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審決分類 審判    D3
審判    D3
管理番号 1361549 
審判番号 無効2018-880012
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-09-28 
確定日 2020-04-01 
意匠に係る物品 シャンデリア用笠 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1574099号「シャンデリア用笠」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件意匠登録第1574099の意匠(以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照。)は、平成28年(2016年)8月29日に意匠登録出願(意願2016-18281)されたものであって、審査を経て平成29年3月17日に意匠権の設定の登録がなされ、同年4月17日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。
・審判請求書提出 平成30年 9月28日
・審判事件答弁書提出 平成30年12月21日付け
・審尋 平成31年 1月25日付け
・回答書(被請求人)提出 平成31年 2月12日付け
・審判事件弁駁書提出 平成31年 4月15日付け
・審理事項通知 令和 1年 6月21日付け
・上申書(請求人。乙第9号証の閲覧制限)提出 令和 1年 8月14日
・口頭審理陳述要領書(請求人)提出 令和 1年 8月16日
・口頭審理陳述要領書(被請求人)提出 令和 1年 8月30日
・口頭審理 令和 1年 9月13日

第2 請求人の申し立て及び理由の要点
請求人は、請求の趣旨を
「登録第1574099号意匠の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を、おおむね、以下のとおり主張した、(「審判事件弁駁書」「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)その主張事実を立証するため、後記4.に掲げた甲第1号証ないし甲第53号証(枝番を含む。)の証拠を提出した。

1.「審判請求書」における主張
1 意匠登録無効の理由の要点
(1)本件意匠登録第1574099号意匠(甲1)は、その出願前に公知となった意匠(甲2の2ないし甲2の4、甲2の7)と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。
(2)本件意匠登録第1574099号意匠(甲1)は、その出願前に公知となった意匠(甲2の2ないし甲2の4、甲2の7)等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。

2 意匠法第3条第1項第3号の無効理由について
(1)公知の事実
(1-1)請求人が意匠登録無効審判を請求するに至った経緯
まず、請求人は、平成17年に「Studio BIWAHOUSE(平成27年に「BIWAHOUSE」に改称。)」としての活動を開始し、アート作品、デザインワーク等の制作・発表に携わっている。その活動の中に、ミウラ折りを取り入れた作品の制作等が含まれている(甲2)。
ここで、「ミウラ折り」とは、東京大学名誉教授であり文部科学省宇宙科学研究所名誉教授でもある三浦公亮氏(以下「三浦氏」という。)によって、円筒に丸めた紙を縦に潰したときに現れる皺のパターン等の自然現象の中から発見された折り方で、折られた状態から最小のエネルギーによって展開状態に変化するため、人工衛星の太陽電池パネルや携帯地図の折り畳み方として実用化されているものである。
このミウラ折りの権利管理とミウラ折り発展の総合管理を推進しているのが株式会社miura-ori lab(以下「miura-ori lab社」という。)である。請求人は、平成20年秋頃よりmiura-ori lab社と協業関係にあり、同社の依頼により平成20年末頃に照明器具を制作し、その後、約2年に亘り、商品化を目指して試作を繰り返した結果、「umbel」(当該呼称は、平成24年12月に、略球形状の照明用シェードの呼称として決定されたものであるが、便宜的に、それ以前の同様の作品についても「umbel」と記述する。)を完成させた(甲3)。
この「umbel」は、球形状のフレームの外表上に設けられた複数個のリング(孔)の各々に、ミウラ折りを取り入れた花弁状のエレメントを挿入することにより、全体として花の集合体のように見える照明器具である。また、「umbel」には、花弁の数及びフレームやエレメント数に若干変更を加えた数種類のデザインがある(6弁22個、6弁21個、5弁12個等)。
平成22年より、上記「umbel」は、様々な催事にて展示・販売がされてきたが、平成24年6月から10月にかけて行われたポーラ銀座ビル内のPOLA THE BEAUTY GINZAでの展示にて、「umbel」を見た被請求人株式会社ルーセントデザイン(以下「ルーセントデザイン社」という。)の代表でありデザイナーでもある松尾高弘氏(以下「松尾氏」という。)から請求人に協業の提案がなされた。その後、請求人は被請求人ルーセントデザイン社と「umbel」につき協業することとし、請求人は造形デザイン面を、被請求人は光の効果の面を担うこととして、共同して「LUCIS」(「umbel」シリーズのバリエーションのひとつと言える。以下、便宜的に「LUCIS」を請求人が制作した「umbel」と分けて言及する。)なる名称の照明器具の制作を行うこととした(甲2の1)。
なお、この「LUCIS」は、請求人が制作した「umbel」と、形態において略同一である。両者が主に異なる点は、フレーム内に配される光源装置につき、「umbel」が市販のLED(開発当初は蛍光灯)電球であるのに対し、「LUCIS」は独自設計による複数のLED群となっている点、エレメントの材質として、「umbel」がポリエステルシートや和紙等を使用しているのに対し、「LUCIS」はルーセントデザイン社が提供するポリカーボネート製のプリズム構造を有するフィルム(いわゆる「プリズムシート」)が使用されている点である(甲2の1)。
(1-2)「「umbel」と「LUCIS」の催事の企画・展示・販売の状況
請求人の制作した「umbel」と「LUCIS」についての催事の企画・展示・販売の状況は、以下の通りである。なお、平成26年11月のカッシーナ・イクスシーの店舗での展示は「LUCIS」についてであるが、その他の展示等は請求人の制作した「umbel」についてである。更に、ここでの「umbel」は、数種類あるデザインのうち、花弁が6弁のものを対象としている。
平成22年9月 松屋銀座店「銀座目利き百貨街」
平成22年10?11月 東京国際フォーラム内アートショップ「折-ORi-」
平成23年7?12月 品川グース内アートショップ「ギャラリーアートエッジ」
平成24年6?10月 POLA THE BEAUTY GINZA
平成24年11月 関西国際空港内イベント広場「SAKURA COLLECTION in KANSAI」
平成24年12月?平成25年12月 AO1デンタルクリニック
平成25年1?4月 羽田空港第2旅客ターミナル空港内美術館
平成25年4月?平成29年3月 TBSハウジング渋谷内東急ホームズモデルハウス
平成25年5月 スパイラルホール「SICF14」
平成26年6?10月 東京ガーデンテラス紀尾井町プロジェクト(実現せず)
平成26年11?12月 カッシーナ・イクスシー青山本店、大阪店
平成26年6月 キャナルシティ博多プロジェクト(実現せず)
平成28年2月 「DESIGN WEEK KYOTO 2016」

上記のように、平成22年9月以降、本件出願(出願日:平成28年8月29日)よりも前に、数々の催事にて、「umbel」と「LUCIS」が展示され、公知となっている(甲3の1及び甲3の3等)。以下、主な催事について、請求人の意匠が公知となった事実その他の背景事情、証拠方法等の説明を具体的に行うこととするが、最終的に企画倒れになってしまった催事であっても、本件との関係で背景を記載した方がよいものは上記に含めて説明を行うこととする。

(a)松屋銀座店「銀座目利き百貨街」
平成22年9月9日から14日まで、松屋銀座店にて「銀座目利き百貨街」が開催された。その催事の会場内には、プロダクト・デザイナーである細江勲夫氏(以下「細江氏」という。)のブース「細江振舞道」が設けられ、主たる展示物として「umbel」が展示されていた。具体的には、天井から吊り下げるタイプ(以下「ペンダント型」という。)と、床等に載置するタイプ(以下「スタンド型」という。)の各態様で展示されていた。
<展示の背景、証拠方法等>
「銀座目利き百貨街」は、有限会社日本デザインコミッティーが主催しているものである。有限会社日本デザインコミッティーは、1950年代よりデザインの啓蒙活動を行っており、その目的の下に、同社並びにコミッションメンバー(著名デザイナー、建築家、批評家から成る)は、松屋銀座店の「デザインコレクション」にて販売する優良商品の選定を60年以上に亘り続けるなど、松屋銀座店とは深い繋がりがあり、様々なデザイン関連催事を松屋銀座店にて開催している。
また、「銀座目利き百貨街」は、有限会社日本デザインコミッティーのメンバー等によって「目利き」した選りすぐりの作品を展示販売することを目的としたものである(甲5及び甲6)。細江氏は、有限会社日本デザインコミッティーのメンバーであったことから細江氏の「目利き」に適った作品が請求人の「umbel」であった。請求人は、今回の「umbel」の展示が決定した折に、細江氏に宛てて書簡を送付し、感謝の念を伝えると共に、「umbel」の展示内容についての具体的な説明を行っている(甲7)。
この展示にあたっては、請求人は、有限会社デザインコミッティーの担当者と数回にわたり電話とメールにて、展示方法やパンフレット等の詳細について打ち合わせを行っている(甲8)。
そして、平成22年9月9日から14日まで、松屋銀座店にて「銀座目利き百貨街」が開催され(甲5及び甲6)、細江勲夫ブース「細江振舞道」において、主たる展示物として「umbel」が展示された(甲9及び甲2の2)。ここで展示されたペンダント型の「umbel」を図面としたものが甲2の5であり、スタンド型の「umbel」を図面としたものが甲2の6である(甲2の1)。
なお、照明器具「umbel」は、この展示以降、請求人による販売が開始されている。
以上より、この「umbel」に係る意匠は、本件出願(出願日:平成28年8月29日)よりも前に公知になっている。
(b)省略
(c)POLA THE BEAUTY GINZA
平成24年6月23日から10月31日まで、ポーラ銀座ビル内のPOLA THE BEAUTY GINZAのショーウィンドウにて、ペンダント型の「umbel」が展示されていた。
<展示の背景、証拠方法等>
請求人は、平成24年4月19日に、ディスプレイの企画・設計・デザイン・制作施工及び運営サポート業務等を行う株式会社ノムラデュオより、POLA THE BEAUTY GINZAのショーウィンドウにおける「umbel」の展示につき、提案を受けた。その後、請求人と株式会社ノムラデュオの担当者との間で展示に関する綿密な実施計画が行われ、その結果、[umbel]が展示されるに至った(甲11、甲12及び甲13)。
ここで展示された「umbel」は、エレメントの色彩が乳白色のもののほか、赤色のものが展示されていた。POLA THE BEAUTY GINZAでの展示は、企業の季刊広報誌や第三者のブログ等においても、取り上げられている(甲13及び甲14)。
以上より、この「umbel」に係る意匠は本件出願(出願日:平成28年8月29日)よりも前に公知になっている。
<被請求人からの接触>
被請求人ルーセントデザイン社の松尾氏は、上記展示によって請求人の「umbel」に興味を持ち、平成24年9月3日付けにてメールを送り、請求人に初めて接触を行った(甲15。なお、甲15中の「Monoscape」とは、松尾氏がルーセントデザイン社を設立する以前、個人事業主として活動していた当時の屋号である。)このメールでは、松尾氏は協業化や製品化について話し合いたいと述べている。
(d)省略
(e)TBSハウジング渋谷内東急ホームズモデルハウス
平成25年4月27日から平成29年3月まで、TBSハウジング渋谷内東急ホームズモデルハウスにて、ペンダント型の「umbel」が展示されていた(甲2の1、甲2の4、甲3の1及び甲3の3)。
<展示の背景、証拠方法等>
株式会社町田ひろ子アカデミーは、主にインテリア業やガーデニング業の専門家を目指すための学校を経営している会社であるが、TBSハウジング渋谷内東急ホームズモデルハウスにてインテリアデザインを担当していた。同社が重要と考えているインテリアのコンセプトの一つとして「美防災」があり、これは「防災」と「インテリア」を結びつけたものであり、美しさに配慮しつつ安心・安全な素材を使っているインテリアのことを指している。請求人の「umbel」は、美しく、且つ、軽い素材で作られ万が一地震等により落下した場合であっても安全であることから、株式会社町田ひろ子アカデミーのコンセプトに合致する請求人の「umbel」が展示されるに至った(甲19、甲20及び甲21)。
この展示に際しては、株式会社町田ひろ子アカデミーの担当者との細かい打ち合わせが行われている(甲22)
以上より、この「umbel」に係る意匠は本件出願(出願日:平成28年8月29日)よりも前に公知になっている。
(f)?(h)省略
(i)カッシーナ・イクスシー青山本店、大阪店
少なくとも平成26年11月28日から12月28日まで、カッシーナ・イクスシー青山本店にて、請求人及び被請求人ルーセントデザイン社の協業によって制作された「LUCIS」が展示されていた。
この展示においては、エレメントを挿入する為のフレームの孔が24個のタイプのもの及び12個のタイプのものが展示された(甲2の7、甲29及び甲30)。ここで展示されたペンダント型のフレームの孔が24個タイプの「LUCIS」を図面にしたものが甲2の8である(甲2)。
なお、大阪店でも「LUCIS」が展示されている(甲31及び甲32)。
<展示の背景、証拠方法等>
カッシーナ・イクスシー青山店等にて展示された「LUCIS」は、請求人及び被請求人ルーセントデザイン社の協業によって制作されたものである。請求人は、平成24年9月に、POLA THE BEAUTY GINZAでの展示を見た被請求人ルーセントデザイン社の代表取締役である松尾氏から連絡を受け、協業の提案をされたが(甲15)、この時には話は進展しなかった。その後、請求人は、請求人の作品等のエレメントの新たな素材としてプリズムシートを用いたいと考えていたところ、平成26年4月に、請求人が「いちはらアート×ミックス」なる芸術祭に出向いた際、出展されていた松尾氏の作品にプリズムシートが用いられていたことを知り、商品名等を教えてもらう目的で同年5月19日に松尾氏の元を訪れた(甲33)。そこで、請求人は、松尾氏よりプリズムシートを用いた作品制作協業の打診を受け、この提案に応じることとした。
当時、被請求人ルーセントデザイン社は、カッシーナ・イクスシーに対して、クリスマス展示についての提案を控えている時期にあり、松尾氏はプリズムシートを用いた何らかの作品を展示したいと計画していた。相談を受けた請求人は、当初、プリズムシートを単純に折り曲げたものなどを示しながら話を進めていたが、プリズムシートで請求人作品等のエレメント数個を試作してみたところ、単純に折り曲げただけでは得られなかった未知なる光学的効果が生まれ、華やかで存在感のある作品が実現する可能性が出てきたため、これを全面的に使用した作品を提案することとなり、請求人は、被請求人ルーセントデザイン社とともに、プリズムシートを用いた「LUCIS」を制作した。もっとも、ルーセントデザイン社は、エレメント素材の提供並びに光源に関するアイディア出し並びに光の制御回路及びプログラムの作成を担当したのみで、造形物すべてのデザイン・設計及び制作を行ったのは請求人である。
そして、カッシーナ・イクスシー青山本店等にて、クリスマスインスタレーションが開催され、「LUCIS」が展示された(甲2の7、甲29、甲34及び甲35)。一つ一つのエレメントが折り上げられており、そのエレメントの素材にプリズムシートを使用し、LEDの光源装置によって光の演出がなされている美しい作品であることから、照明業界や建築業界等の取引者は勿論、多くの需要者等に注目され、数々の雑誌等にも掲載されると共に(甲30、甲36及び甲32)、第三者のウェブサイト、ブログ等にも取り上げられている(甲37)。
なお、このカッシーナ・イクスシーの展示にて、請求人と松尾氏は、クレジット表記について請求人の属するBIWAHOUSEの名称を明記しなかったため(甲29)、雑誌やウェブサイト等において、あたかも松尾氏のみの作品であるかのように表されているものが殆どであるが、「LUCIS」は上述のように、請求人と被請求人ルーセントデザイン社との共同制作の作品である。
また、照明器具「LUCIS」は、この展示以降、被請求人ルーセントデザイン社による販売が開始されている(甲35)。
以上より、この「LUCIS」に係る意匠は本件出願(出願日:平成28年8月29日)よりも前に公知になっている。
(j)「umbel」販売用ウェブサイト
平成27年8月2日に、請求人は、「umbel」の販売用のウェブサイトを開設している(甲38及び甲39)。したがって、この「umbel」に係る意匠は本件出願(出願日:平成28年8月29日)よりも前に公知になっている。
上述のように、請求人の「umbel」の意匠、並びに、請求人及び松尾氏の「LUCIS」の意匠は、既に公知となっていた。
(2)意匠の類否の検討
(2-1)本件登録意匠
ア.物品について
本件登録意匠に係る物品は、「シャンデリア用笠」である。本物品は、フレームとエレメント複数個から構成されるが、フレームの内部に光源装置が設置されることにより、照明器具として使用されるものである。
イ.形態について
基本的構成態様
(A)本体は、フレームとエレメント複数個とから構成される。フレームは、棒状部とリング状部とからなる丸みを帯びたものであり、エレメントは、脚部と脚部から放射線状に伸びる花弁状の頭部とからなる。
(B)フレームには、その外表面を略覆うように、リング状部を形成する複数の円形孔が設けられており、該孔にエレメント脚部が挿入されることにより、フレームの外側にエレメント頭部が表れているものである。
具体的構成態様
(C)本体は、上方を切り欠いた略球形状である。
(D)フレームの複数の孔は、略均等に配置されている。
(E)フレームの孔には、全て同一形状のエレメントが挿入されている。
(F)フレームの孔の数は複数個であり、該孔にはそれぞれ1個のエレメントが挿入されている。
(G)本体の輪郭は、フレームの孔に挿入されたエレメントの頭部同士が立体的に重なった結果として形成される。
(H)エレメントの平面視における外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな6個の花弁とから形成されている。小さな6個の花弁は、隣り合わない3個の花弁が剣先状であり、他の3個の花弁が三角形状である。
(I)エレメントの平面視における中央付近は、中心に明確な孔は認められず、その周辺は大きな略三角形と小さな略三角形とを上下反転にして重ね合わせたような外周の形状が表されている。
(2-2)公知意匠1
上述したとおり、請求人の制作した「umbel」については、数々の催事において展示・販売されて公知となっている。これらの「umbel」は、同一又は同様の形態のフレーム及びエレメントを有するものである。
このうち、上記「(1)」「(1-2)」「(a)」で述べた松屋銀座店に出展された「umbel」を「公知意匠1」とする(ペンダント型とスタンド型とは、照明用笠に係る部分の形態は同一であるが、フレームの孔の位置が一部異なるため、ここではペンダント型を対象とする。)。公知意匠1の形態を特定する図面は、甲2の5の図面とする。
ア.物品について
公知意匠1に係る物品は、「照明用笠」である。本物品も、フレームとエレメント複数個から構成されるが、フレームの内部に光源装置が設置されることにより、照明器具として使用されるものである。
イ.形態について
基本的構成態様について
(a)本体は、フレームとエレメント複数個とから構成される。フレームは、棒状部とリング状部とからなる丸みを帯びたものであり、エレメントは、脚部と脚部から放射線状に伸びる花弁状の頭部とからなる。
(b)フレームには、その外表面を略覆うように、リング状部を形成する複数の円形孔が設けられており、該孔にエレメント脚部が挿入されることにより、フレームの外側にエレメント頭部が表れているものである。
具体的構成態様について
(c)本体は、略球形状である。
(d)フレームの複数の孔は、略均等に配置されている。
(e)フレームの孔には、全て同一形状のエレメントが挿入されている。
(f)フレームの孔の数は21であり、該孔にはそれぞれ1個のエレメントが挿入されている。
(g)本体の輪郭は、フレームの孔に挿入されたエレメントの頭部同士が立体的に重なった結果として形成される。
(h)エレメントの平面視における外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな三角形状の花弁とから形成されている。
(i)エレメントの平面視における中央付近は、中心に星型の孔が認められ、その周辺は折り線が集まったことにより生じる放射線状の花心と思しき形状が表されている。
(j)エレメントの色彩は、乳白色である。
(2-3)公知意匠2
上記「(1)」「(1-2)」「(c)」で述べたPOLA THE BEAUTY GINZAのショーウィンドウにて展示されていたペンダント型の乳白色のエレメントを有する「umbel」を「公知意匠2」とする。公知意匠2の形態は、公知意匠1と同様であるため、公知意匠2の形態を特定する図面は、公知意匠1で使用した甲2の5の図面とする。
ア.物品について
公知意匠1の記載と同様である。
イ.形態について
公知意匠1の記載と同様である。
(2-4)公知意匠3
上記「(1)」「(1-2)」「(e)」で述べたTBSハウジング渋谷内東急ホームズモデルハウスにて展示されていた「umbel」を「公知意匠3」とする。公知意匠3の形態は、公知意匠1と同様であるため、公知意匠3の形態を特定する図面は、公知意匠1で使用した甲2の5の図面とする。
ア.物品について
公知意匠1の記載と同様である。
イ.形態について
公知意匠1の記載と同様である。
(2-5)公知意匠4
上述したとおり、請求人と松尾氏との共同に係る「LUCIS」については、平成26年にカッシーナ・イクスシー青山本店等にて展示・販売が行われ、公知となっており、それ以降も、製品として販売が行われている。
カッシーナ・イクスシーの店舗で展示されていたフレームの孔の数が24のペンダント型の「LUCIS」を「公知意匠4」とする。公知意匠4の形態を特定する図面は、甲2の8の図面とする。
ア.物品について
公知意匠4に係る物品は、「照明用笠」である。本物品も、フレームとエレメント複数個から構成されるが、フレームの内部に光源装置が設置されることにより、照明器具として使用されるものである。
イ.形態について
基本的構成態様について
(a′)本体は、フレームとエレメント複数個とから構成される。フレームは、棒状部とリング状部とからなる丸みを帯びたものであり、エレメントは、脚部と脚部から放射線状に伸びる花弁状の頭部とからなる。
(b′)フレームには、その外表面を略覆うように、リング状部を形成する複数の円形孔が設けられており、該孔にエレメント脚部が挿入されることにより、フレームの外側にエレメント頭部が表れているものである。
具体的構成態様について
(c′)本体は、略球形状である。
(d′)フレームの複数の孔は、略均等に配置されている。
(e′)フレームの孔には、全て同一形状のエレメントが挿入されている。
(f′)フレームの孔の数は24であり、該孔にはそれぞれ1個のエレメントが挿入されている。
(g′)本体の輪郭は、フレームの孔に挿入されたエレメントの頭部同士が立体的に重なった結果として形成される。
(h′)エレメントの平面視における外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな三角形状の花弁とから形成されている。
(i′)エレメントの平面視における中央付近は、中心に星型の孔が認められ、その周辺は折り線が集まったことにより生じる放射線伏の花心と思しき形状が表されている。
(j′)エレメント自体の色彩は透明であるが、光源の反射により概ね白色として感得され、虹色の分散光を生じ得る。
(3)本件登録意匠と公知意匠1ないし4との対比
ア.意匠に係る物品
本件登録意匠に係る物品は「シャンデリア用笠」であり、公知意匠1ないし4に係る物品は「照明用笠」である。両物品とも、フレームとエレメント複数個から構成され、フレームの内部に光源装置が設置されることにより、照明器具として使用される。したがって、両意匠に係る物品は、用途及び機能を共通にし、同一である。
イ.意匠の形態
公知意匠1ないし3は、形態が同一であり、また、公知意匠4は、上記公知意匠1ないし3と色彩以外の形態が略同一であるため、便宜のため、両者につき本項で述べる。なお、本件登録意匠と公知意匠1ないし3との形態の比較図は甲40、本件登録意匠と公知意匠4との形態の比較図は甲41である。
(ア)共通点
本件登録意匠と公知意匠1ないし4との基本的構成態様の共通点は以下の通りである。
(A)(a)(a′)本体は、フレームとエレメント複数個とから構成され、フレームは、棒状部とリング状部とからなる丸みを帯びたものであり、エレメントは、脚部と脚部から放射線状に伸びる花弁状の頭部とからなる。
(B)(b)(b′)フレームには、その外表面を略覆うように、リング状部を形成する複数の円形孔が設けられており、該孔にエレメント脚部が挿入されることにより、フレームの外側にエレメント頭部が表れている。
このように、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、基本的構成態様のすべてにおいて共通する。
また、本件登録意匠と公知意匠1ないし4との具体的構成態様の共通点は以下の通りである。
(D)(d)(d′)フレームの複数の孔は、略均等に配置されている。
(E)(e)(e′)フレームの孔には、全て同一形状のエレメントが挿入されている。
(G)(g)(g′)本体の輪郭は、フレームの孔に挿入されたエレメントの頭部同士が立体的に重なった結果として形成される。
(イ)差異点
本件登録意匠と公知意匠1ないし4との構成態様の差異点は以下の通りである。
(C)(c)(c′)本体の形状につき、本件登録意匠では、上方を切り欠いた略球形状であるのに対し、公知意匠1ないし4は、略球形状である。
(F)(f)(f′)フレームの孔の数につき、本件登録意匠では複数個であるのに対し、公知意匠1ないし4では21又は24となっており、該孔に挿入されるエレメントの数も同様に異なる。
(H)(h)(h′)エレメントの平面視における外周において、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは共に、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな6個の花弁とから形成されているが、その小さな6個の花弁につき、本件登録意匠では、隣り合わない3個の花弁が剣先状であり、他の3個の花弁が三角形状であるのに対し、公知意匠1ないし4では、すべて三角形状となっている。
(I)(i)(i′)エレメントの平面視における中央付近において、本件登録意匠では、中心に明確な孔は認められず、その周辺は大きな略三角形と小さな略三角形とを上下反転にして重ね合わせたような外周の形状が表されているのに対し、公知意匠1ないし4では、中心に星型の孔が認められ、その周辺は折り線が集まったことにより生じる放射線状の花心と思しき形状が表されている。
(j)(j′)エレメントの色彩について、本件登録意匠では、願書に添付された図面では特に色彩が付されていないのに対し、公知意匠1ないし3では、乳白色であり、公知意匠4では、透明であるが、光源の反射により概ね白色として感得され、虹色の分散光を生じ得る色彩となっている。
(4)本件登録意匠と公知意匠1ないし4との類否判断
ア.意匠に係る物品
前記認定した通り、本件登録意匠と公知意匠1ないし4の意匠に係る物品は同一である。
イ.意匠の形態
(ア)意匠の形態の共通点における評価
本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、上述のように、基本的構成態様のすべてにおいて共通している。すなわち、フレームとエレメント複数個から構成されてなり((A)(a)(a′))、エレメント脚部がフレームの孔に挿入されることにより、脚部と頭部の間のくびれがフレームの孔を捉えて留まり、フレームの外側にエレメント頭部だけが表れているものである((B)(b)(b′))。
また、両意匠は、具体的構成態様においても共通点がある。具体的に述べると、まず、本体の輪郭は、フレームの孔に挿入されたエレメントの頭部同士が立体的に重なった結果として構成されている((G)(g)(g′))。そして、そのエレメント頭部の立体的な重なりにおいても、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、略同様の重なりとなっている。具体的には、フレームの孔が略均等に配され((D)(d)(d′))その孔の配置も、基本的にはフレームを構成する棒状部と隣接する3つの孔によって三角形を構成するように配置されている点で共通しているため、エレメント頭部の重なりが略均等となっている。また、フレームの孔に挿入されるエレメントの形状はすべて同一であり((E)(e)(e′))、エレメントの平面視における外周の形状も、甲42のエレメント比較図からもわかるように、外周の形状を構成する線は略同一である。このことからすると、両意匠は、その輪郭において、エレメントの頭部の立体的な重なりが略同様であり、それが連続しているという表現方法において同一であると言え、看者は、そのような輪郭に注意を惹くというべきである。
なお、エレメントの頭部が立体的に重なった両意匠の全体の外観にあっては、フレームの内部に設置された光源装置を点灯させたときに光学的変化(拡散、屈折、反射等)が美しく表れるところである。具体的には、フレームの内部に設置された光源装置からの光は、まずエレメント脚部で最初の光学的変化を受け、その結果、そのエレメント脚部が放った光は折りを伴ったエレメント頭部によって更に複雑な光学的変化を受ける。このような光学的変化には、両意匠の基本的構成態様の共通点、具体的構成態様の共通点が大いに寄与している。すなわち、基本的構成態様にあっては、エレメントを脚部と花弁状の頭部の2つの部分からなる構成とし、また、フレームに設けられた孔にエレメント脚部を挿入してフレームの外側にエレメント頭部が表れているようにした構造としている点、具体的構成態様においては、エレメント頭部の立体的な重なりを略同様とする点である。
したがって、両意匠の形態の共通点を総合的に考慮すると、両意匠の特徴点は上記の共通点にあるのであり、これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいと言える。
(イ)意匠の形態の差異点における評価
まず、差異点(C)(c)(c′)は、本体の形状についてであり、本件登録意匠では、上方を切り欠いた略球形伏であるのに対し、公知意匠1ないし4では略球形状である。
しかしながら、これらの形状の差異は、単なる設置方法の相違に基づくものにすぎず、看者が着目すべきところではない。この点について以下に説明することとする。
本件登録意匠の本体の形状は、球形状の上方を切り欠いたものであり、その上方付近においては、フレームの一部が露出している。また、本件登録意匠に係る登録公報中の「天井に設置した状態を示す参考正面図」等の図面の記載では、本件登録意匠に係る照明器具は、フレームの一部が露出している部分が天井の窪みに入り込んで設置されている。そうすると、本件登録意匠は、天井設置型を想定した意匠であると理解できる。一方、公知意匠1ないし4は、ペンダント型である。
このような設置方法については、照明業界において、照明器具の用途や設置空間の制約等によって採択されるものであり(天井設置型、ペンダント型、スタンド型、壁設置型等)、本件登録意匠の場合、天井に設置するために、球形状の上方を切り欠いた形状としていると考えられるものであり、また、公知意匠1ないし4の場合、ペンダント型であるが故に、球形状としているのであり、この形状の差異は、単なる設置方法の相違に基づくものにすぎない。したがって、このような形状の差異は、看者の注意を惹くところではないと考える。
また、本件登録意匠のような天井設置型の照明器具、公知意匠1ないし4のようなペンダント型の照明器具のいずれが設置された場合であっても、看者は下から見上げて鑑賞するものである。そうすると、看者が着目するのは、照明器具の下方から側面にかけての輪郭に表されたエレメントの頭部の立体的な重なりの連続なのであって、それを超えて、本体の上方の形状、しかも設置方法の相違に基づく形状についてまで着目することはないと考える。
なお、特許庁において登録されている意匠の事例をみても、スタンド型の意匠と壁設置型の意匠等のような設置方法の異なる複数の意匠につき、両者は互いに類似であるとして関連意匠制度を利用して登録になっている例が散見されている(甲43)。上記の例からすると、照明器具は様々な設置方法が想定されていることも相侯って、設置方法の相違に基づく形状の差異は、意匠の類否判断には大きな影響を与えないと言える。
このような状況からすると、両意匠の差異点(C)(c)(c′)は、単なる設置方法の相違によって生じる形状であり、設置時に看者が着目するべきところではないから、そのような形状の差異は微差であると言える。
次に、差異点(F)(f)(f′)は、フレームの孔の数とエレメントの数についてであり、本件登録意匠では、フレームの孔の数は複数個であるのに対し、公知意匠1ないし4では21又は24となっている。しかしながら、そもそもフレームの孔については、当該孔にエレメントが挿入されることにより視認できなくなるため、フレームの孔の数自体の相違は意匠の類否判断に特に影響を与えることはないものと考える。また、本件意匠登録の図面においても、フレームは「参考」図として位置付けられている。
そして、このフレームに設けられた孔にそれぞれエレメントが1個ずつ挿入されることの結果として、エレメントの数の相違が生じてくるという点であるが、これについては、上述したように、両意匠に係る照明用笠の最も見どころとなるところは、フレームとエレメント複数個から構成されてなる照明用笠の輪郭において、エレメントの頭部の立体的な重なりが略同様であり、それが連続しているところにあることを考慮すると、エレメントの個数の増減は看者が着目すべきところではないものと考える。したがって、エレメントの数の相違は微差であり、それ自体が両意匠の類否判断に影響を及ぼすものとは言えない。
次に、差異点(H)(h)(h′)は、エレメントの平面視における外周の形状についてであり、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは共に、その外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな6個の花弁とから形成されているものの、その小さな6個の花弁につき、本件登録意匠では、隣り合わない3個の花弁が剣先状であり、他の3個の花弁が三角形状であるのに対し、公知意匠1ないし4では、すべて三角形状となっている。
しかしながら、上述したように、甲43のエレメント比較図において示されるように、両意匠に係るエレメントの平面視及び底面視における外周の形状は、本件登録意匠に係るエレメントの小さな花弁先端の剣先形状部分を除き略同一となっている。したがって、差異点(H)(h)(h′)は微細な差異であると言え、両意匠の類否判断において大きな影響を及ぼすとは言えない。
さらに、差異点(I)(i)(i′)は、エレメントの平面視における中央付近の形状についてであるが、当該形状は何れも特別突飛な形状でもない上に、本件登録意匠と公知意匠1ないし4は共に、フレームの外表面に設けられた複数の孔の各々に花弁状のエレメントを挿入することにより、全体としてエレメント複数個の集まりとして認識される照明器具であることからすると、エレメント一つ一つの中央付近の形状に看者が着目するとは考えられないものである。また、両意匠に係る物品は共に照明用笠であり、上述のように、フレームの内部に設置された光源装置を点灯させたときには、光源装置からの光は、まずエレメント脚部で最初の光学的変化を受け、その結果、そのエレメント脚部が放った光は折りを伴ったエレメント頭部によって更に複雑な光学的変化を受けるものであるが、このエレメント頭部における光学的変化により、エレメント頭部にある花弁状の中央付近の形状は明確に視認されるわけではないことからすると、上記形状の微細な差違は、両意匠の類否判断に影響を与えるとは言えないと考える。
なお、上述の差異点(H)(h)(h′)、(I)(i)(i′)は、エレメント単体の形状の相違となり、そもそも本件登録意匠に係る図面では、エレメントについては「参考」図としての位置付けとなっている。
したがって、両意匠の形態の相違点を考慮すると、両意匠の差異点は微差であり、いずれも意匠の類否判断には殆ど影響しないものと考える。
また、差異点(j)(j′)は、本件登録意匠では、願書及び図面において何ら言及されていない色彩についてのものであるため、基本的に意匠の形態の類否に影響することはない。
上述の諸点を総合的に勘案すると、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、具体的構成態様の一部において差異点を有するのみであるが、上述の通り差異点は微差であって意匠の類否判断には影響を及ぼすことはないと考えられ、上述の両意匠の形態の特徴点をも考慮すると、共通点が差異点を明らかに凌駕するものであり、両意匠の形態は互いに類似するものである。
ウ.小括
したがって、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、いずれも、意匠に係る物品が同一であり、意匠の形態も互いに類似するから、本件登録意匠は、公知意匠1ないし4のそれぞれに類似すると言える。
(5)結論
本件登録意匠は、公知意匠1ないし4のいずれとも類似である。

