され,(B)(D)に対し垂直貫通をなす半円状に形成されている点。
共通点7:(G)について,円弧線をなし,(F)との交角が鋭角をなすように形成され,(B)(D)に対し垂直貫通をなす円弧状に形成されている。
共通点8:(E)(G)については同一円周を有する点。
共通点9:支柱に対し,筐体が水平直角に実装されている点。
(イ)差異点
差異点1:本件部分の筐体幅に対し,本件相当部分は筐体幅が拡張形成されている点。
差異点2:本件部分は,平面(ウ)より底面(エ)に貫通した第2凹部が形成されているのに対し,本件相当部分には形成されていない点。

(5)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
ア 本件登録意匠に関する先行周辺意匠
・意匠登録第1553690号(甲第3号証の1)
・意匠登録第1567024号(甲第3号証の2)
また先行意匠として下記の意匠が存在していた。
・実用新案登録第3204981号(甲第4号証)
本件登録意匠と,上記の公知意匠,先行意匠とを対比すると筐体に水平垂直に実装された棚板と内部の円弧重複貫通形状の態様において,従来にはない新規な意匠であると認められる。
イ 本件登録意匠の要部
本件登録意匠と,上記の公知意匠,先行意匠とを対比すると,下記の態様が,従来にはない新規なものであると認められる。
コードレスクリーナースタンドの正面配置における外郭部に四方長形のブラシ収納部の棚板である筐体が支柱に対し,垂直水平に設けられ,筐体内郭部に,「第1円弧部(オ)」,「第2円弧部(キ)」,「第1凹部(カ)」,「第2凹部(ク)」が結合した環状外周がブラシ収納をなす内郭形状に組み合わされた筐体が本件登録意匠となる態様。
筐体正面及び筐体側面の形態は,需要者によるコードレスクリーナースタンドの外郭像の認識を左右する重要な部分である,そのような部分に設けられる意匠は,需要者の注意を強く惹く意匠部分となる。またブラシ収納は,コードレスクリーナースタンドのインターフェイスとなる支柱部正面に設けられるものであることから,より需要者の注意を惹きやすい意匠部分である。
以上より,上記の態様が,本件登録意匠全体の基調を決する要部であるというべきである。
ウ 本件登録意匠とイ号意匠との類比考察
(ア)両意匠の共通点について
(ア-1)両部分の位置,大きさ及び範囲について
上記のとおり本件部分にイ号意匠は,ほぼそのまま重複しており,両部分の位置,大きさ及び範囲において重複,共通性は極めて顕著であり,この点が類比判断に与える影響は大きいというべきである。
(ア-2)両部分の機能及び用途について
両部分の機能及び用途のうち,コードレスクリーナースタンド正面・側面視における外郭形状と,ブラシ収納における筐体内郭形状を概ね決し,支柱正面に水平直角に実装するという点の共通性は,コードレスクリーナースタンドの外観形状を特徴付けるものであり,両部分の主たる役割といえることから,類比判断において重視すべき点である。
(ア-3)両部分の形態について
共通点1ないし9は,コードレスクリーナースタンド正面・側面における外郭形状と,ブラシ収納部の内郭形状を概ね決する部分であり,需要者の注意を惹き,両意匠の骨格形態に強い共通性を付与するものである。
よって,共通点1ないし9は,本件登録意匠の要部をなすコードレスクリーナースタンドにおけるブラシ収納棚を形成するものであり,新規かつ美観的に顕著なもので,需要者の注意を強く惹くことから,両意匠の類比判断に大きな影響を与えるものである。
(イ)両意匠の差異点について
(イ-1)両部分の位置,大きさ及び範囲について
両部分に見られる筐体横幅拡張と複数展開は,付加的なものに過ぎないものであり,類比判断に与える影響は微弱である。
(イ-2)両部分の機能及び用途について
本件登録意匠と同一機能,同一用途である。
(イ-3)両部分の形態について
差異点1は,筐体横幅拡張と機能部における複数展開は,付加的なものに過ぎないものであり,類比判断に与える影響は微弱である。
差異点2は,限られた一部分における差異に過ぎないものであり,共通点のもとに重複し,両意匠の類比判断に与える影響は微弱である。
(イ-4)本件登録意匠は願書及び図面において素材に関して何ら言及しておらず素材を特定したものではない。イ号意匠においてプリント化粧合板素材を用いた点は,特段新規な特徴となるものではない。以上より,色彩及び素材は,本件意匠での類比判断において考慮されるものではない。
(ウ)両意匠の類比
以上に述べたとおり,共通点が本件登録意匠の要部にあたり,両意匠に強い共通性を付与しているのに対し,差異点はいずれも微弱な要素である。
よって,両意匠を全体的に対比観察した場合,共通点が差異点をはるかに凌駕し,需要者の視覚を通じて共通の美観と機能を与えており,イ号意匠は本件登録意匠に類似するというべきである。
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
上記事由により本件請求の趣旨どおりの判定を求める。

