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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 J1
管理番号 1360533 
審判番号 不服2016-12869
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-26 
確定日 2017-03-02 
意匠に係る物品 肌撮影用レンズ付きデジタルカメラ 
事件の表示 意願2015-7101「肌撮影用レンズ付きデジタルカメラ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を36月秘密にすることを請求して,本意匠を意願2015-7100号(意匠登録第1543076号)の意匠とする関連意匠の意匠登録出願であって,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成27年(2015年)3月31日に出願されたものであり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「肌撮影用レンズ付きデジタルカメラ」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「破線で表した部分以外の部分(表示部の画面)のうち,薄い黄色を付した部分以外の部分(3枚の花びら状の画像と花びら状のシルエットの部分)が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)。

第2 当審における拒絶の理由及び本意匠
当審における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しない,というものである。
また,本意匠に係る出願は,本願意匠の出願人と同一人であるソニー株式会社により,意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠を36月秘密にすることを請求して,平成27年3月31日に意願2015-7100号として出願されたものであって,平成28年1月8日に意匠登録第1543076号として設定登録され,本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報は,平成28年2月8日に発行された。
そして,本意匠は,本意匠に係る出願の願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「携帯情報端末」とし,形態を本意匠に係る出願の願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって,「破線で表した部分以外の部分(表示部の画面)のうち,薄い黄色を付した部分以外の部分(3枚の花びら状の画像と花びら状のシルエットの部分)が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下,本意匠について意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」といい,本願実線部分と合わせて「両意匠部分」という。)。

第3 請求人の意見
請求人は,平成28年12月27日付けの意見書において,当審における拒絶の理由(以下「拒絶理由」という。)に対して,おおむね以下のように主張している。

1.拒絶理由で指摘された点について
拒絶理由において,両意匠の類否判断に支配的または一定程度の影響を与えると指摘された2つの指摘のうち,「両意匠部分の位置,大きさ及び範囲の相違」を「指摘相違点1」とし,「可変花びら状部が,本願実線部分では,一定花びら状部と相似形となるように面積が変化するのに対して,本意匠部分では,一定花びら状部の外形線に沿うように面積が変化する点」を「指摘相違点2」として,これらの相違点が類否判断に与える影響はさほど大きくなく,両意匠が有する共通点が類否判断に与える影響の方が大きいと認められるべきことについて説明する。

2.指摘相違点1について
(1)両意匠部分の位置の違い
本願実線部分の位置は,本願意匠に係る物品である「肌撮影用レンズ付きデジタルカメラ(以下「カメラ」という。)の正面視上端寄りの位置に設けられた画面に表示される画像であるのに対して,本意匠部分は,本意匠に係る物品である携帯情報端末(以下「端末」という。)の正面視中央の位置に設けられた画面に表示される画像なので,両意匠部分は,その位置について相違が認められる。
しかし,本願意匠に係るカメラは,筐体を片手で把持して用いるデジタルカメラであって,片手で掴むことができるように筐体形状を縦長としたデジタルカメラの物品分野において,レンズの光軸の延長上後方の筐体背面に小型の画面を設け,その画面にライブビュー画像を含む各種の情報を表示できるようにすることは,一般的なことであって,本願意匠に係るカメラの画面の位置自体は,特に,「本願意匠部分のみに見られる極めて独創的な位置」という程のものではないから,両意匠部分の位置の相違が類否判断に与える影響は微弱なものである。

(2)両意匠部分の大きさの違い
両意匠部分の大きさを対比する際は,両意匠部分の絶対的な大きさを対比すべきである。
両意匠部分の大きさを,それぞれの物品全体の大きさを基準として求めると,
本願実線部分の大きさ
= 1/4(画面の大きさ) × 1/3(画面に対する割合)
= 1/12
≒ 8.3%
本意匠部分の大きさ
= 7/8(画面の大きさ) × 1/7(画面に対する割合)
= 1/8
≒ 12.5%
となり,両意匠部分の大きさの,物品全体の大きさに対する割合の差は4.2%程度となるところ,本願意匠に係るカメラの筐体の大きさと本意匠に係る端末の筐体の大きさとは,さほど違いがないから,4.2ないし5%程度の違いが類否判断に与える影響が大きいとした認定については,承服できない。