3 意匠法第3条第2項の無効理由について
両意匠の差異点(C)(c)(c′)については、本体の形状に関するものであり、本件登録意匠では、上方を切り欠いた略球形状であるのに対し、公知意匠1ないし4では略球形状であるが、これらの形状の差異は、上述したように、単なる設置方法の相違に基づくものである。
そして、照明器具は、用途や設置される空間の制約等によって様々な設置方法があり、照明業界においては、照明器具のデザインの創作をする際に、同じデザインコンセプトの下、設置方法の変更を前提とした複数のデザインの創作が行われることはよくあることである(甲43)。本件に照らして考えても、意匠に特徴のある略球形状の照明器具を天井に設置したい場合、理想とする照明のサイズに対して天井高が不足するような場合には、意匠の特徴を保持しつつ現場に納める有効な手段として、照明器具の上方だけを切り欠く形状とすることは容易に想到することができるものであり、実際に、このような手法にて天井に接触させて設置することは、照明器具の業界では珍しいことではない(甲44及び甲45)。
また、本件登録意匠に関し、実際に照明器具として使用されている状況について言及すると、照明器具を設置する天井の表面を鏡としているのであり、その鏡の反射によってあたかも略球形状の照明器具が存在するかのように見せているものである(甲46、甲47)。このように鏡の反射を使って球体でないものを球体にみせるという発想は、建築等の色々な分野でもみられるが、照明業界にあっても、球形状の上方を切り欠いて天井に接触させて設置した略球形状の照明器具をより球体に見せたい場合に、球形状の中心となるレベルに天井面を設け、その表面を鏡とし、反射によってあたかも球形状の照明器具が存在するかのように見せることは、容易に想到し得るものである(甲44)。したがって、この目的の下においても、球形状の上方を切り欠いた形状とすることは、当業者にとって容易に創作することができると考えられる。
上述の諸点を総合的に勘案すると、本件登録意匠のように球形状の上方を切り欠いた形状は、本件登録意匠に係る出願の前より当業者が容易に創作することができたものと言える。
次に、両意匠の差異点のうち、(H)(h)(h′)、(I)(i)(i′)については、エレメントの形状の細部に関するものであり、本件登録意匠では「参考」図との位置付けではあるが、念のため、これらの差異点につき言及することとする。
両意匠の差異点(H)(h)(h′)については、エレメントの平面視における外形形状についてであり、両意匠は共に、その外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな6個の花弁とから形成されているものの、その小さな6個の花弁につき、本件登録意匠では、隣り合わない3個の花弁が剣先状であり、他の3個の花弁が三角形状であるのに対し、公知意匠1ないし4では、すべて三角形状となっている。小さな花弁の形状を剣先状にすることは、大きな花弁の形状においても既に剣先状となっていることからすると、当業者にとって容易に創作することができるものである。
また、差異点((I)(i)(i′)についてはエレメントの平面視における中央付近の形状についてであるが、本件登録意匠については、中心に明確な孔は認められず、その周辺は大きな略三角形と小さな略三角形とを上下反転にして重ね合わせたような外周の形状が表されているのに対し、公知意匠1ないし4では、エレメントの平面視における中央付近は、中心に星型の孔が認められ、その周辺は折り線が集まったことにより生じる放射状の花心と思しき形状が表されている。これらはエレメントの中央付近の細部についての形状であるが、本件登録意匠に係る当該形状は、特別突飛な形状でもなく、むしろ、折りによって作品を作成する際に表れる一般的な形状であると言える。また、中心の孔についても、作品が折りを使ったものである場合、脚部が広がったりすぼまったりすることにより、孔が明確に生じるか否かに相違が生じるのであり、このような孔の有無は創作の過程において想定し得るものである。したがって、このような花弁の細部の変更は、当業者であればありふれた手法により選択し得る程度の変更にすぎず、当業者にとって容易に創作することができるものである。
最後に、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、フレームの孔の数及びエレメントの個数における差異点(F)(f)(f′)も有するが、フレームの孔の数を調節してエレメントの個数を増減することは、既に本件出願前から、請求人も検討していたものである(甲3)。フレームの孔の数は、「umbel」の試作段階においても、正多面体由来の32、42、54、92といった数のシミュレーションも行われており、また、松屋銀座店での展示の際にも、細江氏に宛てた書簡において、「umbel」のフレームの孔の数を32とする作品も検討されていることが記載されている(甲7)。このように「umbel」のデザインの創作段階において、フレームの孔の数に対応させたエレメントの数の増減は既に検討されていたのであり、該手法は、照明器具のデザインを行う創作者であれば誰でも容易に想到できるものである(甲44)。したがって、フレームの孔の数を調節してエレメント数を増減することは、当業者にとって容易に創作することができるものである。
よって、本件登録意匠は、本件出願よりも前に、その意匠に属する分野における通常の知識を有するものが公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(公知意匠1ないし4)に基づいて、容易に意匠の創作をすることができるものであるから、意匠法第3条第2項の規定によっても、意匠登録を受けることができない意匠に該当するものである。

4 むすび
以上より、本件登録意匠は、公知意匠1ないし4のいずれとも類似であるから、本件意匠登録は、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により無効とされるべきである。また、本件登録意匠は、公知意匠1ないし4等に基づいて容易に創作することができるものであるから、本件意匠登録は、同法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により無効とされるべきである。

2.「審判事件弁駁書」における主張
被請求人は、答弁書(後記第3の1.)において、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号又は第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものには該当せず、同法第48条第1項第1号の無効理由を有するものではない旨主張している。
しかしながら、被請求人のこのような主張は失当であるので、その理由について以下に述べる。

1 公知意匠の証拠資料
被請求人は、「公然知られた意匠」又は「公衆に利用可能となった意匠」、すなわち、先行公知意匠に類似するか否かの判断を行う際には、いくつかの条件を具備する必要があると述べ(具体的には、(i)本件登録意匠の出願前に存在した意匠であること、(ii)公然知られる状況にあった意匠であること、及び、(iii)本件登録意匠と対比可能な程度に十分に先行公知意匠の形態が表されている意匠であることが、明確に確認可能となっている必要があると述べている。)、請求人の提出した甲2の2ないし甲2の8を取り上げ、各証拠単独では上記の各条件を満たさず、本件意匠登録出願の出願前に公知となった意匠の存在が明らかになっておらず、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号又は第3条第2項の規定に該当するものではない旨主張する。
しかしながら、請求人は、一つ一つの証拠により請求人の意匠が公知となった事実を証明しようとするのではなく、複数の証拠の組み合わせにより公知の事実を立証しているのであって、被請求人の個々の指摘については反論に値しない。公知の事実を立証する際には、単独の証拠のみで立証するというよりも、複数の証拠を積み重ねて立証するのが一般的であるところ、請求人はこの観点から立証を行っているのであり、公知意匠1ないし4が公知となった事実については、審判請求書に記載した通り、明らかである。
なお、被請求人は、甲2の2ないし甲2の7につき、被請求人が言うところの条件(iii)を満たさない理由の一つとして、照明器具の1面のみを撮影したものであり、他の角度から撮像された形態はなく、全体の形態は不明確である旨言及している。しかしながら、意匠の類否判断に関して、正面、背面、左側面、右側面、平面、底面といった各方向からの外観の対比が必要になる場合があるとしても、本件については、公知意匠1ないし4はいずれの方向から見た場合であっても、その外観が略同じであることが明らかであることから(甲2の5の図面における外観参照)、敢えて対比する必要はない。
また、被請求人は、甲2の5及び甲2の6に関し、図面に表れた意匠と、写真の撮像画像中の意匠とでは、照明器具を構成する花弁状の部材の配置位置や数等も異なるようにも見えると述べている。ここで公知意匠1ないし3の形態を特定する図面は甲2の5であるので、それについて言及をすると、写真に表された作品は遠近感を伴いそれを伴っていない図面と若干の差異があることや、3Dシミュレーションにより作品設計を行いそれを2次元図面化するというプロセスを経ているため再現性に限界があるものの、フレームに設けられたリング状部の位置、エレメント数が21個である点で、写真と図面は同一となっている。
以上述べたように、被請求人の甲2の2ないし甲2の8の各証拠についての指摘は的を射たものではない。

2 意匠法第3条第1項第3号の無効理由
(1)本件登録意匠
被請求人は、答弁書(後記第3の1.)において、本件登録意匠につき、意匠に係る物品と意匠に係る形態について言及しているが、意匠に係る形態では、基本的構成態様及び具体的構成態様の認定を行っているところ、その認定には誤りがあるので、以下に具体的にその内容を示すこととする。