3 証拠方法
甲第1号証 意匠登録第1608951号 公報の抜粋
甲第2号証の1 イ号意匠物品全体における本件相当部実装における
実物取扱説明書による赤丸内が当該部分
甲第2号証の2 イ号意匠物品全体における本件相当部の実装実写画像
該当製品番号:DB-510
甲第2号証の3 イ号意匠物品全体における本件相当部の実装実写画像
該当製品番号:DB-530
甲第2号証の4 本件相当部・棚板部・上段(図面化)
正面図・平面図・側面図・底面図
甲第2号証の5 本件相当部・棚板部・上段(実写画像)
正面図・平面図・側面図・底面図
甲第2号証の6 本件相当部・棚板部・中段(図面化)
正面図・平面図・側面図・底面図
甲第2号証の7 本件相当部・棚板部・中段(実写画像)
正面図・平面図・側面図・底面図
甲第2号証の8 本件相当部における棚板部・下段(図面化)
正面図・平面図・側面図・底面図
甲第2号証の9 本件相当部における棚板部・下段(実写画像)
正面図・平面図・側面図・底面図
甲第2号証の10 本件相当部・棚板部・上段・中段・下段
平面斜視・底面斜視(実写画像)
甲第3号証の1 本件登録意匠に関する先行周辺意匠
意匠登録第1553690号
甲第3号証の2 本件登録意匠に関する先行周辺意匠
意匠登録第1567024号
甲第4号証 実用新案登録第3204981号

<イ号物品の通信販売サイト>
「Amazon.co.jp」
製造販売者:株式会社 シアターハウス
店舗名:シアターハウス
商品タイトル:ダイソンコードレスクリーナー専用
スタンド壁掛け 収納 日本製 V10 V8 V7
V6 DC74 DC62 DC45 DC35対応
ホワイト
製品番号:DB-510
商品タイトル:ダイソンコードレスクリーナー専用
スタンド壁掛け 収納 日本製 V10 V8 V7
V6 DC74 DC62 DC45 DC35対応
(ツール収納モデル)
該当製品番号:DB-530

「楽天ショッピング」
製造販売者:株式会社 シアターハウス
店舗名:シアターハウス
商品URL : https://item.rakuten.co.jp/yskk/db-4/
製品番号:DB-510
商品URL : https://item.rakuten.co.jp/yskk/db-450/
該当製品番号:DB-530

「Yahooショッピング」
製造販売者:株式会社 シアターハウス
店舗名:シアターハウス
商品タイトル:ダイソンコードレスクリーナー専用
スタンド壁掛け 収納 日本製 V10 V8 V7
V6 DC74 DC62 DC45 DC35対応
(ツール収納モデル)
該当製品番号:DB-510:DB-530


第3 被請求人の答弁の趣旨及び理由
1 答弁の趣旨
イ号意匠及びその説明書に示す意匠は,登録第1608951号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない,との判定を求める,と答弁し,その理由として,要旨以下のとおりの主張をした。

2 答弁の理由
(1)被請求人の主張の要旨
甲第2号証の3ないし10(製品番号DB-530)に表れている意匠であるイ号意匠は,意匠登録第1608951号公報(乙1)に記載された本件登録意匠とは類似していないし,本件登録意匠の出願前に被請求人が販売していた製品及び請求人が開示していた製品に表れている公知の意匠と同一である。よって,イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。以下,詳述する。