(3)両意匠部分の範囲の違い
本願実線部分の大きさとしての1/12(≒8.3%)と,本意匠部分の大きさとしての1/8(≒12.5%)は,それぞれの物品における範囲に相当するものであるところ,両意匠部分の範囲の違いは,約4.2%程度といった僅かな違いであり,このような僅かな範囲の違いが類否判断に与える影響についても,僅かなものである。

3.指摘相違点2について
(1)認定の誤りについて
拒絶理由では,「可変花びら状部が,本願実線部分では,一定花びら状部と相似形となるように面積が変化するのに対して,本意匠部分では,一定花びら状部の外形線に沿うように面積が変化する点」が相違するとして指摘されているが,その認定には,一部に誤りある。
本意匠部分の可変花びら状部は,一定花びら状部の外形線に沿いながらも,ベースとなる一定花びら状部と相似形となるように面積を変化させるものであり,可変花びら状部の形状は,一定花びら状部の形状と,ほぼ相似形であって,目視においては,両花びら状部が相似形ではないと認定することの方が,困難といえるほどである。
両意匠とも,可変花びら状部が一定花びら状部と相似形を保ちつつ面積が変化する点で共通するといえるので,両意匠の共通点としての「スコアに応じた面積で表示される花びら状の画像が他には見られない」こととも相俟って,この共通点は,両意匠の美感が類似するものとして判断することの方に,非常に強い影響を与えることになる。

(2)登録例について
一定花びら状部に対する可変花びら状部の変化の態様の相違については,「携帯情報端末」についての意願2015-7105号に係る登録意匠と,円形の画面を有する「指輪型情報端末」についての意願2015-7106号に係る登録意匠にも表れる相違であり,かかる相違が類否判断に与える影響は小さいものである。

4.類否判断について
以上のように,拒絶理由において指摘された2つの相違点が類否判断に与える影響は大きなものではない。
一方,拒絶理由において認定されたとおり,本願意匠と本意匠とは,第1に,面積が一定の3つの一定花びら状部が,一端を中心として120度ずつ回転対称に配置され,一定花びら状部の内部に,面積が可変の3つの可変花びら状部が配置されている点,および,第2に,一定花びら状部及び可変花びら状部が,異なる明暗調子で表示されている点を,共通点として有しており,かかる共通点は,「美容」から連想されるイメージを具体化した「花」を用いて肌の状態を表現するといった,女性らしい,公知意匠に見られない斬新な態様であるとともに,需要者としての女性ユーザの心理に寄り添った態様といえるものであるから,相違点を凌駕し,女性ユーザを需要者としたときの類否判断においては,非常に大きな影響を与えるものである。

5.むすび
以上のように,本願意匠と本意匠は類似する意匠なので,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当するものと確信する。

第4 当審の判断
1.本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「肌撮影用レンズ付きデジタルカメラ」であり,本意匠の意匠に係る物品は「携帯情報端末」であって,表記は異なるが,本願意匠及び本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品の記載を参照すると,ユーザの肌を撮影して得られた肌画像を解析することによって測定された肌の状態に関する情報を表示するという用途及び機能が共通するから,両意匠の意匠に係る物品は共通する。

(2)両意匠部分の用途及び機能
両意匠部分は,肌の状態に関するスコアに応じた面積で,花びら状の画像を表示する用途及び機能を有しているから,両意匠部分の用途及び機能は一致する。

(3)両意匠部分の位置,大きさ及び範囲
本願実線部分は,肌撮影用レンズ付きデジタルカメラ(以下「カメラ」という。)の正面視上端寄りの位置で,カメラの正面視略1/4の大きさ及び範囲を占める画面において,画面の中央の位置で,画面の略1/3の大きさ及び範囲を占める3つの花びら状の表示部分である。
これに対して,本意匠部分は,携帯情報端末(以下「端末」という。)の正面視中央の位置で,端末の正面視略7/8の大きさ及び範囲を占める画面において,画面の中央やや上の位置で,画面の略1/7の大きさ及び範囲を占める3つの花びら状の表示部分である。
したがって,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は相違する。