(1-1)基本的構成態様
A 基本的構成態様(D)
被請求人は、本件登録意匠の基本的構成態様(D)として「1つのエレメントは、脚部及び脚部から放射線状に突出した両刃状の頭部からなる大エレメントと、脚部及び脚部から放射線状に突出した両刃状の頭部からなり、その脚部が大エレメントの内側に上部から挿入された小エレメントを組み合わせて構成される」旨主張している。
しかし、本件登録意匠に係る図面等をみる限り、本件登録意匠のエレメントが大エレメント及び小エレメントの組み合わせからなるものであって、大エレメントの脚部の内側に小エレメントの脚部を挿入した構成であることは示されていない。意匠法では、登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面等により現された意匠に基づいて定めなければならないと規定されているところ(意匠法第24条第1項)、被請求人は、意匠の構成態様の認定に際し、本件登録意匠に係る願書の記載や図面等の内容から全く見て取れない形態を基本的構成態様の一つとしている。これは、意匠法における登録意匠の範囲の解釈を誤ったものであり、被請求人が基本的構成態様として挙げている(D)はそもそも構成態様として挙げられるべきではない。
なお、被請求人は、他の構成態様においても「大エレメント」及び「小エレメント」なる語を用いているが、2つの大小のエレメントを組み合わせて1つのエレメントとする構成は願書の記載や図面等に示されていないことから、これらの表現はエレメントの部分の名称を示す以上の意味を持たない(以下、請求人は上記の認識の下「大エレメント」「小エレメント」の語を使用するものとする。)。
B 基本的構成態様(G)
被請求人は、本件登録意匠の基本的構成態様(G)として「装飾部は、表面の大部分が、フレームの表面に沿う方向とは異なる、フレーム表面から離間する方向、または、フレーム表面に向かう方向に鋭く尖った凹凸を有して、立体的でボリューム感があり、かつ、刺々しい表面形状を有している」旨主張している。
この基本的構成態様(G)は、本件登録意匠の特徴的な形状を表すものとして、本件登録意匠の構成態様のみに含まれるが、この構成態様の認定が適切か否かにつき、本件登録意匠と公知意匠1ないし4との対比も含めつつ述べることとする。なお、本件登録意匠の装飾部は、エレメント複数個からなる集合体であり、装飾部の形状は一つ一つのエレメントの形状(被請求人の言及する具体的構成態様(M)(Q)(R))とも関連するところであるので、これも加味しつつ検討することとする。
(B-1)「鋭く尖った凹凸」について
被請求人は、装飾部は、フレーム表面から離間する方向、または、フレーム表面に向かう方向に鋭く尖った凹凸を有すると主張している。これは、1つ1つのエレメントの両刃部の向きが上斜め方向と下斜め方向に振れていることにより(具体的構成態様(M)(Q)(R))、装飾部の表面形状が「鋭く尖った凹凸」を有することを指していると思われる。この「鋭く尖った凹凸」については、被請求人が意図するところは不明であるが、1つ1つのエレメントの両刃部の向きの振れによって生じるものであるならば、各エレメントの両刃部の形状、高さ、突出方向により「鋭く尖った凹凸」が生じることを意味しているともとれるので、具体的に検討する。
(B-1-1)エレメントの両刃部(花弁)の形状
本件登録意匠及び公知意匠1ないし4は、フレーム表面上がエレメントによって覆われており大小長短さまざまな剣先形状が重なりあっているため、看者が両意匠を鑑賞するときに見えるエレメントの形状は、エレメント平面視の方向からの形状か、それを中心として上下左右の斜め方向からの形状となり、エレメント正面視の形状が視認されることは略ない。
そこで、エレメント平面視においてエレメントの両刃部(花弁)の形状をみると、本件登録意匠の大エレメントの両刃部と公知意匠1ないし4の対応部分の形状は略同じであり、僅かに本件登録意匠の小エレメントの両刃部と公知意匠1ないし4の対応部分の形状が異なるのみとなっている。
その異なる形状についても、本件登録意匠の小エレメントの両刃部は、剣先状であって幅広に見えるのに対し、公知意匠1ないし4の対応部分の形状は三角形状であり幅広ではないことからすると、平面視を見る限り、小エレメントの両刃部は「鋭く尖った」形状と認識することができない。寧ろ、見方によっては、公知意匠1ないし4の対応部分の方が幅が狭く「鋭く尖った」形状とも言える。
したがって、エレメントの両刃部(花弁)の形状において、本件登録意匠は、公知意匠1ないし4に比して、「鋭く尖った凹凸」が生じているとは言えない。
(B-1-2)エレメントの両刃部(花弁)の突出方向及び高さ
両意匠のエレメントの両刃部(花弁)の突出方向及び高さに着目した場合であるが、公知意匠1ないし4では本件登録意匠の大エレメントの小両刃部に相当する部分が存在しないことから、その他の両刃部(花弁)について対比する。両意匠の該部分を対比すると、本件登録意匠の大エレメントの大両刃部と公知意匠1ないし4の対応部分とは突出方向や高さが略同じとなっており、また、本件登録意匠の小エレメントの両刃部は、公知意匠1ないし4の対応部分よりも若干高くなっているものの、突出方向は同じである。
また、この小エレメントの両刃部が公知意匠1ないし4の対応部分に比して若干高くなっている点について補足すると、エレメント側面視等において、小エレメントの両刃部の上端は、大エレメントの大両刃部の上端よりも低くなっており、大エレメントの両刃部に比して短く目立たない位置にあることからすると、小エレメントの両刃部が「鋭く尖った凹凸」の形状に寄与しているとは言い難い。
なお、本件登録意匠の大エレメントの小両刃部については、エレメント単体をエレメント正面視等で眺めるとその存在は確認できるが、看者が本件登録意匠及び公知意匠1ないし4の全体を眺める時には、大エレメントの大両刃部及び小エレメントの両刃部(花弁)に隠れて視認困難であるため、「鋭く尖った凹凸」の形状に寄与していない。
したがって、本件登録意匠のエレメント頭部の一つ一つにおいても、エレメントの両刃部(花弁)の突出方向及び高さにおいて、公知意匠1ないし4のエレメント頭部に比して「鋭く尖った」立体的な形状(具体的構成態様(M)(R))を有すると表現するのは適切ではなく、また、エレメントが集まった装飾部においても、看者が両意匠を眺めた際に、本件登録意匠のみが「鋭く尖った凹凸」であると認識されることはない。
(B-2)「立体的でボリューム感があり、かつ、刺々しい表面形状」について
(B-2-1)「立体的でボリューム感」があること
被請求人は、本件登録意匠の装飾部につき「立体的でボリューム感」があると表現するが、そもそも「立体的でボリューム感」があることは、形態から感得される印象であるため、形態の特徴を列挙すべき構成態様において、それを構成態様の記載に含めるべきでない。
仮に「立体的でボリューム感」との表現が不適切ではないとされた場合であっても、公知意匠1ないし4は本件登録意匠と同様の形態を有することから、看者によっては「立体的でボリューム感」があると感じるため、本件登録意匠のみの特徴として構成態様に含めるべきではない。
(B-2-2)「刺々しい表面形状」を有していること
被請求人は、本件登録意匠の装飾部につき「刺々しい表面形状」と表現するが、そもそも「刺々しい」ことは形態から感得される印象であるため、形態の特徴を列挙すべき構成態様において、それを構成態様の記載に含めるべきではない。
仮に「刺々しい表面形状」との表現が不適切ではないとされた場合であっても、公知意匠1ないし4は本件登録意匠と同様の形態を有することから、看者によっては「刺々しい表面形状」を有すると感じるため、本件登録意匠のみの特徴として構成態様に含めるべきではない。
以上より、基本的構成態様(G)は、本件登録意匠のみの特徴を表した構成態様として挙げるには非常に不適切であり、被請求人の認定は誤りである。
(1-2)具体的構成態様
C 具体的構成態様(L)
被請求人は、本件登録意匠の具体的構成態様(L)として「エレメントの平面視において、大エレメントの大両刃部、大エレメントの小両刃部および小エレメントの両刃部は、三角形で構成されている」旨主張する。しかし、被請求人の主張する「三角形で構成されている」という意図がエレメントの両刃部における折り等によって表れる形状を指すのであれば、被請求人の構成態様の認定には誤りがある。
すなわち、本件登録意匠の大エレメントの大両刃部及び小エレメントの両刃部に関しては、本件登録意匠に係る「エレメント参考拡大平面図」及び乙1の1をみる限り「三角形で構成されている」と理解することも可能であるように思われるが、その一方で、大エレメントの小両刃部にあっては、四角形から構成されているものである。
したがって、被請求人の構成態様の認定は誤りである。
D 具体的構成態様(M)(R)
被請求人は、エレメントの両刃部の向きが上斜め方向と下斜め方向に振れていることにより、上斜め方向または下斜め方向に「鋭く尖った」立体的な形状が表れる、と主張する。具体的構成態様(M)(R)については、基本的構成態様(G)の認定への反論においても言及した通り、公知意匠1ないし4に比して、エレメント頭部において「鋭く尖った」立体的形状は表れていないため、被請求人の構成態様の認定は誤りである。
E 具体的構成態様(N)
被請求人は、本件登録意匠の基本的構成態様(N)として「大エレメントの脚部は、略中央部近傍に外周径が最も小さくなるくびれが形成され、リング状部に大エレメントの脚部を挿入して、くびれのやや上部でエレメントの挿入が止まることにより、装飾部に、リング状部に挿入されていない大エレメントの脚部の高さ分、フレームの表面からエレメントの頭部が浮いた立体的な形状が表れる」と主張する。
しかしながら、本件登録意匠に係る図面である「基板、電球、フレーム及びエレメントを示す参考右側面図」からすると、フレームにエレメント脚部が挿入され、被請求人の言及するところの「くびれ」の部分でエレメントの挿入が止まっている。
したがって、構成態様中の「くびれのやや上部でエレメントの挿入が止まること」はなく、その結果、「リング状部に挿入されていない大エレメントの脚部の高さ分、フレームの表面からエレメントの頭部が浮いた立体的な形状となる」こともないことから、構成態様の認定に誤りがある。
以上より、被請求人の本件登録意匠の構成態様の認定は、恣意的であって、誤りを多く含んでいることから、類否判断の前提となる構成態様として非常に不適切である。
(2)公知意匠1ないし3
被請求人は、答弁書(後記第3の1.)において、公知意匠1ないし3につき、意匠に係る物品と意匠に係る形態について言及し、意匠に係る形態では、基本的構成態様及び具体的構成態様の認定を行なっているが、その認定には誤りがある。
まず、被請求人は、公知意匠1ないし3の構成態様の認定に関し、本件登録意匠と各公知意匠とが非類似であることに寄せるため、恣意的に異なる表現を用いている。たとえば、エレメントの頭部の形状について、本件登録意匠の認定では「両刃状の頭部」「両刃部」等の表現が用いられているが(本件登録意匠の基本的構成態様(D)等)、公知意匠の認定では恣意的に「花冠」「花弁」のような花を意識した表現を用いている。そして、公知意匠のエレメント頭部の詳細な構成態様では、請求人が元々使用していた表現「剣先状の花弁」と、被請求人の独自の表現である「星形状の花弁」を用いている。
しかしながら、この「星形状の花弁」なる表現については、そもそも「花弁」なる語の意味は「花被の内側を構成する花冠の各片。はなびら。花片。」(広辞苑第5版)であることに鑑みれば、字面通りの意味は「星形の花びら」となり、「花弁」の意味を取り違えているとしか言いようの無い表現となっている。
このように、被請求人の言及する公知意匠の構成態様の認定には、不可解な表現が散見され、全くもって両意匠を比較する際の前提となる構成態様の認定とはなっていないが(構成態様(d)等)、それとは異なる別の部分についても誤りがあるので、以下に具体的に指摘をする。
(2-1)基本的構成態様
A 基本的構成態様(g)
被請求人は、基本的構成態様(g)において、「装飾部は、表面の大部分が、フレームの表面に沿う方向に花弁が広がって、花冠が集合したようなボール状の丸みを帯びた表面形状を有している」と主張する。被請求人が恣意的に「花弁」「花冠」の表現を公知意匠の認定に用いていることは上述した通りであるが、「フレームの表面に沿う方向に広がって」「ボール状の丸みを帯びた表面形状」についても、本件登録意匠と公知意匠のそれぞれの装飾部の輪郭は略同じ形状であるにも拘わらず、両意匠の類否判断を非類似の方向へ寄せるべく、恣意的に異なった表現としている。エレメントの頭部の正面視等をみれば、基本的にはエレメント頭部はフレームの表面に沿う方向に広がっていることは、本件登録意匠のエレメントの頭部も公知意匠のエレメントの頭部も同じであり、また、装飾部の表面形状が「ボール状の丸みを帯びた表面形状」であることは両意匠とも同じである。
したがって、基本的構成態様(g)の認定は、恣意的に選択された表現となっており、公知意匠1ないし3のみの特徴を表した表現としては不適切である。
(2-2)具体的構成態様
B 具体的構成態様(k)
被請求人は、公知意匠1ないし3に係る具体的構成態様(k)として「エレメントの平面視における外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その内側に配置され12個の頂点を有する大きな星形状の花弁と、さらにその内側に配置され、12個の頂点を有し、エレメントの中心から放射状に線が伸びた小さな星形状の花弁から形成される」旨主張する。
被請求人の意図するところは不明であるが、乙8に示された「大きな星形状の花弁」と「小さな星形状の花弁」の示す図を参照して意図を酌むに、被請求人のこれらの表現では「エレメントの平面視における外周」を構成しない部分を含むことになり、「エレメント平面視における外周」に係る構成態様として適切に表現されていない。
したがって、被請求人の構成態様の認定は誤りである。
C 具体的構成態様(l)
被請求人は、公知意匠1ないし3に係る具体的構成態様(l)として「エレメントの平面視において、大きな剣先状の6個の花弁、大きな星形状の花弁および小さな星形状の花弁は、四角形で構成されている」旨主張する。
しかし、被請求人の主張する「四角形で構成されている」という意図が花弁における折り等によって表れる形状を指すのであれば、被請求人の構成態様の認定には誤りがあるものと考える。すなわち、公知意匠1ないし3における大きな剣先状の花弁及び大きな星形状の花弁に関しては「四角形で構成されている」と理解することも可能であるが、小さな星形状の花弁に関しては、甲2の5からすると、平面視において、略三角形で構成されている。
したがって、被請求人の構成態様の認定は誤りである。
D 具体的構成態様(m)
被請求人は、公知意匠1ないし3に係る具体的構成態様(m)において、エレメント正面視等において、「大きな剣先状の6個の花弁および大きな星形状の花弁の上端となる面が、水平方向を基準に、中心から上斜め方向に伸びた後、略水平な角度となり、エレメントの頭部に、花弁が、花冠の中心から徐々に水平になりながら花開いたような形状が表れる」と主張する。
被請求人によれば、この構成態様は公知意匠1ないし3にのみに含まれるが、「大きな星形状の花弁」が何を意図しているかは不明であるものの、三角形状の小さな花弁を表しているとすれば、中心から上斜め方向に伸びた後「略水平な角度」となる場合があるとしても、本件登録意匠の対応部分も程度の差こそあれ、水平に近い角度となっているのであり、その意味では両意匠とも「エレメント頭部に、花弁が、花冠の中心から徐々に水平になりながら花開いたような形状が表れる」のであって、公知意匠1ないし3のみの特徴ではない。
したがって、基本的構成態様(m)の認定は、恣意的に選択された表現となっており、公知意匠1ないし3のみの特徴を表した表現としては不適切である。
E 具体的構成態様(n)
被請求人は、公知意匠1ないし3に係る具体的構成態様(n)として「リング状部にエレメントの脚部のほぼ全長を挿入して、エレメントの頭部の下端でエレメントの挿入が止まることにより、フレーム表面に花冠を貼り付けたような形状が表れる」と主張する。
しかしながら、エレメントの挿入が止まる位置が正確にどこであるか否かは兎も角、本件登録意匠の形状も見方によれば「フレーム表面に花冠を貼り付けたような形状」となるのであって、公知意匠1ないし3の認定に際しこのような表現を用いるのは、被請求人が両意匠の類否判断を非類似に寄せるために恣意的に選択しているとしか言いようがなく、意匠の認定に際する表現として適切ではない。
以上より、被請求人の公知意匠1ないし3の構成態様の認定は、恣意的であって、誤りを多く含んでいることから、類否判断の前提となる構成態様として非常に不適切である。
(3)公知意匠4
被請求人は、答弁書(後記第3の1.)において、公知意匠4につき、意匠に係る物品と意匠に係る形態について言及している。意匠に係る形態では、基本的構成態様及び具体的構成態様の認定を行なっているが、フレームのリング状部の数に関する具体的構成態様(j′)以外は、公知意匠1ないし3の認定と同じであるので、構成態様として不適切であると考える部分は、基本的には公知意匠1ないし3と同様である。
(4)本件登録意匠及び公知意匠1ないし4の形態の共通点・差異点
請求人は、共通点については概ね理解し得るものの、相違点については、上述のように構成態様の認定に誤りがあり、その部分についてはそもそも類否判断の対比・評価の前提となり得ない。本件登録意匠及び公知意匠1ないし4の形態の共通点・差異点については、後述の共通点・差異点の評価においても触れられているので、ここでは反論することはせずに、後述の共通点・相違点の評価の項目にて、共通点・差異点についての言及も含めて反論することとする。
(5)本件登録意匠と公知意匠1ないし4との類否判断
被請求人は、意匠に係る物品は同一であると述べた上で、意匠の形態につき、本件登録意匠と公知意匠1ないし4の共通点、差異点の評価を行っている。以下、意匠の形態の共通点・差異点の評価につき反論を行う。
(5-1)本件登録意匠と公知意匠1ないし4
(ア)意匠の形態の共通点における評価
被請求人は、共通点として、基本的構成態様の(A)(a)(a′)、(C)(c)(c′)、具体的構成態様の(H)(h)(h′)、(I)(i)(i′)を挙げている。
まず、基本的構成態様の(A)(a)(a′)は、本体はフレームとそれに取付け可能な複数のエレメントからなる装飾部で構成されることであり、(C)(c)(c′)はフレームが板状部と複数の円形のリング状部から構成されることである。被請求人は、(A)(a)(a′)は一般的に使用される構成要素の組み合わせであり、(C)(c)(c′)については、照明器具が設置された状態で看者が視認困難な部分であることから、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすとは言えないと主張する。
また、具体的構成態様の(H)(h)(h′)は、フレームのリング状部が略均等に配置されていることに関するものであり、(I)(i)(i′)は、フレームに設けられたリング状部に全て同一形状のエレメントが挿入されていることに関するものである。被請求人は、(H)(h)(h′)について、照明器具が設置された状態では看者が視認困難であり、(I)(i)(i′)については、ごく一般的な構造であることから、意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすとは言えないと主張する。
しかしながら、請求人が審判請求書で述べたように、本件登録意匠と公知意匠1ないし4において最も特徴的な部分は、フレーム表面に現されたエレメント頭部の立体的な重なりの連続からなる意匠の輪郭である。この観点からすると、これらの意匠の特徴的な輪郭は、フレームとエレメント複数個から構成される点(基本的構成態様(A)(a)(a′))、フレームが板状部と複数の円形のリング状部から構成され(基本的構成態様(C)(c)(c′))、そのリング状部は略均等に配置されている点(具体的構成態様(H)(h)(h′))、1つのリング状部に1つのエレメントの脚部が挿入され(基本的構成態様(F)(f)(f′))、フレームに設けられたリング状部に全て同一形状のエレメントが挿入されている点(具体的構成態様(I)(i)(i′))に加え、その他にもフレーム表面にエレメント頭部が現れている点、本体の輪郭はフレームの孔に挿入されたエレメント頭部同士が立体的に重なった結果として構成されている点、エレメント平面視の外周が略同一であること等、これら複数の特徴点が相侯って生まれているものである。
また、上記の特徴点の中には、看者が視認することが困難な態様もあるが、これらの特徴点は、本件登録意匠及び公知意匠1ないし4の外観に影響を与え、特徴的な輪郭を生む重要な特徴であることから、看者が視認することが困難な点をもって共通点が重要でないというべきではない。
以上の諸点を考慮すると、上記の共通点は、一つ一つを単独で考慮されるべきものではなく複合的に考慮されるべきであり、また、外観に影響を与える構成態様は看者が視認できないものであっても考慮されるべきであり、上記共通点は、本件登録意匠と公知意匠1ないし4の類否判断に際し、大きな影響を及ぼすことは明らかである。
(イ)意匠の形態の差異点における評価
被請求人は、基本的構成態様として挙げた(B)(b)(b′)、(E)(e)(e′)、(D)(d)(d′)、(F)(f)(f′)、(G)(g)(g′)の差異点についての評価を述べた後、本件登録意匠の創作のポイントを述べ、その後さらに具体的構成態様として挙げた(K)(k)(k′)、(L)(l)(l′)、(M)(m)(m′)、(N)(n)(n′)、(O)(o)(o′)、(Q)、(R)、(J)(j)(j′)、(P)(p)(p′)についての評価を述べている。
したがって、請求人も基本的にこれに即して反論を行うこととする。
a 差異点(B)(b)(b′)及び差異点(E)(e)(e′)
被請求人は、差異点(B)(b)(b′)にて、本件登録意匠はフレームの上部が切り欠かれた略球形状であるのに対し、公知意匠1ないし4はフレームが略球形状となっていることを挙げる。また、差異点(E)(e)(e′)にて、本件登録意匠は、装飾部の配置された範囲が、フレームの高さ方向で、フレームの上部側の一部を除いて、全体の3分の2程度の範囲を占めるのに対し、公知意匠1ないし4はフレームの略全面を覆う範囲を占めることを挙げる。そして、これらの差異点から、看者が両意匠に係る照明器具を鑑賞する際には、本件登録意匠に係る照明器具は、見る角度によって装飾部の外形の形が変わるため、これを見た印象が異なるとし、一方で、公知意匠1ないし4に係る照明器具は、どの方向から見ても装飾部の外形は同じ略球形状であるため、丸みのある柔らかい印象しか与えないとする。
しかしながら、本件登録意匠は、フレームの上部が切り欠かれた形状となっておりフレームの上部側の一部はフレームがむき出しとなっているものの、本件登録意匠の図面の「天井に設置した状態を示す参考正面図」等にも示されているように、フレームがむき出しとなっている部分は、看者に見えないように、天井に段差を設けてフレームを埋め込むようにして天井に設置することを想定しているのである。被請求人は、見る方向によって装飾部の外形が異なり印象が異なると言うが、この場合、看者からすれば、天井に段差を設けていることも相侯って、天井に略球形状の照明器具が埋め込まれているようにも見え、球形を意識した照明器具であることは誰がみても明らかであり、見る角度によって印象が異なるとは思われない。
なお、仮に請求人が言及するところのフレームの上部が看者から視認されるような設置方法を採った場合、エレメントの挿入されていないフレームがむき出しとなっている部分が視認されることとなることは明白であって、そのような設置方法は照明器具としての美感を著しく損ねる方法であると言える。このような状況の下、本件登録意匠に係る物品が「シャンデリア用笠」であって、照明機能のみならず装飾的要素が極めて高い「シャンデリア」の用途に鑑みるに、被請求人の主張は全く以って理解に苦しむものである。
また、ここで実際に被請求人の本件登録意匠に係る照明器具の実施品(甲46及び甲47)をみても、照明器具を設置する天井の表面を鏡とし、その鏡の反射によって略球形状の照明器具のように見せていることも考えると、被請求人の本件登録意匠のデザイン自体、見る角度によって看者の印象が異なるようにした照明器具を意図して創作したものではない。
寧ろ、本件登録意匠及び公知意匠1ないし4に接する看者は、フレームの上部が切り欠かれているか否かよりも、略球形状の照明器具であるという認識の下、両意匠の最も特徴的な部分である意匠の輪郭、すなわち、フレーム表面に現されたエレメント頭部の立体的な重なりの連続からなる意匠の輪郭に惹かれるのである。
したがって、差異点(B)(b)(b′)及び差異点(E)(e)(e′)は、意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすことはなく、被請求人の評価は誤っている。
b 差異点(D)(d)(d′)
被請求人は、本件登録意匠のエレメントは、大エレメントと小エレメントの2つを組み合わせた構成であり、また、大小の各エレメントは放射状に突出した両刃状の頭部を有しているため、高さ方向で位置が異なる両刃部の頭部を有することとなり、顕著な立体感が生じるのに対し、公知意匠1ないし4のエレメントは、単一の部材からなり、放射状に伸びる花冠状の頭部を有しているため、花の中心から花弁が外側に広がるような穏やかな段差が生じ、その結果、両意匠のエレメントの頭部において立体感に差があると主張する。
しかしながら、そもそも、本件登録意匠の構成態様(D)は、本件登録意匠のエレメント頭部が大小の2つのエレメントの組み合わせとすることが前提となっており、このような構成は登録意匠の図面等では現されていないため、構成態様の認定に含まれるべきではなく、その構成態様の認定に基づいた差異点の評価も考慮するに値しない。しかし、念のため、本件登録意匠のエレメントの頭部の上記構成がどうであるかは考慮せずに、単に図面等に表れたエレメント頭部の形状に基づいて、被請求人の言及が妥当か否かにつき検討することとする。
被請求人は、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、エレメント頭部において「立体感の差」があると主張するが、被請求人の意図は判然としないものの、その根拠として、本件登録意匠では、大小の各エレメントは放射状に突出した両刃状の頭部を有するため、高さ方向で位置が異なる両刃部の頭部を有することとなること、公知意匠1ないし4では、放射状に伸びる花冠状の頭部を有しているため、花の中心から花弁が外側に広がるような穏やかな段差が生じるとしている。そうすると、被請求人は、「立体感の差」は、両意匠の両刃部(花弁)の形状や高さ、突出方向等から生じていると考えているともとれる。
しかしながら、この「立体感」とは、本件登録意匠又は公知意匠1ないし4に係る作品に接する看者は、作品のフレーム表面から外に現れている立体形状のエレメント頭部が集合体を成す点から立体感を感得するため、看者が両意匠に係る作品から感得する立体感は、フレーム表面から作品外径までの距離(奥行き)であると言える。
この観点からすると、本件登録意匠のフレーム表面から作品外径までの距離(奥行き)は、本件登録意匠に係る「基板、電球、フレーム及びエレメントを示す参考右側面図」に示されている通り、被請求人がいうところの「くびれ」から作品外径までの距離ということになる。公知意匠1ないし4のフレーム表面から作品外径までの距離(奥行き)、すなわち、エレメント脚基部から作品外径までの距離とは、殆ど変わらない。そうすると、請求人が主張するところの「立体感」は、上記の意味において本件登録意匠だけでなく公知意匠1ないし4においても同様の「立体感を有することとなる。したがって、両意匠において、被請求人が主張するところの「立体感の差」は生じない。
なお、被請求人は、本件登録意匠のエレメント頭部における立体感より得られる印象として、躍動感や、強い光のエネルギーを有する力強さを挙げているが、躍動感という言葉が適切であるか否かは兎も角として、強い光のエネルギーを有する力強さについては、なぜそのような印象が得られるのか全く理解に苦しむものである。
以上より、被請求人の差異点(D)(d)(d′)に対する評価は、そもそもの前提となる構成態様の認定が誤っているばかりか、その誤りを除外して検討しても、全く当を得ないものである。
c 差異点(F)(f)(f′)
被請求人は、差異点(F)(f)(f′)において、本件登録意匠では、装飾部の範囲では、複数のエレメントが密に配置され、エレメント同士の間にほぼ隙間がないものになっているのに対し、公知意匠1ないし4では、隙間の部分からフレームが見え、フレーム内に光源を配置した際に、隙間から光源が直接視認されることとなるため、両意匠に係る照明器具では光り方が異なり、美感に与える影響が大きいと主張する。
しかしながら、そもそも両意匠の形態の類否判断に際し、両意匠のエレメントの隙間から光源が見えるか否かの違いは考慮されるべきではないし、また、両意匠に係る照明器具では光り方が違う場合があるとしても、それは光源の種類、形状や数等によるところが大きい。たとえば、光源が点光源に近いLEDであれば眩い光となり看者によっては何等かの印象を与えることもあるかもしれないが、光源が白熱球などであればやわらかな光となり看者によっては何等かの印象を与えることはないかもしれない。
したがって、本件登録意匠の構成態様と公知意匠1ないし4との構成態様の認定は、恣意的であり、また、両意匠のエレメントの隙間から光源が直接視認されるか否かは、意匠の形態の類否判断に際しては何等関係がないため、それに対する評価も考慮するに値しない。よって、被請求人の主張は失当である。
d 差異点(G)(g)(g′)
差異点(G)(g)(g′)は、装飾部の表面形状に関するものである。被請求人は、本件登録意匠では、大小各エレメントの両刃部の向きが上斜め方向と下斜め方向に振れていることにより、立体感やボリューム感があり、かつ、刺々しい表面形状を有していることから、無機質かつシャープな印象が生じると主張する。一方で、公知意匠1ないし4は、大部分がフレーム表面に沿う方向に花弁が広がって、花冠が集合したようなボール状の丸みを帯びた表面形状を有していることから、植物や花の美しさや柔らかい印象を与えると主張する。
しかしながら、本件登録意匠から得られるとする立体感やボリューム感については、本件登録意匠(G)の構成態様の認定への反論や差異点(D)(d)(d′)の評価への反論で述べたように、公知意匠1ないし4の立体感やボリューム感と相違はなく、また、刺々しい表面形状という表現についても、略同じ形状の意匠であっても看者の感性によって左右されるものであり、実際に請求人の作品である「umbe1」の看者から「刺々しい」との感想を聞くこともあることから、本件登録意匠のみの特徴とは言い難いものである。
一方で、公知意匠1ないし4では、前述のように被請求人が恣意的に選択した表現である「大部分がフレーム表面に沿う方向に花弁が広がって、花冠が集合したようなボール状の丸みを帯びた表面形状」は、公知意匠1ないし4のみの特徴的な構成態様と言えない。
そうすると、本件登録意匠及び公知意匠1ないし4の構成態様の認定が誤っているため、本件登録意匠の上記差異点から生じるとする「無機質かつシャープな印象」や、公知意匠1ないし4の差異点から生じるとする「植物や花の美しさや柔らかい印象」は、全く考慮するに値しない。
故に、差異点(G)(g)(g′)に対する評価は、そもそもの構成態様の認定が誤っているため、本件登録意匠と公知意匠1ないし4との類否判断に際し、考慮するに値しない。
e 本件登録意匠の創作のポイント
被請求人は、本件登録意匠は「先鋭的な形状の光の塊が、まばゆい輝きを放つ光を抽象的にイメージして創作されたものであり、同イメージを表現すべく、装飾部の表面形状に顕著な立体感を表し、エレメントの両刃部の形状と突出方向で鋭利な外観を表し、光の明るさを均一にムラなく光らせることが可能な形態とした」と主張している。
しかしながら、被請求人は、まばゆい輝きを放つ光を抽象的にイメージして創作されたと言うが、まばゆい輝きを放つという目的を達成するならば、形態というよりは、照明器具の光源の種類やエレメントに使用される素材によるところが大きい。現に、本件登録意匠の願書や図面等からは何ら素材についての示唆はないため、エレメントに使用される素材の限定はされていない。そうすると、たとえば、素材を和紙とした場合、被請求人のいうところのまばゆい輝きを放つことは実現し難い。
また、被請求人は、請求人の作品はミウラ折りを取り入れたことを特徴としており、この折り方では「エレメント頭部における立体感やボリューム感が十分に出せない」のに対し、被請求人の本件登録意匠は「ミウラ折りを採用せずに、エレメント頭部の複数の両刃部の角度を検証した上で、エレメントの折り線を設計している」と主張する。
しかしながら、請求人の作品は確かにミウラ折りを取り入れているものの、請求人は「ミウラ折り」を取り入れたことを特徴としていることを主張している訳でもないし、そもそも意匠は物品の外観なのであって、ミウラ折りを取り入れていようがいまいが、意匠の類否判断に際してそのこと自体は関係がない。
一方で、被請求人の本件登録意匠に係る意匠登録出願を行うに至った経緯を鑑みると、被請求人株式会社ルーセントデザインの松尾氏がメディアアーティストであって過去に造形面における独創性を有した立体造形物を生み出したことなどなく、造形面においての協力を仰ぐべく、請求人と協業するに至ったことを考えると、自ら創作をするというよりは、請求人の公知意匠と全く同一となるのを避けるべく、公知意匠の類似範囲内で特徴のない要素を付け加えただけである。実際に、被請求人の大エレメント(乙1の2)は、エレメント平面視において、請求人のエレメント(甲2の5)と酷似しており、被請求人はこのエレメント中心の表情を隠すことを目的として小エレメントを乗せただけである。
以上より、被請求人が本件登録意匠の創作のポイントとして挙げた点は、本件登録意匠と公知意匠1ないし4との対比において、考慮されるべき意匠の形態の特徴があるわけでもない。寧ろ、本件登録意匠は、何ら創作のポイントはなく、公知意匠1ないし4に基づいて若干の変更を加えただけである。
f 差異点(K)(k)(k′)
被請求人は、エレメントの平面視での外周を構成する部材が複数の両刃部の組み合わせであるか、剣先状または星形状の花弁を組み合わせであるかで異なっており、意匠全体の美感に与える影響が大きい旨主張するが、「花弁」の解釈を誤った表現を用いていることもあって、被請求人の意図するところは不明である。
g 差異点(L)(l)(l′)
被請求人は、エレメントの平面視で、エレメントの両刃部(花弁)を構成する部材の形状につき、本件登録意匠は三角形で構成されるのに対し、公知意匠1ないし4は、四角形で構成される点で異なり、意匠全体の美感に与える影響が大きい旨主張する。しかしながら、前述した通り、エレメント平面視において、本件登録意匠においては、大エレメントの大両刃部及び小エレメントの両刃部に関しては「三角形で構成されている」ものの、大エレメントの小両刃部にあっては、四角形から構成されている点、また、公知意匠1ないし4にあっても、すべて四角形で構成されているのではなく、小さい星形状の花弁は、略三角形で構成されている点からすると、そもそも請求人の構成態様の認定には誤りがある。
仮に、両刃部等の構成に四角形や三角形の違いがあったとしても、看者はエレメント全体を少し離れた場所から全体として鑑賞するものであり、また、エレメント同士も重なるため、エレメントの個々の形状の認識は困難である。さらに、意匠に係る物品が照明器具であるが故に、鑑賞時にはフレームの内部に設置された光源の発光を受けた状態になるため、エレメントの細かい形状がどうであったかということは印象には残らない。
したがって、差異点(L)(l)(l′)は、意匠全体の美感に与える影響は小さいものと考える。
h 差異点(M)(m)(m′)
被請求人は、本件登録意匠は、各両刃部の向きにより、上斜め方向または下斜め方向に鋭く尖った立体的な形状が表れるのに対し、公知意匠1ないし4は、エレメントの頭部に花弁が花冠の中心から徐々に水平になりながら花開いたような形状が表れる点で異なり、意匠全体に与える影響が大きい旨主張する。
しかしながら、まず、構成態様(M)において、本件登録意匠は、各両刃部の向きにより、上斜め方向または下斜め方向に鋭く尖った立体的な形状が表れるとしているが、本件登録意匠における各両刃部と公知意匠1ないし4の対応部分とは、突出方向において略同じであり、また、それらの形状や高さについても略同様であることから、公知意匠1ないし4に比して「鋭く尖った」立体的な形状は表れていないため、これを本件登録意匠のみの特徴として認識されるべきものではない。
なお、本件登録意匠のエレメントでは大エレメントの小両刃部が下斜め方向に振れているが、この大エレメントの小両刃部は、小エレメントの両刃部の下方に位置するため、看者は視認が困難であることから、意匠の美感には寄与していない。
一方、構成態様(m)(m′)において、エレメント正面視等において、大きな剣先状の6個の花弁および大きな星形状の花弁の上端となる面が、水平方向を基準に、中心から上斜め方向に伸びた後、「略水平な角度」となり、エレメントの頭部に、花弁が、花冠の中心から徐々に水平になりながら花開いたような形状が表れるとするが、本件登録意匠の対応部分も程度の差こそあれ、水平に近い角度となっているのであり、その意味では両意匠とも「エレメント頭部に、花弁が、花冠の中心から徐々に水平になりながら花開いたような形状が表れる」のであって、公知意匠1ないし4のみの特徴として認識されるべきものではない。
したがって、差異点(M)(m)(m′)では、本件登録意匠及び公知意匠1ないし4のそれぞれの構成態様の認定に誤りがあるため、差異点として挙げられるべきではなく、被請求人の評価も考慮されるべきではない。
なお、仮に、両意匠のエレメントに多少の形状の差異が確認されたとしても看者はエレメント全体を少し離れた場所から全体として鑑賞することを考えると、小エレメントの両刃部等の細かな向きを認識するのは困難であり、意匠全体の美感に与える影響は小さいものと考える。
i 差異点(N)(n)(n′)
差異点(N)(n)(n′)において、被請求人は、本件登録意匠について、リング状部に大エレメントの脚部を挿入して「くびれ」のやや上部でエレメントの挿入が止まることにより、リング状部に挿入されていない大エレメントの脚部の高さ分、フレームの表面からエレメントの頭部が浮いた立体的な形状が表れるとし、そうではない公知意匠1ないし4とは異なり、このような差異は意匠の美感に影響を与えると主張する。
しかし、差異点(N)(n)(n′)については、フレームにエレメントを挿した際にエレメントの挿入が止まる位置は、本件登録意匠の図面等では、被請求人がいうところの「くびれ」の部分となっていることから、構成態様には誤りがあり、また、この誤った認定に基づいて「エレメントの頭部が浮いた立体的な形状が表れる」ことも誤っているため、これらは差異点として考慮するに及ばない。
j 差異点(Q)、(R)
差異点(Q)(R)は、被請求人は、本件登録意匠は大エレメントの小両刃部の位置に関する差異であり、このような差異は意匠の美感に影響を与えると主張する。
しかし、差異点(Q)、(R)は、看者はエレメントで覆われた作品全体を鑑賞するため、エレメントが互いに重なり、また、大エレメントの小両刃部は小エレメントの両刃部の下方に存在することからすると、看者が視認することは困難である。 したがって、この差異が意匠の美感に影響を及ぼすとは到底考えられない。
k 差異点(O)(o)(o′)、(P)(p)(p′)
差異点(O)(o)(o′)において、被請求人は、平面視におけるエレメント中央付近の形状について、本件登録意匠では、エレメント中央付近は、中心に12本の折り線があるのに対し、公知意匠1ないし4は、24本の折り線がある点で異なり、この差異が意匠の美感に影響を与えると主張する。また、差異点(P)(p)(p′)において、本件登録意匠にはエレメントの中央付近に明確な孔が認められないのに対し、公知意匠1ないし4では、円形の孔が認められる点で異なっており、この差異が意匠の美感に影響を与えると主張する。
しかしながら、看者はエレメント全体を少し離れた場所から全体として鑑賞するものであり、エレメントの中央付近の細かな折り線を認識したり、孔の有無を認識するのは困難である。また、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、照明用笠に係るものであり、フレームの内部に設置された光源装置を点灯させたときには、光源装置からの光は、まずエレメント脚部で最初の光学的変化を受け、その結果、そのエレメント脚部が放った光は折りを伴ったエレメント頭部によって更に複雑な光学的変化を受けるものであるが、このエレメント頭部にある花弁状の中央付近の形状は明確に視認されるわけではないことからすると、上記形状の微細な差異は、両意匠の類否判断に影響を及ぼさないと考える。
なお、被請求人は、公知意匠1ないし4では、エレメントの中央付近の孔から光源が視認されることから、照明器具の使用時に光源を光らせた際に、光源の光に注意を惹かれるか否かの差異が生じ、その結果、美感にも影響を与えると主張する。しかし、これは、差異点(F)(f)(f′)の認定に対する反論にて既に述べたところとも関係するが、そもそも両意匠の形態の類否判断に際し、光源が見えるか否かの違いは考慮されるべきでないし、また、光源の光に注意を惹かれるか否かは、エレメントの中央付近の孔から僅かに光源が見えるか否かによるものではなく、光源の種類、形状や数等によるところが大きい。
また、被請求人の本件登録意匠に係る製品は、本件答弁書において、折り等によってエレメントが作成されていることが示唆されているが、被請求人の作品が折り等でエレメントが作成されリング径にエレメントを挿入するという構成をとっている限り、本件登録意匠もそれを実施した際には孔が生じる場合がある。
(6)「審判請求人の主張する本件登録意匠と公知意匠1ないし4との類否判断」に対する被請求人の反論について
(6-1) 被請求人の理解した「請求人の主張」について
被請求人によれば、審判請求人が両意匠の特徴点として挙げている点は、「基本的構成態様にあっては、エレメントを脚部と花弁状部の頭部の2つの部分からなる構成とし、また、フレームに設けられた孔にエレメント脚部を挿入してフレームの外側にエレメント頭部が表れているようにした構造としている点」と、「具体的構成態様においては、エレメント頭部の立体的な重なりを略同様とする点」であるとする。そして、被請求人によれば、請求人は、これが両意匠に共通して、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいことを根拠に、両意匠の形態は互いに類似するものと主張する、と述べる。
しかし、請求人は審判請求書(「前記1.2(4)イ.(4-1)(ア)」
)においてそのような表現を使用しているものの、その表現が使用されている箇所は、共通点における評価に関し、尚書きにて記載した「光学的変化」の段落で、光学的変化に貢献する態様として総括的に記載した表現である。請求人は、自身が認識している特徴的な構成態様については、「光学的変化」の段落の前において個々列挙しているのであり(「前記1.2(4)イ.(4-1)(ア)」)、それを無視して、特定の総括的な記載を抽出すること自体、恣意的であって適切でない。
(6-2)請求人が主張する基本的構成態様の共通点の認定への被請求人の反論について
被請求人は、請求人が上記主張を行っているとの認識に基づき、差異点(D)(d)(d′)で言及したように、本件登録意匠の1つのエレメントは、大エレメントと小エレメントの組み合わせで構成されていること、また、差異点(N)(n)(n′)で言及したように、フレームの外側にエレメントの頭部のみが表れるのではなく、エレメントの脚部の一部も表れる構造である旨言及し、請求人が審判請求書で述べた基本的構成態様の共通点における認定が誤りであると主張する。
しかし、前述のように、差異点(D)(d)(d′)は、そもそも本件登録意匠の図面等にはそのような構成は現れていないことから、構成態様として成り立っていないものであり、また、差異点(N)(n)(n′)も、本件登録意匠の図面等に示された事実と異なっていることから、構成態様の認定が誤っているものであり、したがって、これらの誤った認定の構成態様を前提とした差異点の評価も考慮し得ない。
また、請求人が審判請求書にて主張する本件登録意匠の構成態様は、意匠法第24条第1項に基づき、本件登録意匠の願書及び図面等に示された形状等から認定しており、適切な構成態様である。このような構成態様に基づき請求人が挙げた共通点・差異点も適切である。
したがって、被請求人の主張は、全く意匠法の趣旨に反した反論を行っているのであり、被請求人の主張は失当である。
(6-3) 請求人が主張する具体的構成態様の共通点の認定への被請求人の反論について
被請求人は、請求人が上記主張を行っているとの認識に基づき、請求人の表現である「両意匠は、その輪郭において、エレメント頭部の立体的な重なりが略同様であり、それが連続しているという表現方法において同一であると言え、看者は、そのような輪郭が注意を惹くというべきである。」を引用し、そのような表現方法を採用した意匠は、ごくありふれた表現方法であるとし、乙6を提出している。
しかし、この被請求人の提出した乙6を見る限り、単にエレメントともとれる要素が並んでいるだけであり、請求人の文言の一部を形式的に捉えただけの浅い理解に基づく反論となっている。
請求人が意図するところは、今まで審判請求書でも述べてきたように、そのような表現方法自体ではなく、そのような表現方法によって体現された輪郭であり、具体的には、エレメント頭部の大小さまざまな剣先形状が複雑に交錯した立体的な重なりが織り成す特徴的な輪郭である。
前述したように、このような特徴的な輪郭は、すべて請求人が主に共通点として認定している複数の特徴的な構成態様が相侯って生まれているものである。
すなわち、請求人が主張する基本的構成態様においては、フレームとエレメント複数個から構成され、フレームは、棒状部とリング状部からなる丸みを帯びたものであり、エレメントは脚部と脚部から放射線状に伸びる花弁状の頭部とからなる点(請求人が主張する基本的構成態様(A)(a)(a′))、フレームには、その外表面を略覆うように、リング状部を形成する複数の円形孔が設けられており、該孔にエレメント脚部が挿入されることにより、フレームの外側にエレメント頭部が表れているものである点(請求人が主張する基本的構成態様(B)(b)(b′))が共通し、このような基本的構成態様は、本件登録意匠及び公知意匠1ないし4の特徴的な輪郭を生み出すのに必要な構成態様である。
また、請求人が主張する具体的構成態様においては、本体の輪郭は、フレームの孔に挿入されたエレメントの頭部同士が立体的に重なった結果として形成され((G)(g)(g′))、そのエレメント頭部の重なりにおいても本件登録意匠と公知意匠1ないし4は略同様となっている。具体的には、フレームの複数の孔は略均等に配置され(請求人が主張する具体的構成態様(D)(d)(d′))、その孔の位置も、基本的にはフレームを構成する棒状部と隣接する3つの孔によって三角形を構成するように配置されている点で共通しているため、エレメント頭部の重なりが略均等となっている。また、フレームの孔に挿入されるエレメントの形状はすべて同一であり(請求人が主張する具体的構成態様(E)(e)(e′))、エレメントの平面視における外周の形状も、甲42のエレメント比較図からもわかるように、外周の形状を構成する線は略同一である。このような具体的構成態様等も、本件登録意匠及び公知意匠1ないし4の特徴的な輪郭を生み出すのに寄与している。
上記より、請求人は、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、エレメント頭部の立体的な特徴のある重なりが連続しているという表現方法において体現された輪郭、言い換えれば、エレメント頭部の大小さまざまな剣先形状が複雑に交錯した立体的な重なりが織り成す特徴的な輪郭において共通するため、それから得られる美感も共通し、両意匠は類似である。
なお、本件登録意匠と公知意匠1ないし4との差異点は、請求人が認識している差異点においても類否判断に大きな影響を及ぼすとは言えないが、被請求人が認識している差異点にあっても、上述の通り、被請求人の反論は全く実のないものであることは明らかであり、仮に多少の形状の差異があったとしても、類否判断に全く影響を及ぼすことはない。
したがって、本件登録意匠は、公知意匠1ないし4の類似範囲の範躊を出ず、両意匠は類似する。故に、両意匠の形態は互いに類似しない旨の被請求人の主張は失当である。
(7) 小括
以上の通り、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは意匠の形態が類似しないとする被請求人の主張は失当であり、請求人が今まで主張してきた通り、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは意匠の形態が類似するものであり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当するものである。