(2)本件登録意匠の説明
意匠登録第1608951号公報(乙1)に基づいて説明する。
ア 本件登録意匠は,乙第1号証の正面図及び右側面図に示すとおり,3枚の同一形状の棚板が上下方向に間隔を空けて水平方向に沿うように配列された態様となっており,各棚板は「実線部分の拡大平面図」に示すとおり外形線がほぼ正方形状となっている。
イ 「実線部分の拡大平面図」に示すように,各棚板の内部に表れているブラシ収納部の態様は以下のとおりである。
(ア)2つの異なる径の円弧が接続された,いわゆる達磨形のシルエット形状に,大きい径の円弧の直径方向の両側を切欠いて小さい半円弧がそれぞれ外方に接続された6つの円弧を一体に接続した形状となっている。
(イ)大きい径の円弧と小さい径の円弧の中心は,外形線となる正方形の対向する二辺の中点を結ぶ中心線に沿って設定され,正方形の一辺の長さを1とすると,大きい径の円弧は半径0.21の円弧で,小さい径の円弧は半径0.16の円弧であり,大きい径の円弧の中心位置は正方形の中心から対向する二辺の一方に向かって0.19ずれて設定され,小さい径の円弧の中心位置は正方形の中心から他方に向かって0.04ずれて設定されている。
(ウ)小さい半円弧は,外形線となる正方形の一辺の長さを1とすると,半径0.03の半円弧で,正方形の中心線に対して大きい径の円弧の直交する直径方向の両側を切欠いて外方に突出するように接続されている。

(3)イ号意匠の説明
ア 甲第2号証の3ないし10(ダイソンコードレスクリーナー専用壁寄せスタンド,製品番号DB-530)に表れる意匠をイ号意匠として説明する。
イ イ号意匠は,上下方向に間隔を空けて水平方向に沿うように配列された3枚の棚板(甲2の3)が,それぞれ甲第2号証の5,甲第2号証の7及び甲第2号証の9に示すとおりの形状となっており,各棚板の外形は上下方向からみて長方形となっている。
ウ 上段及び中段の棚板には,長方形の対向する2つの長辺の中点を結ぶ中心線上にあり棚板の長方形の中心からずれた位置に中心を有する半径18mmの円弧状の貫通穴が形成されている。また,長方形の対向する2つの長辺の中点を結ぶ中心線に対して直交する貫通穴の直径方向の両側には,半径2.5mmの半円弧状の一対の切欠きが貫通穴の軸方向に沿って形成されている。
エ 下段の棚板には,長方形の対向する長辺の両端から25mmの位置をそれぞれ結ぶ一対の中心線に中心を有する半径18mmの円弧状の一対の貫通孔が形成されている。各貫通穴の中心は中心線の中点からずれた位置に設定されている。また,中心線に対して直交する各貫通穴の直径方向の両側には半径2.5mmの半円弧状の一対の切欠きが各貫通穴の軸方向に沿って形成されている。
オ よって,上段及び中段の棚板には,上下方向からみて,貫通孔に対応する大きい円弧の直径方向の両側に一対の切欠きに対応する小さな半円弧がそれぞれ接続された4つの円弧からなる態様が表れており,下段の棚板には,上下方向からみて,同様の4つの円弧からなる態様が一対,表れている。

