• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L7
管理番号 1359625 
審判番号 不服2019-8664
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-28 
確定日 2020-02-17 
意匠に係る物品 壁板取付金具 
事件の表示 意願2018- 6742「壁板取付金具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成30年3月29日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年11月26日付け 拒絶理由通知書
平成31年 1月23日 意見書の提出
平成31年 3月 5日付け 拒絶査定
令和 1年 6月28日 審判請求書の提出

第2 本願意匠

本願の意匠は、意匠に係る物品を「壁板取付金具」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面のとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照。)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

拒絶理由において引用された意匠は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成26年8月18日)に記載された、意匠登録第1505126号(意匠に係る物品、壁板留め付け金具)の意匠である(以下「引用意匠」という。別紙第2参照)。

第4 対比

1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「壁板取付金具」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「壁板留め付け金具」であって、いずれも壁板を建物に取り付けるための金具であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

2 形態の対比
両意匠の形態を対比すると、その形態には、以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
なお、引用意匠の図面の表示において「左側面図」「左側面拡大図」と「右側面図」「右側面拡大図」は、相互に逆に表示されているため、本願意匠の図の向きに合わせて認定する。

(1)形態の共通点
(共通点1)全体構成
正面視において左右に連続する型材であって、側面視を、前面開放部を有する左側面視略G字状とし、前面開放部側下方の垂直壁(以下「下部前面板」という。)先端に壁板を引っ掛けて係止する係止部を設けている点。

(共通点2)係止部の態様
係止部は、下部前面板先端からまず水平状に伸び、そこから斜め上及び斜め下に傾斜したフラップ状の係止片を間に僅かに間隔を置いて配している点。

(共通点3)小円形孔部の態様
正面視において小円形孔を水平に等間隔に配し、底面視においては、正面視における小円形孔よりやや大きい円形孔を水平に等間隔に配している点。

(2)形態の相違点
(相違点1)側面視の態様
前面側に開放部を有する左側面視略G字状のうち、開放部側の上を上部前面板、そこから背面側にわたる部分を天板、背面側の本願意匠を屋内側の壁面に固定する垂直壁を基板、底部を底板、底板から前面の開放部側へ伸びる垂直壁を下部前面板、その先端部を係止部として、以下相違点を認定する。

(相違点1-1)天板及び底板の態様
本願意匠の天板及び底板の奥行き方向の幅は、基板の高さを1とすると、それぞれ約0.21と約0.36であり、底板の方が奥行き方向の幅が広いのに対し、引用意匠の天板及び底板は、共に約0.34で同幅である点。
さらに、本願意匠の天板及び底板は、前面方向に同じ角度でやや斜め下向きに下がっているのに対して、引用意匠の天板及び底板は共に水平状である点。

(相違点1-2)上部前面板及び下部前面板の態様
本願意匠の上部前面板及び下部前面板の高さは、基板の高さを1とすると、それぞれ約0.25と約0.32であるのに対し、引用意匠は、それぞれ約0.13と約0.16であり、本願意匠の方が基板に対して約2倍程度長い点。
さらに、(相違点1-1)に記したとおり、天板と底板の奥行き方向の幅が異なっているため、本願意匠の上部前面板は、下部前面板よりも基板側に寄っているのに対し、引用意匠は同一面上にある点。

(相違点2)係止部の態様
(相違点2-1)係止部の高さ
下部前面板の高さが異なることから、本願意匠の係止部は、引用意匠よりも高い位置にあり、正面視において、下向きの係止片の下に下部前面板が表れているのに対し、引用意匠は、係止部の位置が低く、正面視において、下向きの係止片の先端と下部前面板の下端がほぼ同じ位置となっている点。

(相違点2-2)係止片の態様
本願意匠は、下向きの係止片の正面視における横幅を1とすると、上向きの係止片は、横幅を約0.68とし、間に僅かな間隔を設けて2つ連接して「連接上向き片」を構成し、下向片と、連接上向き片とが交互に繰り返す態様としているのに対し、引用意匠は、同形の係止片を下向き上向き交互に繰り返す態様としている点。
また、本願意匠の係止片は、角にアールとっているのに対し、引用意匠の係止片は、角にアールはなく、直角状となっている点。