3 意匠法第3条第2項の無効理由
被請求人は、本件登録意匠と公知意匠1ないし4とは、基本的構成態様及び具体的構成態様において差異があり、当該差異点は、いわゆる当業者にとってありふれた手法によるものではなく、本件登録意匠は公知意匠1ないし4に基づいて容易に創作し得るものではない、と主張する。具体的な言及があるのは、差異点(B)(b)(b′)、(E)(e)(e′)、(D)(d)(d′)、(F)(f)(f′)、(G)(g)(g′)のみであることから、請求人も上記差異点のみの反論を行うこととする。
(1)差異点(B)(b)(b′)及び(E)(e)(e′)
差異点(B)(b)(b′)は、フレームは上部が切り欠かれた略球形状であり、差異点(E)(e)(e′)は、装飾部の範囲はフレームの高さ方向で全体の3分の2程度の範囲を占めることであるが、「看者が照明器具を見る角度によって装飾部の外形の形が変わるという特徴があり、変化に富んだ印象を見る者に生じさせる」ことから、このような印象を上記差異点に係る本件登録意匠の形状や構造により生じさせる手法は、当業者にとってありふれた手法であるとは言えないと主張する。
しかし、意匠法第3条第1項第3号に関する差異点(B)(b)(b′)及び差異点(E)(e)(e′)の評価に対する反論においても述べたように、本件登録意匠は、フレームがむき出しとなっている部分が看者に見えないように、天井に段差を設けてフレームを埋め込むようにして天井に設置することを想定しているのであり、看者からすれば、天井に球形の照明器具が埋め込まれているようにも見え、球形を意識した照明器具であることは誰がみても明らかであり、見る角度によって印象が異なるとは思われない。
また、実際に被請求人の本件登録意匠に係る照明器具の実施品(甲46及び甲47)をみても、照明器具を設置する天井の表面を鏡とし、その鏡の反射によって略球形状の照明器具のように見せていることも考えると、被請求人の本件登録意匠のデザイン自体、見る角度によって看者の印象が異なるようにした照明器具を意図して創作したものではなく、寧ろ、どの方向からも略球形状の照明器具のように見せることを目的としているものである。
したがって、差異点(B)(b)(b′)及び(E)(e)(e′)に関し、本件登録意匠からは、被請求人が主張するような「看者が照明器具を見る角度によって装飾部の外形の形が変わるという特徴があり、変化に富んだ印象を見る者に生じさせる」ことはないし、そのようなことを目的として本件登録意匠の形状の創作をしたとしても、上記差異点に係る本件登録意匠の形状は、当業者にとってありふれた手法であることは、審判請求書にて請求人が主張した通り、明らかである。
すなわち、本件登録意匠は天井設置型の照明器具であり、公知意匠1ないし4はペンダント型の照明器具であるが、単なる設置方法の変更は照明器具の業界にはよく行われることであって(甲44等)、実際に照明器具メーカーでは、ペンダント型の照明器具を天井設置型の照明器具とすることも普通に行われている(甲45)。特許庁でも設置方法が相違する照明器具であっても美感が共通する照明器具については関連意匠制度を利用した意匠登録を行っている(甲43)。
なお、被請求人は、請求人の提出した甲44及び甲45について創作容易の根拠足りえないと主張するが、その理由では、本件登録意匠は見る角度によって印象が異なる構造としていることを前提とするため、上述のように考慮するに値しないことは明らかである。
したがって、差異点(B)(b)(b′)及び(E)(e)(e′)は、当業者にとってありふれた手法であり、被請求人の主張は失当である。
(2)差異点(D)(d)(d′)
まず、被請求人は、差異点(D)(d)(d′)において、大小2つのエレメントを組み合わせて、1つのエレメントを構成し、1つのエレメントの中に、高さ方向で位置が異なる両刃状の頭部が配置された形状とする手法は、当業者にとってありふれた手法であると言えない、と主張する。
しかし、大小2つのエレメントを組み合わせて1つのエレメントを構成することは、登録意匠の図面等からは示されていないし、そのような構成態様が図面等に示されていない限り、容易に創作できないことの主張の根拠足りえない。
したがって、被請求人の主張は失当である。
(3)差異点(F)(f)(f′)
差異点(F)(f)(f′)は、エレメントの配置密度に関するものであるところ、被請求人は、光の効果を期待して、本件登録意匠においてエレメント同士の間にほぼ隙間がない形状とする手法は、当業者にとってありふれた手法とは言えない、と主張する。
しかしながら、仮に本件登録意匠においてエレメント同士の間にほぼ隙間がないとしても、目的の如何はどうであれ、照明器具の業界にあっては、エレメント同士の間隔は隙間がほとんどないものから隙間が多く見られるものまで様々であって、このことは、被請求人が提出した乙6の照明器具に関する登録意匠の事例でも窺い知れるところである。そうすると、エレメント同士をほぼ隙間がないようにすること等を含め、エレメント同士の間隔を調整することは、照明器具の業界では普通に行われていることである。
したがって、差異点(F)(f)(f′)に基づいて、本件登録意匠においてエレメント同士の間にほぼ隙間がない形状とする手法は、当業者にとってありふれた手法であり、被請求人の主張は失当である。
(4) 差異点(G)(g)(g′)
被請求人は、差異点(G)(g)(g′)において、公知意匠1ないし4は、装飾部の表面形状において、大部分が、フレームの表面に沿う方向とは異なる、フレーム表面から離間する方向、または、フレーム表面に向かう方向に鋭く尖った凹凸を有する形状は見受けられないとし、公知意匠1ないし4との関係で、このような手法は当業者にとってありふれた手法であることを示す証拠になり得ない、と主張する。
しかし、前述の通り、本件登録意匠及び公知意匠1ないし4の構成態様の認定自体が誤っていることから、本件登録意匠と公知意匠1ないし4との差異点として挙げられるべきものではない。
仮に、被請求人が、本件登録意匠の装飾部の表面形状において、装飾部を構成するエレメントの形状が若干異なることも以ってそのような主張をしているとしても、本件登録意匠に係る作品の制作をする際に、たとえば、エレメントに折り等を用いる素材を使用する場合には、エレメント頭部の両刃部は折り等によって容易に先端の向きを変えることができるものである。現に請求人も、公知意匠1ないし4のエレメント頭部を創作する際に、どのような向きが一番美しく見えるかに拘り、最適な向きを模索してきたものである。したがって、被請求人が加えた程度の若干の形状の変更は、当業者であれば普通に行うことができるものである。
したがって、被請求人の主張は失当である。
(5)小括
以上より、本件登録意匠は容易に創作し得るものではないとする被請求人の主張は失当であり、請求人が今まで主張してきた通り、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項に該当するものである。

4 結び
以上詳述したように、被請求人の答弁理由は合理性を欠くものであって、無効理由を覆すに到底及ばない。被請求人による答弁書における主張は失当であると考えられるので、本件審判請求人にあっては、請求の趣旨の通り、意匠法第48条第1項に基づき本件登録意匠を無効とすべき速やかな審決を賜らんことを希求する次第である。

3.「口頭陳述要領書」における主張
1 陳述の要領
(1)合議体の暫定的な見解について
令和1年6月21日付け審理事項通知書の「第1 合議体の暫定的な見解」にて、甲2の5の意匠は、甲2の2の意匠ないし甲2の4の意匠の形態を特定するものではない旨が指摘されている。その理由としては、平成30年9月28日付けの証拠説明書の「作成年月日」の欄の記載によれば、甲2の5の意匠の図面は平成30年7月31日に作成され、写真は同年9月14日に印刷されたものであり、また、「標目」の欄の記載には、写真の撮影日は平成22年10月1日とされているが、甲2の5の意匠が本件登録意匠の出願前に公然知られていることを示す事実(間接事実)は示されていないから、共に本件登録意匠の出願後に作成されたものと認められ、甲2の5の意匠は、本件登録意匠の出願前に公然知られているものとは認められない点が挙げられている。
また、前記審理事項通知書の同項目において、甲2の8の意匠は甲2の7の意匠の形態を特定するものではない旨も指摘されている。その理由としては、前記証拠説明書の「作成年月日」の欄の記載によれば、甲2の8の意匠の図面は、平成30年4月12日に作成され、本件登録意匠の出願後に作成されたものと認められるから、甲2の8の意匠は、本件登録意匠の出願前に公然知られているものとは認められない点が挙げられている。
以下、甲2の5の図面が甲2の2ないし2の4に示される公然知られた意匠の形態を特定する図面として認められるべきである点、甲2の5の写真も甲2の2ないし2の4に示される公然知られた意匠の形態を特定する写真として認められるべき点、また、甲2の8の図面は甲2の7に示す公然知られた意匠の形態を特定する図面として認められるべき点につき、詳細に説明する。
(1-1)甲2の5の図面
A 甲2の5の図面の証拠としての位置付けについて
前記審理事項通知書では、甲2の5の意匠の図面は本件登録意匠の出願後に作成されたものと認められ、甲2の5の意匠は本件登録意匠の出願前に公然知られているものとは認められない点が指摘されている。これは、図面自体が出願前に公然知られたものではない、という認識が前提となっているようである。
しかしながら、請求人が主張しているのは、本件登録意匠はその出願前に公知となった意匠(公知意匠1ないし3)と類似するものであること(意匠法第3条第1項第3号の規定違反)、上記の公知となった意匠等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたこと(意匠法第3条第2項の規定違反)であって、ここにいう公知となった意匠とは、甲2の2ないし甲2の4の写真に表された公知となった現物そのものに係る各意匠を示しているのである。
請求人は、この主張立証に際して、公知となった意匠である甲2の2ないし甲2の4に示される意匠の形態の特定及び本件登録意匠との比較検討における理解を容易にすべく、甲2の5の図面を使用しているのであって、甲2の5の図面自体が出願前に公然知られたことを主張しているわけではない。
したがって、甲2の5の図面は、公然知られた意匠(公知意匠1ないし3)の形態の特定をするための証拠と位置付けられるべきものであることが明らかである。
B 甲2の5の図面は公知意匠1ないし3(甲2の2ないし甲2の4)の形態を特定する証拠として認められるべきであること(公知意匠1ないし3と甲2の5の図面の意匠が同一であること)
公知意匠1ないし3に係るデザインは、3D CAD上で設計が行われたものである。その設計過程においては2次元図面が存在していないが、その理由としては、昨今の作品(意匠)設計は3D CAD上で行われることが多く、今日では設計部門や試作業者へデザインを渡す際、2次元図面を介すことなく直接3Dによるデータを送って済ませることが主流となっているという状況がある(甲48の1、甲49)。つまり、作品(意匠)の設計過程において2次元図面を使用せずに3Dデータのみで行われていることは何等不思議なことではなく、むしろ、極普通の設計過程なのである(甲48の1、甲49)。このような状況もあって、甲2の5の意匠の図面は、本件無効審判の請求に際して、本件登録意匠の出願の後に作成されたものである。
しかしながら、甲2の5の図面は、公知意匠1ないし3のデザインに係る3Dデータから出力を行い作成されたものである。そして、この3Dデータは公知意匠1の公知となった日(松屋銀座店でペンダント型の「umbel」の展示が行われた平成22年9月9日から14日まで)より前に作成されている。
ここで、この3Dデータから2次元図面への作成方法について説明をすると、3Dデータから2次元図面の作成は、設計等の段階のいずれの段階であっても、3Dに係るソフトウェアの図面化機能を使用することにより自動的に行うことができる。たとえば、前もってデザインされた3Dモデルを任意の角度から見たときの一つのビュー(線図)を仮に正面と定めると、平面図、両側面図、背面図等が生成される図面化機能を利用することで、2次元図面は、自動的に作成される(但し、3Dデータから作成された図面は、バーチャル特有の現象、すなわち、3Dデータ(バーチャル空間上の立体物)を作成する際に必要となったアタリ線など、最終立体物には存在しない線などが図面上に残ることがあるため、そのような2次元図面には不要となる要素を削除する工程が必要となる場合がある。甲48の1。)。つまり3Dデータから図面を作成した日がいつであっても、その3Dデータの作成日の時点で作成できる2次元図面と同一の図面を作成することが可能である。
本件では、公知意匠1ないし3のデザインに係る3Dデータは、複数の部品データを組み合わせて構成されており、当該3Dデータの作成日は、松屋銀座店での展示の前である平成22年7月11日から8月25日までとなっている(甲48の2)。そうすると、甲2の5の図面は、公知意匠1ないし3のデザインに係る3Dデータの作成日(複数の部品データの作成日のうち最も遅い作成日)の時点、すなわち、公知意匠1ないし3の公知となった日の前である平成22年8月25日の時点において、当該3Dデータから甲2の5の図面と同一の図面を作成することができたのである(甲48の1、甲48の2)。
これに関し、上記について客観的に検証するため、意匠登録出願の図面作成を長年手掛けている図面作成業者に、当該3Dデータの作成日の確認、甲2の5の図面における全体図(2頁目の全体図)は、当該3Dデータに基づいて作成されたものであるか否かの検証の依頼を行った。その結果、当該3Dデータの作成日は平成22(2010)年7月11日から8月25日までと確認され、また、甲2の5の図面(2頁目の全体図)は当該3Dデータに基づいて作成されたものであるとの検証結果を得ている(甲49)。
以上からすると、甲2の5の図面の作成時期は本件登録意匠の出願の後であっても、この作成時期はたいした意味を持つものではなく、図面の作成日が本件登録意匠の出願の後であることをもって、図面が認められないとするのは誤りである。
一方で、上記3Dデータからは、2次元図面が作成できると共に、現物モデルをも作成することができる。実際に、公知意匠1の「umbel」に使用されているフレームは、上記3Dデータを基に3Dプリンタにより制作された製品である(甲50、甲51)。平成22年8月に請求人が3Dプリントの業者である原田車両設計株式会社に3Dデータを送付し見積り依頼を行うと共に発注を行い、同年9月(原田車両設計株式会社9月3日発送)に3Dプリンタで制作された製品の納品を受け(甲51)、納品された製品は松屋銀座店で展示された上記「umbel」に使用されている(甲50)。また、エレメントに関しても、3Dデータから平面のカットデータを起こし、それをカッティングプロッターによって、折り線と筋押しと外形のカットを行っている(甲48の1)。
したがって、3Dデータを基にして、その画像上の立体的なデータから2次元図面が作成されると共に、実際に使用されている現物をも制作しているのである。このことからすると、公知意匠1ないし3と甲2の5の図面の意匠は、同一であるといえ、現物に係る意匠の形態を特定する証拠として甲2の5の図面を使用することは、何ら異論を唱えられるべきではない。
上述の諸点を鑑みるに、甲2の5の図面は、公知意匠1ないし3のデザインに係る3Dデータの作成日の時点、すなわち、公知意匠1ないし3の公知となった日の前である平成22年8月頃の時点において、当該3Dデータから同一の図面を作成することができたものであり、また、当該3Dデータに基づいて現物をも作成されていることからすると、甲2の5の図面に現された意匠は公知意匠1ないし3と同一といえ、甲2の5の図面は公知意匠1ないし3の形態を特定する証拠として認められるべきである。
(1-2)甲2の5の写真
前記証拠説明書において、請求人は、甲2の5の写真は、甲2の5の図面の元とした写真であるとの説明を行っているが、より正確には、平成22年9月9日から14日まで松屋銀座店にて開催された催事「銀座目利き百貨街」に展示された「umbel」そのものを被写体とした写真である(甲50)。
甲50の株式会社miura-ori labの取締役社長による陳述書にあるように、松屋銀座店にて開催された催事「銀座目利き百貨街」にて展示された「umbel」は、会期終了後である平成22年10月1日にその取締役社長の知人によって東京都台東区内の貸スタジオにて撮影された。
以上より、甲2の5の写真は、展示された上記「umbel」を会期終了後に撮影した写真を印刷したものであり、甲2の2ないし甲2の4の意匠の形態を特定する証拠として認められるべきである。
なお、松屋銀座店に展示された「フラワーシェード(後のumbel)」は、株式会社miura-ori labは、平成29年11月頃まで社内で保管していたが、その後廃棄しており、現存していない(甲50)。
(1-3)甲2の8の図面
前述の「(1-1)甲2の5の図面」と同趣旨となるが、以下、説明を行うこととする。
A 甲2の8の各図面の証拠としての位置付けについて
請求人が主張しているのは、本件登録意匠はその出願前に公知となった意匠(公知意匠4)と類似するものであること(意匠法第3条第1項第3号の規定違反)、上記の公知となった意匠等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたこと(意匠法第3条第2項の規定違反)であって、ここにいう公知となった意匠とは、甲2の7の写真に表された公知となった現物そのものに係る意匠を示しているのである。つまり、カッシーナ・イクスシー青山本店等での展示により公知となった24エレメントの意匠(甲2の7の写真の被写体である現物そのものに係る意匠。公知意匠4)である。
請求人は、この主張立証に際して、公知となった意匠である甲2の7に示される意匠の形態の特定及び本件登録意匠との比較検討における理解を容易にすべく、甲2の8の図面を使用しているのであって、甲2の8の図面自体が出願前に公然知られたことを主張しているわけではない。このことは、平成30年9月28日付け提出の審判請求書において、請求人が第2の1.2(1)にて甲2の7の意匠(公知意匠4)が公然知られた事実について主張立証していること、その後、第2の1.2(2)(2-5)にて、前記公知意匠4の形態の特定をする図面を甲2の8の図面とすると記載していることからも明らかである。
B 甲2の8の図面は公知意匠4(甲2の7)の形態を特定する証拠として認められるべきことであること(公知意匠4と甲2の8の図面の意匠が同一であること)
公知意匠4に係るデザインは、公知意匠1ないし3に係るデザインと同様にそれぞれ3D CAD上で設計が行われたものである。そして、甲2の8の図面は、公知意匠4のデザインに係る3Dデータから作成されている。これらの3Dデータから2次元図面への作成方法などについては、前記(1-1)Bにて述べたとおりであり、本件では、公知意匠4に係る各3Dデータ(それぞれ複数の部品データより構成されている)は、公知意匠4の公知となった日(カッシーナ・イクスシー店で「LUCUS」(24エレメント)が展示された少なくとも平成26年11月28日から12月28日まで)よりも前に作成されている。つまり、公知意匠4に係る3Dデータは、平成26年9月26日から10月10日に作成されている(甲48の3)。そうすると、甲2の8の図面は公知意匠4のデザインに係る3Dデータの作成日(複数の部品データの作成日のうち最も遅い作成日)の時点、すなわち、公知意匠4の公知となった日の前である平成26年10月10日の時点において、当該3Dデータから甲2の8の図面と同一の図面を作成することができたのである。また、上述の諸点を鑑みるに、甲2の8の図面は、公知意匠4のデザインに係る3Dデータの作成日(複数の部品データの作成日のうち最も遅い作成日)の時点、すなわち、平成26年10月10日の時点において、当該3Dデータから同一の図面を作成することができたものであり、当該3Dデータに基づいて現物をも作成することができることからすると、甲2の8の図面に現された意匠は公知意匠4と同一といえ、甲2の8の図面は公知意匠4の形態を特定する証拠として認められるべきである。