(4)イ号意匠における貫通穴及び切欠きの機能
ア 乙第2号証は,ダイソンコードレスクリーナー専用壁寄せスタンド(製品番号DB-530。以下「イ号製品」という。)を説明するアマゾン社提供のウェブサイトを抜粋したものである。乙第2号証に示されているように,イ号製品では棚板の貫通穴にダイソンコードレスクリーナーの付属品の接続部分を挿し込んで保持するようになっている。そのため,貫通穴は付属品の接続部分の形状に対応した形状となっている。
イ 乙第3号証及び乙第4号証は,ダイソン・テクノロジー・リミテッドが意匠権を有する電気掃除機用吸い込み口本体に関する意匠登録公報である。これらの公報からわかるように,本体の接続部分の形状は,円筒形のパイプ状に形成されており,円筒形の外周面の両側には,軸方向に沿って直線状の突条部がそれぞれ形成されている。こうした接続部分の形状は,ダイソン社が販売している電気掃除機の付属品に共通の形状となっている。
ウ イ号製品では,ダイソン社が販売している電気掃除機の付属品に共通する接続部分の形状に合わせて貫通穴及び切欠きを形成している。すなわち,接続部分の円筒状の外形の半径を考慮したうえで貫通孔の半径を18mmに設定し,接続部分の両側の突条部の幅及び高さを考慮したうえで切欠きを2.5mmの半円弧に形成しており,これによって,付属品がぐらつくことなく保持されるとともに容易に取り外すことができる機能を備えている。このように,イ号意匠に表れる貫通穴及び切欠きの態様は,ダイソン社の電気掃除機の付属品に共通する接続部分の形状に合わせて必然的に決まるものにすぎない。

(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較
ア 本件登録意匠とイ号意匠とを対比した場合,棚板が上下方向に間隔を空けて水平方向に沿うように配列された態様となっている点では一応は共通するものの,本件登録意匠は3枚の棚板が正方形状の外形で同一の形状であるのに対して,イ号意匠は3枚の棚板が長方形状であり,かつ上段及び中段の棚板と下段の棚板との形状が異なっている点で差異がある。また,本件登録意匠は,棚板に表れるブラシ収納部の態様が,大きさの異なる2つの円弧を接続した(いわゆる達磨形の)シルエット形状に,大きい径の円弧の直径方向の両側を切欠いて,小さい半円弧がそれぞれ外方に接続された態様となっているのに対し,イ号意匠では,貫通穴に対応する大きい円弧の直径方向の両側に小さい半円弧が接続された態様となっている点で顕著な差異がある。
イ なお,請求人は,判定請求書において「イ号意匠は本件部分を,そのまま含んでいる」と主張しているが,イ号意匠では,ひとつの円弧の両側に2つの半円弧が接続された態様が表れているのであって,請求人が特定する本件部分のように,2つの異なる径の円弧を接続した態様は表れていない。したがって,イ号意匠が「本件部分をそのまま含んでいる」などとはいえない。

(6)本件登録意匠の出願時における公知意匠
ア 乙第2号証によれば,イ号製品に関する登録情報として,取り扱い開始日が2017年7月6日となっており,また,2017年9月30日付けのカスタマーレビューが記録されている。なお,2018年3月20日にダイソン社より発売された新型コードレスクリーナーは,壁に固定するための収納用ブラケットの形状が従来の製品と異なるため,イ号製品においても電源コードを裏に配線するためのコード通し穴の追加が必要となり,同年4月に製品番号がDB-450からDB-530へ変更されたが(乙5),棚板の形状,貫通穴及び切欠きの形状は販売当初から付属品の接続部分に対応した同じ形状である。
イ 乙第6号証は,イ号製品の変更前の製品番号DB-450に関するアマゾン社への納品実績の一例を示すリストであり,2017年9月11日から同月15日にかけて製品番号DB-450シリーズ(DB-450MDB及びDB-450W)が大阪府大東市のアマゾン社入庫係あてに納品されたことが示されている。
ウ このように,本件登録意匠の出願前からイ号製品と同じ棚板を備えた製品が取り扱われて実際に販売されていることから,イ号製品の棚板の形状は本件登録意匠の出願時において公知であったといえる。
エ また,乙第7号証は,ダイソンコードレスクリーナー専用スタンド「ALBERO」に関する商品モニターを記載した前川企画印刷(神戸市)の公式ブログの抜粋である。当該ブログはアクセスが制限されておらず,不特定多数の者に公開されている。また,当該ブログに記載されている「ウッドファクトリーナツキ」は当時の請求人の商号である(乙8の1,2)。当該ブログには,本件登録意匠の出願前である2017年10月21日付けで,3枚の棚板にダイソン社の付属品の接続部分を挿し込む円形の貫通孔が形成されており,貫通孔の直径方向の両側に半円弧の切欠きが形成されている撮影画像が掲載されている。この点においても,ダイソン社の付属品の接続部分に対応する大きな円弧の直径方向の両側に半円弧が接続された態様は本件登録意匠の出願時において公知であったといえる。

