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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立不成立) F3
管理番号 1360553 
判定請求番号 判定2019-600020
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2020-04-24 
種別 判定 
判定請求日 2019-08-23 
確定日 2020-03-02 
意匠に係る物品 伝票 
事件の表示 上記当事者間の登録第1323600号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明により示された「伝票」の意匠は,登録第1323600号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 手続の経緯
平成19年 5月30日 意匠登録出願(意願2007-14338号)
平成20年 2月 8日 意匠権の設定の登録
(登録第1323600号)
令和 1年 8月23日 本件判定請求(本件判定請求人)
令和 1年11月 6日 答弁書(本件判定被請求人)提出

第2 請求の趣旨及び理由の概要
1.請求の趣旨
本件判定請求人(以下「請求人」という。)は,イ号意匠図面及びその説明書に示された「伝票」の意匠は,登録第1323600号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求め,おおむね以下のように主張した。

2.請求の理由
(1)判定請求の必要性
請求人は,登録第1323600号意匠(以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者であり,本件判定被請求人(以下「被請求人」という。)はイ号意匠図面及びその説明により示された意匠(以下「イ号意匠」という。)の「伝票」を製造販売する者である。
請求人と被請求人との間における交渉において,請求人が被請求人に対して「イ号意匠の伝票を製造販売する行為は,本件登録意匠の意匠権を侵害する恐れがある」旨を通知したところ,被請求人は「イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない。」旨を回答したことから,特許庁による判定を求める。

(2)本件登録意匠の手続の経緯
意匠登録出願 平成19年5月30日
登録日 平成20年2月8日
意匠公報発行日 平成20年3月10日

(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠の意匠に係る物品は「伝票」であり,別紙第1の表面図により特定される意匠である。

(4)イ号伝票の説明
イ号意匠は,「イ号意匠図面及びその説明書」に記載のとおりである(別紙第2参照)。

(5)本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
ア.本件登録意匠の構成態様
(ア)本件登録意匠の基本的構成態様
本件登録意匠の基本的構成態様は以下のとおりである。
構成A:縦横比が約0.85対1の横長長方形状となっている紙面の上部左側に横長帯状の上部記入欄を配置し,下部中央に左下部が一部欠けた横長長方形状の下部記入欄を配置している。
(イ)本件登録意匠の具体的構成態様
本件登録意匠の具体的構成態様は以下のとおりである。
構成B:上部記入欄は,上下2行,横4列で区画され,最も左側の区画部は上下2行分の縦長さの暗調子となっており,その他の区画部は上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子で横3列に並んでいる。
構成C:上部記入欄の区画部は,横方向における長さの比が約1対2.5対2.5対7.5で表されている。
構成D:上部記入欄の上側の行部分は下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。
構成E:下部記入欄は,最も左上側の一部を除き,上下12行,横11列に区画され,左下部が上下2行,横3列の大きさで欠けた横長長方形状となっている。
構成F:下部記入欄の最も左側の区画部を除いた他の区画部は,上下2行で1組となっており,各組の区画部では,上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子となっている。
構成G:下部記入欄の最も左側では,2行分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の約半分となった暗調子の区画部と,4行分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の約半分となった上下2つの暗調子の区画部と,に区分けされている。
構成H:下部記入欄の2行1組となっている他の区画部は,上側の行部分が下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。
構成I:下部記入欄の最も左上側の区画部に,他の区画部の約半分の横幅の幅細区画部が6個並んで表されている。

