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審決分類 審判    K3
審判    K3
管理番号 1357743 
審判番号 無効2018-880009
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-07-24 
確定日 2019-11-25 
意匠に係る物品 自走収穫式ロールベーラ 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1523600号「自走収穫式ロールベーラ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が意匠権者である意匠登録第1523600号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)についての登録を無効とすることを求める事案である。
本件登録意匠は、平成26年(2014年)11月25日に意匠登録出願(意願2014-26299)されたものであって、審査を経て平成27年4月10日に意匠権の設定の登録がなされ、平成27年5月18日に意匠公報が発行されたものである。
その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。
平成30年 7月24日付け:審判請求書の提出
平成30年10月30日付け:無効審判事件答弁書の提出
平成30年12月18日付け:審判事件弁駁書の提出
平成31年 1月31日付け:当合議体から請求人に対する審尋
平成31年 2月27日付け:回答書(請求人)
平成31年 4月 9日付け:無効審判事件答弁書(第2回)の提出
令和 1年 5月 8日付け:審理事項通知書の送付
令和 1年 7月 2日付け:口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
令和 1年 7月12日付け:口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
令和 1年 7月30日 :口頭審理

第2 請求人の主張の概要
1 審判請求書
請求人は、平成30年7月24日付けで審判請求書を提出し、「登録第1523600号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として要旨以下のように主張するとともに、その主張事実を立証するため、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証の書証を提出した。
(1)手続の経緯
意匠登録出願 平成26年11月25日
意匠権設定の登録 平成27年 4月10日

(2)意匠登録無効の理由の要点
本件登録意匠は、甲第1号証の意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号(以下「無効理由1」という。)の規定に違反して登録されたため、同法第48条第1項1号により無効とすべきである。
また、本件登録意匠は、甲第1号証から甲第5号証の意匠から容易に想到することができるものであるから、意匠法第3条第1項第2項(当審注:「意匠法第3条第2項」の誤記と認められる。)(以下「無効理由2」という。)の規定に違反して登録されたものであるため、同法第48条第1項1号により無効とすべきである。

(3)無効理由1
(3-1)本件登録意匠と先行意匠の構成
ア 本件登録意匠
本件登録意匠は、以下の態様で構成されている。
(A)基本的構成態様
(a)車体前方に設けられた2つのドラムカッターを有する。
(b)ドラムカッターで刈り取られた飼料をホッパーに投入するシュートを有する。
(c)ホッパーに投入された飼料からロールベールを形成するロール成形室を有する。
(B)具体的構成態様
(d)シュートが運転席の天井よりも低く設けられている。
(e)シュートからホッパーに向けて水平方向に飼料を排出させるようになっている。
(f)シュートがドラムカッターの側方から平面視の斜め方向を向いている。

イ 甲第1号証
甲第1号証は、ドラム式カッターとロール形成部などを一体化させた最先の登録意匠(公報発行日:平成25年5月27日)であって、以下の構成を有する。
(a)車体前方に2つのドラムカッターを有する。
(b)ドラムカッターで刈り取られた飼料をホッパーに投入するシュートを有する。
(c)ホッパーに投入された飼料からロールベールを形成するロール成形室を有する。

(3-2)本件登録意匠と先行意匠の一致点及び相違点
両意匠の類否を判断するに際して、意匠全体を観察することを大原則とし、看者が最も注意を引かれる部分、重きをおくべき部分が参酌される。また、その際、公知意匠に開示されている部分は、取引者、需要者にとってありふれて見えるものとなり、注意を引かないし、重きがおかれないとされる。
これらの原則を踏まえた上で、ドラムカッターを有するロールベーラー(当審注:以下「ロールベーラ」に統一して記載する。)は、前方に設けられたドラム部分が最も特徴を有するものであり、甲第1号証には、本件登録意匠の基本的態様である(a)(b)(c)をすべて備えている。
なお、甲第1号証には、本件登録意匠の具体的態様である「(d)シュートが運転席の天井よりも低く設けられている。」、「(e)シュートからホッパーに水平方向に飼料を排出するようになっている。」、「(f)シュートがドラムカッターの側方から平面視の斜め方向を向いている。」という構成が開示されていない。しかしながら、当該具体的態様(d)?(f)は、次に述べる甲第2号証から甲第4号証に示されるように、出願前に公知の構造であり、意匠の要部とはなりえない。
ア 甲第2号証
甲第2号証は、本件意匠登録出願の出願日前である2014年10月に韓国の展示会で発表されたパンフレットに記載されたロールベーラであって、以下の構成を有する。なお、証拠資料中、1頁の下方部分の赤枠で囲われた部分「201410」の記載が、パンフレットの発行された日付を示すものである。
(a’)車体前方に設けられた1つのドラムカッターを有する。
(b)ドラムカッターで刈り取られた飼料をホッパーに投入するシュートを有する。
(c)ホッパーに投入された飼料からロールベールを形成するロール成形室を有する。
(d)シュートが運転席の天井よりも低く設けられている。
(e)シュートからホッパーに横方向に飼料を排出するようになっている。
(f)シュートがドラムカッターの側方から平面視において斜め方向を向いている。

イ 甲第3号証
甲第3号証は、本件意匠登録出願の出願日前である2013年12月26日に公開された韓国国検のホームページの画面であって、画面中のPDFを選択した際のロールベーラの写真を示すものであり、甲第2号証と同様に、以下の構成を有する。
(a’)車体前方に設けられた1つのドラムカッターを有する。
(b)ドラムカッターで刈り取られた飼料をホッパーに投入するシュートを有する。
(c)ホッパーに投入された飼料からロールベールを形成するロール成形室を有する。
(d)シュートが運転席の天井よりも低く設けられている。
(e)シュートからホッパーに横方向に飼料を排出するようになっている。
(f)シュートがドラムカッターの側方から平面視において斜め方向を向いている。

ウ 甲第4号証
甲第4号証は、本件意匠登録出願の出願日前である2014年10月29日に新聞に掲載されたものあって、甲第2号証や甲第3号証と同様に、以下の構成を有する。
(a’)車体前方に設けられた1つのドラムカッターを有する。
(b)ドラムカッターで刈り取られた飼料をホッパーに投入するシュートを有する。
(c)ホッパーに投入された飼料からロールベールを形成するロール成形室を有する。
(d)シュートが運転席の天井よりも低く設けられている。
(e)シュートからホッパーに横方向に飼料を排出するようになっている。
(f)シュートがドラムカッターの側方から平面視において斜め方向を向いている。
このため、本件登録意匠の具体的態様(d)?(f)は意匠の要部とはなりえず、基本的態様が同一の甲第1号証と類似するものである。

(4)無効理由2
(4-1)本件登録意匠と先行意匠の構成
本件登録意匠及び甲第1号証から甲第4号証は、上記(3)で記載された構成を有する。また、甲第5号証は次の構成を有している。
ア 甲第5号証
(a’)車体前方に1つのドラムカッターを有する。
(b)ドラムカッターで刈り取られた飼料をホッパーに投入するシュートを有する。
(c)ホッパーに投入された飼料からロールベールを形成するロール成形室を有する。

(4-2)本件登録意匠と先行意匠の一致点及び相違点
本件登録意匠は、上記(3)で述べたように、基本的態様において甲第1号証の構成を全て有しており、また、具体的態様において甲第2号証から甲第4号証の構成を全て有している。
一方、甲第2号証及び甲第4号証のロールベーラは、前方に設けられたドラムカッターが一つであるという点で本件登録意匠と相違する。
しかるに、甲第5号証には、前方に1つのドラムカッターを有するロールベーラが開示されており、ドラムカッターを1つにするか2つにするかは当業者が容易に想到しえるものである。
このため、本件登録意匠は、甲第1号証から第5号証に基づいて当業者が容易に想到しえるものである。

(5)むすび
したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号又は意匠法第3条第1項第2項(当審注:「意匠法第3条第2項」の誤記と認められる。)の規定に違反して登録されたものであるため、同法第48条第1項1号により無効とすべきである。

(6)証拠方法
・甲第1号証 意匠登録第1470080号公報
・甲第2号証 パンフレット「大韓民国国際農機械資材博覧会」
・甲第3号証 「韓国国検のホームページ(農業機械成績書)」
・甲第4号証 「韓国の新聞記事」
・甲第5号証 意匠登録第1495108号公報

2 審判事件弁駁書
また、請求人は、被請求人の平成30年10月30日付け無効審判事件答弁書に対し、平成30年12月18日付けで審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)を提出し、要旨以下のように反論を行った。
(1)「7.答弁の理由 カ」(当審決では、第3 1(1)カ)への弁駁
ア 答弁書の「7.答弁の理由 カ」において、被請求人は「乙第1号証?乙第4号証に示すとおり、多くの自走収穫式ロールベーラには、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室部が存在するので、この点の共通性のみで類否判断することは極めて概念的であり、ほとんどの自走収穫式ロールベーラが類似となるので、相当でない。」と主張している。
しかしながら、被請求人が提示した乙第1号証?乙第4号証の自走収穫式ロールベーラは、車体前方にドラムカッターを有するものではない。
一般的に、意匠の類否を判断する場合、全体観察を大原則とし、最も注意を引きやすい部分が類似するか否かによって判断されるものである。この点に関して、自走収穫式ロールベーラのドラムカッターは、車体前方に非常に大きく設けられており、看者の注意が最も行く部分になる。仮に、甲第1号証の出願前に、ドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラが存在するのであれば、具体的構成態様における類否判断は可能であると考えられるが、甲第1号証の出願前にドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラが存在しない以上、基本的構成態様で類否を判断すべきであると考える。

イ また、被請求人は、「甲第1号証がすでに登録になっているにもかかわらず、甲第5号証が類似とされずに登録になっているため、具体的各部の対比が必須である」と主張している。しかしながら、甲第1号証は、車体前方のドラムカッターが2つであるのに対して、甲第5号証はドラムカッターが1つになったものであり、看者の注意が最も行く大きな部分が相違するものである。このため、観者の注意が最も行くドラムカッターの部分を無視して、その他の具体的各部の対比によって類否を判断すべきではないと考える。

ウ したがって、無効理由1に対する答弁には、理由がないということができる。

(2)「7.答弁の理由 (2)無効理由2について」(当審決では、第3 1(2)無効理由2について)の弁駁
ア 被請求人は、「創作が容易かどうかは、国内外の公知の形態に基づいて容易に創作できたかどうかを問うものであるから、基づくべき公知の形態を明確にしなければならない。しかるに、公知の形態については極めて概念的にしか記載されていないので、容易と判断した考え方または根拠が不明確であるといわざるを得ない。」と主張している。
しかしながら、具体的構成態様に関して、甲第2号証から甲第4号証には下記の事項が明確に開示されている。
(d)シュートが運転席の天井よりも低く設けられている。
(e)シュートからホッパーに向けて水平方向に飼料を排出させるようになっている。
(f)シュートがドラムカッターの側方から平面視において斜め方向を向いている。

イ また、被請求人は、「ところで、乙第5号証によれば、本件登録意匠の出願日前の平成25年8月23(当審注:「平成25年8月23日」の誤記と認められる。)の特許出願時において、ロールベーラ本体の上下動による不具合等を拡散板の配置により防止し、飼料の投入口をホッパー部の上面ではなく前面側部に設けることによりシュートを低く形成した技術が容易想到ではないとして特許として登録されている。」と主張している。しかしながら、特許における進歩性と、意匠における創作非容易性は全く基準が異なるものであって、特許になったからといって、意匠の登録が認められるものではない。