(4)両意匠部分の形態
両意匠部分の形態を対比すると,主に以下の共通点及び相違点がある。

<共通点>
(A)面積が一定の3つの花びら状部(以下「一定花びら状部」という。)が,一端を中心として120度ずつ回転対称に配置され,一定花びら状部の内部に,面積が可変の3つの花びら状部(以下「可変花びら状部」という。)が配置されている点。
(B)一定花びら状部及び可変花びら状部は,異なる明暗調子で表示されている点。
(C)可変花びら状部の面積が,一定花びら状部と相似形となるように変化する点。

<相違点>
(ア)一定花びら状部及び可変花びら状部の形状が,本願実線部分では中心側及び外側がとがった紡錘状であるのに対して,本意匠部分では外側が丸い水滴状である点。
(イ)可変花びら状部が,本願実線部分では所定の明暗調子であるのに対して,本意匠部分では外形線の近傍にハイライトが表れている点。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品の評価
両意匠の意匠に係る物品は共通するが,肌撮影用レンズ付きデジタルカメラや携帯情報端末以外にも,肌の状態に関する情報を表示する物品(以下「この種物品」という。)は存在するから,両意匠の意匠に係る物品が共通することにより生じる,両意匠の類否判断への影響は微弱である。

(2)両意匠部分の用途及び機能の評価
両意匠部分の用途及び機能は一致するところ,肌の状態に関するスコアに応じた面積で,花びら状の画像を表示する用途及び機能は,他には見られないから,両意匠部分の用途及び機能が一致することは,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるといえる。

(3)両意匠部分の位置,大きさ及び範囲の評価
ア.両意匠部分の位置,大きさ及び範囲は相違するところ,本願実線部分のように,カメラの正面視上端寄りの位置で,カメラの正面視略1/4の大きさ及び範囲を占める画面において,画面の中央の位置で,画面の略1/3の大きさ及び範囲を占める3つの花びら状の表示部分とすること,すなわち物品の面積に対して1/4程の小さな画面に,その1/3程の大きな割合で表示を行うことは,この種の物品の分野においては,本願意匠部分のみに見られる極めて独創的な位置,大きさ及び範囲であって,ありふれた範囲内のものではない。したがって,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲が相違することは,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものというほかない。
イ.そして,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲が相違することにより,本願実線部分は物品の上端の小さな画面(物品の正面面積の略1/4)に大きな割合(画面の略1/3)で表示されるのに対して,本意匠部分は物品のほぼいっぱいの大きな画面(物品の正面面積の略7/8)に小さな割合(画面の略1/7)で表示されることになるから,両意匠部分の視覚的印象は,大きく異なるものとなっている。
ウ.これに対して,請求人は,筐体形状を縦長としたデジタルカメラの物品分野において,カメラの正面視上端寄りの位置に画面を設けることが一般的であることを理由に,両意匠部分の位置の相違が類否判断に与える影響は微弱なものであるなどと主張する(上記第3の1.(1))が,請求人の主張する「デジタルカメラ」は,「肌撮影用レンズ付きデジタルカメラ」,すなわちユーザの肌を撮影して得られた肌画像を解析することによって測定された肌の状態に関する情報を表示するという用途及び機能を有するデジタルカメラではないから,請求人の当該主張は,上記ア.に説示する判断を妨げるものではなく,採用できない。
エ.また,請求人は,両意匠部分の大きさ及び範囲が,約4.2%程度の差しかないことから,両意匠部分の大きさ及び範囲の相違が類否判断に与える影響は僅かなものであるなどと主張する(上記第3の1.(2)及び(3))。しかし,請求人の主張のとおり,本願実線部分の大きさ及び範囲が8.3%(=1/4×1/3)程度であり,本意匠部分の大きさ及び範囲が12.5%(=7/8×1/7)程度であるとしても,本意匠部分の大きさ及び範囲は,本願実線部分のそれよりも約1.5倍も大きいといえるのであるから,上記ア.に説示する判断に誤りはなく,請求人の当該主張は採用できない。