2 審理事項について
(1)ここでは、実際に展示により公然知られた意匠となったことにつき、以下、甲2の7の意匠について説明することとする。
(1-1)甲2の7の意匠「LUCIS」(24エレメント)
「LUCIS」(24エレメント)は、平成26年11月から12月にかけてカッシーナ・イクスシー青山本店、大阪店にて開催されたクリスマスインスタレーション「DESIGN YOUR CHRISTMAS.presentation with Takahiro Matsuo」(以下、単に「DESIGN YOUR CHRISTMAS.」という。)において展示されていた。
カッシーナ・イクスシー青山本店では少なくとも平成26年11月28日から12月28日まで「DESIGN YOUR CHRISTMAS.」が開催されていたが、その催事名及び会期については主に甲30、35の1に示されている。また、具体的な会期の言及はないものの、上記の催事がその時期に開催されていたことについては、甲32の雑誌「FLOWER DESIGN LIFE 12」(平成26年12月1日付け発行)の中で、青山本店等にて催事「DESIGN YOUR CHRISTMAS.」において「LUCIS」が展示され「展示終了日は未定」と記載されていること、また、第三者のブログ(甲29及び37)にて上記の催事が取り上げられた記事の掲載日付等からも示されている。
次に、催事「DESIGN YOUR CHRISTMAS.」において「LUCIS」(24エレメント)が展示されていたことについては、甲30の雑誌「商店建築」において24エレメント(24個ユニット)の「LUCIS」に言及があり、その「LUCIS」の写真が掲載されていること、また、甲2の7(2頁目、3頁目)、29、34、35の1(1、3、4、5、8、9(下方右側)、10頁)、35の2、36、37に掲載されている写真によっても確認することができる。
なお、甲36の書籍「DESIGN for the FUTURE」では、照明器具について紹介されており、「LUCIS」(24エレメント)の写真が掲載されているが、この写真はカッシーナ・エクスシー青山本店の上記催事にて展示されていた時の写真である。これは、甲35の1(10頁)、甲37の1(2頁目)の写真と略同一であること、甲2の7(3頁目)、甲35の2(1頁)の写真において同一の場所であることが分かること、からも裏付けられる。
以上より、「LUCIS」(24エレメント)は、平成26年11月から12月にかけてカッシーナ・イクスシー青山本店、大阪店にて開催されたクリスマスインスタレーション「DESIGN YOUR CHRISTMAS.」において展示されており、本件登録意匠の出願前に公然知られた意匠となっていた。
(2)請求人に対する甲号証の「原本」持参もしくは「写し」への変更などについて(省略)
(3)被請求人は、審判事件答弁書、回答書において、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定違反、同法同条第2項の規定違反には該当しない旨主張をする。
これに関し、請求人の主張に対する被請求人の主張においても甲2の5の図面、甲2の8の図面を使用していることがあるため、甲2の2ないし甲2の4、甲2の7に示される意匠につき、予備的に上記各図面を使用せずに主に写真を使用して物品と形態の特定を簡単に行っておく。
なお、甲2の2ないし甲2の4に示される意匠の形態については、それぞれ同様であるため、便宜的に甲2の3に示される意匠(公知意匠2)について形態の特定を行う。
(3-1)公知意匠2(及び公知意匠1、3)について
ア.物品
物品は「照明用笠」であり、甲2の3、甲11の2、甲13、甲14に表されている。
イ.形態
構成態様については、以下の証拠に表されている。
(ア)基本的構成態様
基本的構成態様(a)は、「本体はフレームとエレメント複数個から構成される」こと、「フレームは棒状部とリング状部とからなる丸みを帯びたものであり、エレメントは、脚部と脚部から放射線状に伸びる花弁状の頭部とからなる」ことであるが、これは主に甲2の3(9から11頁)に表されている。
基本的構成態様(b)は、「フレームには、その外表面を略覆うように、リング状部を形成する複数の円形孔が設けられており、該孔にエレメント脚部が挿入されることにより、フレームの外側にエレメント頭部が表れているものである」ことであるが、これは主に甲2の3(9から11頁)に表されている。
(イ)具体的構成態様
具体的構成態様(c)は、「本体は、略球形状である」ことであるが、これは甲2の3、甲11の2、甲13、甲14に表されている。
具体的構成態様(d)は、「フレームの複数の孔は、略均等に配置されている」ことであるが、これについては、主に甲2の3(9、10頁)に表されている。
具体的構成態様(e)は、「フレームの孔には、全て同一形状のエレメントが挿入されている」ことであるが、これは主に甲2の3、甲11の2に表されている。
具体的構成態様(f)は、「フレームの孔の数は21であり、該孔にはそれぞれ1個のエレメントが挿入されている」ことであるが、これは概ね主に甲2の3(9頁目)、甲2の1、甲7の1等から理解することができる。
具体的構成態様(g)は、「本体の輪郭は、フレームの孔に挿入されたエレメントの頭部同士が立体的に重なった結果として形成される」ことであるが、これは甲2の3、甲11の2、甲13、甲14に表されている。
具体的構成態様(h)は、「エレメントの平面視における外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな三角形状の花弁とから形成されている」ことであるが、これは甲2の3(2、3、4、6、7、9、10、11、12、13頁)、甲11の2(2、3、4、6、7、8頁)、甲13に表されている。
具体的構成態様(i)は、「エレメントの平面視における中央付近は、中心に星型の孔が認められ、その周辺は折り線が集まったことにより生じる放射線状の花心と思しき形状が表されている」ことであるが、これは甲2の3(2、3、4、6、7、9、10、11、12、13頁)、甲11の2(2、3、4、6、7、8頁)、甲13に表されている。なお、ここにいう「星型の孔」とは、各写真を拡大してみると、厳密に言えば丸型ではなく星型なのであるが、ある程度距離を持ってみると略丸型にみえるものである。
具体的構成態様(j)は、「エレメントの色彩は、乳白色である」ことであるが、これは甲2の3(2?6、8?13、15頁)、甲11の2(2?6、8、9、11頁)、甲14の1に表されている。
(3-2)公知意匠4について
ア.物品
物品は「照明用笠」であり、甲2の7、甲29、甲30、甲32、甲34、甲35の1(1、4、5、9、10頁)、甲35の2、甲36、甲37に表されている。
イ.形態
構成態様については、以下の証拠に表されている。
(ア)基本的構成態様
基本的構成態様(a′)は、「本体はフレームとエレメント複数個から構成される」こと、「フレームは棒状部とリング状部とからなる丸みを帯びたものであり、エレメントは、脚部と脚部から放射線状に伸びる花弁状の頭部とからなる」ことである。
基本的構成態様(b′)は、「フレームには、その外表面を略覆うように、リング状部を形成する複数の円形孔が設けられており、該孔にエレメント脚部が挿入されることにより、フレームの外側にエレメント頭部が表れているものである」ことである。
これらの基本的構成態様(a′)(b′)がよく表わされている証拠の一つに甲2の7(3頁)の写真があるが、上記写真の細部を拡大した甲52をみると、フレームが確認でき、また、フレームが棒状部とリング状部から構成されてなることも確認できる。更に、エレメントについても、上記写真を拡大した甲52からはエレメントの脚部が確認できることから、エレメントは脚部と脚部から放射線状に伸びる花弁状の頭部とからなることは明らかである。更に、甲52及び甲2の7(3頁)をみると、フレームの円形孔にエレメントの脚部が挿入されていると共に、フレームの外側にエレメント頭部が表れていることがわかる。
(イ)具体的構成態様
具体的構成態様(c′)は、「本体は、略球形状である」ことであるが、これは甲2の7(2頁右側、3頁)、甲29(2頁下側)、甲30(2頁下側)、甲34(2頁)、甲35の1(1、4、5、9、10頁)、甲35の2(1頁左側)、甲36、甲37の1、甲37の3、甲37の4に表されている。
具体的構成態様(d′)は、「フレームの複数の孔は、略均等に配置されている」ことであるが、これについては、主に甲2の7(3頁)の写真を拡大してみれば確認できるように、公知意匠4はフレームの円形孔にエレメントの脚部が挿入されている構造であり(甲52)、また、写真全体においてエレメントが均等に配置されていることからすると、フレームの複数の孔が略均等に配置されていることがわかる。
具体的構成態様(e′)は、「フレームの孔には、全て同一形状のエレメントが挿入されている」ことであるが、これは主に甲2の7(3頁)、甲36、甲37の3に表されている。
具体的構成態様(f′)は、「フレームの孔の数は24であり、該孔にはそれぞれ1個のエレメントが挿入されている」ことであるが、該孔にはそれぞれ1個のエレメントが挿入されていることについては、甲2の7(3頁)の写真を拡大してみれば確認することができ(甲52)、フレームの孔の数が24であることについては、甲2の1、甲30より理解できる。
具体的構成態様(g′)は、「本体の輪郭は、フレームの孔に挿入されたエレメントの頭部同士が立体的に重なった結果として形成される」ことであるが、これは甲2の7(2頁右側、3頁)、甲29(2頁下側)、甲30(2頁下側)、甲34(2頁)、甲35の1(1、4、5、9、10頁)、甲35の2(1頁左側)、甲36、甲37の1、甲37の3、甲37の4に表されている。
具体的構成態様(h′)は、「エレメントの平面視における外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな三角形状の花弁とから形成されている」ことであるが、これは主に甲34(2頁左側)、甲35の1(3頁)等をみれば理解することができる。
具体的構成態様(i′)は、「エレメントの平面視における中央付近は、中心に星型の孔が認められ、その周辺は折り線が集まったことにより生じる放射線状の花心と思しき形状が表されている」ことであるが、孔については、甲2の7(3頁)、甲37の3の写真等から確認することができ、孔の周辺の形態については、甲2の7(3頁)、甲29、甲30、甲34(2頁)、甲35の1(3、10頁)、甲35の2(1頁右側)、甲36、甲37の3、甲52に表されている。なお、この構成態様中の「星型の孔」とは、上記各写真をみると、厳密に言えば丸型ではなく星型なのであるが、ある程度距離を持ってみると略丸型にみえるものである。
具体的構成態様(j′)は、「エレメント自体の色彩は透明であるが、光源の反射により概ね白色として感得され、虹色の分散光を生じ得る」ことであるが、これは甲2の7、甲29、甲30、甲34、甲35の1(1、4、5、8、9、10頁)、甲35の2、甲36、甲37、甲52に表されている。
そもそも、請求人の主張する本件登録意匠と公知意匠1ないし4の各構成態様は、本件登録意匠に係る図面が物品(照明器具)の全体形状を表す六面図だけでなく照明器具の内部構造を示すフレームやエレメントの細部に係る参考図面もあったことを考慮しつつ、認定したものである。本件登録意匠の全体形状を表した六面図との関係でいうと、公知意匠1ないし4の具体的構成態様の(c)(c′)、(e)(e′)の一部である「同一形状のエレメント」から構成されていること、(g)(g′)、(h)(h′)、(i)(i′)、(j)(j′)とが関係してくるが、これらの構成態様は上述の証拠にて理解することができる。
本件登録意匠と公知意匠1ないし4との全体形状の外観につき、請求人の主張を補足するべく、公知意匠1ないし4の写真を使って対比したものを提出する(甲53)。

3 請求人が提出した証拠
請求人は、証拠として、以下の甲第1号証ないし甲第53号証(枝番を含む。その内、甲第6号証、甲第10号証、甲第14号証の1、甲第18号証、甲第19号証、甲第21号証、甲第24号証、甲第25号証、甲第26号証、甲第29号証、甲第34号証、甲第35号証の1、甲第38号証の1、甲第38の2、甲第45号証の1、甲第45号証の2、及び甲第47号証はインターネット上の情報をプリントしたものを原本としたものであり、その他は写しと認められる。)を、審判請求書及び口頭審理陳述要領書の添付書類として提出した。
甲第1号証の1:無効審判対象の意匠登録第1574099号意匠登録原簿
甲第1号証の2:無効審判対象の意匠登録第1574099号意匠登録公報
甲第2号証の1:陳述書(請求人 村上哲夫)
甲第2号証の2:添付資料1(「松屋銀座店」にて開催の「銀座目利き百貨街」内「細江振舞道」ブースに展示された「umbel」の写真)
甲第2号証の3:添付資料2(「POLA THE BEAUTY GINZA」に展示された「umbel」及びその設置作業の写真)
甲第2号証の4:添付資料3(「TBSハウジング渋谷」内東急ホームズモデルハウスに展示された「umbel」の写真)
甲第2号証の5:添付資料4(図面及び写真 「松屋銀座店」にて開催の「銀座目利き百貨街」に展示された「umbel」(ペンダント型)の形態を表した図面及びその元とした写真)
甲第2号証の6:添付資料5(図面及び写真 「松屋銀座店」にて開催の「銀座目利き百貨街」に展示された「umbel」(スタンド型)の形態を表した図面及びその元とした写真)
甲第2号証の7:添付資料6(写真を含む資料 24エレメントの「LUCIS」並びに22エレメントの「umbel」がカッシーナ・イクスシー青山本店にて、展示されていたことを示す)
甲第2号証の8:添付資料8(当審注:「添付資料7」の誤記と認められる。)(図面 カッシーナ・イクスシー青山本店で展示された「LUCIS」(フレーム24孔)の形態を表した図面)
甲第3号証の1:陳述書(株式会社miura-ori lab代表取締役社長 阿彦由美)
甲第3号証の2:添付資料1(作業記録書)
甲第3号証の3:添付資料2(「umbel」の展示の概要)
甲第4号証の1:意匠登録第1591314号意匠登録原簿
甲第4号証の2:意匠登録第1591314号意匠登録公報
甲第5号証:書籍「『銀座目利き百貨街』カタログ」抜粋
甲第6号証:株式会社サンエムカラー ウェブサイト(https://www.sunm.co.jp/topics/work/515 )抜粋
甲第7号証の1:書簡「『銀座目利き百貨街』細江勲夫様ブース出品物について」
甲第7号証の2:「『銀座目利き百貨街』細江勲夫様ブース出品物について」のファイルプロパティ
甲第8号証の1:電子メール「カタログ」
甲第8号証の2:電子メール「カタログ」の添付書類
甲第9号証:株式会社miura-ori labのウェブサイト(http://www.miuraori.biz/hpgen/HPB/entries/36.html)抜粋
甲第10号証:株式会社miura-ori labのウェブサイト(http://www.miuraori.biz/hpgen/HPB/entries/37.html)抜粋
甲第11号証の1:陳述書(株式会社ポーラ 浪川恵美子)
甲第11号証の2:添付資料1(「POLA THE BEAUTY GINZA」に展示された「umbel」の写真)
甲第11号証の3:添付資料2(実施計画書)
甲第12号証:電子メール「Re:Fwd:from homepage 三浦おりフラワーシェードについて」
甲第13号証:広報誌「季刊”アプローチ”第201号」抜粋
甲第14号証の1:第三者ブログ「サロン巡りblog」(https://ameblo.jp/meleesienne/entry-11424777785.html)抜粋
甲第14号証の2:鳥取県ウェブサイト内「知事日誌(写真付)」(http://www.pref.tottori.lg.jp/item/758747.htm)抜粋
甲第15号証:電子メール「from homepage」
甲第16号証:株式会社miura-ori labのウェブサイト(http://www.miuraori.biz/hpgen/HPB/entries/48.html)抜粋
甲第17号証:日本空港ビルデング株式会社ウェブサイト(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/whats_new/419_0116_0942.pdf)抜粋の写し
甲第18号証:第三者ブログ「ティンクルてぃんく」(https://ameblo.jp/tin9/entry-11510228243.html)抜粋
甲第19号証:株式会社町田ひろ子アカデミー「AOYAMA Style」ウェブサイト(http://interiorcoordinate.jp/style/)抜粋
甲第20号証:「umbel」JID AWARD 2015応募用パンフレット
甲第21号証:請求人ら「umbel」のウェブサイト(http://umbel-design.com/ja/gallery/index.html)抜粋
甲第22号証:電子メール「住宅展示場モデルハウス用フラワーシェードの件」
甲第23号証:雑誌「商店建築 7」抜粋
甲第24号証:株式会社ワコールアートセンター「SICF」ウェブサイト(http://www.sicf.jp/archives/sicf14/)、(http://www.sicf.jp/archives/sicf14/list/)、(http://www.sicf.jp/archives/sicf14/event/)抜粋
甲第25号証:請求人ら「BIWAHOUSE」のフェイスブックページ(https://www.facebook.com/media/set/?set=a.493435057377871.1073741828.357858054268906&type=3)抜粋
甲第26号証:「ガラス作家白石和子」ウェブサイト(http://glassart.jp/exhibition/exhibition2/index.html)抜粋
甲第27号証の1:電子メール「8/13 お打ち合わせの件」
甲第27号証の2:電子メール「Re:紀尾井町PJ 鳴川邸MTG 日程」
甲第28号証の1:電子メール及びその添付ファイル「Re:写真送付の件」
甲第28号証の2:電子メール及びその添付ファイル「Re:ソルフ届きました」
甲第28号証の3:デザイン画及びそのファイルプロパティ
甲第29号証:第三者ブログ「渋宿Style3」(https://ameblo.jp/shibujyuku3/entry-11967646743.html)抜粋
甲第30号証:雑誌「商店建築 2」抜粋
甲第31号証:株式会社カッシーナ・イクスシーFACEBOOK (https://www.facebook.com/cassinaixc.ltd/posts/997105466970521)抜粋
甲第32号証:雑誌「FLOWER DESIGN LIFE 12」抜粋
甲第33号証の1:電子メール「Re:市原、行ってきました。」
甲第33号証の2:電子メール「Re:市原、行ってきました。」
甲第34号証:株式会社ルーセントデザイン ウェブサイト(http://www.lucent-design.co.jp/works/inc/Portfolio.pdf)抜粋
甲第35号証の1:株式会社カッシーナ・イクスシー(ユニマットグループ)ウェブサイト(http://www.cassina-ixc.jp/press/press_DESIGN_YOUR_CHRISTMAS_Cassina_ixc.pdf)、(http://www.cassina-ixc.jp/myspace_myworld/photo.html)、(http://www.cassina-ixc.jp/christmas/2014/.lucis.html)抜粋
甲第35号証の2:ユニマットグループウェブサイト(http://www.unimat.co.jp/news/189)抜粋
甲第36号証:雑誌「DESIGN for the FUTURE」抜粋
甲第37号証の1:第三者のウェブサイト等1 「web magazine OPENERS」ウェブサイト(http://openers.jp/article/817259)抜粋
甲第37号証の2:第三者のウェブサイト等2 「デザイン情報サイト
『JDN』」ウェブサイト(https://www.japandesign.ne.jp/kiriyama/column2014.html)抜粋
甲第37号証の3:第三者のウェブサイト等3 建築家佐藤桂火氏TWITTER(https://twitter.com/kei_fire/status/528501719534022656)抜粋
甲第37号証の4:第三者のウェブサイト等4 美容室La Vraie BeautBeaute(当審注:語尾の「e」はアクサンテギュ「´」付き) by Kintokiブログ(http://www.lvb-Kintoki.jp/blog/2014/12/post-1-421734.html)抜粋
甲第38号証の1:「BIWAHOUSE」のウェブサイト(https://www.biwahouse.com/news/)抜粋
甲第38号証の2:「umbel」のウェブサイト(http://umbel-design.com/ja/products/index.html)抜粋
甲第39号証:株式会社miura-ori labのウェブサイト(http://www.miuraori.biz/hpgen/HPB/entries/52.html)抜粋
甲第40号証:本件登録意匠と公知意匠1ないし3との形態比較図
甲第41号証:本件登録意匠と公知意匠4との形態比較図
甲第42号証:本件登録意匠と公知意匠エレメント比較図
甲第43号証:特許庁登録例
甲第44号証:陳述書(株式会社トミタ・ライティングデザイン・オフィス代表取締役 富田泰行)
甲第45号証の1:株式会社土井ルミナベッラ事業部ウェブサイト(http://www.luminabella.jp/product/Giogali++Mini+Giogali+SP+355080+Pendant%2BLight/)(http://www.luminabella.jp/product/Giogali++Mini+Giogali+PL+3550+Ceiling%2BLight/)抜粋
甲第45号証の2:株式会社スキャンデックスウェブサイト(https://www.scandex.co.jp/leklint/concept/#products)抜粋
甲第46号証:雑誌「商店建築 9」抜粋
甲第47号証:株式会社ルーセントデザイン ウェブサイト(http://www.lucent-design.co.jp/works/prism-chandelier.php)抜粋
甲第48号証の1:陳述書(請求人 村上哲夫)
甲第48号証の2:公知意匠1ないし3のデザインに係る3Dデータプロパティ
甲第48号証の3:公知意匠4のデザインに係る3Dデータプロパティ
甲第49号証:陳述書(大久保意匠グループ グループ代表 大久保泰行)
甲第50号証:陳述書(株式会社miura-ori lab 代表取締役社長 阿彦由美)
甲第51号証:電子メール「Re:造形品郵送の件」及び送り状
甲第52号証:写真(甲2の7の3頁の写真を拡大したもの)を含む資料
甲第53号証:本件登録意匠と公知意匠1ないし4との形態比較図