イ.イ号意匠の構成態様
(ア)イ号意匠の基本的構成態様
イ号意匠の基本的構成態様は以下のとおりである。
構成a:縦横比が約0.43対1の横長長方形状となっている紙面の上部左側に横長帯状の上部記入欄を配置し,下部中央に左下部が一部欠けた横長長方形状の下部記入欄を配置し,一部の区画内及び余白部分に文字模様を表示している。
(イ)イ号意匠の具体的構成態様
イ号意匠の具体的構成態様は以下のとおりである。
構成b:上部記入欄は,上下2行,横4列で区画され,最も左側の区画部は上下2行分の縦長さの暗調子となっており,その他の区画部は上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子で横3列に並んでいる。
構成c:上部記入欄の区画部は,横方向における長さの比が約1対2.5対2.5対7.5で表されている。
構成d:上部記入欄の上側の行部分は下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。
構成e:下部記入欄は,上下14行,横11列に区画され,左下部が上下2行,横3列の大きさで欠けた横長長方形状となっている。
構成f:下部記入欄の最も左側の区画部を除いた他の区画部は,上下2行で1組となっており,各組の区画部では,上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子となっている。
構成g:下部記入欄の最も左側では,2行分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の約半分となった暗調子の区画部と,4行分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の約半分となった上下2つの暗調子の区画部と,に区分けされている。
構成h:下部記入欄の2行1組となっている他の区画部は,最も上側の2行を除き,上側の行部分が下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。
構成i:下部記入欄の2行1組となっている他の区画部はのうちの,最も上側の2行は,上側の行部分が下側の行部分とほぼ同寸の縦長さとなっている。

(6)イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する理由の説明
ア.両意匠の対比
本件登録意匠とイ号意匠とを対比すると,次のような共通点・相違点がある。
(ア)共通点
横長長方形状となっている紙面の上部左側に横長帯状の上部記入欄を配置し,下部中央に左下部が一部欠けた横長長方形状の下部記入欄を配置している点。上部記入欄は,上下2行,横4列で区画され,最も左側の区画部は上下2行分の縦長さの暗調子となっており,その他の区画部は上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子で横3列に並んでおり,その横方向における長さの比が約1対2.5対2.5対7.5で表されており,上側の行部分は下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。
また,下部記入欄は,上下が十数行・横が11列に区画され,2行1組となっている大部分の区画部は,上側の行部分が下側の行部分の約半分の縦長さとなっており,左下部が上下2行,横3列の大きさで欠けた横長長方形状となっており,最も左側の区画部を除いた他の区画部は,上下2行で1組となっており,各組の区画部では,上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子となっており,最も左側では,2行分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の約半分となった暗調子の区画部と,4行分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の約半分となった上下2つの暗調子の区画部とに区分けされている点。
(イ)相違点
(イ-1)本件登録意匠は縦横比が約0.85対1の横長長方形の紙面であり,文字模様を表示しないのに対し,イ号意匠は縦横比が約0.5対1の横長長方形の紙面であり,一部の区画内及び余白部分に文字模様を表示している点。
(イ-2)下部記入欄において,本件登録意匠は上下が12行であるのに対し,イ号意匠は上下が14行である点。
(イ-3)下部記入欄の2行1組となっている区画部の最も上側の2行1組の部分において,本件登録意匠は上側の行部分が下側の行部分の約半分の縦長さであって他の区画部の約半分の横幅の幅細区画部が6個並んで表されているのに対し,イ号意匠は上側の行部分が下側の行部分とほぼ同寸の縦長さであって,その横幅は他の区画部と同一である点。

イ.共通点・相違点に関する評価
(ア)共通点の評価
本件登録意匠とイ号意匠とにおいては,前記のとおりの多くの共通点が存在するため,「横長長方形の紙面の伝票であって,紙面上部左側に上下2行,横4列の上部記入欄を有し,下部中央に上下十数行,横数十列の下部記入欄を有し,その下部記入欄は左下部分が一部欠けている。」という視覚を通じて需要者に起こさせる美感が共通する。
(イ)相違点の評価
本件登録意匠とイ号意匠とにおいては,紙面の縦横比について比率の相違があるもののいずれも横長長方形であるという点で共通し,紙面の縦横比の相違に由来する余白部分の相違についても,本件物品である伝票の分野においてはイ号意匠のように上下左右の余白が僅かなものがごく普通にみられ,伝票の一部に文字模様が表されることはイ号意匠のみの特徴とはいえないことから,それらの相違点(イ-1)は,需要者の視覚を通じて起こされる美感において顕著な差異をもたらすものとはいえない。
また,下部記入欄の上下の行数が12行と14行と異なるという相違点(イ-2)についても,よく目を凝らして,指で数えなければ判別できないごく僅かな差異であって,需要者に視覚を通じて起こさせる美感はほぼ共通する。
更に,下部記入欄の最も上側の2行における,本件登録意匠の6個の幅細区画部の存在及び,イ号意匠の上側の行部分が下側の行部分とほぼ同寸の縦長さであるという相違点(イ-3)についても,記入欄その他の特徴的な区画がほぼ共通する本件登録意匠とイ号意匠とにおいて,視覚上限られた部分における相違であって,物品全体から需要者に視覚を通じて起こさせる美感の共通性を凌駕するものとはいえない。