(4)両意匠部分の形態についての共通点の評価
共通点(A)は,一定花びら状部と可変花びら状部が配置されていることに関するものであるところ,上記(2)に示すように,肌の状態に関するスコアに応じた面積で表示される花びら状の画像が他には見られないから,共通点(A)も両意匠の類否判断に大きな影響を与えるといえる。
また,共通点(C)は,可変花びら状部の面積が,一定花びら状部と相似形となるように変化するというものであるところ,スコアに応じた面積で表示される花びら状の画像が他には見られないのであるから,その面積の変化の態様は,当然に需要者の注意を強く引くものといわざるを得ず,共通点(C)が両意匠の類否判断に与える影響は非常に大きいというべきである。
これに対して,共通点(B)は,一定花びら状部及び可変花びら状部が異なる明暗調子で表示されるというものであるところ,棒グラフや円グラフのような各種のプレゼンテーション画像に見られるように,画像の各部の視認性を高めて注意を喚起するように,様々な明暗調子とすることは,ありふれた手法であるから,共通点(B)が両意匠の類否判断に及ぼす影響はごく微弱である。

(5)両意匠部分の形態についての相違点の評価
相違点(ア)は,一定花びら状部及び可変花びら状部の形状が,本願実線部分は紡錘状であるのに対して,本意匠部分は水滴状であるというものであるところ,花びら状部の外側の外形が多少異なる程度であるし,花びらや葉といった自然物から連想される形状としては,紡錘状も水滴状もありふれた形状といえるから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,相違点(イ)は,可変花びら状部が,本意匠部分では外形線の近傍にハイライトが表れているというものであるが,立体物を抽象的に2次元画像で表示するにあたり,ハイライト等で立体感を強調することは,ありふれた手法であるから,相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

(6)両意匠部分の形態についての総合評価
以上のとおり,両意匠部分の形態についての相違点(ア)及び(イ)は,両意匠の類否判断に微弱な影響しか与えないことに対して,両意匠部分の形態についての共通点(A)が両意匠の類否判断に与える影響が大きい上に,共通点(C)が両意匠の類否判断に与える影響は非常に大きいことから,形態についての共通点(B)が両意匠の類否判断に微弱な影響しか与えないとしても,これらを総合すると,形態の共通点は相違点を圧して,両意匠部分の類否判断に大きな影響を与えるといえる。

(7)小括
以上の評価をまとめると,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲については,用途及び機能が共通することが両意匠の類否判断に大きな影響を与える反面,位置,大きさ及び範囲が相違することも両意匠の類否判断に大きな影響与えることから,両意匠の類否判断を決するまでには至らず,一方で,両意匠の意匠に係る物品は共通し,両意匠部分の形態については,形態の共通点が相違点を圧して,両意匠部分の類否判断に大きな影響を与えるといえることから,本願意匠は本意匠に類似するということができる。

3.関連意匠の適否
本意匠と本願意匠の出願人は同一であり,本願意匠の出願日が本意匠の出願日と同日,すなわち本願意匠の出願の日が本意匠の出願の日以後であって,本意匠の意匠公報の発行の日前であるので,意匠法第10条第1項の要件を充足している。
そして,本願意匠は,本意匠に類似するものであるから,これを本意匠とする関連意匠として意匠登録を受けることができる。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の要件を充足しているから,本願意匠が意匠法第10条第1項の規定に該当しないという旨の当審の拒絶理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決日 2017-02-17 
出願番号 意願2015-7101(D2015-7101) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (J1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 博康 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2017-03-24 
登録番号 意匠登録第1574914号(D1574914) 
代理人 稲本 義雄 
代理人 荒谷 聡 
代理人 三浦 勇介 
代理人 西川 孝 

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