第3 被請求人の答弁及び理由の要点
被請求人は、審判事件答弁書を提出し、答弁の趣旨を「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」と答弁し、その理由を、おおむね以下のとおり主張し(「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)、その主張事実を立証するため、後記3.に掲げた乙第1号証ないし乙第9号証(枝番を含む)の証拠を提出した。
1.「審判事件答弁書」における主張
1 本答弁の理由
(1)被請求人の主張
(1-1)審判請求人の主張する無効理由
本件登録意匠は、その出願前に公知となった意匠(甲2の2ないし甲2の5、甲2の7、甲2の8等)に基づき意匠法第3条第1項第3号又は意匠法第3条第2項に該当するものではなく、意匠法第48条第1項第1号に係る無効理由を有するものではない。
以下、本件登録意匠が無効理由を有するものではない点について説明する。
(1-2)公知意匠の証拠資料について
意匠法第3条第1項第3号では、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠、または、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に、類似する意匠」について、登録要件を満たさない旨規定している。
また、「公然知られた意匠」または「公衆に利用可能となった意匠」、即ち、先行公知意匠に類似するか否かについての判断を行う際には、先行公知意匠が出願前に存在していたことを示す証拠資料において、(i)本件登録意匠の出願前に存在した意匠であること、(ii)公然知られる状況にあった意匠であること、および、(iii)本件登録意匠と対比可能な程度に十分に先行公知意匠の形態が表されている意匠であることが、明確に確認可能となっている必要があると考えられる。
ここで、審判請求人が提出した公知意匠1ないし4が、本件登録意匠の出願前に公知となっていたことの根拠とする各証拠資料では、上記(i)?(iii)の条件を満たす資料とはなっていない。
以下、この点について、甲2の2から甲2の8に関してに関して具体的に説明する。
(1-2-1)甲2の2
甲2の2は、照明器具が撮影された写真であるが、当該写真の内容には、日付を立証する明確な情報が存在しない。撮像画像中には、何等かの展示会の様子が見受けられるが、当該写真中の照明器具が本件登録意匠の出願前に存在することを示す日付等の情報を確認することはできない。よって、甲2の2に表れた意匠が、(i)本件登録意匠の出願前に存在した意匠であるかが不明である。
また、甲2の2には、撮像画像中に、1名から2?3名の人物が撮影されているが、当該人物が守秘義務を有さないものかどうかが不明である。
よって、甲2の2に表れた意匠が、(ii)公然知られる状況にあった意匠であるか不明である。
さらに、甲2の2の1枚目の撮像画像中に見られる照明器具は、照明器具の1面のみを撮影したものであり、他の角度から撮像された形態はなく、全体の形態が不明確である。また、照明器具の一部が見切れていることから、撮像された面における形態すらも判然としない。また、甲2の2の2枚目の撮像画像中に見られる照明器具も同様に、照明器具の1面のみを撮影したものであり、他の角度から撮像された形態はなく、全体の形態が不明確である。また、甲2の2の2枚目の撮像画像中に見られる照明器具は、照明器具が光った状態で、その外形のみが視認される不鮮明な状態で映っており、表面の形状が全く分からない。そのため、各意匠の形態が不明確である。また、甲2の2の各撮像画像の中には、2つの照明器具が見受けられるが、撮像画像からは、2つの照明器具の関係性が不明である。また、2つの照明器具のうち、どちらの意匠の形態を、本件登録意匠の形態と比較したいかも不明である。このように、甲2の2の撮像画像中の照明器具は、本件登録意匠との比較対象にしたい意匠の特定が不明であり、この点からも、甲2の2に表れた意匠の形態が不明確であると言える。そのため、甲2の2に表れた意匠が、(iii)本件登録意匠と対比可能な程度に十分に先行公知意匠の形態が表されている意匠とは到底言えるものではない。
したがって、甲2の2は、先行公知意匠が、本件登録意匠の意匠登録出願前に存在していたことを示す証拠資料には該当しない。
(1-2-2)甲2の3
甲2の3は、照明器具が撮影された写真であるが、当該写真の内容には、日付を立証する明確な情報が存在しない。撮像画像中には、店舗らしき室内空間に照明器具を設置した、または、設置しようとしている様子が見受けられるが、当該写真中の照明器具が本件登録意匠の出願前に存在することを示す日付等の情報を確認することはできない。よって、甲2の3に表れた意匠が、(i)本件登録意匠の出願前に存在した意匠であるかが不明である。
また、甲2の3には、撮像画像中に、1名から数名の人物が撮影されているが、当該人物が守秘義務を有さないものかどうかが不明である。よって、甲2の3に表れた意匠が、(ii)公然知られる状況にあった意匠であるか不明である。
さらに、甲2の3の各撮像画像中に見られる照明器具は、照明器具の1面のみを撮影したものであり、他の角度から撮像された形態はなく、全体の形態が不明確である。また、甲2の3の撮像画像の中には、ガラス越しに撮影された画像も多く含まれているが、いずれも照明器具の形状や表面の様子の詳細を確認することができず、照明器具の形態が不鮮明な状態でしか把握されない。そのため、各意匠の形態が不明確である。また、甲2の3の各撮像画像の中には、1つから3つの程度の複数の照明器具が見受けられるが、各撮像画像からは、複数の照明器具の関係性が不明である。また、複数の照明器具のうち、どの意匠の形態を、本件登録意匠の形態と比較したいかも不明である。このように、甲2の3の撮像画像中の照明器具は、本件登録意匠との比較対象にしたい意匠の特定が不明であり、この点からも、甲2の3で表したい意匠の形態が不明確と言える。そのため、甲2の3に表れた意匠が、(iii)本件登録意匠と対比可能な程度に十分に先行公知意匠の形態が表されている意匠とは到底言えるものではない。
したがって、甲2の3は、先行公知意匠が、本件登録意匠の意匠登録出願前に存在していたことを示す証拠資料には該当しない。
(1-2-3)甲2の4
甲2の4は、照明器具が撮影された写真であるが、当該写真の内容には、日付を立証する明確な情報が存在しない。撮像画像中には、室内空間に照明器具を設置した様子が見受けられるが、当該写真中の照明器具が本件登録意匠の出願前に存在することを示す日付等の情報を確認することはできない。よって、甲2の4に表れた意匠が、(i)本件登録意匠の出願前に存在した意匠であるかが不明である。
また、甲2の4における、その写真の内容からは、写真の撮像画像中の照明器具が、守秘義務を有さない第三者に公開される等、公然知られる状況にあったか否かが全く分からない。よって、甲2の4に表れた意匠が、(ii)公然知られる状況にあった意匠であるか不明である。
さらに、甲2の4の各撮像画像中に見られる照明器具は、照明器具の1面のみを撮影したものであり、他の角度から撮像された形態はなく、全体の形態が不明確である。また、甲2の4の撮像画像の中には、3つの照明器具が見受けられるが、撮像画像の角度からは、それぞれの表面形状が異なっており、それぞれの3つの照明器具の関係性が不明である。また、3つの照明器具のうち、どの意匠の形態を、本件登録意匠の形態と比較したいかも不明である。このように、甲2の4の撮像画像中の照明器具は、本件登録意匠との比較対象にしたい意匠の特定が不明であり、この点からも、甲2の4で表したい意匠の形態が不明確と言える。そのため、甲2の4に表れた意匠が、(iii)本件登録意匠と対比可能な程度に十分に先行公知意匠の形態が表されている意匠とは到底言えるものではない。
したがって、甲2の4は、先行公知意匠が、本件登録意匠の出願前に存在していたことを示す証拠資料には該当しない。
(1-2-4)甲2の5
甲2の5は、審判請求人が作成した図面および写真となっているが、当該図面及び写真の内容には、当該照明器具が本件登録意匠の出願前に存在することを示す日付等の情報を確認することはできない。
よって、甲2の5に表れた意匠が、(i)本件登録意匠の出願前に存在した意匠であるかが不明である。
また、甲2の5における、審判請求人が作成した図面および写真の内容からは、当該図面および写真が、守秘義務を有さない第三者に公開される等、公然知られる状況にあったか否かが全く分からない。さらに言えば、審判請求人が作成した図面および写真であるかどうかも判然としない。よって、甲2の5に表れた意匠が、(ii)公然知られる状況にあった意匠であるか不明である。
さらに、甲2の5の図面では、一応、照明器具の全体形状に関する6面図、照明器具の花弁状の部材の6面図、および、フレーム状の部材の6面図が開示されているものの、甲2の5の写真は、照明器具の1面のみを撮影したものであり、他の角度から撮像された形態はなく、全体の形態が不明確である。また、甲2の5の図面に表された意匠と、写真の撮像画像中の意匠との関係性が全く不明である。甲2の5の図面に表れた意匠と、写真の撮像画像中の意匠とでは、照明器具を構成する花弁状の部材の配置位置や数等も異なるようにも見え、甲2の5の図面および写真の照明器具は、本件登録意匠との比較対象にしたい意匠の特定が不明であり、この点からも、甲2の5で表したい意匠の形態が不明確と言える。そのため、甲2の5の図面および写真の照明器具は、その形態が不明確であり、(iii)本件登録意匠と対比可能な程度に十分に先行公知意匠の形態が表されている意匠とは到底言えるものではない。
したがって、甲2の5は、先行公知意匠が、本件登録意匠の出願前に存在していたことを示す証拠資料には該当しない。
(1-2-5)甲2の6(省略)
(1-2-6)甲2の7
甲2の7は、照明器具が撮影された写真であるが、当該写真の内容には、日付を立証する明確な情報が存在しない。撮像画像中には、室内空間に照明器具を設置した様子が見受けられるが、当該写真中の照明器具が本件登録意匠の出願前に存在することを示す日付等の情報を確認することはできない。よって、甲2の7に表れた意匠が、(i)本件登録意匠の出願前に存在した意匠であるかが不明である。また、甲2の7における、その写真の内容からは、写真の撮像画像中の照明器具が、守秘義務を有さない第三者に公開される等、公然知られる状況にあったか否かが全く分からない。よって、甲2の7に表れた意匠が、(ii)公然知られる状況にあった意匠であるか不明である。
さらに、甲2の7の各撮像画像中に見られる照明器具は、照明器具の1面のみを撮影したものであり、他の角度から撮像された形態はなく、全体の形態が不明確である。そのため、甲2の7に表れた意匠が、(iii)本件登録意匠と対比可能な程度に十分に先行公知意匠の形態が表されている意匠とは到底言えるものではない。
したがって、甲2の7は、先行公知意匠が、本件登録意匠の出願前に存在していたことを示す証拠資料には該当しない。
(1-2-7)甲2の8
甲2の8は、審判請求人が作成した図面となっているが、当該図面の内容には、当該図面中の照明器具が本件登録意匠の出願前に存在することを示す日付等の情報を確認することはできない。よって、甲2の8に表れた意匠が、(i)本件登録意匠の出願前に存在した意匠であるかが不明である。
また、甲2の8における、審判請求人が作成した図面の内容からは、当該図面およびが、守秘義務を有さない第三者に公開される等、公然知られる状況にあったか否かが全く分からない。さらに言えば、審判請求人が作成した図面であるかどうかも判然としない。よって、甲2の8に表れた意匠が、(ii)公然知られる状況にあった意匠であるか不明である。
したがって、甲2の8は、先行公知意匠が、本件登録意匠の出願前に存在していたことを示す証拠資料には該当しない。
(1-2-8)小括
以上のとおり、審判請求人が提出した公知意匠1ないし4が、本件登録意匠の出願前に公知となっていたことの根拠とする各証拠資料(甲2の2?甲2の8)は、(i)本件登録意匠の出願前に存在した意匠であること、(ii)公然知られる状況にあった意匠であること、または、(iii)本件登録意匠と対比可能な程度に十分に先行公知意匠の形態が表されている意匠であることが、明確に確認可能な資料となっていない。
したがって、本審判請求では、その出願前に公知となった意匠の存在が明らかでなく、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号又は意匠法第3条第2項に該当するものではないと判断されるべきと考えられる。
以上のとおり、本審判請求では、その出願前に公知となった意匠の存在が明らかでないことから、本件登録意匠は、無効理由を有しないと考えるが、以下、予備的に、審判請求人が主張する、公知意匠1ないし4の形態を開示したとする甲2の5または、甲2の8の図面に表れた意匠と、本件登録意匠との比較を行い、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号又は意匠法第3条第2項に該当するものではない旨を説明する。
(2)結論
本件登録意匠は、甲2の5又は甲2の8の図面に表れた公知意匠1ないし4のいずれとも類似するものではなく、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものに該当せず、同法第48条第1項第1号の無効理由は有しない。また、本件登録意匠は、公知意匠1ないし4に基づいて容易に創作することができるものではなく、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものに該当せず、同法第48条第1項第1号の無効理由は有しない。

2.「口頭審理陳述要領書」における主張
1 請求人の口頭審理陳述要領書の主張について
被請求人は、請求人が陳述要領書において主張する各内容につき、以下のとおり反論を行う。
(1)「甲2の5の図面は公知意匠1ないし3(甲2の2ないし甲2の4)の形態を特定するための証拠として認められるべきであること」について
(1-1)「甲2の5の図面の証拠としての位置付けについて」について
請求人は、前記第2の3.1 (1-1)A において、意匠法第3条1項第3号及び意匠法第3条第2項における公知となった意匠とは、甲2の2ないし甲2の4の写真に表された公知となった現物そのものに係る各意匠(公知意匠1ないし3)であること、及び、甲2の5自体が出願前に公然知られたことを主張しているのではなく、甲2の2ないし甲2の4の意匠の形態の特定及び本件登録意匠との比較検討における理解を容易にすべく、甲2の5の図面を使用していることを述べている。
しかしながら、審判請求書では、このような甲2の5の図面が、意匠法第3条1項第3号及び意匠法第3条第2項における「公知となった意匠」に含まれないとすることについて詳細な説明はなく、寧ろその逆に、甲2の5の図面を、公知となった意匠として位置付けるような記載がなされている。
また、請求人は、i 前記第2の1.2(1)の項目にて、甲2の2ないし甲2の4の意匠が公然知られた事実について主張立証していることや、ii 前記第2の1.2(2)(2-2)ないし(2-4)にて、各公知意匠の形態を特定する図面を甲2の5の図面の記載とする、と記載していることを根拠として、甲2の5の図面が、公然知られた意匠(公知意匠1ないし3)の形態を特定するための証拠として位置付けられるものであるとする。
しかしながら、請求人が主張するi及びiiの記載からは、「公知となった意匠」の対象が、どの証拠に表された意匠に該当するかという点を確認することはできない。また、審判請求書のその他の記載にも、甲2の5自体が出願前に公然知られたものには当たらないことにつき一切の説明はなされていない。甲2の5の図面は公知意匠1ないし3の形態を特定するための証拠として位置付けられるものと判断されるべきではないと考えられる。
(1-2)「甲2の5の図面は公知意匠1ないし3(甲2の2ないし甲2の4)の形態を特定する証拠として認められるべきであること(公知意匠1ないし3と甲2の5の図面の意匠が同一であること)」について
請求人は、前記第2の3.1(1)(1-1)Bにおいて、公知意匠1ないし3に係るデザインが、3D CADにて設計され、その3Dデータ(甲45の2)を元に、本件登録意匠の出願の後に、甲2の5の図面が作成された旨を述べている。また、公知意匠1ないし3に係るデザインの3Dデータが、公知意匠1が公知となった日より前に作成されている旨、及び3Dデータが存在していれば、2次元図面である甲2の5の図面が作成することが可能であったことを述べている。また、これらの内容を説明する証拠として、陳述書(甲48の1、甲49、甲50)、公知意匠1ないし3のデザインに係る3Dデータプロパティ(甲48の2)、電子メール及び送り状(甲51)を提出している。
ここで、まず、甲48の2の公知意匠1ないし3のデザインに係る3Dデータプロパティについては、ファイル名や日付等の情報が付された何等かのデータが掲載された端末画面を印刷したような証拠が提出されているが、その内容については全く不明である。即ち、甲48の2の内容からは、甲48の2に掲載されたデータが、公知意匠1ないし3のデザインに係る3Dデータであるかどうかを確認することできない。また、データの日付についても正確な日付であるか否かについて、客観的に確認できる情報は存在しない。
また、甲48の2のデータにつき、「大久保意匠グループ」なるグループに依頼して、3Dデータの作成日の確認や、甲2の5の図面が、甲48の2の3Dデータに基づき作成されたものであることの確認を行ったとしている(甲49)。この点に関して、甲49には、依頼事項や確認・検証結果の情報が文章で記載されているが、3Dデータの作成日や、甲2の5の図面が、甲48の2の3Dデータに基づき作成されたことを確認できたことについて、その根拠が全く示されておらず、文章でその旨が記載されているに過ぎない。おそらく、甲48の2のデータの内容について、第三者に依頼して、その評価結果を陳述書の形式で示すことで、甲48の2の証拠としての客観性を示そうとしたものと思われるが、甲48の2及び甲49の内容をもって、公知意匠1ないし3の3Dデータが、公知意匠1が公知となった日より前に作成されたことや、そもそも甲48の2に掲載されたデータが、公知意匠1ないし3の3Dデータに該当するものであることを示すような具体的な情報は全く確認することができない内容となっている。また、甲49の作成主体である大久保意匠グループなるグループと、請求人との関係も不明であり、甲49が、無関係な第三者により作成されたものであるかも疑わしく、その意味でも甲49は客観的な証拠力に乏しいものであると言える。
また、甲48の1の陳述書は、請求人自身が作成した書面であることから、客観性に著しく欠け、証拠として採用しうるものではない。
さらに、陳述要領書、甲48の1及び甲49において、3Dデータから2次元図面を作成するにあたり、「3Dデータ(バーチャル空間上の立体物)を作成する際に必要となったアタリ線など、最終立体物には存在しない線などが図面上に残ることがあるため、そのような2次元図面には不要となる要素を削除する工程が必要となる場合がある。甲48の1」(前記第2の3.1(1)(1-1)B)、「当該各データを組み合わせて作成された図面の線画と甲2の5の図面(2頁目の全体図)の線画とを比較した結果、当該甲2の5の図面(2頁目の全体図)は、3Dデータを作成する際に必要となったアタリ線などの最終立体物には存在しない線などが削除されていると認められるが、それ以外の点を除けば、当該各データに基づいて作成された図面であると認められる。」(甲49第2頁第1行目?第5行目)という言及がなされている。
即ち、かかる記載から、仮に、甲48の2が公知意匠1ないし3の3Dデータに該当するものであったとしても、3Dデータの図面上には、2次元図面である甲2の5の図面に存在しない線が描かれていたことから、当該3Dデータと、甲2の5の図面との外観が異なり、両者は同一の図面でなかったことが明らかである。また、請求人が主張する内容から、3Dデータから2次元図面への図面化は、ソフトウェアの図面化機能を介して行いうるとしても、2次元図面で不要となる要素の線を削除するために、人の手を介した削除する工程が必要となると考えられ、このような作業を介する以上、公知意匠1ないし3の3Dデータと、甲2の5の図面とは、異なる図面であると判断されるべきものである。
以上のように、請求人が公知意匠1ないし3のデザインに関する3Dデータと主張する甲48の2については、その内容が不明であり、そのような3Dデータが、公知意匠1が公知となった日より前に存在していたことや、当該3Dデータから甲2の5の図面が作成可能であったことは、請求人が提出した各証拠から裏付けられていない。
また、審判請求人は、甲48の1及び甲50の陳述書、甲51の電子メール及び送り状に基づき、甲48の2の3Dデータから公知意匠1の現物モデルが作成可能である旨、及び、公知意匠1の「umbel」に使用されたフレームとエレメントが当該3Dデータから制作された旨を主張する。
しかしながら、甲48の1、甲50及び甲51の内容からは、甲48の2に掲載されたデータが、公知意匠1の3Dデータであるかどうかを確認することできない。また、実際に制作されたフレームとエレメントの形態も確認することができない。また、甲50の陳述書の作成主体である株式会社miura-ori labの代表者は、甲3の1の内容から明らかなように、平成20年頃から、請求人(BIWAHOUSE)と株式会社miura-ori labが協業関係にある間柄にあることを認めており、このような協業関係にある法人の代表者が作成した甲50の陳述書は、客観的な証拠力を有する資料とは言い難く、採用できるものではない。
よって、甲48の1、甲50及び甲51の内容からは、甲48の2のデータから甲2の5の図面が作成されること、及び、甲48の2のデータから公知意匠1の現物が製作されたことを確認することはできない。また、このことから、公知意匠1ないし3と甲2の5の図面の意匠が同一であるとは到底言えるものではない。
(1-3)小括
以上のとおり、請求人が陳述要領書及び各証拠から主張する、甲48の2を元に甲2の5の図面が作成できる点、公知意匠1ないし3に係るデザインの3Dデータが、公知意匠1が公知となった日より前に作成されている点との内容は失当であり、甲2の5の図面は公知意匠1ないし3の形態を特定する証拠として認められるものではない。
(2)甲2の5の写真は公知意匠1ないし3(甲2の2ないし甲2の4)の形態を特定するための証拠として認められるべきであること」について
甲2の5の写真については、既に、前記1.(1)(1-2-4)で述べたとおり、同写真からは、写真に映った照明器具が本件登録意匠の出願前に存在することを示す日付等の情報を確認することはできず、本件登録意匠の出願前に存在した意匠であるかが不明である。
また、甲2の5の写真は、照明器具の1面のみを撮影したものであり、他の角度から撮像された形態はなく、全体の形態が不明確である。甲2の5の写真の照明器具からは、本件登録意匠との比較対象にしたい意匠の特定が不可能である。そのため、甲2の5の写真の照明器具は、本件登録意匠と対比可能な程度に十分に先行公知意匠の形態が表されている意匠とは到底言えるものではない。
この点につき、請求人は甲50を根拠に、甲2の5の写真が平成22年10月1日に撮影された旨を主張するが、甲50は上述したように、その作成主体が、請求人と協業関係にある間柄であることから、客観的な証拠力を有する資料とは言い難く、採用できるものではない。
また、上述したように、甲2の5の写真は、照明器具の1面のみを撮影したもので、全体の形態が不明確であり、甲2の5の写真の形態から、甲2の2ないし甲2の4の意匠の形態を認識することはできない。
従って、甲2の5の写真は公知意匠1ないし3(甲2の2ないし甲2の4)の形態を特定するための証拠として認められるものではない。
(3)「甲2の8の図面は公知意匠4(甲2の7)の形態を特定するための証拠として認められるべきであること」について
(3-1)「甲2の8の図面の証拠としての位置付けについて」について
請求人は、甲2の8の図面について、甲2の5の図面と同様に前記第2の3.1 (1)(1-3) A において、意匠法第3条1項第3号及び意匠法第3条第2項における公知となった意匠とは、甲2の7の写真に表された公知となった現物そのものに係る意匠(公知意匠4)であること、及び、甲2の8自体が出願前に公然知られたことを主張しているのではなく、甲2の7の意匠の形態の特定及び本件登録意匠との比較検討における理解を容易にすべく、甲2の8の図面を使用していることを述べている。
本部分について、甲2の5に対する反論と同趣旨の内容になる。
(3-2)「甲2の8の図面は公知意匠4(甲2の7)の形態を特定する証拠として認められるべきであること(公知意匠4と甲2の8の図面の意匠が同一であること)」について
まず、甲48の3の公知意匠4のデザインに係る3Dデータプロパティについては、ファイル名や日付等の情報が付された何等かのデータが掲載された端末画面を印刷したような証拠が提出されているが、その内容については全く不明である。
当該3Dデータと、甲2の8の図面は同一の図面でなかったことが明らかである。
また、請求人が主張する内容から、3Dデータから2次元図面への図面化は、ソフトウェアの図面化機能を介して行いうるとしても、2次元図面で不要となる要素の線を削除するために、人の手を介した削除する工程が必要となると考えられ、このような作業を介する以上、公知意匠4の3Dデータと、甲2の8の図面とは、異なる図面であると判断されるべきものである。
よって、甲48の3のデータから、甲2の8の図面が作成されること、及び、甲48の3のデータから公知意匠4の現物が作成可能であることを確認することはできない。また、このことから、公知意匠4と甲2の8の図面の意匠が同一であるとは到底言えるものではない。
(3-3)小括
以上のとおり、請求人が陳述要領書及び各証拠から主張する、甲48の3を元に甲2の8の図面が作成できる点、公知意匠4に係るデザインの3 Dデータが、公知意匠4が公知となった日より前に作成されている点との内容は失当であり、甲2の8の図面は公知意匠4の形態を特定する証拠として認められるものではない。
(4)「「LUCIS」(24エレメント)である甲2の7の意匠が、甲29ないし甲37の証拠に基づき、本件登録意匠の出願前に公然知られた意匠となっていたこと」について
請求人は、陳述要領書にて、「LUCIS」(24エレメント)である甲2の7意匠が本件登録意匠の出願前に公然知られた意匠であることにつき、甲29ないし甲37に基づき説明している。
この点につき、以下指摘する。
まず、甲33の1及び甲33の2については、照明器具に関する写真等、外観を確認しうる情報が全くないものとなっている。
また、甲29ないし甲32、及び、甲34ないし甲37では、照明器具の写真が掲載されているが、写真に掲載された内容では、照明器具の表面がアップになった写真、又は、照明器具の全体がぼんやりと不明確に撮影された写真しか確認することができず、照明器具の全体の形態を明確に認識することができない内容となっている。
以上のように、甲29ないし甲37の各証拠には、甲2の7の意匠と各証拠に掲載された意匠とが同一であることを証することが可能なほど、充分に意匠の形態が表れていないものと考えられる。
従って、「LUCIS」(24エレメント)である甲2の7の意匠が、甲29ないし甲37の証拠に基づき、本件登録意匠の出願前に公然知られた意匠となっていたと判断されるものではない。
(5)公知意匠1ないし3について、甲2の5の図面を使用せずに意匠の形態が特定しうること」について
請求人は、陳述要領書にて、予備的な主張として、甲2の2ないし甲2の4に示される意匠の形態について、甲2の5の図面を用いずに主に写真を使用して、物品と形態の特定を行っている。以下、この点につき、請求人が主張するように、公知意匠1ないし3について、主に写真を使用して形態の特定を行うことが困難である旨を説明する。なお、甲2の3、甲11の2等につき、物品が「照明用笠」であることが特定しうる点は認める。
(5-1)形態
ア.基本的構成態様
請求人が主張する基本的構成態様(a)及び(b)については、甲2の3(9から11頁)に表されていると言及している。
ここで、請求人が主張する基本的構成態様(a)のうち、「エレメントは、脚部と脚部から放射線状に延びる花弁状の頭部とからなる」との点は、甲2の3の内容からは確認することができない。甲2の3の9?11頁の写真には、エレメントと思われる部材が写真の一部に写されているが、この内容から、エレメントは、脚部と脚部から放射線状に延びる花弁状の頭部とからなるという構造を明確に確認することはできない。
また、請求人が主張する基本的構成態様(b)のうち、「該孔にエレメント脚部が挿入されることにより、フレームの外側にエレメント頭部が表されているものである」との点は、甲2の3の内容からは確認することができない。甲2の3の9?11頁の写真は、上述したように、エレメントについての、脚部と脚部から放射線状に延びる花弁状の頭部とからなるという構造が明確でないことから、脚部を把握し難い。また、孔にエレメント脚部が挿入されるという点も、甲2の3の内容からは明確に確認することができない。
以上のとおり、請求人が主張する基本的構成態様(a)及び(b)については、甲2の3に表されているとは言えない。
イ.具体的構成態様
請求人が主張する具体的構成態様(e)については、甲2の3、甲11の2に表されていると言及している。
ここで、請求人が主張する具体的構成態様(e)について、「フレームの孔には、全て同一形状のエレメントが挿入されている」との点は、甲2の3及び甲11の2の内容からは確認することができない。甲2の3及び甲11の2の写真には、エレメントと思われる部材が複数配置されているものの、全て同一形状のエレメントが用いられているかは明確でない。
また、請求人が主張する具体的構成態様(f)については、甲2の3(9頁目)、甲2の1、甲7の1等に表されていると言及している。
ここで、請求人が主張する具体的構成態様(f)について、「フレームの孔の数は21であり、該孔にはそれぞれ1個のエレメントが挿入されている」との点は、甲2の3(9頁目)、甲2の1、甲7の1等からは確認することができない。甲2の3(9頁目)、甲2の1、甲7の1等の写真では、フレームの孔の数を確認できない。また、孔にそれぞれ1個のエレメントが挿入されているか否かも確認することはできない。
また、請求人が主張する具体的構成態様(g)については、甲2の3、甲11の2、甲13、甲14に表されていると言及している。
ここで、請求人が主張する具体的構成態様(g)について、「本体の輪郭は、フレームの孔に挿入されたエレメントの頭部同士が立体的に重なった結果として形成される」との点は、甲2の3、甲11の2、甲13、甲14からは確認することができない。上述したように、エレメントについての、脚部と脚部から放射線状に延びる花弁状の頭部とからなるという構造が明確でないことから、エレメントの頭部を把握し難い。また、これに伴い、エレメントの頭部同士が立体的に重なった結果という外観が確認することができない。
また、請求人が主張する具体的構成態様(h)については、甲2の3、甲11の2、甲13に表されていると言及している。
ここで、請求人が主張する具体的構成態様(h)について、「エレメントの平面視における外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな三角形状の花弁とから形成されている」との点は、甲2の3、甲11の2、甲13からは確認することができない。各写真から、「大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな三角形状の花弁とから形成」という詳細な構造を把握することが困難である。
また、請求人が主張する具体的構成態様(i)については、甲2の3、甲11の2、甲13に表されていると言及している。
ここで、請求人が主張する具体的構成態様(i)について、「エレメントの平面視における中央付近は、中心に星型の孔が認められ、その周辺は折り線が集まったことにより生じる放射線状の花心と思しき形状が表されている」との点は、甲2の3、甲11の2、甲13からは確認することができない。各写真から、僅かにエレメントの中央付近に円形の孔が見受けられるが、「星型の孔」や「(孔)の周辺は折り線が集まったことにより生じる放射線状の花心と思しき形状」なる詳細な構造を把握することが困難である。
以上のとおり、請求人が主張する具体的構成態様(e)?(i)については、甲2の3、甲11の2等に表されているとは言えない。
(5-2) 小括
以上のとおり、公知意匠1ないし3について、甲2の5の図面を使用せずに主に写真を使用して、意匠の形態の特定を行うことはできない。
(6)「公知意匠4について、甲2の8の図面を使用せずに意匠の形態が特定しうること」について
甲2の7、甲29等につき、物品が「照明用笠」であることが特定しうる点は認める。
(6-1)形態
ア.基本的構成態様
請求人が主張する基本的構成態様(a′)及び(b′)については、甲2の7(3頁)、甲52に表されていると言及している。
ここで、請求人が主張する基本的構成態様(a′)及び(b′)のうち、「フレーム」については、甲2の7及び甲52の内容からは全く確認することができない。また、請求人が主張する基本的構成態様(a′)のうち、「エレメントは、脚部と脚部から放射線状に延びる花弁状の頭部とからなる」との点は、甲2の7及び甲52の内容からは確認することができない。甲2の7の3頁の写真及び甲52には、エレメントと思われる部材が写真の一部に写されているが、この内容から、エレメントは、脚部と脚部から放射線状に延びる花弁状の頭部とからなるという構造を明確に確認することはできない。
また、請求人が主張する基本的構成態様(b′)のうち、「複数の円形孔」については、甲2の7及び甲52の内容からは全く確認することができない。また、請求人が主張する基本的構成態様(b′)のうち、「該孔にエレメント脚部が挿入されることにより、フレームの外側にエレメント頭部が表されているものである」との点は、甲2の7及び甲52の内容からは確認することができない。甲2の7及び甲52の写真は、上述したように、フレームを確認することができず、また、エレメントについての、脚部と脚部から放射線状に延びる花弁状の頭部とからなるという構造が明確でないことから、脚部を把握し難い。また、孔にエレメント脚部が挿入されるという点も、甲2の7及び甲52の内容からは明確に確認することができない。
以上のとおり、請求人が主張する基本的構成態様(a′)及び(b′)については、甲2の7及び甲52に表されているとは言えない。
イ.具体的構成態様
請求人が主張する具体的構成態様(d′)?(g′)については、甲2の7等に表されていると言及している。
基本的構成態様で述べたように、甲2の7及び甲52の写真では、「フレーム」や「複数の孔」が表されていない。また、この点は、その他甲29、甲36等の写真についても同様である。よって、「フレーム」や「複数の孔」の形状に関する具体的構成態様(d′)?(g′)については、甲2の7等の内容からは確認することができない。
また、請求人が主張する具体的構成態様(h′)については、甲34、甲35の1に表されていると言及している。
ここで、請求人が主張する具体的構成態様(h′)について、「エレメントの平面視における外周は、大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな三角形状の花弁とから形成されている」との点は、甲34、甲35の1からは確認することができない。各写真から、「大きな剣先状の6個の花弁と、その間に配される小さな三角形状の花弁とから形成」という詳細な構造を把握することが困難である。また、請求人が主張する具体的構成態様(i′)については、甲2の7、甲37の3等に表されていると言及している。
ここで、請求人が主張する具体的構成態様(i′)について、「エレメントの平面視における中央付近は、中心に星型の孔が認められ、その周辺は折り線が集まったことにより生じる放射線状の花心と思しき形状が表されている」との点は、甲2の7、甲3 7の3等からは確認することができない。各写真から、僅かにエレメントの中央付近に円形の孔が見受けられるが、「星型の孔」や「(孔)の周辺は折り線が集まったことにより生じる放射線状の花心と思しき形状」なる詳細な構造を把握することが困難である。
以上のとおり、請求人が主張する具体的構成態様(d′)?(i′)については、甲2の7等に表されているとは言えない。
(6-2)小括
以上のとおり、公知意匠4について、甲2の8の図面を使用せずに主に写真を使用して、意匠の形態の特定を行うことはできない。