ウ.共通点・相違点の評価に基づく類否判断
以上のとおり,本件登録意匠とイ号意匠との共通点に由来し,両意匠が視覚を通じて需要者に起こさせる美感が共通又は類似するのに対し,相違点(イ-1)は,何れも伝票の分野においてはごく普通にみられる程度の相違であり,いずれか一方の意匠にのみの特徴とはいえず,相違点(イ-2)及び(イ-3)は,視覚上限られた部分における相違であって,物品全体から需要者に視覚を通じて起こさせる美感の共通性を凌駕するものとはいえない。
したがって,イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものである。

エ.補強資料
以上のとおり,イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものであるが,これを補強する資料として,甲第1号証ないし甲第4号証を提出する。
請求人が意願2009-30166として意匠登録出願した意匠(以下「請求人後願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「伝票」とし,イ号意匠と全く同一の意匠よりなるものである(甲第2号証参照)。
この請求人後願意匠は,特許庁における審査において,本件登録意匠に類似する意匠であるとの拒絶理由通知がなされ(甲第3号証),同理由によって拒絶査定となった(甲第4号証)。請求人として,請求人後願意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するという特許庁の判断に従い,仮に請求人後願意匠の模倣品が生じた場合でも,本件登録意匠の意匠権により当該模倣品の差止が可能であるとして当該拒絶査定を承服し,査定不服審判請求をなさなかった。
そして,今般,請求人後願意匠をそっくりコピーした模倣品であるイ号意匠の伝票が現れたため,本件判定を請求している。

オ.結び
以上のとおり,イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものであるから,請求の趣旨記載の判定を求めるものである。

3.証拠方法
(1)イ号意匠は本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものであるとの証明に関するもの
甲第1号証:意匠登録出願(意願2009-30166)
甲第2号証:手続補正書(意願2009-30166)
甲第3号証:拒絶理由通知書(意願2009-30166)
甲第4号証:拒絶査定謄本(意願2009-30166)

(2)イ号意匠が,被請求人の実施に係るものであるとの証明に関するもの
甲第5号証:給与明細.com「サプライ注文書」
甲第6号証:給与明細.com特定商取引法に基づく表記のページ
甲第7号証:株式会社 IT World 会社案内Webページ

第3 被請求人の答弁の趣旨及び理由の概要
1.答弁の趣旨
イ号意匠図面及びその説明書に示された「伝票」の意匠は,登録第1323600号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属さない,との判定を求め,おおむね,以下のように主張した。

2.答弁の理由
(1)イ号意匠の特定が不正確であること
請求人は,被請求人が「イ号意匠」にかかる「『伝票』を製造販売する者である」(上記第2の2.(1))と主張し,甲第5号証には,被請求人の「サプライ注文書」が示され「BH6101」の記載に下線が引かれているため,請求人は,当該製品をイ号意匠にかかる伝票(以下「イ号物件」という。)であるとしているようである。
そこで,被請求人は,イ号物件であるBH6101を乙第1号証として提出する。乙第1号証と「イ号意匠並びに説明書」に示した「表面図」とを比較すれば,表面図は,イ号物件のうちの一部を抽出して描いたものであることが分かる。
また,本件登録意匠は,物品を「伝票」とする全体意匠であり部分意匠ではない。
従って,イ号意匠は,イ号物件に基づいて特定されるべきである。
そして,本件登録意匠とイ号物件に係る意匠は類似しないものと思料する。