ウ さらに、被請求人は「『一方、甲第5号証の意匠は前方に1つのドラムカッターを有し、その他の部分はほぼ同一であるが、甲第1号証が既に公知となっていることによって「ドラムカッターを1つにするか2つにするかは当業者が容易に想到しえるものである」として創作容易とは判断されずに独立して登録されている。この点については、「ドラムカッターを1つにするか2つにするかは当業者が容易に想到しえるものである」とされることはないということを示している。』と主張している。しかしながら、甲第5号証が登録になったからといって、甲第5号証の意匠公報が発行された2014年4月14日よりも後願の本件登録意匠(出願日:2014年11月25日)が容易に想到しえないとすることはできない。すなわち、本件意匠登録出願日よりも前に、2つのドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラと、1つのドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラの両方が公知になっているため、これらの文献から容易に想到しえるものと考える。

エ したがって、無効理由2に対する答弁には理由がないということができる。

(3)総括
したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号又は意匠法第3条第1項第2項(当審注:「意匠法第3条第2項」の誤記と認められる。)の規定に違反して登録されたものであるため、同法第48条第1項1号により無効とすべきである。

3 平成31年2月27日付け回答書
請求人は、平成31年1月31日付けの当審合議体からの審尋に対して、以下の回答書を提出した。
(1)無効理由1について
ア 本件登録意匠の基本的構成態様について
本件登録意匠は、クローラー部を有する車体の前方下部に、略円筒形状のカッター部が略水平状にかつ並列状に2つ設けられ、その後部に前方に傾斜した窓を有する運転席と円弧状シュートが設けられ、その後部にシュートから飼料が投入される略直方体状のホッパー部が設けられ、ホッパー部の後部に側面視略変形五角形状のカバーを有する成形室が連設され、成形室で成形されたロールベールが後部から排出されるように形成された基本的構成態様からなる自走収穫式ロールベーラである。

イ 本件登録意匠の具体的構成態様について
本件登録意匠のカッター部には、その側面部を囲むように略三角形状の側板が設けられ、前方に傾斜した運転室の前方上部にはヘッドライトが形成され、運転室の側方に円弧状シュートが設けられ、その起部は平面視右上方部に配置され、斜め後方のホッパー部の開口部に飼料を搬送できるように形成されているため運転室側部を横切っている状態で形成され、円弧状シュートの上端が運転室の天井より下方の位置に形成され、円弧状シュート端部は平面視直方体形状の飼料放出金具で形成され、本体の側面部は正面に4つ、背面側に6つの矩形のメンテナンス用開閉扉によって区画されて、ホッパー開口部は後方に傾斜して前面側部に形成され、成形室は側面視やや尖った略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有する具体的構成態様を有するものである。

ウ 甲第1号証の意匠の基本的構成態様について
甲第1号証の意匠は、クローラー部を有する車体の前方下部に、略円筒形状のカッター部が略水平状にかつ並列状に2つ設けられ、その後部に前方に傾斜した窓を有する運転席と円弧状シュートが設けられ、その後部にシュートから飼料が投入される略直方体状のホッパー部が設けられ、ホッパー部の後部に側面視略変形五角形状のカバーを有する成形室が連設され、成形室で成形されたロールベールが後部から排出されるように形成された基本的構成態様からなる自走収穫式ロールベーラである。

エ 甲第1号証の意匠の具体的構成態様について
甲第1号証の意匠のカッター部には、カッター部の側面部を囲むようなバーが設けられ、前方に傾斜した運転室の前方上部にはヘッドライトが設けられておらず、運転室の側方に円弧状シュートが設けられ、その起部は平面視において、運転室の左前方の中央に近い位置に配置され、斜め後方のホッパー部の上方に開口した開口部に飼料を搬送できるように形成されているため運転室側部を横切っている状態で形成され、円弧状シュートの上端が運転室の天井より高い位置に形成され、円弧状シュート端部は平面視直方体形状の飼料放出金具で形成され、本体に設けられたメンテナンス用開閉扉は、どの部分が開閉できるかが特定されず、ホッパーは上方に開口するように形成され、成形室は側面視において略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有する具体的構成態様を有するものである。

オ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠の共通点と相違点について
(い)本件登録意匠と甲第1号証とは、クローラー部を有する車体の前方下部に、略円筒形状のカッター部が略水平状にかつ並列状に2つ設けられ、その後部に前方に傾斜した窓を有する運転席と円弧状シュートが設けられ、その後部にシュートから飼料が投入される略直方体状のホッパー部が設けられ、ホッパー部の後部に側面視において略変形五角形状のカバーを有する成形室が連設され、成形室で成形されたロールベールが後部から排出されるように形成された基本的構成態様からなる自走収穫式ロールベーラであるという点において共通する。すなわち、基本的構成態様において、すべての点が一致しているものである。
一方、本件登録意匠と甲第1号証の意匠とは、具体的構成態様において、下記の点において相違する。
(ろ)本件登録意匠は、カッター部の側面部を囲むように略三角形状の側板が設けられているのに対して、甲第1号証の意匠は、その側面部を囲むようなバーが設けられている点
(は)本件登録意匠は、前方に傾斜した運転室の前方上部にはヘッドライトが形成されているのに対して、甲第1号証の意匠は、ヘッドライトが設けられていない点
(に)本件登録意匠の円弧状シュートの起部は平面視右上方部に配置され、斜め後方のホッパー部の開口部に飼料を搬送できるように形成されているため、運転室側部を横切っている状態で形成されているのに対して、甲第1号証の意匠は、その起部は平面視において、運転室の左前方の中央に近い位置に配置され、後方に向けて真後ろに向かって形成され、また、円弧状シュートの端部は、平面視台形状の接続金具とこれに連続する台形状飼料放出金具が形成されている点
(ほ)本件登録意匠の円弧状シュートの最上部は、運転室の天井より下方の位置に形成されているのに対して、甲第1号証の意匠の円弧状シュートの最上部は、運転室の上部の位置より高い位置に形成されている点
(へ)本件登録意匠は、本体の側面部は正面に4つ、背面側に6つの矩形のメンテナンス用開閉扉によって区画され、ホッパー開口部は後方に傾斜して前面側部に形成されていると主張されているのに対して、甲第1号証の意匠は、本体に設けられたメンテナンス用開閉扉は、どの部分が開閉できるかが特定されておらず、ホッパーは上方に開口するように形成されているという点。なお、本件登録意匠では、客観的にどのメンテナンス用開閉扉が開閉できるようになっているのか特定されておりません。
(と)本件登録意匠のホッパー部の開口部分は後方に傾斜して前面側部に形成されているのに対して、甲第1号証の意匠のホッパー部の開口部は上面に形成されている点
(ち)本件登録意匠の成形室の後端部の垂直面が小さいのに対して、甲第1号証の意匠の成形室は、側面視で後端部の垂直面はやや大きく形成されている点

カ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠との類否判断について
上記(い)に示すとおり、本件登録意匠と甲第1号証の意匠の基本的構成態様が全て共通しており、また、(ろ)から(ち)に示すとおり具体的構成態様が相違している。
これに対して、被請求人は、「乙第1号証から乙第4号証に示すとおり、多くの自走収穫式ロールベーラには、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室が存在するのでこの点の共通性のみで類否判断することは極めて概念的であり、ほとんどの自走収穫式ロールベーラが類似となるので、相当ではない。この点については、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室部を有する甲第5号証の意匠が、甲第1号証がすでに登録になっているにもかかわらず、類似とされずに独立して登録になっていることからも明らかである」と主張している。
しかしながら、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室部を有する自走式収穫式ロールベーラ(当審注:「自走収穫式」ロールベーラの誤記と認められる。以下「自走収穫式ロールベーラ」に統一して記載する。)の意匠全体において、視覚上最も目に付きやすい部分である車体前方部分に、2つのドラムカッターを設けた意匠が飼料を刈り取る部分における機能上最も重要な部分となり、このようなドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラが甲1号証以前に存在しなかったことを考えると、ドラムカッターを有する部分が自走収穫式ロールベーラの意匠全体の美感の類否判断に与える影響が極めて大きいということができる。また、被請求人は「甲第5号証の意匠が、甲第1号証がすでに登録になっているにもかかわらず、類似とされずに独立して登録になっていることからも明らかである」と主張しているが、甲第5号証は、甲第1号証と同様に構成された車体の前方に一つのドラムカッターを設けたという点で相違しており、ドラムカッターの配置や数が異なるため、全体的に非類似として登録されたものである。このことは、看者にとって一番目につきやすい要部となりえる部分が、車体前方に設けられたドラムカッターの部分であると示しているものである。
また、公知意匠として提出した甲第2号証や甲第4号証には、自走収穫式ロールベーラに関するものであって、下記の構成が公知となっているため、取引者・需要者にとってありふれて見えて要部でないと解される。
(a)クローラー部を有する車体の前方下部に設けられた略円筒形状のカッター部の側面部を囲むように略三角形状の側板が設けられている点
(b)前方に傾斜した運転室の前方上部にはヘッドライトが形成されている点
(d)(当審注:「(c)」の誤記と認められる。)運転室の側方に円弧状シュートが設けられ、その起部は平面視右上方部に配置され、斜め後方のホッパー部の開口部に飼料を搬送できるように形成されているため、運転室側部を横切っている状態で形成され、円弧状シュートの上端が運転室の天井より下方の位置に形成されている点
(d)本体の側面部のメンテナンス用開閉扉は、どの部分が開閉できるか特定されていない点
(e)ホッパー開口部は後方に傾斜して前面側部に形成されている点
(f)成形室は側面視やや尖った略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有している点
このため、本件登録意匠の出願日前における公知意匠を参酌すると、具体的構成態様の相違は要部とはなりえない。

キ 総括
上述のように、本件登録意匠と甲第1号証は基本的構成態様が一致し、本件登録意匠の出願日前に公知になっている具体的構成態様が相違するに過ぎないため、本件登録意匠と甲第1号証とは類似するといえる。