3.被請求人が提出した証拠
被請求人は、以下の乙第1号証ないし甲第9号証(枝番を含む。全て写しであると認められる。)を、審判事件答弁書の添付書類(乙第6号証の2ないし4は、回答書添付のものと差し替え)として提出した。
乙第1号証の1:本件登録意匠のエレメントを構成する大エレメントと小エレメントを色分けして表示したエレメントの6面図
乙第1号証の2:本件登録意匠のエレメントを構成する大エレメントの6面図
乙第1号証の3:本件登録意匠のエレメントを構成する小エレメントの6面図
乙第2号証:公知意匠1ないし3との形態比較図(公知意匠1)(甲40)
乙第3号証:公知意匠4との形態比較図(甲41)
乙第4号証の1:意匠登録第1480631号の意匠公報
乙第4号証の2:意匠登録第1488107号の意匠公報
乙第4号証の3:意匠登録第1195931号の意匠公報
乙第4号証の4:意匠登録第1353405号の意匠公報
乙第5号証の1:意匠登録第1488510号の意匠公報
乙第5号証の2:意匠登録第1536018号の意匠公報
乙第6号証の1:意匠登録第1245024号の意匠公報
乙第6号証の2:照明ブランドCHIHIRO TANAKAの商品である「Sakilight」(当審注:「Sakulight」の誤記と認められる。)の紹介ページ(http://chihirotanaka.jp/feed/2008/01/sakulight-2008.html)
乙第6号証の3:照明ブランドCHIHIRO TANAKAの商品である「Konpeito」の紹介ページ(http://chihirotanaka.jp/feed/2009/05/konpeito-1.html)
乙第6号証の4:照明ブランドCHIHIRO TANAKAの商品である照明器具展示販売に関するページ(http://chihirotanaka.jp/feed/2016/02/)
乙第6号証の5:意匠登録第1603778号の意匠公報
乙第7号証の1:被請求人作成の「umbel」のエレメントを撮影した写真(正面及び背面)
乙第7号証の2:被請求人作成の「umbel」のエレメントを撮影した写真(右側面及び左側面)
乙第7号証の3:被請求人作成の「umbel」のエレメントを撮影した写真(平面及び底面)
乙第8号証:甲2の5の図面に各部の名称や一部、色彩を付した図面
乙第9号証:図面及び写真(閲覧制限)

第4 口頭審理
当審は、本件審判について、令和1年(2019年)9月13日に口頭審理を行った。審判長は、本件審判において請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由について、後記第5の2.のとおりとし、甲第1号証ないし甲第53号証、乙第1号証の1ないし乙第9号証について取り調べ、同日付けで審理を終結した。(令和1年9月13日付け「第1回口頭審理調書」)

第5 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成28年8月29日に意匠登録出願(意願2016-18281)され、平成29年3月17日に意匠権の設定の登録(意匠登録第1574099号)の設定がなされ、同年4月17日に意匠公報が発行されたものであって、願書の記載及び願書に添付された図面によれば、意匠に係る物品を「シャンデリア用笠」とし、「本物品は、シャンデリア用笠であり、フレームとフレームに取り付けられる装飾部で構成されている。また、装飾部は同一形状のエレメントを組み合わせて形成されている。後略」であり、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)を願書の記載及び願書に添付された図面に表されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
ア.形態
本件登録意匠の形態は、以下のとおりである。(別紙第14ないし別紙第19参照。)
基本的構成態様は、
A 全体は、略半球形状でフレームの大部分に多数の略多弁花状の装飾構成単位体(以下、装飾体という。)を配したものであって、
具体的構成態様は、
B フレームを球体の直径の約5分の1を水平に切り取って形成したような(直径の直交方向長さが直径の約5分の4)略逆ジオデシック・ドーム状の桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、その差し込み部に装飾体を計41個(別紙第14参照)、底面側(頂面側)寄りに全方向、ほぼ等間隔に配して形成し、
C 1つの装飾体は、左側面図(当審注:本件登録意匠の公報においては、正面図を基準とすると、左側面図は時計回りに90度回転した状態で掲載されているが、当審では、正面図に合わせ、反時計回りに90度回転した状態で認定する。)上中央の装飾体に基づいて認定すると、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成し、左側面視で、軸部を中心に、周方向に放射状に配した複数の片部から成る。
以下、片部の先端(以下「先端」という。)から中心までの長さの最も長いものを「大片部」といい、次いで長いものを「中片部」といい、それらより短いと認められるその余の片部を「小片部」というが、小片部は、平面図左側中央の装飾体(左側面図中央の装飾体に該当。)(以下、各片部の向きについては、装飾体の上下方向(各片部側を上、軸部側を下)に合わせて記載する。)をみると、先端がほぼ水平方向に向いたものと、先端が下向きのものが大片部の間に交互に配されていると認定できるから、以下、先端が水平方向に向いたものを「小片部1」、下向きのものを「小片部2」という。
大片部は、矛先状の大片部を等分割位置に6つ(時計の文字盤になぞらえると、左側面視で12時、2時、4時、6時、8時、10時の位置)、大片部の間に矛先状の小片部1及び小片部2を等分割位置にそれぞれ3つずつ計6つ(小片部1は、左側面視で3時、7時、11時、小片部2は、1時、5時、9時の位置)配し、小片部2の上側には、張り出し片を備えた矢印状の中片部を等分割位置に3つ(左側面視で1時、5時、9時の位置)、中心から放射状に配して成り、左側面視で、中心部は中片部と小片部1の中心寄り端部が交互に付き合わさるように並び、大片部の中心寄りはそれらに覆われて観察できない。
D 各片部の形態は、
(D-1)大片部について
大片部は、先端から中心までを全長として、左側面視、略菱形状で先端から長手方向の半ばにかけて中央を谷折り状とし、その谷折り部を挟む両縁の長手方向の先端から長手方向の半ばにかけて、扁平三角形状の張り出し片部を形成して、山折り状に右側面方向(球体の中心方向)に折り返し、長手方向半ばから中心に向けて(左側面図で中央の装飾体の先端が下向きの大片部に基づいて)左側面視略V字状のV字の鋭角を形成する側(以下「V字角部」という)を先端に向けたごく浅い谷折り部を設け、その内方にはV字角部を同じくする細幅の略V字状部及び中央直線状部を設けて、(平面図の左中央の装飾体に基づいて)中心から斜め上向きに形成している。
(D-2)小片部1について
小片部1は、長手方向の先端から中心までを全長として、左側面視、四辺の長さのほぼ等しい略菱形状で、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、(左側面図上中央の装飾体の先端が下向きの大片部左隣の小片部に基づいて)長手方向半ばに略倒扁平V字状の山折り部を設け(平面図の左中央の装飾体に基づけば)先端をほぼ水平方向に向けて成り、
(D-3)小片部2について
小片部2は(左側面視上中央の装飾体の中片部越しに表れた小片部2及び平面視左中央の装飾体に表れた小片部2に基づくと)中片部の下側に位置し、中心方向寄りの態様は不明であるが、長手方向先端は鋭角状で、短手方向の左右角は鈍角のものであって、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、左側面視で中片部越しに見える短手方向角部は、小片部1より先端方向に位置し、(平面図の左中央の装飾体に基づけば)先端を斜め下向きに形成している。
(D-4)中片部について
中片部は、長手方向の先端から中心までを全長として、左側面視で(左側面図上中央の装飾体の先端が下向きの大片部右隣の中片部に基づいて)中心部寄りの2辺の長さが短く先端の2辺が長い変形菱形状の先端寄り両縁に細長い三角形状のイカヒレ状張り出し片を備えた略イカ形状であって、長手方向中央を谷折り状とし、先端寄り両縁にあるイカヒレ状の張り出し片を山折り状に下方向に折り返し、長手方向の先端から約3分の1に、左側面図視略扁平V字状の僅かな谷折り部をV字角部を先端に向けて設け、その内方にはV字角部を同じくする略V字状部を設けて、(平面図の左中央の装飾体に基づけば、下向き大片部と手前中央大片部の間の中片部)中心から斜め上向きに形成している。
E 各片部の左側面視の長手方向の中心から先端までの長さ比は大片部:中片部:小片部1は約11:8:7で小片部2は不明であり、縦横比は、大片部が約11:3.5、中片部が約8:3、小片部1は約7:2.5で、小片部2は横方向は小片部1と同様の約2.5であるが、長さが不明であるから、縦横比も不明であり、全体は図面で表され、色彩は表されていない。

2.無効理由の要点
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由は、以下の5つである。
(1)本件登録意匠が、その意匠登録出願前に公然知られた意匠である、甲第2号証の2の意匠(請求人のいう「公知意匠1」以下「甲2の2意匠」という。別紙第2参照。)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するので、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由1」という。)。
(2)本件登録意匠が、その意匠登録出願前に公然知られた意匠である、甲第2号証の3の意匠(請求人のいう「公知意匠2」。以下「甲2の3意匠」という。別紙第3参照。)に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するので、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由2」という。)。
(3)本件登録意匠が、その意匠登録出願前に公然知られた意匠である、甲第2号証の4の意匠(請求人のいう「公知意匠3」。以下「甲2の4意匠」という。別紙第4参照。)と類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するので、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由3」という。)。
(4)本件登録意匠が、その意匠登録出願前に公然知られた意匠である、甲第2号証の7の意匠(請求人のいう「公知意匠4」。以下「甲2の7意匠」という。別紙第5参照。)と類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するので、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由4」という。)。
(5)本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に、日本国内又は外国において公然知られた意匠である、甲2の2意匠、甲2の3意匠、甲2の4意匠、及び甲2の7意匠(以下、「甲2の2意匠ないし甲2の4意匠及び甲2の7意匠」という。)に基づいて、本件登録意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について容易に創作することができたものであり、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである(以下、この無効理由を「無効理由5」という。)。

3.無効理由の判断
1 甲2号証の5及び甲2号証の8について
甲2号証の5及び甲2号証の8は、それぞれ、甲2号証の5は、甲2の2意匠ないし甲2の4意匠(写真(写し))を、甲2号証の8は甲2の7意匠(写真(写し))の形態を特定する図面(及びその図面の元とした写真)として、審判請求書に添付されたものであって、審判請求書の主張の全趣旨及び証拠説明書の記載によれば、本件登録意匠出願(平成28年8月29日)前に公然知られた意匠として示された甲2の2意匠ないし甲2の4意匠及び甲2の7意匠(以下「各公知意匠」ともいう。)の各々の全体の六面図、装飾体の六面図及び枠体の六面図を表したものであって、証拠説明書によれば、その作成年月日は、甲2号証の8は平成30年4月12日、甲2号証の5の図面は平成30年7月31日、写真の印刷日(作成日)は平成30年9月14日(撮影日平成22年10月1日)である。
請求人提出の口頭陳述要領書によれば、前記第2の3.1(1-1)ないし(1-3)のとおりであって、甲2の2意匠ないし甲2の4意匠及び甲2の7意匠である「umbel」及び「LUCIS」(24エレメント)の設計は3D CAD上で行われ、その現物の作成にかかる3Dデータは、公知になった各公知意匠より前に作成されており、後日であっても、その3Dデータの作成日の時点で作成できる2次元図面と同一の図面を作成することが可能であるから、本件登録意匠の出願後に作成した甲2号証の5及び甲2号証の8の図面は、形態を特定する証拠として認められるべきである旨述べられた。
しかしながら、製品の設計が3D CAD上で行われ、その製品の公開以前に3Dデータが存在することは、製品の製作課程における今日の常識に照らしてうなずけるものであるとしても、請求人も認めているようにアタリ線の削除などを行って作成された図面は当該3Dデータと同一の意匠ともいえず、その3Dデータも、本来公にする性質のものではないから、本件登録意匠の出願前に公然知られた意匠となったものではない。そして、その3Dデータを元に作成された製品と図面は、元を同じくする関係であったとしても、同一の意匠ではないし、一方が公然知られたからといって、当然に他方が同じ時点に公然知られたものとなるものではない。また、当該図面は、製品番号などを介して製品の形態を説明する図として公開されたものでもない。
そうすると、甲2号証の5及び甲2号証の8の図面は、本件無効審判請求に際して新たに、各公知意匠の形態を明確にすることを意図して作成されたものと認められるが、構造等を説明した参考図面として認め得るとしても、公開時点における各公知意匠の形態を表した図面と認めることは困難であるといわざるをえず、各公知意匠の公開時に、当該図面によって認定可能な形態がそのまま各公知意匠の形態として公然知られていたかどうか不明であって、本件登録意匠の出願前に公然知られた意匠である各公知意匠に現された形態の認定を本件登録意匠の出願後の当該図面から行うことはできないから、甲2号証の5及び甲2号証の8の図面を各公知意匠の形態の認定の基礎とすることはできない。
なお、甲2号証の5に添付の写真(写し)については、請求人記載の撮影日は本件登録意匠出願前の平成22年10月1日であるが、撮影日を証するものは甲第47号証の「陳述書」しかなく、かつ「銀座目利き百貨街」に展示された「umbel」そのものを被写体とした写真」としているから、甲2の2意匠は、甲2号証の2の写真によって認定すれば足り、これに加えて甲2号証の5に添付の写真に基づいて認定することは特に要さない。
以下、甲2の2意匠ないし甲2の4意匠及び甲2の7意匠は、本件登録意匠の向きと合わせて認定を行う(甲2の2意匠ないし甲2の4意匠、及び甲2の7意匠の装飾体の各片部の認定においても先端の方向を本件登録意匠の図面の各片部の向きに合わせて認定する。)。