(2)「補強資料」について
請求人は,イ号意匠と同一の意匠を出願したところ,本件登録意匠に類似する意匠であるとの理由で拒絶査定となったという事実を,イ号意匠と本件登録意匠とが類似する補強として述べている(上記第2の2.(6)エ.)。
しかし,そもそも審査段階での判断が,当該審査対象とは無関係の本件登録意匠の類否判断を拘束する法的根拠はない。
また,審査で拒絶査定となったのは,審査官の判断に対して,出願人が効果的な反論をすることができなかったことを意味するに過ぎない。ましてや拒絶査定に対する審判請求もすることなくその結論を受け入れてしまっているのであるから,審査官の判断に対する検証の機会もなかったことになる。
よって,イ号意匠と同一の意匠について拒絶査定を受けたという事実は,イ号意匠と本件登録意匠とが類似するということの補強になるべき事実とは言えない。

3.証拠方法
乙第1号証:BH6101 物件(写し)「イ号物件の特定」

第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,その願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「伝票」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,形状,模様又は色彩の結合を「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりのものである。
すなわち,基本的構成態様につき,横長長方形状の紙面の上部左側に横長帯状の上部記入欄を配置し,下部中央に左下部が一部欠けた横長長方形状の下部記入欄を配置している。
具体的構成態様は,
(1)横長長方形の紙面の縦横比は,約1対1.2である。

(2)上部記入欄の縦長さを1とすると,上部記入欄の上に,約3倍の余白があり,上部記入欄と下部記入欄との隙間は,約1.6である。

(3)上部記入欄は,上下1段(上下2行で1段とする。以下,同じ。),横4列で区画され,最も左側の区画である区分見出欄(以下,単に「区分見出欄」という。)は上下1段分の縦長さの暗調子となっており,区分見出欄を除いた区画(以下「区画部」という。)は上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子で,2行横3列に並んでいる。

(4)上部記入欄の区分見出欄及び区画部は,横方向における長さの比が約1対2.5対2.5対7.5で表れている。

(5)上部記入欄の上側の行部分は下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。

(6)下部記入欄は,最も左上側の一部を除き,上下6段(12行),横11列に区画され,左下部が上下1段,横3列の大きさで欠けた横長長方形状となっている。

(7)下部記入欄の全体の縦横比が,約1:2である。

(8)下部記入欄の区画部は,上下2行で1段となっており,各段の区画部(以下,最も左上側の一部の区画部を除いた区画部を「他の区画部」という。)では,上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子となっている。

(9)下部記入欄の区分見出欄は,暗調子で上下3つに区分けされており,一番上の区分見出欄は,1段分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の区画の約半分となっており,下の2つの区分見出欄は,それぞれ,2段分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の区画の約半分となっている。

(10)下部記入欄の各段の区画部は,上側の行部分が下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。

(11)下部記入欄の最も左上側の一部の区画部は,他の区画部の区画の約半分の横幅の小区画(枠)が6個並んで表されており,その右側に,他の区画部の区画より横幅が若干短い中区画(枠)が2個並んで表されている。

2.イ号意匠
請求人のいう,イ号意匠とは,本件判定請求書に添付された,イ号意匠図面及びその説明書に示されたものであって,被請求人が乙第1号証として提出する「イ号物件」に係る意匠ではない。そして,イ号意匠の形態は,以下のとおりである。
すなわち,基本的構成態様につき,横長長方形状の紙面の上部左側に横長帯状の上部記入欄を配置し,下部中央に左下部が一部欠けた横長長方形状の下部記入欄を配置し,区分見出欄の区画内及び上部記入欄における上側の行の各区画内と下部記入欄の最下段における上側の行の各区画内並びに上端余白部分に模様(文字)を施している。
具体的構成態様は,
(1)横長長方形の紙面の縦横比は,約1対2.3である。

(2)上部記入欄の縦長さを1とすると,上部記入欄の上に,約3分の1の余白があり,上部記入欄と下部記入欄との隙間は,約4分の1である。

(3)上部記入欄は,上下1段,横4列で区画され,最も左側の区画である区分見出欄は上下1段分の縦長さの暗調子となっており,区分見出欄を除く区画である区画部は上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子で,2行横3列に並んでいる。