2 無効理由2について
本願登録意匠の基本的構成態様は、上記「1 無効理由1について」「ア 本件登録意匠の基本的構成態様について」で述べた構成を有するものであり、また、本願登録意匠の具体的構成態様については、上記「1 無効理由1について」「イ 本件登録意匠の基本的構成態様について」で述べた構成を有するものである。
一方、甲第2号証及び甲第4号証の意匠には、クローラー部を有する車体の前方下部にドラムカッターが1つ設けられ、その後部に前方に傾斜した窓を有する運転席と円弧状シュートが設けられ、その後部にシュートから飼料が投入される略直方体状のホッパー部が設けられ、ホッパー部の後部に側面視略変形五角形状のカバーを有する成形室が連設され、成形室で成形されたロールベールが後部から排出されるように形成された自走収穫式ロールベーラが開示されている。また、具体的構成態様として、ドラムカッター部の側面部を囲むように略三角形状の側板が設けられ、前方に傾斜した運転室の前方上部にはヘッドライトが形成され、運転室の側方に円弧状シュートが設けられ、その起部は平面視右上方部に配置され、斜め後方のホッパー部の開口部に飼料を搬送できるように形成されているため、運転室側部を横切っている状態で形成され、円弧状シュートの上端が運転室の天井より下方の位置に形成され、円弧状シュート端部は平面視直方体形状の飼料放出金具で形成され、本体の側面部は正面に4つ、背面側に6つの矩形のメンテナンス用開閉扉によって区画され、ホッパー開口部は後方に傾斜して前面側部に形成され、成形室は側面視やや尖った略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有する自走収穫式ロールベーラが開示されている。
本願登録意匠と甲第2号証や甲第4号証とを比較すると、上述のように、本件登録意匠と甲第2号証や甲第4号証の意匠は車体の前方下部に設けられたカッター部が2つであるか、1つであるかのみが異なる。
一方、本願登録意匠の出願日前に、自走収穫式ロールベーラにおいて、車体前方に設けられるドラムカッターを2つ設けたものと(甲第1号証)、1つだけ設けたもの(甲第5号証)とが既に公知になっているため、これらの意匠に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。
なお、被請求人は、「甲第1号証が既に公知となっていることによって、ドラムカッターを1つにするか2つにするかは当業者が容易に想到しえるものであるとされることはないということを示している」と主張しているが、甲第5号証のようにその出願日前にドラムカッターが2つの自走収穫式ロールベーラ(甲第1号証)しか存在していなかった状況と、本件登録意匠のように、その出願日前にドラムカッターを2つ有する自走収穫式ロールベーラと、ドラムカッターを1つ有する自走収穫式ロールベーラの両方が存在している状況とでは判断が大きく異なる。
上述のように、本件登録意匠は、公知となっている甲第1号証から甲第5号証に基づいて容易に想到することができるものであり、意匠法第3条第2項に違反しているものである。

4 口頭審理陳述要領書
請求人は、口頭審理の審理事項通知に対し、令和1年7月2日付けで口頭審理陳述要領書を提出した。陳述の要領は要旨以下のとおりである。
(1)平成31年4月9日付け答弁書について
審判請求書及び回答書における主張に追加して、平成31年4月9日付け答弁書(第2回)に対し、以下のとおり主張する。
ア 無効理由1について
答弁書(第2回)の3頁2行目に「特許庁所蔵の公知資料に『このようなドラムカッターを有する自走収穫ロールベーラ(当審注:「自走収穫式ロールベーラ」の誤記と認められる。以下「自走収穫式ロールベーラ」に統一して記載する。)が甲1号証以前に存在しなかったこと』は考えられない」と主張しているが、その根拠が全く示されておらず、被請求人の証拠に基づかない勝手な見解である。そのため、自走収穫式ロールベーラが甲第1号証以前に存在していることを前提とする主張は論理性に欠けるものである。
なお、被請求人は、乙第6号証及び乙第7号証の証拠を追加しているが、この証拠が何を意味しているのかの主張が答弁書においてされていない。仮に、これらの証拠に基づいて「このようなドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラが甲1号証以前に存在しなかったことは考えられない」と主張しているものであると仮定しても、これはロールベール形成室を有さない単なる刈り取り装置であって、ドラムで刈り取られた飼料から円柱状のロールベールを成形するものではない。このため、前提となる物品がロールベーラとは異なるものである。
また、被請求人は、答弁書(第2回)の(1)マル2(当審注:この審決では丸数字は表記できないため「マル2」と表記している。)欄(当審決では、第3 2(1)イ)において、「具体的構成態様の相違点が全体意匠に及ぼす影響が不明であり、かつ、概ね車体本体に関する部分が公知であるからありふれているという主張となり、全体観察をすべきではないと同義の主張となって不合理である。」と主張している。しかしながら、本件登録意匠が、具体的構成態様の相違に基づいて、どのように全体として一つのまとまりを有しているのかの主張がされておらず、単に具体的構成態様の相違点を主張しているだけである。
すなわち、その具体的構成態様の相違点が全体観察において、共通点を有する美観を凌駕するように相違部分が全体に影響を及ぼし、全体として甲第1号証と類似していないのかを主張していない。
このため、被請求人の主張には全く理由がない。

イ 無効理由2について
被請求人は、答弁書(第2回)5頁16行からの記載において、「すなわち、ロールベーラ本体の上下動による不具合等を拡散板の設置により防止し、飼料の投入口をホッパー部の上面ではなく前面側部に設けることによりシュートを低く形成したことが容易に想到したものではない」と主張しているが、投入口を前面側部に設けたことや、運転席の天井よりもシュートを低くしたことについては、無効審判請求書で主張したとおり、甲第2号証から甲第4号証に開示されている。また、被請求人は、上述のように「拡散板の設置により防止し」と主張しているが、拡散板が外部からどのように視認することができ、意匠全体における美観にどのように影響を与えるのかが不明である。このため、「ロールベーラ本体の上下動による不具合等を拡散板の設置により防止し、飼料の投入口をホッパー部の上面ではなく前面側部に設けることによりシュートを低く形成したことが容易に想到したものではない」という主張は当を得ないものであり、本件登録意匠は、甲第1号証から甲第5号証に基づいて、通常の知識を有するものが容易に想到することができるものである。
このため、被請求人の主張には全く理由がない。

(2)結論
上述のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号及び第3条第2項の規定に該当し、第48条第1項第1号の規定による無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁及び理由
1 無効審判事件答弁書
被請求人は、平成30年10月30日付けで無効審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)を提出し、結論同旨の審決を求めると答弁し、その主張事実を立証するため、証拠方法として乙第1号証から乙第5号証の書証を提出し、その理由として以下のとおり主張した。
(1)無効理由1について
ア 本件登録意匠の基本的構成態様について
本件登録意匠は、クローラー部を有する車体の前方下部にドラムカッターが設けられ、その後部に前方に傾斜した窓を有する運転室と円弧状シュートが設けられ、その後部に、シュートから飼料が投入される略直方体伏のホッパ(当審注:以下「ホッパー」に統一して記載する。)部が設けられ、ホッパー部の後部に側面視略変形五角形状のカバーを有する成形室が連設され、成形室で成形されたロールベールが後部から排出されるように形成された基本的構成態様からなる自走収穫式ロールベーラである。

イ 本件登録意匠の具体的構成態様について
本件登録意匠の車体前方下部に設けられたドラムカッター部は、略円筒形状のカッター部本体が略水平状にかつ並列状に2つ設けられており、その側面部を囲むように略三角形状の側板が設けられ、前方に傾斜した運転室の前方上部にはヘッドライトが形成され、運転室の側方に円弧状シュートが設けられ、その起部は平面視右上方部に配置され、斜め後方のホッパー部の開口部に飼料を搬送できるように形成されているため、運転室側部を斜めに横切っている状態で形成され、かつ、円弧状シュートの上端が運転室の天井より下方の位置に形成され、本体の側面部は、正面側に4つ、背面側に6つの矩形のメンテナンス用開閉扉によって区画されており、ホッパー開口部は後方に傾斜して前面側部に形成され、成形室は側面視やや尖った略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有する具体的構成態様を呈するものである。

ウ 甲第1号証の意匠の基本的構成態様について
甲第1号証の意匠は、クローラー部を有する車体の前方下部にドラムカッターが設けられ、その後部に前方に傾斜した窓を有する運転室と円弧状シュートが設けられ、その後部に、シュートから飼料が投入される略直方体状のホッパー部が設けられ、ホッパー部の後部に側面視略変形五角形状のカバーを有する成形室が連設され、成形室で成形されたロールベールが後部から排出されるように形成された基本的構成態様からなる自走収穫式ロールベーラである。

エ 甲第1号証の意匠の具体的構成態様について
甲第1号証の意匠の車体前方下部に設けられたドラムカッター部は、略円筒形状のカッター部本体が前方に傾斜してかつ並列状に2つ設けられており、その側面部を囲む側板はなく、前方に傾斜した運転室が形成され、その側方に設けられた円弧状シュートは真後ろに向かって形成され、その起部は平面視略中央部に配置され、円弧状シュート端部は平面視台形状の接続金具とこれに連続する台形状飼料放出金具が形成されており、かつ、円弧状シュートの上端は運転席の上部の位置より大きく上方に突出して形成され、本体の側面部は、左側面部(本件登録意匠の正面図に相当)の下方に2つ、右側面部(本件登録意匠の背面図に相当)の下方に3つの矩形状のメンテナンス用開閉扉によって区画され、両側面中央部はメンテナンス用開閉扉によって区画されていないため、後方の成形室まで面一に形成され、ホッパー開口部は上面向きに形成され、成形室は側面視で後端部に垂直面を有する略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有する具体的構成態様を呈するものである。

オ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠の共通点と相違点について
(い)本件登録意匠と甲第1号証の意匠とは、クローラー部を有する車体の前方下部にドラムカッターが設けられ、その後部に前方に傾斜した窓を有する運転室と円弧状シュートが設けられ、その後部に、シュートから飼料が投入される略直方体状のホッパー部が設けられ、ホッパー部の後部に側面視略変形五角形状のカバーを有する成形室が連設され、成形室で成形されたロールベールが後部から排出されるように形成された基本的構成態様からなる自走収穫式ロールベーラである点においてにおいて共通する。しかしながら、ほとんどの自走収穫式ロールベーラには、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室部が存在するので、この点を過大評価することはできない。
一方、本件登録意匠と甲第1号証の意匠とは以下の点において相違する。
(ろ)本件登録意匠のドラムカッター部は、略円筒形状のカッター部本体が略水平状にかつ並列状に2つ設けられ、その側面部を囲むように略三角形状の側板が設けられているのに対して、甲第1号証の意匠は、略円筒形状のカッター部本体が前方に傾斜してかつ並列状に2つ設けられ、側面部を囲む側板はなく機構部が剥きだしになっている点
(は)本件登録意匠の運転室の前方上部には前方に傾斜したヘッドライトが形成されているのに対して、甲第1号証の意匠には、ヘッドライトがない点
(に)本件登録意匠の円弧状シュートの起部は平面視右上方部に配置され、斜め後方のホッパー部の開口部に飼料を搬送できるように形成されているため、運転室側部を斜めに横切っている状態で形成されているのに対して、甲第1号証の意匠の円弧状シュートは真後ろに向かって形成され、その起部は平面視略中央部に配置され、円弧状シュート端部は平面視台形状の接続金具とこれに連続する台形伏飼料放出金具が形成されている点
(ほ)本件登録意匠の円弧状シュートの上端が運転室の天井より下方の位置に形成されているのに対して、甲第1号証の意匠の円弧状シュートの上端は運転席の上部の位置より大きく上方に突出して形成されている点
(へ)本件登録意匠の本体の側面部は、正面側に4つ、背面側に6つの矩形のメンテナンス用開閉扉によって区画されているのに対して、甲第1号証の意匠の本体の側面部は、左側面部(本件登録意匠の正面図に相当)の下方に2つ、右側面部(本件登録意匠の背面図に相当)の下方に3つの矩形状のメンテナンス用開閉扉によって区画され、両側面中央部はメンテナンス用開閉扉によって区画されていないため、後方の成形室まで面一に形成されている点
(と)本件登録意匠のホッパー開口部は後方に傾斜して前面側部に形成されているのに対して、甲第1号証の意匠のホッパー開口部は上面向きに形成されている点
(ち)本件登録意匠の成形室は側面視やや尖った略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有するのに対して、甲第1号証の意匠の成形室は側面視で後端部に垂直面を有する略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有する点