(7)本件登録意匠の要部
ア 登録意匠とそれ以外の意匠との類否の判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされ(意匠法24条2項),その判断に際しては,両意匠を全体的観察により対比し,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,更には登録意匠における公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,登録意匠について需要者が視覚を通じて注意をひきやすい特徴的部分(要部)を把握し,この特徴的部分を中心に両意匠を対比した上で,両意匠が全体的な美感を共通にするか否かによって類否を決するのが相当と解される(東京地方裁判所平成24年6月29日判決・判例時報2193号91頁)。
イ イ号製品に表れる貫通孔及び切欠きと同一又はこれと類似の態様は,ダイソン社のクリーナー付属品における接続部分の形状に合わせた態様にすぎないし(前述第(4)項),本件登録意匠の出願前に公知意匠として開示されていたから(前述第(6)項),このような態様は本件登録意匠の要部となり得ない。本件登録意匠において要部となり得る構成態様は,こうした製品の機能面から避けることができない公知の態様及びこれに類似する態様を除く態様となるが,そのような構成態様はいずれもイ号意匠と異なっている(前述第(5)項)。
したがって,イ号意匠は本件登録意匠の要部を備えることがなく,本件登録意匠と非類似である。
ウ なお,請求人は,本件登録意匠とイ号意匠との類比に関して,コードレスクリーナースタンド全体の態様をも含めた主張をしている。しかしながら,本件登録意匠が3枚の同一形状からなる棚板の態様なのであることは明らかであるから(乙1,上述第(2)項),このような請求人の主張は失当である。

(8)結論
よって,被請求人は「判定請求の趣旨に対する答弁」のとおりの判定を求める次第である。

3 証拠方法
乙第1号証 意匠公報(本件登録意匠)
乙第2号証 amazonウェブサイト(抜粋)
乙第3号証 意匠公報(ダイソン・テクノロジー・リミテッド)
乙第4号証 意匠公報(同上)
乙第5号証 取り扱い説明書(抜粋)
乙第6号証 納品実績リスト(2017年9月)
乙第7号証 公式ブログ(2017年10月21日付け)
乙第8号証の1 請求人宛書面
乙第8号証の2 郵便物配達証明書


第4 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は,その願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「コードレスクリーナースタンド」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりであり,「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。部分意匠を受けようとする棚板の拡大図の平面図,底面図を示している。」(以下,当該部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本件部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

そして,具体的には,本件部分は,コードレスクリーナーを収納するスタンドに設けた4段の棚板部分であり,その「用途及び機能」,「位置,大きさ及び範囲」並びに「形状」を以下のとおりとしたものである。
なお,願書に添付した図面は,正投影図法により記載されているところ(意匠法施行規則第3条様式第6備考8),「平面図」,「底面図」,「実線部分の拡大平面図」及び「実線部分の拡大底面図」については,上下逆さに表したものであるから,以下,正しい向き(180度回転させた状態)で認定する。

(1)本件部分の用途及び機能
本件部分は,コードレスクリーナーに付属する交換用吸い込み口を,その継ぎ手部を嵌通させて保持する,という用途及び機能を有するものである。

(2)本件部分の位置,大きさ及び範囲
本件部分は,コードレスクリーナーを収納するスタンドの正面の下半部の位置にあり,大きさについては,係止孔の直径(大きい略円形の方の直径)を1とした場合に,各棚板の奥行き,横幅及び厚みを約2.5×2.5×0.5とし,範囲については,4か所部分(4段からなる全棚板部分)としたものである。

(3)本件部分の形状
本件部分である4段の棚板部分は,いずれも平面視略正方形の板状体とし,背板に水平に設けたものであって,各棚板の前方寄りの左右方向中央に,上面から下面へ鉛直に貫通する係止孔をそれぞれ1個設け,いずれの係止孔も,平面視で大きな略円形の上に小さな略円形を載せ,大きい略円形の左右にごく小さな半円形の切り欠き部を突出させたもの(以下「略達磨形」ともいう。)である。