(4)上部記入欄の区分見出欄及び区画部は,横方向における長さの比が約1対2.2対2.2対7で表れている。

(5)上部記入欄の上側の行部分は下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。

(6)下部記入欄は,上下7段,横11列に区画され,左下部が上下1段,横3列の大きさで欠けた横長長方形状となっている。

(7)下部記入欄の全体の縦横比が,約1:3である。

(8)下部記入欄の区画部は,上下2行で1段となっており,各段の区画部では,上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子となっている。

(9)下部記入欄の区分見出欄は,いずれも,2段分の縦長さで,かつ横幅が区画部の区画(枠)の半分弱となった上下3つの暗調子のものになっている。

(10)下部記入欄の1段目の区画部を除く区画部は,上側の行部分が下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。

(11)下部記入欄の1段目の区画部は,上側の行部分が下側の行部分とほぼ同寸の縦長さとなっている。

3.本件登録意匠とイ号意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠は,願書の記載によると,意匠に係る物品は「伝票」であって,請求人が提出した請求書に添付されているイ号意匠図面及びその説明書によれば,イ号意匠は「伝票」である。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として以下の共通点と相違点が認められる。
ア.共通点
(ア)基本的構成態様において,横長長方形状の紙面であり,その上部左側に横長帯状の上部記入欄を配置し,下部中央に左下部が一部欠けた横長長方形状の下部記入欄を配置している。
具体的構成態様において,
(イ)上部記入欄は,(イ-1)上下1段,横4列で区画され,(イ-2)区分見出欄は上下1段分の縦長さで,(イ-3)暗調子となっており,(イ-4)区画部は上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子で,(イ-5)2行横3列に並んでいる。
(ウ)上部記入欄の区分見出欄及び区画部は,横方向における長さが短・中・中・長で表れている。
(エ)上部記入欄の上側の行部分は下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。
(オ)下部記入欄は,上下数段,横多列に区画され,左下部が上下1段,横3列の大きさで欠けた横長長方形状となっている。
(カ)下部記入欄の区画部は,(カ-1)上下2行で1段となっており,(カ-2)各段の区画部では,上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子となっている。
(キ)下部記入欄の区分見出欄では,(キ-1)横幅が大多数の区画部より短く,(キ-2)暗調子のものとなっている。
(ク)下部記入欄の2行1段となっている区画部の2段目以降は,上側の行部分が下側の行部分の約半分の縦長さとなっている。

イ.相違点
(ア)模様につき,本件登録意匠は,施していないのに対して,イ号意匠は,区分見出欄の区画内及び上部記入欄における上側の行の各区画内と下部記入欄の最下段における上側の行の各区画内,並びに上端余白部分に模様を施している。
(イ)紙面の縦横比につき,本件登録意匠は,約1対1.2であるのに対して,イ号意匠は,約1対2.3である。
(ウ)上部記入欄の上の余白部につき,上部記入欄の縦長さを1とすると,本件登録意匠は,約3倍であるのに対して,イ号意匠は,約3分の1である点。
(エ)上部記入欄と下部記入欄との隙間につき,上部記入欄の縦長さを1とすると,本件登録意匠は1.6であるのに対して,イ号意匠は約4分の1である点。
(オ)上部記入欄の,区分見出欄及び区画部の横方向における長さの比につき,本件登録意匠は,約1対2.5対2.5対7.5であるのに対して,イ号意匠は,約1対2.2対2.2対7で表れている点。
(カ)下部記入欄の区画部の段数と列数につき,本件登録意匠は,他の区画部を上下6段,横10列に区画しているのに対して,イ号意匠は,上下7段,横10列に区画している点。
(キ)下部記入欄の縦横比が,本件登録意匠では約1:2なのに対し,イ号意匠では約1:3である。
(ク)下部記入欄の区分見出欄につき,本件登録意匠は,1段分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の約半分となった暗調子のものと,2段分の縦長さで,かつ横幅が他の区画部の約半分となった上下2つの暗調子のものと,上下3つに区分けしているのに対して,イ号意匠は,いずれも2段分の縦長さで,かつ横幅が区画部の半分弱となった上下3つの暗調子のものになっている点。
(ケ)下部記入欄の区画部の1段目の形状につき,本件登録意匠は,1段目の左側の一部に,他の区画部の区画の横幅よりも横幅が短く,他の区画部の上下の行部分の縦長さの比率と同じ比率の区画部が表れているのに対して,イ号意匠は,1段目の全てに,他の段の区画部の区画の横幅と同じ横幅で,他の段の区画部の上下の行部分の縦長さの比率よりも大きい比率の区画部が表れている点。