(相違点3)孔部の態様
(相違点3-1)基板の孔部の態様
基板の孔部について、本願意匠は、高さ方向の中央よりやや上の位置に水平状に配しているのに対し、引用意匠は基板の高さ方向の中央に水平状に配している点。

(相違点3-2)底板の孔部の態様
底板の孔部について、本願意匠は、下部垂直板側に寄った位置に水平状に配しているのに対し、引用意匠は、底板の奥行き幅の中央の位置に水平状に配している点。

(相違点3-3)天板と基板による角部の孔部の有無
本願意匠には、天板と基板が接合する角部に、トラック形状の中央を折ったような孔部が等間隔で設けられているのに対し、引用意匠にはそのような孔部は無い点。

第5 判断

1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠は、共に壁板を建物に取り付けるための金具であり、建築施工時に用いるものであることから、その需要者は主に施工業者であり、各部の構成が施工時にどのように機能するのかといった観点から各部の具体的態様についても注視するものということができる。

(1)形態の共通点
(共通点1)は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎず、意匠全体の美感に与える影響は小さい。

(共通点2)は、本願出願前より公知となっている態様であり(参考意匠1)、また、壁板取付金具の分野においては、フラップ状の係止片を斜め上、斜め下に傾斜して配することは、従来からよく見受けられており(参考意匠2)、この点について需要者が特段注視することはない。

参考意匠1(別紙第3参照)
特許庁が平成27年7月6日に発行した意匠公報に掲載された「建築用板材取付具」の意匠

参考意匠2(別紙第4参照)
特許庁が平成9年7月15日に発行した意匠公報に掲載された「壁板取り付け金具」の意匠

(共通点3)は、壁板取付金具の分野において、当該物品を屋内側の壁面に固定する、あるいは空気を通すため等に円形孔を配することは従来から普通に行われており、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

(2)形態の相違点
側面視の態様における(相違点1-1)及び(相違点1-2)は、両意匠の骨格に関わる相違であり、天板及び底板が斜めか水平状か、上部前面板と下部前面板が同一面状にあるか否かの差異は、施工にも影響が出るため、需要者が特に着目する部分であり、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

(相違点2-1)は、係止部の位置が異なることによって、正面視における視覚的印象にも影響があり、両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼす。

(相違点2-2)は、壁板を係止する部分でもあり、視覚的印象にも多少の変化を与えていることから、両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼす。

(相違点3-1)は、僅かな相違にすぎないため、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。

(相違点3-2)も、幅の狭い中にあっての相違であり、底部であることからも、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。

(相違点3-3)は、当該物品分野において、通常見受けられる態様といったものではないため、両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼす。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、上記2(2)のとおり、(相違点1-1)及び(相違点1-2)は、両意匠の骨格に関わる相違であり、需要者が特に着目する部分である。また、(相違点2-1)、(相違点2-2)及び(相違点3-3)が類否判断に与える影響は一定程度認められる。
一方、(相違点3-1)(相違点3-2)が両意匠の類否判断へ与える影響は限定的である。
したがって、(相違点3-1)(相違点3-2)の影響は小さいものの、相違点を総合すると、相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく、両意匠は美感に大きな差異があるといえる。

それに対し、上記2(1)で示したとおり、共通点は両意匠の形態を概括的に捉えたにすぎないものであったり、当該物品分野において従来から見受けられる態様にすぎないものであり、類否判断に与える影響は小さい、又は限定的であり、相違点の方が共通点を上回っており、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。

したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、類似しない。

第6 むすび

以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-01-09 
出願番号 意願2018-6742(D2018-6742) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上島 靖範 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 北代 真一
正田 毅
登録日 2020-02-26 
登録番号 意匠登録第1654933号(D1654933) 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