カ 本件登録意匠と甲第1号証の意匠との類否判断について
(い)のとおり、本件登録意匠と甲第1号証の意匠の基本的構成態様は共通するが、乙第1号証?乙第4号証に示すとおり、多くの自走収穫式ロールベーラには、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室部が存在するので、この点の共通性のみで類否判断することは極めて概念的であり、ほとんどの自走収穫式ロールベーラが類似となるので、相当ではない。この点については、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室部を有する意匠登録第1495108号(甲第5号証)の意匠が、当該各部を有する意匠登録第1470080号(甲第1号証)が既に登録になっているにもかかわらず、類似とされずに独立して登録になっていることからも明らかである。また、大型機械であるので、部品も大きいことから各部の相違もまた大きなものとして考慮せざるを得ないので、具体的各部の対比が必須である。したがって、具体的構成態様の相違について検討する。
(ろ)の本件登録意匠のドラムカッター部は、略円筒形状のカッター部本体が略水平状にかつ並列状に2つ設けられ、その側面部を囲むように略三角形状の側板が設けられているのに対して、甲第1号証の意匠は、略円筒形状のカッター部本体が前方に傾斜してかつ並列伏に2つ設けられ、側面部を囲む側板はなく機構部が剥きだしになっている点については、飼料を刈り取る部分における機能上重要な部分における形態の相違であるから類否判断に与える影響は大きいということができる。
(は)の本件登録意匠の運転室の前方上部には前方に傾斜したヘッドライトが形成されているのに対して、甲第1号証の意匠には、ヘッドライトがない点については、作業効率に影響を与えるので、部分的に小さいとはいえ類否判断に与える影響は小さくないということができる。
(に)の本件登録意匠の円弧状シュートの起部は平面視右上方部に配置され、斜め後方のホッパー部の開口部に飼料を搬送できるように形成されているため、運転室側部を斜めに横切っている状態で形成されているのに対して、甲第1号証の意匠の円弧状シュートは真後ろに向かって形成され、その起部は平面視略中央部に配置され、円弧状シュート端部は平面視台形状の接続金具とこれに連続する台形状飼料放出金具が形成されている点については、前方の角部から斜めに形成された円弧状シュートは顕著に目立つものであり、この円弧状シュートの端部形状の相違を併せて考慮すると、その相違は類否判断を大きく左右するものというべきである。
(ほ)の本件登録意匠の円弧状シュートの上端が運転室の天井より下方の位置に形成されているのに対して、甲第1号証の意匠の円弧状シュートの上端は運転席の上部の位置より大きく上方に突出して形成されている点については、本件登録意匠の円弧状シュートが運転席側からは見えないのに対して、甲第1号証の意匠はどの角度から見ても視認できる(底面を除く)ことから、極めて特徴的であり類否判断に与える影響は大きいといわざるを得ない。さらに、円弧状シュートを低く形成したことにより、移動の際、電線や信号機などと接触することが少なく、同時に、作業中の前方視界を良くする効果があるような形状としたことを考慮すると、甲第1号証の意匠のように高い位置に形成した円弧状シュートとの相違は極めて大きい。
(へ)の本件登録意匠の本体の側面部は、正面側に4つ、背面側に6つの矩形のメンテナンス用開閉扉によって区画されているのに対して、甲第1号証の意匠の本体側面部は、左側面部(本件登録意匠の正面図に相当)の下方に2つ、右側面部(本件登録意匠の背面図に相当)の下方に3つの扁平の矩形状のメンテナンス用開閉扉によって区画され、両側面部中央部はメンテナンス用開閉扉によって区画されていないため、後方の成形室まで面一に形成されている点については、本件登録意匠は、大きく区画された区画線の態様が顕著であり、甲第1号証の意匠の本体両側面部の大部分が面一であることから認識される視覚的効果とは大きな相違があるため、類否判断に大きな影響を与えるということができる。
(と)の本件登録意匠のホッパー開口部は後方に傾斜して前面側部に形成されているのに対して、甲第1号証の意匠のホッパー開口部は上面向きに形成されている点については、円弧状シュートが低く形成されていることからホッパー開口部もまた低い位置に形成することができるのに対して、円弧状シュートが高い位置に形成されると必然的に上方からホッパー部に搬入することになり、円弧状シュートの形成位置とホッパー開口部とは相互に関連しており、これらが相侯って、類否判断に大きな影響を与えるものということができる。
(ち)の本件登録意匠の成形室は側面視やや尖った略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有するのに対して、甲第1号証の意匠の成形室は側面視で後端部に垂直面を有する略変形五角形状のカバーからなるゲート部を有する点については、後端部の相違であるが、類否判断上一定の影響を与えるものである。

キ 小括1
以上のとおり、両意匠の基本的構成態様と具体的構成態様の共通点及び相違点について、全体観察を行うとともに総合的に考察すると、上記の共通点と相違点とが相俟って奏する両意匠全体のそれぞれの美感は、相互に異なるというべきである。したがって、無効理由1には理由がないということができる。

ク 審判請求書の内容について
(ア)甲第3号証について
甲第3号証に記載されている意匠は、不鮮明であり自走式ロールベーラであることがかろうじて認識できる程度であり、これを基に本件登録意匠が無効である旨の判断をする証拠とすることはできない。
(イ)記載内容について
請求人は、本件登録意匠の基本的構成態様として以下の点を列挙している。(審判請求書2頁23行?27行)
「(a)車体前方に設けられた2つのドラムカッターを有する
(b)ドラムカッターで刈り取られた飼料をホッパーに投入するシュートを有する。
(c)ホッパーに投入された飼料からロールベーラを形成するロール成形室を有する。」
また、具体的構成態様として以下の点を列挙している。(同3頁2行?6行)
「(d)シュートが運転席の天井よりも低く設けられている。
(e)シュートからホッパーに向けて水平方向に飼料を排出させるようになっている。
(f)シュートがドラムカッターの側方から平面視の斜め方向を向いている。」
そして、「ドラムカッターを有するロールベーラは、前方に設けられたドラム部分が最も特徴を有するものであり、甲第1号証には、本件登録意匠の基本的構成態様である(a)(b)(c)をすべて備えている。なお、甲第1号証には、本件登録意匠の具体的態様である『(d)シュートが運転席の天井よりも低く設けられている。』、『(e)シュートからホッパーに水平方向に飼料を排出させるようになっている。』、『(f)シュートがドラムカッターの側方から平面視の斜め方向を向いている。』という構成が開示されていない。しかしながら、当該具体的態様(d)?(f)は、次に述べる甲第2号証から甲第4号証に示されるように、出願前に公知の構造であり、意匠の要部となりえない。」と主張している。(同3頁22行?4頁5行)
要するに、本件登録意匠の基本的構成態様である(a)、(b)、(c)が共通し、具体的構成態様は意匠の要部となりえないから、本件登録意匠と甲第1号証の意匠は、類似すると主張したいようである。同時に、ドラムカッターを有するロールベーラは、前方に設けられたドラム部分が最も特徴を有するものであるとも主張している。
しかしながら、乙第1号証?乙第4号証に示すとおり、多くの収穫機には様々な形態のカッター、シュート、ホッパー、成形室が装備されているが、これらの各部を有する点が共通するからといって類似するとするのは不合理である。即ち、カッター、シュート、ホッパー、成形室は当該機能を有する各部位の名称であって、形状を表しているものではないから、これらが共通するとしても極めて概念的であり、これのみに基づいて意匠の類否判断をすることはできない。
このことは、甲第1号証の意匠と甲第5号証の意匠とは、カッター、シュート、ホッパー、成形室が装備されている点が共通するものの、類似するものではないとして、甲第5号証の意匠が登録になっていることからも裏付けされるものである。
したがって、カッター、シュート、ホッパー、成形室の各部について具体的な形状に基づいて類否判断する必要がある。また、仮に、「ドラムカッターを有するロールベーラは、前方に設けられたドラム部分が最も特徴を有するものである」としても、本件登録意匠と甲第1号証の意匠は、前記のとおり(カ(ろ))、ドラムカッターの取付状態及び側板の有無により類似しないとすることが相当である。この点について、請求人は、意匠全体を概念的に捉えて類似であると主張しつつ、意匠全体から見れば一部品にすぎないドラムカッターに特徴があるので類似する旨を主張するなど請求人の主張に一貫性がないといわざるを得ない。
さらに、「具体的態様(d)?(f)は、次に述べる甲第2号証から甲第4号証に示されるように、出願前に公知の構造であり、意匠の要部となりえない。」と主張している。しかしながら、「具体的態様」と主張している(d)?(f)は、シュートの態様の一部を示しているのであって、シュートの形状や端部形状を含めたより具体的な形態を吟味すべきである。その上で、その他のカッター、ホッパー、成形室部分と相挨って奏する視覚的効果が本件登録意匠の要部となるのである。本件登録意匠のシュートの態様は、顕著なものではあるが、出願前公知であるとする(d)?(f)のみによって「意匠の要部」とはなりえないとするのは早計または誤りであり、これを根拠に類否判断すべきではないということは明らかである。

ケ 小括2
以上のとおり、審判請求書の内容自体が当を得ないものであるということができる。したがって、取消理由1には理由がないということができる。

(2)無効理由2について
審判請求書によれば、「本件登録意匠は、上記(3)で述べたように、基本的態様において甲第1号証の構成全てを有しており、また、具体的態様において甲第2号証から甲第4号証の構成を全て有している。一方、甲第2号証および甲第4号証のロールベーラは、前方に設けられたドラムカッターが一つであるという点で本件登録意匠と相違する。しかるに、甲第5号証には、前方に1つのドラムカッターを有するロールベーラが開示されており、ドラムカッターを1つにするか2つにするかは当業者が容易に想到しえるものである。このため、本件登録意匠は、甲第1号証から第5号証に基づいて当業者が容易に想到しえるものである。」とされている。(審判請求書6頁11行?20行)
しかしながら、請求人の主張する「基本的態様」と「具体的態様」は、いずれも、カッター、シュート、ホッパー、成形室の当該機能を有する各部位の名称を列挙した概念的すぎるものであり、形態についてはほとんど言及していない。このため、請求人の主張する論法と全く同じ論法によって、乙第1号証?乙第4号証に示すとおり、甲第1号証の意匠は創作容易であるということができる。創作容易である自己の登録意匠を根拠に本件登録意匠が創作容易であると主張することは論理性を欠いている。
創作が容易かどうかは、国内外の公知の形態に基づいて容易に創作できたかどうかを問うものであるから、基づくべき公知の形態を明確にしなければならない。しかるに、公知の形態については極めて概念的にしか記載されていないので、容易と判断した考え方または根拠が不明確であるといわざるを得ない。
ところで、乙第5号証によれば、本件登録意匠の出願日前の平成25年8月23日の特許出願時において、ロールベーラ本体の上下動による不具合等を拡散板の設置により防止し、飼料の投入口をホッパー部の上面ではなく前面側部に設けることによりシュートを低く形成した技術が容易想到ではないとして特許として登録されている。すなわち、意匠の分野においても飼料の投入口をホッパー部の上面ではなく前面側部に設けることによりシュートが低く形成されている本件登録意匠のような形態は、当業者にとって容易に創作できたものではないということができる。
一方、甲第5号証の意匠は前方に1つのドラムカッターを有し、その他の部分はほぼ同一であるが、甲第1号証が既に公知となっていることによって、「ドラムカッターを1つにするか2つにするかは当業者が容易に想到しえるものである」として創作容易とは判断されずに独立して登録されている。この点については、「ドラムカッターを1つにするか2つにするかは当業者が容易に想到しえるものである」とされることはないということを示している。自己の登録意匠のみが意匠法による登録の利益を享受できると考えることは不合理である。仮に、一般論として「ドラムカッターが1つか2つかは当業者が容易に想到しえものである(当審注:「想到しえるものである」の誤記と認められる。)」としても、創作の余地が存在するとして甲第1号証の意匠も甲第5号証の意匠も各々独立して登録になったものであると考えることができる。
このことは、ドラムカッターのみにいえることではなく、乙第1号証?乙第4号証に見られるとおり、円弧状シュート、ホッパー、成形室の各部の形態には多様なものがあることから、これらの具体的な形態やレイアウトや取付状態、本体とのトータルデザインなど各部の態様を総合的に創作することによって、自走収穫式ロールベーラを新たに創作することが可能であることを示しているし、それが即ち当業者にとって創作容易であるということはできないということの証拠というべきである。本件登録意匠もまた、ドラムカッター、円弧状シュート、ホッパー、成形室の各部の形態が総合的に創作され、それが当業者にとって容易に創作できたものではないと評価されて意匠登録を受けていることは明らかである。
したがって、無効理由2には理由がないということができる。