2 イ号意匠
イ号意匠は,甲第2号証の1(別紙第2参照)の記載によれば,意匠に係る物品を「コードレスクリーナー用壁寄せスタンド」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合は,甲第2号証の3ないし10に表したとおりのものであり(甲第2号証の3,5,7及び9について,別紙第3参照),イ号意匠において本件部分に相当する部分を,以下「イ号部分」と称する。

そして,具体的には,イ号部分は,コードレスクリーナーを収納するスタンドに設けた3段の棚板部分であり,その「用途及び機能」,「位置,大きさ及び範囲」並びに「形状」を以下のとおりとしたものである。
なお,甲第2号証の4ないし9の図面中,「平面図」及び「底面図」については,本件意匠と同様に上下逆さに表したものであるから,以下,正しい向き(180度回転させた状態)で認定する。

(1)イ号部分の用途及び機能
イ号部分は,コードレスクリーナーに付属する交換用吸い込み口を,その継ぎ手部を嵌通させて保持する,という用途及び機能を有するものである。

(2)イ号部分の位置,大きさ及び範囲
イ号部分は,コードレスクリーナーを収納するスタンドの正面の下半部の位置にあり,大きさについては,係止孔の直径(略円形の直径)を1とした場合に,各棚板の奥行き,横幅及び厚みを約2.3×4×0.6とし,範囲については,3か所部分(3段からなる全棚板部分)としたものである。

(3)イ号部分の形状
イ号部分である3段の棚板部分は,いずれも平面視で縦横比が約1対1.8の横長長方形の板状体とし,背板に水平に設けたものであって,棚板の上面から下面へ鉛直に貫通する係止孔を,上段及び中段の棚板においては,それぞれの前方寄りの左右方向中央に1個,下段の棚板においては,前方寄りの左右に2個設け,いずれの係止孔も,平面視正円形とし,その左右にごく小さな半円形の切り欠き部を突出させたもの(以下「略円形」ともいう。)である。

3 両意匠の対比
以下,本件意匠とイ号意匠を併せて「両意匠」といい,本件部分とイ号部分を併せて「両部分」という。
(1)両意匠の意匠に係る物品
本件意匠の意匠に係る物品は「コードレスクリーナースタンド」であるのに対して,イ号意匠の意匠に係る物品は「コードレスクリーナー用壁寄せスタンド」である。

(2)両部分の用途及び機能
両部分は,どちらもコードレスクリーナーに付属する交換用吸い込み口を,その継ぎ手部を嵌通させて保持する,という用途及び機能を有するものである。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲
両部分は,どちらもコードレスクリーナーを収納するスタンドの正面下半部の位置にあるもので,大きさについては,本件部分は,係止孔の直径を1とした場合に,各棚板の奥行き,横幅及び厚みを約2.5×2.5×0.5とするのに対して,イ号部分のそれは,約2.3×4×0.6とし,範囲については,本件部分は,4か所部分(4段からなる全棚板部分)であるのに対して,イ号部分は3か所部分(3段からなる全棚板部分)である。

(4)両部分の形状
両部分の形状を対比すると,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
ア 共通点
(ア)各棚板の平面視の外形状を同一とした点。
(イ)各棚板を水平に設けた点。
(ウ)各棚板に上面から下面へ鉛直に貫通する係止孔を設けた点。
(エ)各係止孔の位置を各棚板の前方寄りとした点。
(オ)各係止孔の形状を同一とした点。
(カ)各係止孔の左右にごく小さな半円形の切り欠き部を突出させた点。

イ 相違点
(ア)各棚板の平面視の外形状について,本件部分は,略正方形としたのに対して,イ号部分は,縦横比を約1対1.8とする横長長方形とした点。
(イ)各係止孔の平面視の形状について,本件部分は,略達磨形としたのに対して,イ号部分は,略円形とした点。
(ウ)各棚板における係止孔の個数について,本件部分は,全ての棚板に1個設けたのに対して,イ号部分は,上段及び中段の棚板にそれぞれ1個,下段の棚板に2個設けた点。

4 類否判断
(1)両意匠の意匠に係る物品について
両意匠の意匠に係る物品については,表記上は「壁寄せ」の有無において異なるものの,両意匠共にコードレスクリーナー及びその付属品を収納するためのものであり,通常は壁に寄せて使用するものと認められ,その使用目的及び使用状態が一致しているといえるから,同一である。