4.類否判断
イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するか否かについて,すなわち,両意匠が類似するか否かについて,検討する。
(1)両意匠の意匠に係る物品
上記「3.(1)」で述べたとおり,両意匠の,意匠に係る物品は,共に「伝票」であって,一致している。

(2)両意匠の形態
ア.共通点の評価
共通点(ア),(イ-1),(イ-2),(イ-5),(ウ)ないし(オ),(カ-1),(キ-1)及び同(ク)については,この物品分野においては極ありふれた形態であって,両意匠のみの特徴とはいえず,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(イ-3)及び同(キ-2)については,区分見出欄を暗調子とする形態は,本件登録意匠の出願前からこの種物品分野においては,公然知られた形態であって,両意匠のみの特徴とはいえず,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
共通点(イ-4)及び同(カ-2)については,区画部では,上側の行部分が網掛け調子,下側の行部分が白抜き調子とすることは,本件登録意匠の出願前からこの種物品分野においては,公然知られた形態であって,両意匠のみの特徴とはいえず,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ.相違点の評価
相違点(ア)は,区分見出欄の区画内及び上部記入欄における上側の行の各区画内と下部記入欄の最下段における上側の行の各区画内,並びに上端余白部分に模様を施すことは,この種物品分野においてごく普通の形態であるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
また,上端余白部分に模様を施すことは,この模様が占める面積,配置は,この種物品分野においてごく普通の形態であり,その書体も通常用いられるゴシック体であることを考慮すると,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(イ)は,伝票の全体形状に関わる,紙面の縦横比であるが,イ号意匠は,本件登録意匠の約半分の縦長さであって,横に細長いものであるから,全体形状において異なる印象を与えるものと認められ,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ウ)及び同(エ)は,本件登録意匠は,上部記入欄の上に大きな余白が開いており,上部記入欄と下部記入欄が大きく離れていることから,ゆとりのある高級で特別な印象を与えるのに対して,イ号意匠は,余白が無く,隙間が狭いことから,コストを抑えた安価でありふれた印象を与えるものといえるから,両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められる。
相違点(オ)は,注視して初めて気付くほどの小さな寸法差であるから,共通点(ウ)に内包されている相違といえ,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(カ)は,下部記入欄の区画部は,上下数段,横多列に区画されているため,上下6段か7段かという点については,視覚的に直ちに判別できる差異とは認められないから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(キ)は,本件登録意匠よりもイ号意匠の方が,各区画部の一区画(一枠)が横に細長くなり,それに伴って記入できる数字の桁数が多くでき,このことは伝票としての使い勝手につながるものであり,そのことが視覚的に別異なものと認識させることから,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(ク)は,注視して初めて気付くほどの小さな相違であるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
伝票は,各種の取引について,その内容を通知するために作成・使用される紙片であり,区画部には金額が記入されるものであるから,多くの桁数に対応するように,区画部の横幅を広く表すことがありふれているといえるが,相違点(ケ)に見られるように,本件登録意匠は,1段目の左側の区画部は,横幅のごく狭いものが複数設けられていることから,需要者に,特別な用途の伝票であるという印象を与える。これに対して,イ号意匠は,区画部の1段目の横幅が,他の段の区画の横幅と同じであるから,ありふれた伝票であるとの印象しか与えない。したがって,視覚的に異なる印象を与えるものと認められ,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

(3)両意匠における形態の類否判断
以上のとおり,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響は,小さいものであり,これらの共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点(イ)ないし(エ)及び同(ケ)によっては,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると,本願意匠の形態と引用意匠の形態は,類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形態は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5.結び
以上のとおりであるから,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。

別掲

判定日 2020-02-18 
出願番号 意願2007-14338(D2007-14338) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZB (F3)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2008-02-08 
登録番号 意匠登録第1323600号(D1323600) 
代理人 加藤 光宏 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 
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