(3)総括
以上のとおり、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号及び同法第3条第2項の各規定に該当するものではなく、同法第48条第1項第1号により無効とすることはできない。
したがって、本件の無効審判請求は成り立たないとする旨の審決を求める次第である。

(4)証拠方法
・乙第1号証 実開平8-151号公報
・乙第2号証 特許第4257453号公報
・乙第3号証 特許第4426775号公報
・乙第4号証 米国特許US6、901、732B2公報
・乙第5号証 特許第6166982号公報

2 無効審判事件答弁書(第2回)
被請求人は、弁駁書及び平成31年2月27日付け回答書に対し、平成31年4月9日付けで無効審判事件答弁書(第2回)(以下「答弁書2」という。)並びに乙第6号証及び乙第7号証の書証を提出し、要旨以下のように反論を行った。
(1)無効理由1について
ア 平成31年1月3日付けの審尋に対する平成31年2月27日付け回答書において、両意匠の基本的構成態様として「略円筒形状のカッター部が略水平状にかつ並列状に2つ設けられ」(1頁20行?21行及び1頁37行?2頁1行)と記載され、さらに、両意匠の共通点として「略円筒形状のカッター部が略水平状にかつ並列状に2つ設けられ」(2頁17行?18行)と記載され、「上記(い)に示すとおり、本件登録意匠と甲第1号証の意匠の基本的構成態様が全て共通しており。」(3頁15行?16行)と主張している。ドラムカッター部の形状、個数、配置に関する具体的な内容が、基本的構成態様として記載されている。シュートに関しては単に「円弧状シュートが設けられ」(2頁1行?2行)と記載されるにとどまっていることと比べると、ドラムカッター部のみ異様に具体的に記載されている。この記載は、各部の認定との間にバランスを欠き、客観性に欠けており、結論に導くために恣意的に基本的構成態様として記載されているので、これを基に「基本的構成態様が全て共通しており。」とすることは正に牽強付会といわざるを得ない。

イ 「(ろ)から(ち)に示すとおり具体的構成態様が相違しております。」(3頁16行)については、これを基にどのように考えるのか不明であり、「下記の構成が公知となっているため、取引者・需要者にとってありふれて見えて要部でないと解されます。」(4頁1行?2行)と記載され、(a)?(f)の点が列挙されているが、何故、公知であるとありふれているといえるのか不明である。具体的構成態様の相違点が全体意匠に及ぼす影響が不明であり、かつ、概ね車体本体に関する部分が公知であるからありふれているという主張となり、全体観察をすべきではないと同義の主張となって不合理である。なお、公知であるとありふれているのであれば、公知の意匠を纏めて新たな意匠が創作されるという、現実に存在する事実を説明できない。

ウ「自走収穫式ロールベーラの意匠全体において、視覚上最も目に付きやすい部分である車体前方部分に、2つのドラムカッターを設けた意匠が飼料を刈り取る部分における機能上最も重要な部分となり、このようなドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラが甲1号証以前に存在しなかったことを考えると、ドラムカッター有する(当審注:「ドラムカッターを有する」の誤記と認められる。)部分が自走収穫式ロールベーラの意匠全体の美感の類否判断に与える影響が極めて大きいということができます。」(3頁23行?28行)と主張するが、独自の見解である。乙第6号証及び乙第7号証によれば、2つのドラムカッターを有する自走収穫機は2011年7月には既に存在していたことは明らかである。したがって、甲第1号証の意匠が登録されたからといって、その一部に着目し「ドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラが甲1号証以前に存在しなかった」ということは不合理であり、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室等を甲第1号証のような構成にした自走収穫式ロールベーラの意匠が存在しなかったとするのが相当である。つまり、甲第1号証は、ドラムカッター部のみに着目して登録されたものではなく、その他の部分も考慮し、かつ、周辺の資料を把握した上で、全体観察により登録されたと考えるべきである。特許庁所蔵の公知資料に「このようなドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラが甲1号証以前に存在しなかったこと」は考えられないし、甲第1号証が存在するにも関わらず甲第5号証が登録となったこととも符合する。つまり、甲第5号証は、ドラムカッター部のみに着目して登録されたものではなく、その他の部分も考慮し、かつ、周辺の資料を把握した上で、全体観察により独立して登録されたと考えることができるし、このように考えるのが自然である。
したがって、「視覚上最も目に付きやすい部分である車体前方部分に、2つのドラムカッターを設けた意匠が飼料を刈り取る部分における機能上最も重要な部分」ということはできない。
なお、「視覚上最も目に付きやすい部分である車体前方部分に、2つのドラムカッターを設けた意匠が飼料を刈り取る部分における機能上最も重要な部分」なる記載は、「視覚上最も目に付きやすい部分」が「車体前方部分」なのか、「2つのドラムカッターを設けた意匠が飼料を刈り取る部分」なのか、「機能上最も重要な部分」なのか判然としない。

エ 「甲第5号証は、甲第1号証と同様に構成された車体の前方に一つのドラムカッターを設けたという点で相違しており、ドラムカッターの配置や数が異なるため、全体的に非類似として登録されたものである。このことは、看者にとって一番目につきやすい要部となりえる部分が、車体前方に設けられたドラムカッターの部分であると示しているものである。」(3頁30行?34行)と主張するが、要部が何を指しているのか定義されていないので理解不能である。甲第5号証は、「全体的に非類似として登録された」はずなのに、要部が「ドラムカッターの部分である」との主張は、論理的に矛盾している。「看者にとって一番目につきやすい要部となりえる部分」が要部であると定義しているようでありながら、定義の中に「要部」があり意味不明である。上記のとおり、甲第1号証があるにもかかわらず甲第5号証が登録になったのは、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室等の各部を詳細に検討し、かつ、周辺の公知資料を精査した上で、全体観察をして非類似であるとして登録したと考えるべきであって、ドラムカッター部のみを見て登録されたものではない。シュート部、ホッパー部、成形室等の各部にも一定の特徴があるが、ドラムカッター部にもそれなりの特徴があり、これらを総合的に判断し、かつ、全体観察をした結果、甲第5号証には新たな創作があったとして、これを評価し、甲第1号証と甲第5号証とが類似するほどではないとされて非類似の意匠として登録されたとするのが相当である。
本件登録意匠についても、甲第1号証と甲第5号証の関係を踏まえ同様に考えるべきであって、本件登録意匠のカッター部、シュート部、ホッパー部、成形室等には、平成30年10月30日付け無効審判事件答弁書(第1回)に記載したとおり、シュート部の態様をはじめとした具体的構成態様において様々な相違点があり、しかも請求人が主張するドラムカッター部においてさえ相違点があり、甲第1号証と甲第5号証の関係よりもより一層相違があるということができる。そして、これらの相違点が顕著であることから、甲第1号証と甲第5号証の関係と同様に考えると、本件登録意匠は明らかに甲第1号証には類似していないということができる。
したがって、無効理由1については理由がない。
なお、「本件登録意匠の出願日における公知資料を参酌すると、具体的構成態様の相違は要部とはなりえません。」(4頁13行?14行)と記載されているが、何故、公知資料を参酌すると要部にはならないのか説明がないので全く理解できない。権利範囲の認定に関して公知意匠参酌説なるものがあるようであるが、判例を分類する際には便利ではあるものの、意匠の類否についての正否は不明であるので、この説が個別の案件である本件について適用できるのかはさらに不明である。加えて、「要部」とは何を指しているのか不明であることは既に述べたとおりである。したがって、本回答書に記載されたことは主観的であって、無効理由が客観的に記載されていないといわざるを得ない。

(2)無効理由2について
平成31年1月31日付けの審尋に対する平成31年2月27日付け回答書において、「甲第5号証のようにその出願日前にドラムカッターが2つの自走収穫式ロールベーラ(甲第1号証)しか存在していなかった状況と、本件登録意匠のように、その出願日前にドラムカッターを2つ有する自走収穫式ロールベーラと、ドラムカッターを1つ有する自走収穫式ロールベーラの両方が存在している状況とでは判断が大きく異なります。」(5頁10行?14行)と記載されているが、どのような状況に即した判断がされるべきか、そしてどのように考えるべきなのか明確ではないので、本件登録意匠が創作容易であるとする理由が依然として不明確であるという他ない。
仮に、本件登録意匠に関して、ドラムカッターが2つと1つの自走収穫式ロールベーラが存在していることが「状況」が異なるとしても、上記のとおり、甲第1号証は、ドラムカッター部のみに着目して登録されたものではなく、その他の部分も考慮し、かつ、周辺の資料を把握した上で、全体観察により登録されたと考えるべきであるので、ドラムカッターが2つ設けられたことのみにより、本件登録意匠が創作容易であるとすることはできないし、しかも、ドラムカッター部の態様に相違があることを考慮すれば、これを無視してドラムカッターの数の一致み(当審注:「一致のみ」の誤記と認められる。)で容易であるということはできない。ドラムカッターが1つであっても同様に考えるべきである。平成30年12月18日付けの審判事件弁駁書において「特許における進歩性と意匠における創作非容易性は全く基準が異なるものであって、特許になったからといって、意匠の登録が認められるものではありません。」(3頁14行?16行)と記載されているが、一般に、技術的に容易であるからといって意匠の創作が容易であるということはできないことは勿論であるが、技術的に容易でないならばこれを具現化することも容易ではないということができる。意匠の創作が容易であったか否かは「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」が容易に創作できたとき「創作容易」とするべきである。被請求人の特許が容易想到でないのであるから、「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」にとっては、一般的技術ではなく「通常の知識」となっていないことを示している。すなわち、ロールベーラ本体の上下動による不具合等を拡散板の設置により防止し、飼料の投入口をホッパー部の上面ではなく前面側部に設けることによりシュートを低く形成したことが容易に想到したものではないのであるから、これを形態的に実現した本件登録意匠は、創作容易とはいえない。
この点を含め詳細については、平成30年10月30日付け提出の無効事件答弁書(第1回)に記載したとおりである。
したがって、無効理由2については理由がない。