(2)両部分の用途及び機能について
両部分の用途及び機能については,両部分共にコードレスクリーナーに付属する交換用吸い込み口を,その継ぎ手部を棚板に設けた係止孔に嵌通させて保持するものであるから,同一である。

(3)両部分の位置,大きさ及び範囲について
両部分の位置については,同一と認められ,大きさ及び範囲については,相違するものの,その相違はありふれた範囲内のものと認められるから,両部分の位置,大きさ及び範囲は,類似する。

(4)両部分の形状について
ア 共通点の評価
共通点(ア)及び共通点(イ)については,棚板として極めてありふれた態様であり,両部分のみの特徴とはいえないから,両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
共通点(ウ)及び共通点(オ)については,両部分の係止孔の形状を概念的に捉えたに過ぎないものであって,具体的に見れば,相違点(イ)として挙げたように,両部分の形状は大きく異なるから,両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
共通点(エ)については,需要者が注意を惹く程のものではないから,両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
共通点(カ)については,半円形の切り欠き部は,係止孔に嵌入される交換用吸い込み口の継ぎ手部の外周面に形成された筋状凸部に対応させたものであり(乙第2ないし第4号証),当該切り欠き部の有無によって吸い込み口が嵌るか否か決まることから,一定の共通感をもたらすものといえるが,当該切り欠き部の形状が半円形状である点は,前記筋状凸部の形状に基づいたものに過ぎないし,当該切り欠き部はごく小さいものであるから,両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,相違点(イ)をくつがえす程ではなく,限定的といわざるを得ない。

イ 相違点の評価
相違点(ア)については,両部分共に棚板の平面視外形状としてはありふれたものといえるとしても,一見して気が付く寸法差と外形の相違であるから,両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。
相違点(イ)については,両部分の用途及び機能からすると,係止孔は,両部分において需要者が特に注意を惹く部分であるといえ,その形状が略達磨形であるか,それとも略円形であるかの相違は,両部分について著しく異なる印象をもたらすから,両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,極めて大きい。
相違点(ウ)については,本件部分が統一感のあるシンプルな印象を与えるのに対して,イ号部分は,そのような印象を与えないから,両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。

ウ 両部分の形状の類否
両部分について部分の形状を全体として総合的に観察した場合,上述の両部分の形状における共通点及び相違点の評価に基づけば,共通点(ア)ないし(オ)は,いずれも両部分の形状の類否判断に及ぼす影響が小さく,共通点(カ)は,限定的であるのに対して,相違点(イ)の係止孔の形状の相違は,両部分の形状の類否判断に及ぼす影響が極めて大きく,その余の相違点も加わって,両部分の形状の類否判断を決するものといえるから,イ号部分の形状は,本件部分の形状に類似するものではない。

(5)両意匠の類否
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一,両部分の用途及び機能が同一,両部分の位置,大きさ及び範囲が類似するものの,両部分の形状は類似せず,両意匠において需要者に異なる美感を起こさせるから,イ号意匠は,本件意匠に類似するものとはいえない。

(6)判定請求人の主張について
前記(1)ないし(5)のとおりであるから,判定請求人の主張は採用することができない。
なお,判定請求人は,本件部分のうち達磨形の係止孔について,小さい方の略円形の孔は,配線のためのものであり,当該孔の有無は,限られた一部分の相違に過ぎない旨主張するが,当該孔が配線のためのものである点については,本件意匠の願書及び願書に添付した図面からは認識することができず,仮に,当該孔が配線のためのものであるとしても,大きい方の略円形の孔の上部に一体的に形成されて,視覚的には孔全体が達磨形として認識されるものであり,本件部分の要部における形状に関わる相違と認められるから,小さい方の略円形の孔の存在を軽視した主張は採用することができない。

5 むすび
以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2019-10-29 
出願番号 意願2017-29693(D2017-29693) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (C3)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 井上 和之 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2018-06-22 
登録番号 意匠登録第1608951号(D1608951) 
代理人 野坂 佳生 
代理人 川崎 好昭 
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