(3)結論
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号及び同法第3条第2項の各規定に該当するものではなく、同法第48条第1項第1号のより(当審注:「により」の誤記と認められる。)無効とすることはできない。

3 口頭審理陳述要領書
被請求人は、口頭審理の審理事項通知に対し、請求人の口頭審理陳述要領書送付後の令和1年7月12日付けで口頭審理陳述要領書を提出した。陳述の要領は要旨以下のとおりである。
(1)無効理由1について
請求人は、陳述要領書において、被請求人の「特許庁所蔵の公知資料に『このようなドラムカッターを有する自走収穫し(当審注:「自走収穫式」の誤記と認められる。)ロールベーラが甲1号証以前に存在しなかったこと』は考えらえない」との主張は、「その根拠が全く示されておらず、被請求人の勝手な見解である。」とするが、答弁書(第2回)2頁34行?3頁2行に記載のとおり、「甲第1号証は、ドラムカッター部のみに着目して登録されたものではなく、その他の部分も考慮し、かつ、周辺の資料を把握した上で、全体観察により登録されたと考えるべきである。」とされ、同答弁書3頁4行?8行に記載のとおり「甲第1号証が存在するにも関わらず甲第5号証が登録となったこととも符合する。つまり、甲第5号証は、ドラムカッター部のみに着目して登録されたものではなく、その他の部分も考慮し、かつ、周辺の資料を把握した上で、全体観察により独立して登録されたと考えることができるし、このように考えるのが自然である。」とされているとおり、甲第1号証が存在するにも関わらず甲第5号証が登録となった理由として考えられることを一例として挙げたまでであり、答弁書(第2回)に記載された主張の趣旨を踏まえれば、特許庁所蔵の公知資料についての根拠の有無は枝葉末節に過ぎず、問題とはならない。
また、乙第6号証及び乙第7号証が「単なる刈り取り装置」である旨を主張するが、答弁書(第2回)2頁27行?29行に記載のとおり、2つのドラムカッターを有する自走収穫機が存在したことを例示したものであり、2つのドラムカッター自体が新規なものではないにも関わらず、「このようなドラムカッターを有する自走収穫式ロールベーラが甲第1号証以前に存在しなかった」旨をことさら主張するのは相当ではない。答弁書(第2回)に記載のとおり、カッター部、シュート部、ホッパー部、成形室等を甲第1号証のような構成にした自走収穫式ロールベーラの意匠が全体観察した場合に、存在しなかったと解するべきである。したがって、甲第1号証は、ドラムカッター部のみに着目して登録されたものではないので、この点が一致しているから類似するとする趣旨の審判請求書及び平成31年2月27日付回答書は、当を得ないものである。
さらに、陳述要領書において、「具体的構成態様の相違点が全体観察において、共通点を有する美観を凌駕するように相違部分が全体に影響を及ぼし、全体として甲第1号証と類似していないのかを主張していない。」(3頁6行?8行)としているが、平成30年10月30日付けの無効審判事件答弁書において既に詳細に主張している。仮に、不十分であるという趣旨であるならば、具体的に適示すべきである。
したがって、無効理由1には、理由がないというべきである。

(2)無効理由2について
請求人は、陳述要領書において、「投入口を前面側部に設けたことや、運転席の天井よりもシュートを低く形成したことについては、無効審判請求書で主張したとおり、甲第2号証から甲第4号証に開示されている。」と主張しているが、既に、無効審判事件答弁書に記載のとおり、「甲第5号証の意匠は前方に1つのドラムカッターを有し、その他の部分はほぼ同一であるが、甲第1号証が既に公知となっていることによって、・・・中略・・・創作容易とは判断されずに独立して登録されている。」のであるから、本件登録意匠も同様に考えるべきである。つまり、甲第3号証はともかく、甲第2号証及び甲第4号証があったとしても、「乙第1号証?乙第4号証に見られるとおり、円弧状シュート、ホッパー、成形室の各部の形態には多様なものがあることから、これらの具体的な形態やレイアウトや取付状態、本体とのトータルデザインなど各部の態様を総合的に創作することによって、自走収穫式ロールベーラを新たに創作することが可能であることを示しているし、それが即ち当業者にとって創作容易であるということはできないということの証拠というべきである。本件登録意匠もまた、ドラムカッター、円弧状シュート、ホッパー、成形室の各部の形態が総合的に創作され、それが当業者にとって容易に創作できたものではない」ということができる。
したがって、無効理由2には理由がないということができる。

第4 口頭審理
当審は、本件審判について、令和1年(2019年)7月30日に口頭審理を行った(令和1年7月30日付け「第1回口頭審理調書」)。
1 請求人
請求人は、請求の趣旨及び理由について、審判請求書、無効審判弁駁書、及び口頭審理陳述要領書のとおり陳述し、被請求人の提出した乙第1号証ないし乙第7号証の成立を認めた。

2 被請求人
被請求人は、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書のとおり陳述し、請求人の提出した甲第1号証ないし甲第5号証の成立を認めた。

3 審判長
審判長は、この口頭審理において、甲第1号証ないし甲第5号証、及び乙第1号証ないし乙第7号証について取り調べ、請求人及び被請求人に対して、本件無効審判事件の審理終結を告知した。

第5 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「自走収穫式ロールベーラ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
当審では、本件登録意匠の具体的な形態を以下のように認定している。
(1)全体は、左右にクローラー(覆帯)を取り付けた車体の前方に、穀物を細断する細断機(以下「カッター部」という。)を設け、車体の前方から後方にかけて、前方視左側に運転室(以下「キャビン部」という。)、前面視右側に細断した穀物を上方に運搬する筒状体(以下「シュート部」という。)を設置し、これらの後方に細断した作物の収納部(以下「ホッパー部」という。)及びこのホッパー部と連続して配置したロールベールの成形機(以下「成形部」という。)を、成形部のみ車体後方に突出して配置した構成としたものである。
(2)カッター部は、平面視略横「〔(亀甲括弧)」状の板体の左右端部に一体的に略三角形状の側板を取り付け、その上部にも略直角台形状のカバー材を左右に配し、これら板体からなる枠体の内側部分に、上端部を略頭切円錐状に形成した略円柱状のカッター(以下「ドラムカッター」という。)を2つ並設し、ドラムカッター下端部から前方に向かって水平な突条部を櫛歯状に設け、枠体の上方部分に、先端部を下方に傾斜した横「〔(亀甲括弧)」状とし、柄の部分を棒状とした棒状体(以下「ストッパー部」という。)を前方に向けて傾斜させて設けた態様としたものである。
(3)キャビン部は、前面側上半分部分に上方に向かって前方に傾斜した略長方形板状体のフロントガラスを有する略直方体状とし、その上部に左右端部が下方に湾曲した肉厚な平面視略隅丸長方形状の屋根部を形成し、屋根部前方側の左右端部付近にライトを2つずつ配した態様であって、キャビン部左下側部分に、略円形状の吸入口を配した略半長円形状の空気吸入部を配設したものである。
(4)シュート部は、先端部に左右端部を折曲したシュート部と同幅の平面視略長方形状のカバー材を設け、上半分を側面視略円弧状に湾曲した略角柱状としたものであって、カッター部後方の前面視右寄りの部分からホッパー部前方の略中央部分にかけて、キャビン部とほぼ同じ高さとなるように車体の内側に向かって配設したものである。
(5)ホッパー部は、全体を略直方体形状とし、その前面右側に細断した穀物を投入する略長方形状の開口部分(以下「ホッパー口」という。)を設け、側面部にメンテナンス用開閉扉を設けたものである。
(6)成形部は、ホッパー部より一段低い略直方体形状とし、その上面後方部分に側面視略台形状の筐体部を配し、後面側に設けられた側面視略変形五角形状の左右枠材の間にロールベールの排出口を設けたものである。

2 請求人が主張する無効の理由
請求人が、審判請求書で主張する「意匠登録無効の理由の要点」は、以下のとおりである。
(1)無効理由1(意匠法第3条第1項第3号)
本件登録意匠は、甲第1号証の意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたため、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。

(2)無効理由2(意匠法第3条第2項)
本件登録意匠は、甲第1号証から甲第5号証の意匠から容易に想到することができるものであるから、意匠法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであるため、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。

3 引用意匠
(1)甲第1号証の意匠
甲第1号証の意匠(以下「甲1意匠」という。)は、証拠説明書及び甲第1号証の記載によれば、日本国特許庁が平成25年(2013年)5月27日に発行した意匠公報に記載された、意匠登録第1470080号(意匠に係る物品、ロールベーラ)の意匠であって、その形態は、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
当審では、甲1意匠の具体的な形態を以下のように認定している。
ア 全体は、左右にクローラーを取り付けた車体の前方に、穀物を細断するカッター部を設け、車体の前方から後方にかけて、前面視左側にキャビン部、前面視略中央部分に細断した穀物を上方に運搬するシュート部を設置し、これらの後方に細断した作物を収納するホッパー部及びこのホッパー部と一体的に形成した成形部を、ホッパー部後半部分から成形部にかけて車体後方に突出して配置した構成としたものである。
イ カッター部は、平面視略横「〔(亀甲括弧)」状の棒状体の内側部分に、上端部に丸鋸刃を配した略肉厚円板状のカッター(以下「円板状カッター」という。)を2つ並設し、円板状カッター下端部から前方に向かって水平な突条部を櫛歯状に設け、カッター部の上方部分に、先端部を下方に傾斜した横「〔(亀甲括弧)」状とし、根元部を逆コの字状とした棒状体からなるストッパー部を前方に向けて傾斜させて設けた態様としたものである。
ウ キャビン部は、前面部に側面視「く」の字状に折曲した板状体のフロントガラスを有する略直方体状とし、その上部に、前方側角部が隅丸な平面視略長方形状の平坦な屋根を形成した態様であって、キャビン部左下側部分に、略円形状の吸入口を配した略横P字状の空気吸入部を配設したものである。
エ シュート部は、先端部に接続金具及び左右端部を折曲したシュート部より幅広な平面視略台形状のカバー材を設け、上半分を側面視略逆J字状に湾曲した筒状としたものであって、カッター部後方の前面視中央やや右寄りの部分からホッパー部上方の中央やや右寄りの部分にかけて、キャビンより上方に突出した高さとなるように車体前後方向に配設したものである。
オ ホッパー部は、全体を略直方体形状とし、その上面前方部分に、上面が略正方形状に開口し、左側面下方部分が内側に傾斜した箱状のホッパー口を設けたものである。
カ 成形部は、ホッパー部と一体的に形成され、後面側に設けられた後端が垂直な側面視略五角形状の左右枠材の間にロールベールの排出口を設けたものである。

(2)甲第2号証の意匠
甲第2号証の意匠(以下「甲2意匠」という。)は、証拠説明書及び甲第2号証の記載によれば、大韓民国国際農機械資材博覧会で発表された、2014年10月発行のパンフレットに記載された、「トウモロコシ用自走式ベーラー」の意匠であって、その形態は、同パンフレット12頁及び13頁の写真に現されたとおりとしたものである(別紙第3参照)。
当審では、甲2意匠の具体的な形態を以下のように認定している。
ア 全体は、左右にクローラーを取り付けた車体の前方に、カッター部を設け、車体の前方から後方にかけて、前方視左側にキャビン部、前面視右側にシュート部を設置し、これらの後方にホッパー部及びこのホッパー部と連続して配置した成形部を、成形部のみ車体後方に突出して配置した構成としたものである。
イ カッター部は、板体の左右端部に略三角形状の側板を一体的に取り付けた枠体の内側部分に、上端部を略頭切円錐状に形成した略円柱状のドラムカッターを1つ配設し、ドラムカッター下端部から前方に向かって水平な突条部を櫛歯状に設け、枠体の上方部分に、先端部を下方に傾斜した横「〔(亀甲括弧)」状とし、柄の部分を棒状としたストッパー部を前方に向けて傾斜させて設けた態様としたものである。
ウ キャビン部は、前面側上半分部分に上方に向かって前方に傾斜した略長方形板状体のフロントガラスを有する略直方体状とし、その上部に左右端部が下方に湾曲した肉厚な板状の屋根部を形成し、屋根部前方側の左右端部付近にライトを2つずつ配した態様であって、キャビン部左下側部分に、略円形状の吸入口を配した略半長円形状の空気吸入部を配設したものである。
エ シュート部は、先端部にシュート部と同幅のカバー材を設け、上半分を側面視略円弧状に湾曲した略角柱状としたものであって、カッター部後方からホッパー部前方の略中央部分に向かって、キャビン部とほぼ同じ高さとなるように車体の内側に向かって配設したものである。
オ ホッパー部は、全体を略直方体形状とし、その前面右側に略長方形状のホッパー口を設けたものである。
カ 成形部は、ホッパー部より一段低い略直方体形状とし、その上面後方部分に側面視略台形状の筐体部を配し、後面側に設けられた側面視略変形五角形状の左右枠材の間にロールベールの排出口を設けたものである。

(3)甲第3号証の意匠
甲第3号証の意匠(以下「甲3意匠」という。)は、証拠説明書及び甲第3号証の記載によれば、農業技術実用化財団の農業技術広場ウェッブページにおける農業機械成績書(http://www.aminfo.or.kr/front/agriculturalmachine/agMachine.do?method=list&rank=4&sid=304)に記載された、試行日:2013年12月26日の「農用ベーラー」の意匠であって、その形態は、甲第3号証の写真に現されたとおりとしたものである(別紙第4参照)。
当審では、1つの斜視図で現された甲3意匠の形態を以下のように認定している。
ア 全体は、クローラーを取り付けた車体の前方に、穀物を細断するカッター部を設け、車体の前方から後方にかけて、前方視左側にキャビン部、前面視右側にシュート部を設置し、これらの後方にホッパー部及び成形部を配置した構成としたものである。
イ カッター部は、左右端部に略三角形状の側板を一体的に取り付けた枠体の内側部分に、上端部を略頭切円錐状に形成した略円柱状のドラムカッターを1つ配設し、ドラムカッター下端部から前方に向かって水平な突条部を櫛歯状に設け、枠体の上方部分に、棒状体からなるストッパー部を前方に向けて傾斜させて設けた態様としたものである。
ウ キャビン部は、前面側上半分部分に上方に向かって前方に傾斜した略長方形板状体のフロントガラスを有する略直方体状とし、その上部に左右端部が下方に湾曲した肉厚な板状の屋根部を形成し、屋根部前方側の左右端部付近にライトを配した態様としたものである。
エ シュート部は、先端部に左右端部を折曲したシュート部と同幅のカバー材を設け、上半分を略円弧状に湾曲した略角柱状としたものであって、カッター部後方からホッパー部前方の略中央部分に向かって、キャビン部とほぼ同じ高さとなるように車体の内側に向かって配設したものである。
オ ホッパー部は、全体を略直方体形状とし、その前面右側に略長方形状のホッパー口を設けたものである。
カ 成形部は、ホッパー部より一段低い略直方体形状としたものである。

(4)甲第4号証の意匠
甲第4号証の意匠(以下「甲4意匠」という。)は、証拠説明書及び甲第4号証の記載によれば、2014年10月29日発行の韓国農機械新聞第357号に記載された、「自走式ベーラー」の意匠であって、その形態は、同紙の写真に現されたとおりとしたものである(別紙第5参照)。
当審では、1つの斜視図で現された甲4意匠の形態を以下のように認定している。
ア 全体は、クローラーを取り付けた車体の前方に、穀物を細断するカッター部を設け、車体の前方から後方にかけて、前方視左側にキャビン部、前面視右側にシュート部を設置し、これらの後方にホッパー部及び成形部を配置した構成としたものである。
イ カッター部は、左右端部に略三角形状の側板を一体的に取り付けた枠体の内側部分に、上端部を略頭切円錐状に形成した略円柱状のドラムカッターを1つ配設し、ドラムカッター下端部から前方に向かって水平な突条部を櫛歯状に設け、枠体の上方部分に、先端部を下方に傾斜した横「〔(亀甲括弧)」状とし、柄の部分を棒状としたストッパー部を前方に向けて傾斜させて設けた態様としたものである。
ウ キャビン部は、前面側上半分部分に上方に向かって前方に傾斜した略長方形板状体のフロントガラスを有する略直方体状とし、その上部に左右端部が下方に湾曲した肉厚な板状の屋根部を形成し、屋根部前方側の左右端部付近にライトを配した態様としたものである。
エ シュート部は、先端部に左右端部を折曲したシュート部と同幅のカバー材を設け、上半分を略円弧状に湾曲した略角柱状としたものであって、カッター部後方からホッパー部前方の略中央部分に向かって、キャビン部とほぼ同じ高さとなるように車体の内側に向かって配設したものである。
オ ホッパー部は、全体を略直方体形状とし、その前面右側に略長方形状のホッパー口を設けたものである。
カ 成形部は、ホッパー部より一段低い略直方体形状とし、その上面後方部分に側面視略台形状の筐体部を配したものである。

(5)甲第5号証の意匠
甲第5号証の意匠(以下「甲5意匠」という。)は、証拠説明書及び甲第5号証の記載によれば、日本国特許庁が平成26年(2014年)4月14日に発行した意匠公報に記載された、意匠登録第1495108号(意匠に係る物品、ロールベーラ)の意匠であって、その形態は、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第6参照)。
当審では、甲5意匠の具体的な形態を以下のように認定している。
ア 全体は、左右にクローラーを取り付けた車体の前方に、穀物を細断するカッター部を設け、車体の前方から後方にかけて、前面視左側にキャビン部、前面視略中央部分に細断した穀物を上方に運搬するシュート部を設置し、これらの後方に細断した作物を収納するホッパー部及びこのホッパー部と一体的に形成した成形部を、ホッパー部後半部分から成形部にかけて車体後方に突出して配置した構成としたものである。
イ カッター部は、平面視略横「〔(亀甲括弧)」状の棒状体の左右側面部分に略三角形状のカバー材を設け、その内側部分に、上端部に丸鋸刃を配した肉厚な円板状カッターを1つ並設し、円板状カッター下端部から前方に向かって水平な突条部を櫛歯状に設け、カッター部の上方部分に、先端部を下方に傾斜した横「〔(亀甲括弧)」状とし、根元部を逆コの字状とした棒状体からなるストッパー部を前方に向けて傾斜させて設けた態様としたものである。
ウ キャビン部は、前面部に側面視「く」の字状に折曲した板状体からなるフロントガラスを有する略直方体状とし、その上部に、前方側角部が隅丸な平面視略長方形状の平坦な屋根を形成した態様であって、キャビン部左下側部分に、略円形状の吸入口を配した略横P字状の空気吸入部を配設したものである。
エ シュート部は、先端部に接続金具及び左右端部を折曲したシュート部より幅広な平面視略台形状のカバー材を設け、上半分を側面視略逆J字状に湾曲した筒状としたものであって、カッター部後方の前面視中央やや右寄りの部分からホッパー部上方の中央やや右寄りの部分にかけて、キャビンより上方に突出した高さとなるように車体前後方向に配設したものである。
オ ホッパー部は、全体を略直方体形状とし、その上面前方部分に、上面が略正方形状に開口し、左側面下方部分が内側に傾斜した箱状のホッパー口を設けたものである。
カ 成形部は、ホッパー部と一体的に形成され、その後方に設けられた後端が垂直な側面視略五角形状の左右枠材の間にロールベールの排出口を設けたものである。

4 無効理由1及び2の検討
請求人の無効理由1についての主張は、本件登録意匠は、甲1意匠の意匠と類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないというものである。
また、請求人の無効理由2についての主張は、本件登録意匠は、この自走収穫式ロールベーラの属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、甲1意匠ないし甲5意匠に基づいて、容易に創作することができたものであり、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないというものである。
よって、請求人及び被請求人の主張を踏まえ、本件登録意匠と甲1意匠との類否判断、及び本件登録意匠が甲1意匠ないし甲5意匠に基づき、当業者により容易に創作をすることできたか否かについて、以下検討する。

(1)本件登録意匠と甲1意匠との類否判断
ア 本件登録意匠と甲1意匠の認定
本件登録意匠の意匠に係る物品及び形態は、上記1に示すとおりであり、甲1意匠の意匠に係る物品及び形態は、上記3(1)に示すとおりである。

イ 本件登録意匠と甲1意匠の対比
(ア)意匠に係る物品の対比
本件登録意匠の意匠に係る物品は、「自走収穫式ロールベーラ」とし、甲1意匠の意匠に係る物品は、「ロールベーラ」とするものであるが、いずれも収穫した飼料作物からロールベールを形成する自走式のロールベーラであるから、本件登録意匠及び甲1意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通する。

(イ)形態の対比
本件登録意匠と甲1意匠を対比する(以下、対比のため、甲1意匠を本件登録意匠の図面の向きに合わせることとする。)と、両意匠の形態については、主に以下の共通点及び相違点がある。
a 形態の共通点
(共通点1)両意匠は、全体を、左右にクローラーを取り付けた車体の前方に、穀物を細断するカッター部を設け、車体の前方から後方にかけて、前面視左側にキャビン部、前面視略中央部分に細断した穀物を上方に運搬するシュート部を設置し、これらの後方に細断した作物を収納するホッパー部及び成形部を配置した構成とした点で共通する。
(共通点2)両意匠は、カッター部下端部分の形態が、回転する2つのカッターの下端部から前方に向かって水平な突条部を櫛歯状に設けている点で共通する。
(共通点3)両意匠は、ストッパー先端部の形態が、先端部を下方に傾斜した横「〔(亀甲括弧)」状とした棒状体である点で共通する。
(共通点4)両意匠は、ホッパー部の形態が、全体を略直方体形状としている点で共通する。
(共通点5)両意匠は、成形部の形態が、後面側に設けられた左右枠材の間にロールベールの排出口を設けている点で共通する。

b 形態の相違点
(相違点1)本件登録意匠の車体後部の態様が、成形部のみが車体後方からに突出して配置したものであるのに対し、甲1意匠の車体後部の態様は、ホッパー部後半部分から成形部にかけて車体後方に突出して配置したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本件登録意匠のキャビン部におけるフロントガラスの形態が、上方に向かって前方に傾斜した略長方形板状体のものをキャビン部の前面側上半分部分に配設したものであるのに対し、甲1意匠のキャビン部におけるフロントガラスの形態は、側面視「く」の字状に折曲した板状体のものをキャビン部の前面部に配設したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本件登録意匠のシュート部の形態が、先端部にシュート部と同幅の平面視略長方形状のカバー材を設け、上半分を側面視略円弧状に湾曲した略角柱状とし、キャビン部とほぼ同じ高さとなるように車体の内側に向かって配設したものであるのに対し、甲1意匠のシュート部の形態は、先端部に接続金具及び左右端部を折曲したシュート部より幅広な平面視略台形状のカバー材を設け、上半分を側面視略逆J字状に湾曲した筒状とし、キャビンより上方に突出した高さとなるように車体前後方向に配設したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点4)本件登録意匠のカッター部の形態が、平面視略横「〔(亀甲括弧)」状の板体の左右端部に略三角形状の側板を一体的に取り付けた枠体の内側部分に、上端部を略頭切円錐状に形成した略円柱状のドラムカッターを2つ並設したものであるのに対し、甲1意匠のカッター部の形態は、平面視略横「〔(亀甲括弧)」状の棒状体の内側部分に、上端部に丸鋸刃を配した略肉厚円板状の円板状カッターを2つ並設したものである点で、両意匠は相違する。
(相違点5)本件登録意匠のホッパー部の態様が、その前面右側に略長方形状のホッパー口を設け、側面部にメンテナンス用開閉扉を設けたものであるのに対し、甲1意匠のホッパー部の態様は、その上面前方部分に、上面が略正方形状に開口し、左側面下方部分が内側に傾斜した箱状のホッパー口を設けたものである点で、両意匠は相違する。
(相違点6)本件登録意匠のキャビン部における屋根部の形態が、左右端部が下方に湾曲した平面視略隅丸長方形状の肉厚な板状とし、屋根部前方側の左右端部付近にライトを2つずつ配したものであるのに対し、甲1意匠のキャビン部における屋根部の形態は、前方側角部が隅丸の平面視略長方形状の平坦な板状としたものである点で、両意匠は相違する。
(相違点7)本件登録意匠の成形部の形態が、ホッパー部より一段低い略直方体形状とし、その上面後方部分に側面視略台形状の筐体部を配し、後面側に側面視略変形五角形状の左右枠材を設けたものであるのに対し、甲1意匠の成形部の形態は、ホッパー部と一体的に形成され、後面側に後端が垂直な側面視略五角形状の左右枠材を設けたものである点で、両意匠は相違する。

ウ 両意匠の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、自走収穫式ロールベーラに係るものであり、この物品に係る需要者は、主としてこの物品を購入し、使用する消費者であると認められる。また、この自走収穫式ロールベーラに係る物品は、収穫した飼料作物をカッター部で細断し、細断した飼料作物をシュート部によってホッパー部に投入し、ホッパー部から送られた細断した飼料作物から円筒状のロールベールを成形部で成形する機能を有し、その使用方法は、作業者がロールベーラに乗車し、走行しながら操作するものであるから、この物品の性質、用途、使用方法に照らすと、需要者は、ロールベーラの走行において重視される部分やロールベール成形において重視される部分を注視して、両意匠に係る物品を観察するということができる。
したがって、走行のしやすさという観点からは、キャビン部のフロントガラスの形態や車両全体の大きさに係る部分の形態が需要者の注意を強く惹く部分であるとともに、ロールベールの成形という機能の観点からは、カッター部の形態やホッパー部の形態が需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。
(ア)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するから類似するものである。

(イ)形態の類似判断
a 共通点の評価
(共通点1)は、両意匠の全体の構成態様に係るものであって、両意匠の基調を形成するものであるが、この自走収穫式ロールベーラの物品分野において、車体前方にカッター部を設け、車体の前方から後方にかけて、キャビン部及びシュート部、ホッパー部及び成形部を配置したものがごく普通に見られるものであるから、この構成態様が両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)ないし(共通点5)における各部の形態については、この種物品の機能から生じるごく一般的な形態にすぎず、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから、この(共通点2)ないし(共通点5)の形態が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

b 相違点の評価
(相違点1)の車体後部の態様、(相違点2)のフロントガラスの形態、及び(相違点3)のシュート部の形態については、自走収穫式ロールベーラの走行のしやすさに係る部分の形態であって、本願意匠が、車体後方への突出が小さく、シュート部の高さも低く形成した取り回しの良いロールベーラであるとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、キャビン前面の下端部までフロントガラスとし、前方下方部への視認性が良いものの、車体後方への突出が大きく、シュート部の高さも高く形成した大型のロールベーラであるとの印象を与えるから、両意匠はこれら(相違点1)ないし(相違点3)における車体後部、フロントガラス、及びシュート部の美感に大きな差異がある。
(相違点4)のカッター部の形態については、ロールベール成形という機能の観点から需要者の注意を強く惹く部分であって、本願意匠の略円柱状のドラムカッターと引用意匠の略肉厚円板状の円板状カッターとでは、一目見ただけで別異な印象を与えるから、上端部を略頭切円錐状に形成したか、上端部に丸鋸刃を配したかといった点も含めて、両意匠はカッター部の美感に大きな差異がある。
(相違点5)のホッパー部の態様については、本願意匠が、ホッパー部前面右側に、シュート部先端のカバー材の大きさに対応した小型のホッパー口を設けた比較的コンパクトなホッパー部であるとの印象を与えるのに対し、引用意匠は、ホッパー部上面前方部分に、シュート部先端の大きなカバー材に対応した上部が大きく開口した箱状のホッパー口を設けた大型のホッパー部であるとの印象を与えるから、両意匠はホッパー部の美感に大きな差異がある。
(相違点6)のキャビン部における屋根部の形態、及び(相違点7)の成形部の形態については、この種物品の先行意匠に照らして、既に見られるものであって、特段特徴のなるものとはいえないから、この(相違点6)及び(相違点7)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。

c 形態の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、需要者がロールベーラの走行のしやすさの観点において注視する車体後部、フロントガラス、及びシュート部の美感に大きな差異があり、ロールベールの成形という機能の観点から注視するカッター部及びホッパー部の美感に大きな相違があるから、両意匠は全体として美感に大きな相違がある。
そうすると、上記aで述べた、全体の構成態様や(共通点2)ないし(共通点5)における各部の形態が共通することを考慮しても、これらの共通点が意匠全体の美感に与える影響は小さく、両意匠は、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものである。
したがって、両意匠の形態は類似しない。

(ウ)小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似するが、その形態において類似しないから、両意匠は類似しないものである。

(2)本件登録意匠が甲1意匠ないし甲5意匠に基づき、当業者により容易に創作をすることできたかについて
本件登録意匠の形態は、上記1に示すとおりであり、甲1意匠ないし甲5意匠の形態は、上記3(1)ないし(5)に示したとおりであるところ、本件登録意匠と甲1意匠及び甲5意匠には、カッター部、シュート部、キャビン部、ホッパー部及び成形部の形態において相違が認められ、本件登録意匠と甲2意匠ないし甲4意匠には、カッター部の形態及び成形部の形態において相違が認められる。
以下、これら甲1意匠ないし甲5意匠の意匠に基づいて、本件登録意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本件登録意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

ア カッター部の形態について
本件登録意匠のカッター部における2つのドラムカッターの部分の形態は、本件登録意匠の出願前より公然知られたと認められる甲1意匠及び甲5意匠において何ら現れておらず、また当該物品分野において広く知られた若しくは公然知られた形態であるとも認められない。
また、当該ドラムカッター自体の形態は、甲2意匠ないし甲4意匠のものとは類似するものと認められるが、本件登録意匠の2つのドラムカッターからなる具体的なカッター部の形態は、甲2意匠ないし甲4意匠には現れておらず、ドラムカッターの数や配置態様を甲第1号証のカッター部の形態に基づき、変更するといった手法を用いたとしても、甲2意匠ないし甲4意匠のカッター部の形態から枠体の上部に略直角台形状のカバー材を配した本件登録意匠のカッター部の形態には想到するとは認められない。
なお、請求人は、「本願登録意匠の出願日前に、自走収穫式ロールベーラにおいて、車体前方に設けられるドラムカッターを2つ設けたものと(甲第1号証)、1つだけ設けたもの(甲第5号証)とが既に公知になっているため、これらの意匠に基づいて当業者が容易に想到することができたものであ」(平成31年2月27日付け回答書5頁4行?7行)るとの主張を行っているが、本件登録意匠の形態が、甲1意匠ないし甲5意匠の形態をありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものといえる具体的な証拠を提示しておらず、この主張を認めることはできない。
よって、本件登録意匠は、公然知られた形態から特段の創意を要さないで創作できるとは認め難いものであって、当業者から見て着想の新しさないし独創性があるといえるから、本件登録意匠のカッター部の形態に係る創作をすることが容易であったとはいうことができない。

イ シュート部、キャビン部及びホッパー部の形態について
本件登録意匠のシュート部、キャビン部及びホッパー部の形態は、上記1に示したとおりであるが、これらの形態は、甲2意匠ないし甲4意匠にあるように本件登録意匠の出願前より公然知られていたことが認められる。
よって、本件登録意匠のシュート部、キャビン部及びホッパー部の形態は、当業者から見て着想の新しさないし独創性があるということはできず、本件登録意匠の出願前より公然知られていた意匠に基づき、当業者であれば容易に創作ができたものである。

ウ 成形部の形態について
本件登録意匠の成形部の形態は、上記1の(6)に示したとおりであるが、この形態はホッパー部と一体的に形成された甲1意匠及び甲5意匠のものとは相違し、後面側に設けられた左右枠材の形態も異なるものであって、本件登録意匠の該部位の形態は、甲1意匠及び甲5意匠の該部位の形態をありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものといえる証拠もない。
よって、本件登録意匠のロールベール成形部の形態は、公然知られた形態から特段の創意を要さないで創作できるとは認め難いものであって、当業者から見て着想の新しさないし独創性があるといえるから、該部位の形態を創作することが容易であったとはいうことができない。
なお、甲2意匠ないし甲4意匠は、該部位の具体的な形態が不明確であって対比を行うことができず、創作容易性の判断の根拠にはできないものである。

そうすると、本件登録意匠は、上記アの理由により、当業者が甲1意匠ないし甲5意匠に基づいて、容易に創作することができたものということはできないものである。

5 まとめ
上記4のとおり、本件登録意匠は、甲1意匠と類似する意匠ではなく、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠には該当しないものである。
また、本件登録意匠は、甲1意匠ないし甲5意匠に基づいて、当業者が容易にその意匠を創作することができたものであるということはできず、意匠法第3条第2項の規定には該当しないものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、上記無効理由には理由がなく、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定、及び同法第3条第2項の規定に違反して登録されたものとはいうことはできないから、同法第48条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。



別掲


審決日 2019-10-16 
出願番号 意願2014-26299(D2014-26299) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (K3)
D 1 113・ 121- Y (K3)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2015-04-10 
登録番号 意匠登録第1523600号(D1523600) 
代理人 久留 徹 
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所 

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