2 無効理由1について
本件登録意匠が、甲2の2意匠と類似する意匠であるか否かについて検討する。
本件登録意匠については、前記1.に記載のとおりである。
(1)甲2の2意匠
甲2の2意匠は、本件登録意匠出願前の平成22年(2010年)9月9日から14日まで、松屋銀座店にて開催された「銀座目利き百貨街」のブース「細江振舞道」で展示された照明器具「umbel」の「照明用笠」の意匠であって、甲2の2意匠は、撮影された写真の背景に「細江振舞道」との垂れ幕が見て取れ、甲第3号証の1及び3(株式会社miura-ori lab代表取締役社長 阿彦 由美氏による「陳述書」(「フラワーシェード(umbel)」と記載。))(別紙第6及び別紙第7参照)及び甲5号証(2010年9月8日発行のカタログ「銀座目利き百貨街」の写し)(別紙第8参照)の第4頁に「細江振舞道」と題する記事と第8頁の奥付2行目の「会期 2010年9月9日-14日」と3行目の「会場 松屋銀座」との記載から、本件登録意匠の出願前の平成22年(2010年)9月9日から14日まで松屋銀座店にて同展が開催され、遅くとも平成22年9月14日には同展示により公然知られた意匠であったと認められる。
甲第2号証の2の第2頁写真(写し)の左上に現れた照明用笠に基づいて認定する。
ア.物品
甲2の2意匠の意匠に係る物品は、「照明用笠」の意匠である。
イ.形態
甲2の2意匠の形態は、以下のとおりである。(別紙第20参照)
基本的構成態様は、
a1 甲2の2意匠は第2頁の左上に現れた写真は左端が写っていないものであるが、照明器具の当業者知識に照らせば、全体は、くす玉状の略球形のものと認められ、複数の略多弁花状の装飾体から成るものと認められる。
具体的構成態様は、
b1 (フレームに)装飾体を複数個、全面に、全方向、ほぼ等間隔に配して形成し、
c1 1つの装飾体の形態は、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成して、装飾体の平面視で中心部に対して周方向に放射状に、略剣状の大片部を等分割位置に6つ、大片部の間に略剣状の小片部を等分割位置に6つ配し、軸部の形態は不明であるが、各片部は軸部でまとまって成り、
d1 各片部の形態は、照明が点灯された状態の写真であるので、細部は不鮮明であって、
d1-1 大片部について
大片部は、(第2頁の左上の照明用笠の正面右上寄り中央の装飾体のほぼ真下向きの大片部に基づけば)折り返し部のない切っ先状の先端から長手方向半ばにかけて中央を山折り状とし、その中央の山折り部端部にV字角部を接する左側面視V字状の山折り部を設けて略Yの字状の山折り部とし、そこから中心方向に向けて、略Y字状の谷折り部、山折り部を交互に設けて、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となって、(前記の装飾体に加え、第2頁の左上の照明用笠の左下寄りの装飾体も参照して観察すると)中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している。
d1-2 小片部について
小片部は、(前記の装飾体のほぼ真下向きの大片部の左隣の小片部に基づけば)切っ先状の先端から中心方向に向けて、略Y字状の山折り部を設けてそこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となり、(前記の装飾体に加え、第2頁の左上の照明用笠の左下寄りの装飾体も参照して観察すると)中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している。
中心部は、それら大片部及び小片部の略紡錘形状の山折り状凸部が密集して、周方向でほぼ同位置に連なり、菊花状を呈している。
e1 各片部の平面視の長手方向の中心から先端までの長さ比は(前記の装飾体のほぼ真下向きの大片部及び左隣の小片部に基づけば)大片部:小片部で約11:7であり、縦横比は、大片部が約11:3.5、小片部は約7:2であって、全体は、概ね白色である。
(2)本件登録意匠と甲2の2意匠の対比
ア.物品について
本件登録意匠は「シャンデリア用笠」であって、甲2の2意匠は「照明用笠」であって、表記は相違するが、共に照明器具の笠であって、本件登録意匠と甲2の2意匠(以下「両意匠1」という。)の意匠に係る物品は、同一である。
イ.形態について
(ア)共通点
具体的構成態様について
(α1-1)(フレームに)装飾体を、ほぼ等間隔に配して、1つの装飾体の形態は、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成して成り、(矛先状も剣状も共に先の尖った形態であるから)装飾体の平面視で中心部から先端の尖った大片部が等分割位置に放射状に6つ、大片部の間に先端の尖った小片部が設けられ、各片部は軸部でまとまっている点、
(α1-2)大片部を斜め上向きに形成している点、
(α1-3)両意匠1の大片部と小片部(小片部1)の平面視で、中心部から先端までの長さ比が約11:7であって、大片部の縦横比が約11:3.5である点。
(イ)相違点
基本的態様について
(β1-1)本件登録意匠の全体は、略半球形状でフレームの大部分に装飾体を配したものであるのに対し、甲2の2意匠はくす玉状の略球形で全面に装飾体を配したものである点、
具体的構成態様について
(β1-2)フレームについて、本件登録意匠が球体の直径の約5分の1を水平に切り取って形成したような略逆ジオデシック・ドーム状の桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、その差し込み部に装飾体を底面側寄りの全方向、ほぼ等間隔計41個配したものであるのに対し、甲2の2意匠は、前面が複数個の装飾体に覆われて、特段の余地部はなく、フレームの形状の全容は不明である点、
(β1-3)装飾体の構成について、本件登録意匠が軸部を中心に、小片部2の上側に中心部寄りの2辺の長さが短く先端の2辺が長い変形菱形状の先端寄り両縁に細長い三角形状のイカヒレ状張り出し片を備えた略イカ形状の中片部を等分割位置に3つ、中心から放射状に配して成るのに対し、甲2の2意匠は、軸部の形態は不明で、中片部はないものである点、
(β1-4)各片部の形態について、
(β1-4-1)大片部について
本件登録意匠の大片部は、左側面視、略菱形の矛先状で、中央長手方向の先端から半ばにかけて谷折り部を設け、長手方向先端から半ばにかけての両縁にある扁平三角形状の張り出し片部を山折り状に下方向に折り返し、長手方向半ばにV字角部を先端に向けた平面視略V字状のごく浅い谷折り部を設け、その内方にはV字角部を同じくする細幅の略V字状部及び中央直線状部を設けているのに対し、甲2の2意匠の大片部は、略剣状で折り返し部がないから張り出し片部もない切っ先状の先端から長手方向の半ばにかけて略Y字状の山折り部とし、そこから中心方向に向けて、略Y字状の谷折り部、山折り部を交互に設けて横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り凸部のみが観察できる態様となっており、
(β1-4-2)小片部について
本件登録意匠の小片部は、3つの小片部1と、3つの小片部2からなり、小片部1は、左側面視で、四辺の長さのほぼ等しい略菱形の矛先状で、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、V字角部を中心方向に向けた略倒扁平V字状の山折り部と略V字状の山折り部を設け、先端をほぼ水平方向に向けて形成しており、小片部2は矛先状で、長手方向先端は鋭角状で、短手方向の左右角は鈍角であると認められ、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、左側面視で中片部越しに見える短手方向角部は、小片部1より先端方向に位置し、先端を斜め下向きに形成しているのに対し、甲2の2意匠の小片部は、6つほぼ同形同大で略剣状の小片部は切っ先状の先端から中心方向に向けて、略Y字状の山折り部を設けて、そこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となって、中心寄りから先端に掛けてやや上向きの斜状に形成している点、
(β1-5)中心部について、本件登録意匠は、左側面視で、中片部と小片部1の中心寄り端部(中片部の略イカ形状の幅広の中心寄り端部と小片部1の略菱形状の細幅の中心寄り端部)が交互に付き合わさるように並んでおり、大片部の中心寄りはそれらに覆われて観察できないのに対し、甲2の2意匠は、大片部及び小片部の略紡錘形状の山折り状凸部が密集して周方向でほぼ同位置に連なって菊花状を呈している点、
(β1-6)小片部の構成比について、本件登録意匠は、平面視で縦横比は、小片部1は7:2.5、小片部2は不明であるのに対し、甲2の2意匠は、小片部は7:2である点、
(β1-7)色彩について、本件登録意匠は、図面で表されたものであるから、色彩の表されていないものであるのに対して、甲2の2意匠は、全体は、概ね白色である点。
(3)本件登録意匠と甲2の2意匠が類似するか否かの判断
両意匠1の意匠に係る物品は、同一である。
両意匠1の形態については、以下のとおり評価する。
(あ)共通点の評価
具体的構成態様としてあげた共通点(α1-1)は、照明用笠体の物品分野における、多弁花状の装飾体について、装飾体を複数個、ほぼ等間隔に配したもの、先端の尖った片部を用いたもの、片部をほぼ等分割位置に6つとしたもの、大小の片部を放射状に設けたもの、軸部でまとまったものもごく普通に見られる形態であり、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成した点については、両意匠1に共通する特徴的形態であるが、後記、相違点(β1-3)の具体的態様の相違もある中で、両意匠1の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまり、共通点(α1-2)及び共通点(α1-3)については、大片部の向き及び装飾体の部分的構成比に関わるところであるが、照明用笠体の物品分野において、片部が上向きであるものも、大片部と小片部の長さ比が約11:7であるものも、片部の縦横比が約11:3.5であるものも照明用笠体の物品分野において、普通に見受けられるから両意匠1の類否判断に与える影響は小さい。
よって、共通点(α1-1)は類否判断に与える影響は一定程度にとどまり、共通点(α1-2)及び共通点(α1-3)は類否判断に与える影響は、いずれも小さいものであって、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠1の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(い)相違点の評価
これに対して、両意匠1の各相違点を見ると、基本的構成態様の相違点(β1-1)は、本件登録意匠の全体は、略半球形状でフレームの大部分に装飾体を配したものであるのに対し、甲2の2意匠はくす玉状の略球形で全面に装飾体を配したものである点であって、略半球状及び略球形状の笠は照明用笠の物品分野において、どちらも見受けられる形態ではあるが、略球形状か略半球状かは、一目で看取できる基本的構成態様の相違であって、この相違点が両意匠1の類否判断に与える影響は大きく、相違点(β1-2)は具体的構成態様の相違であって、本件登録意匠が、略逆ジオデシック・ドーム状の桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、装飾体を底面側寄りに配したものであるのに対し、甲2の2意匠がフレームの全容が観察できず、全体的に余地部なく装飾体が配された点は、視覚的に与える印象が大きく異なり、相違点(β1-1)の印象をさらに強め、両意匠1の類否判断に与える影響はきわめて大きい。本件登録意匠に係る物品である「シャンデリア用笠」は、装飾性の強い照明用の笠体であって、そのため需要者は、照明全体を覆う笠体全体及びその構成要素である装飾体の態様に注目するところ、相違点(β1-3)については、具体的構成態様である中片部の有無の相違であるが、中片部は本件登録意匠の装飾体の各片部の中でも上側に位置し、装飾体を上方向から見たときに、中心部の大きな構成要素であり、かつ、中片部は、中心部寄りの2辺の長さが短く先端の2辺が長い変形菱形状の先端寄り両縁に張り出し片を備えた略イカ形状で、本件登録意匠の他の片部(小片部1、大片部)のような略菱形状ではない形態でもあるから目に付き、その有無に係る相違点が両意匠1の類否判断へ与える影響は大きい。次に、相違点(β1-4)は、各片部の形態についての相違であって、本件登録意匠の小片部は、3つの小片部1と、3つの小片部2からなり、小片部1は、左側面視で、四辺の長さのほぼ等しい略菱形の矛先状であって、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、V字角部を中心方向に向けた略倒扁平V字状山折り部を設け、先端をほぼ水平方向に形成し、小片部2は、矛先状で、長手方向先端は鋭角状で、短手方向角部は、小片部1より先端方向に位置し、鈍角であると認められ、長手方向中央を先端から山折り状とし、先端を斜め下向きに形成しているのに対し、甲2の2意匠の小片部は、6つがほぼ同形同大で、切っ先状の先端から中心方向に向けて、略Y字状の山折り部を設けて、そこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様で、中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している点は、装飾体の小片部が2種の形態からなるものとほぼ同じ形態からなるもので異なり、向き及び具体的形態も異なるから、両意匠1は、構成から別異のものであるとの印象を与え、大片部についても、本件登録意匠の大片部は中央切っ先状の先端から半ばにかけて谷折り部を形成し、長手方向先端から半ばにかけての両縁にある扁平三角形状の張り出し片部を山折り状に下方向に折り返し、左側面視で、長手方向半ばにV字角部を先端に向けた平面視略V字状のごく浅い谷折り部を設け、その内方にはV字角部を同じくする細幅の略V字状部を設けているのに対し、甲2の2意匠は、折り返し部のない切っ先状の先端から長手方向の半ばにかけて略Y字状の山折り部とし、中心方向に向けて、略Y字状の谷折り部、山折り部を交互に設けて横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り凸部のみが観察できる態様となっている点は、先端の扁平三角形状の張り出し片部、長手方向中央の谷折り部から生じる細長い凹部及び先端へ先端を向いた略V字状の谷折り部が長手方向の流れを強調し、シャープな印象を与える本件登録意匠と、先端のY字状山折り部から、谷折り、山折りをくり返し、ほぼ同形の山折りの連なりが八重花のような華やかな印象を与える甲2の2意匠の相違として、需要者に両意匠1の美感を異にするとの印象を喚起し、とりわけ、装飾体において大片部は最も長く大きな割合を占め、笠体全体で観察する場合も、先端が最も外周に突き出して見えるものであるから、本件登録意匠の大片部の先端の形態が、長手方向中央の谷折り部から生じる細長い凹部両縁の山折り部外方に扁平三角形状の張り出し片部を備えたものであるのに対し、甲2の2意匠の大片部の先端は折り返し部がなく張り出し片部もない略Y字状の山折り状である相違は、両意匠1全体の視覚的印象に大きく関わり、この相違点が類否判断へ与える影響は極めて大きい。
また、相違点(β1-5)は装飾体の中心部についてであって、本件登録意匠は、左側面視で、中片部と小片部1の中心寄り端部が交互に付き合わさるように並び、中片部と小片部1のそれぞれ異なる形態の中心寄り端部の交互の連なりとして看取されるのに対し、甲2の2意匠は、大片部及び小片部の略紡錘形状の山折り状凸部が密集して周方向でほぼ同位置に連なり、菊花状を呈している点については、照明用笠の構成要素の装飾体の中心部については、需要者も十分注意を払うところであるから、前記、相違点(β1-4)の印象を強めるものであって、この相違点の類否判断へ与える影響は大きい。相違点(β1-6)は、両意匠1の小片部の具体的態様の相違に関わり、本件登録意匠は、左側面視で縦横比は、小片部1は7:2.5、小片部2は不明であるのに対し、甲2の2意匠は、小片部は7:2である点であって、それぞれ小片部は7:2?2.5と、さほど大きな長さの差ではなく、類否判断に与える影響は小さい。そして、相違点(β1-7)は、色彩の有無の相違であって、本件登録意匠は出願に際し図で表したもので、甲2の2意匠は、実製品を撮影した写真であるが、概ね白色であるものは、広く照明具の物品分野において、よく見受けられる形態であって、この相違点が類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、相違点(β1-6)及び相違点(β1-7)は両意匠1の類否判断に与える影響は小さく、相違点(β1-1)、相違点(β1-3)及び相違点(β1-5)は類否判断に与える影響が大きく、相違点(β1-2)及び相違点(β1-4)は類否判断に与える影響が極めて大きいものであるから、それら相違点(β1-1)ないし相違点(β1-7)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、相違点が両意匠1の類否判断に与える影響は大きく、共通点は両意匠1の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点は、共通点を凌駕して、両意匠1を別異のものと印象づけるものであるから本件登録意匠が甲2の2意匠に類似するということはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件登録意匠と甲2の2意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、両意匠1の相違点が共通点を凌駕し、両意匠1は類似するものではない。
すなわち、本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に公然知られた甲2の1意匠に類似する意匠ではなく、したがって、無効理由1によって、本件登録意匠の登録が、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とされるべき理由はない。

3 無効理由2について
本件登録意匠が、甲2の3意匠と類似する意匠であるか否かについて検討する。
本件登録意匠については、前記1.に記載のとおりである。
(1)甲2の3意匠
甲2の3意匠は、本件登録意匠出願前の平成24年6月23日から10月31日まで、店舗「POLA THE BEAUTY GINZA」のショーウィンドウに展示された照明器具「umbel」の「照明用笠」の意匠であって、
甲2の3意匠は、第3頁ないし第5頁に「POLA」と表示のある建物内のショーウィンドウに展示されている様子(写真)が見て取れ、甲第11号証の1及び甲第11号証の2(株式会社ポーラ店舗開発部 店舗開発チーム マネージャー浪川 恵美子氏の「陳述書」(文中「フラワーシェードランプ」と記載))(別紙第9及び別紙第10参照)により、本件登録意匠の出願前の、遅くとも平成24年10月31日には上記展示により公然知られた意匠であったと認められる。
甲第2号証の3の第12頁写真(写し)の上から1つ目に現れた照明用笠に基づいて認定する。
ア.物品
甲2の3意匠の意匠に係る物品は、「照明用笠」の意匠である。
イ.形態
甲2の3意匠の形態は、以下のとおりである。(別紙第21参照)
基本的構成態様は、
a2 甲2の3意匠の現れた写真は一方向から撮影されたものであるが、照明器具の当業者知識に照らせば、全体は、くす玉状の略球形のものと認められ、複数個の装飾体から成るものと認められる。
具体的構成態様は、
b2 (フレームに)装飾体を複数個、全面に、全方向、ほぼ等間隔に配して形成し、
c2 1つの装飾体の形態は、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成して、装飾体の左側面視で中心部に対して、周方向に放射状に略剣状の大片部を等分割位置に6つ、大片部の間に略剣状の小片部を等分割位置に6つ放射状に配し、軸部の形態は不明であるが、各片部は軸部でまとまって成り、
d2 各片部の形態は、照明が点灯された状態の写真であるので、細部は不鮮明であって、
d2-1 大片部について
大片部は、折り返し部のない切っ先状の先端から長手方向の半ばにかけての中央を山折り状とし、(第12頁の上から1つ目の照明用笠の左上寄り中央の装飾体のやや右上向きの大片部に基づけば)、その中央の山折り部端部にV字角部を接する略V字状の山折り部を設けて、略Yの字状の山折り部とし、そこから中心方向に向けて、略Y字状の谷折り部、山折り部を交互に設け、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となって、前記の装飾体に加え、第12頁の上から1つめの照明用笠の左寄りの装飾体も参照して観察すると)中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している。
d2-2 小片部について
小片部は、(前記の装飾体のやや右上向きの大片部左隣のほぼ真上向きの小片部に基づけば)先端は切っ先状で、長手方向の中央の折り部の有無は不明であるが、長手方向半ばに、略V字状の山折り部は確認でき、そこから中心に向けて、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となり、(前記の装飾体に加え第12頁の上から1つめの照明用笠の左寄りの装飾体も参照して観察すると)中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している。
中心部は、それら大片部及び小片部の略紡錘形状の山折り状凸部が密集して、周方向でほぼ同位置に連なり、菊花状を呈している。
e2 各片部の左側面視の長手方向の中心から先端までの長さ比は(前記の装飾体のほぼ真上向きの小片部に基づけば)大片部:小片部で約11:7であり、縦横比は、大片部が約11:3、小片部は約7:2.5であって、全体は、概ね白色である。
(2)本件登録意匠と甲2の3意匠の対比
ア.物品について
本件登録意匠は「シャンデリア用笠」であって、甲2の3意匠は「照明用笠」であって、表記は相違するが、共に照明器具の笠であって、本件登録意匠と甲2の3意匠(以下「両意匠2」という。)の意匠に係る物品は、同一である。
イ.形態について
(ア)共通点
具体的構成態様について
(α2-1)(フレームに)装飾体を、ほぼ等間隔に配して、1つの装飾体の形態は、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成して成り、(矛先状も剣状も共に先の尖った形態であるから)装飾体の左側面視で中心部から先端の尖った大片部が等分割位置に放射状に6つ、大片部の間に先端の尖った小片部が設けられ、各片部は軸部でまとまっている点、
(α2-2)大片部を斜め上向きに形成している点、
(α2-3)両意匠2の大片部と小片部(小片部1)の左側面視で、中心部から先端までの長さ比が約11:7であって小片部の縦横比がは約7:2.5である点。
(イ)相違点
基本的態様について
(β2-1)本件登録意匠の全体は、略半球形状でフレームの大部分に装飾体を配したものであるのに対し、甲2の3意匠はくす玉状の略球形で全面に装飾体を配したものである点、
具体的構成態様について
(β2-2)フレームについて、本件登録意匠が球体の直径の約5分の1を水平に切り取って形成したような略逆ジオデシック・ドーム状の桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、その差し込み部に装飾体を底面側寄りの全方向、ほぼ等間隔計41個配したものであるのに対し、甲2の3意匠は、前面が複数個の装飾体に覆われて、特段の余地部はなく、フレームの形状の全容は不明である点、
(β2-3)装飾体の構成について、本件登録意匠が軸部を中心に、小片部2の上側に中心部寄りの2辺の長さが短く先端の2辺が長い変形菱形状の先端寄り両縁に張り出し片を備えた略イカ形状の中片部を3つ、中心から放射状に配して成るのに対し、甲2の3意匠は、軸部の形態は不明で、中片部はないものである点、
(β2-4)各片部の形態について、
(β2-4-1)大片部について
本件登録意匠の大片部は、左側面視、略菱形の矛先状で、中央長手方向の先端から半ばにかけて谷折り部を設け、長手方向先端から半ばにかけての両縁にある扁平三角形状の張り出し片部を山折り状に下方向に折り返し、長手方向半ばにV字角部を先端に向けた左側面視略V字状のごく浅い谷折り部を設け、その内方にはV字角部を同じくする細幅の略V字状部及び中央直線状部を設けているのに対し、甲2の3意匠の大片部は、左側面視で略剣状で折り返し部がないから張り出し片部もない切っ先状の先端から長手方向半ばにかけて略Y字状の山折り部とし、そこから中心に向けて、略Y字状の谷折り部、山折り部を交互に設け、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘状の山折り状凸部のみが観察できる態様となっており、
(β2-4-2)小片部について
本件登録意匠の小片部は、3つの小片部1と、3つの小片部2からなり、小片部1は、左側面視で、四辺の長さのほぼ等しい略菱形の矛先状であって、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、V字角部を中心方向に向けた略倒扁平V字状山折り部を設け、先端をほぼ水平方向に形成し、小片部2は、矛先状で、長手方向先端は鋭角状で、短手方向角部は、小片部1より先端方向に位置し、鈍角であると認められ、長手方向中央を先端から山折り状とし、先端を斜め下向きに形成しているのに対し、甲2の3意匠の小片部は、6つほぼ同形同大で略剣状の小片部は先端は切っ先状で、長手方向の中央の折り部の有無は不明であるが、長手方向半ばに、略V字状の山折り部は確認でき、そこから中心に向けて、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となって中心寄りから先端に掛けてやや上向きの斜状に形成している点、
(β2-5)中心部について、本件登録意匠は、左側面視で、中片部と小片部1の中心寄り端部(中片部の略イカ形状の幅広の中心寄り端部と小片部1の略菱形状菱形状の細幅軸の寄り端部)が交互に付き合わさって並び、大片部の中心寄りはそれらに覆われて観察できないのに対し、甲2の3意匠は、大片部及び小片部の幅狭の略紡錘形状の山折り状凸部が密集して周方向でほぼ同位置に連なって菊花状を呈している点、
(β2-6)大片部の構成比について、本件登録意匠は、左側面視で縦横比は大片部が11:3.5であるのに対し、甲2の3意匠は、大片部が11:3である点、
(β2-7)色彩について、本件登録意匠は、図面で表されたものであるから、色彩の表されていないものであるのに対して、甲2の3意匠は、全体は、概ね白色である点。
(3)本件登録意匠と甲2の3意匠が類似するか否かの判断
両意匠2の意匠に係る物品は、同一である。
両意匠2の形態については、以下のとおり評価する。
(あ)共通点の評価
具体的構成態様としてあげた共通点(α2-1)は、照明用笠体の物品分野における、多弁花状の装飾体について、装飾体を複数個、ほぼ等間隔に配したもの、先端の尖った片部を用いたもの、片部を6つとしたもの、大小の片部を放射状に設けたもの、軸部でまとまったものもごく普通に見られる形態であり、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成した点については、両意匠2に共通する特徴的形態であるが、後記、相違点(β2-3)の具体的態様の相違もある中で、両意匠2の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまり、共通点(α2-2)及び共通点(α2-3)については、大片部の向き及び装飾体の部分的構成比に関わるところであるが、照明用笠体の物品分野において、片部が上向きであるものも片部が約7:2.5であるものも、大片部と小片部の長さ比が約11:7であるものも、照明用笠体の物品分野において、普通に見受けられるから両意匠2の類否判断に与える影響は小さい。
よって、共通点(α2-1)は類否判断に与える影響は一定程度にとどまり、共通点(α2-2)及び共通点(α2-3)は類否判断に与える影響は、いずれも小さいものであって、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠2の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(い)相違点の評価
これに対して、両意匠2の各相違点を見ると、基本的構成態様の相違点(β2-1)は、本件登録意匠の全体は、略半球形状でフレームの大部分に装飾体を配したものであるのに対し、甲2の3意匠はくす玉状の略球形で全面に装飾体を配したものである点であって、略半球状及び略球形状の笠は照明用笠の物品分野において、どちらも見受けられる形態ではあるが、略球形状か略半球状かは、一目で看取できる基本的構成態様の相違であって、この相違点が両意匠2の類否判断に与える影響は大きく、相違点(β2-2)は具体的構成態様の相違であって、本件登録意匠が、略逆ジオデシック・ドーム状の桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、装飾体を底面側寄りに配したものであるのに対し、甲2の3意匠がフレームの全容が観察できず、全体的に余地部なく装飾体が配された点は、視覚的に与える印象が大きく異なり、相違点(β2-1)の印象をさらに強め、両意匠2の類否判断に与える影響はきわめて大きい。本件登録意匠に係る物品である「シャンデリア用笠」は、装飾性の強い照明用の笠体であって、そのため需要者は、照明全体を覆う笠体全体及びその構成要素である装飾体の態様に注目するところ、相違点(β2-3)は、具体的構成態様である中片部の有無の相違であるが、中片部は本件登録意匠の装飾体の各片部の中でも上側に位置し、装飾体を上方向から見たときに、中心部の大きな構成要素であり、かつ、中片部は、中心部寄りの2辺の長さが短く先端の2辺が長い変形菱形状の先端寄り両縁に張り出し片を備えた略イカ形状で、本件登録意匠の他の片部(小片部1、大片部)のような略菱形状ではない形態でもあるから目に付き、その有無に係る相違点が両意匠2の類否判断へ与える影響は大きい。次に、相違点(β2-4)は、各片部の形態についての相違であって、本件登録意匠の小片部は、3つの小片部1と、3つの小片部2からなり、小片部1は、左側面視で、四辺の長さのほぼ等しい略菱形の矛先状であって、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、V字角部を中心方向に向けた略倒扁平V字状山折り部を設け、先端をほぼ水平方向に形成し、小片部2は、矛先状で、長手方向先端は鋭角状で、短手方向角部は、小片部1より先端方向に位置し、鈍角であると認められ、長手方向中央を先端から山折り状とし、先端を斜め下向きに形成しているのに対し、甲2の3の意匠の小片部は、6つがほぼ同形同大で、先端は切っ先状で、長手方向の中央の折り部の有無は不明であるが、長手方向半ばに、略V字状の山折り部が確認でき、そこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となって中心方向中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している点は、装飾体の小片部が2種の形態からなるものとほぼ同じ形態からなるもので異なり、向き及び具体的形態も異なるから、両意匠2は、構成から別異のものであるとの印象を与え、大片部についても、本件登録意匠の大片部は中央長手方向の先端から半ばにかけて谷折り部を形成し、長手方向先端から半ばにかけての両縁にある扁平三角形状の張り出し片部を山折り状に下方向に折り返し、左側面視で、長手方向半ばにV字角部を先端に向けて、左側面視略倒V字状のごく浅い谷折り部を設け、その内方にはV字角部を同じくする細幅の略倒V字状部を設けているのに対し、甲2の3意匠は、折り返し部のない切っ先状の先端を略Y字状の山折り部とし、中心方向に向けて、略Y字状の谷折り部、山折り部を交互に設け、中心に行くに従い幅狭となって、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となっている点は、先端の扁平三角形状の張り出し片部、長手方向中央の谷折り部から生じる細長い凹部及び先端へ先端の向いた略V字状の谷折り部が長手方向の流れを強調し、シャープな印象を与える本件登録意匠と、先端のY字状山折り部から始まり、谷折り、山折りをくり返してほぼ同形の山折りの連なりが八重花のような華やかな印象を与える甲2の3意匠の相違として、需要者に両意匠2の美感を異にするとの印象を喚起し、とりわけ、装飾体において大片部は最も長く大きな割合を占め、笠体全体で観察する場合も、先端が最も外周に突き出して見えるものであるから、本件登録意匠の大片部の先端の形態が、長手方向中央の谷折り部から生じる細長い凹部両縁の山折り部外方に扁平三角形状の張り出し片部を備えたものであるのに対し、甲2の3意匠の大片部の先端は折り返し部がなく張り出し片部もない略Y字状の山折り状である相違は、両意匠2全体の視覚的印象に大きく関わり、この相違点が類否判断へ与える影響は極めて大きい。
また、相違点(β2-5)は装飾体の中心部についてであって、本件登録意匠は、左側面視で、中片部と小片部1の中心寄り端部が交互に付き合わさるように並び、中片部と小片部1のそれぞれ異なる形態の中心寄り端部の交互の連なりとして看取されるのに対し、甲2の3意匠は、大片部及び小片部の略紡錘形状の山折り状凸部が密集して周方向でほぼ同位置に連なり、菊花状を呈している点については、照明用笠の構成要素の装飾体の中心部については、需要者も十分注意を払うところであるから、前記、相違点(β2-4)の印象を強めるものであって、この相違点の類否判断へ与える影響は大きい。相違点(β2-6)は、両意匠2の各片部の具体的態様の相違に関わり、本件登録意匠は、左側面視で縦横比は、大片部が11:3.5であるのに対し、甲2の3意匠は、大片部が11:3である点であって、大片部は、11:3?3.5と、さほど大きな長さの差ではなく、類否判断に与える影響は小さい。そして、相違点(β2-7)は、色彩の有無の相違であって、本件登録意匠は出願に際し図で表したもので、甲2の3意匠は、実製品を撮影した写真であるが、概ね白色であるものは、広く照明具の物品分野において、よく見受けられる形態であって、この相違点が類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、相違点(β2-6)及び相違点(β2-7)は両意匠2の類否判断に与える影響は小さく、相違点(β2-1)、相違点(β2-3)及び相違点(β2-5)は類否判断に与える影響が大きく、相違点(β2-1)及び相違点(β2-4)は類否判断に与える影響が極めて大きいものであるから、それら相違点(β2-1)ないし相違点(β2-7)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、相違点が両意匠2の類否判断に与える影響は大きく、共通点は両意匠2の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点は、共通点を凌駕して、両意匠2を別異のものと印象づけるものであるから本件登録意匠が甲2の3意匠に類似するということはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件登録意匠と甲2の3意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、両意匠2の相違点が共通点を凌駕し、両意匠2は類似するものではない。
すなわち、本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に公然知られた甲2の3意匠に類似する意匠ではなく、したがって、無効理由2によって、本件登録意匠の登録が、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とされるべき理由はない。

4 無効理由3について
本件登録意匠が、甲2の4意匠と類似する意匠であるか否かについて検討する。
本件登録意匠については、前記1.に記載のとおりである。
(1)甲2の4意匠
甲2の4意匠は、本件登録意匠出願前の平成25年4月27日から平成29年3月まで、TBSハウジング渋谷内東急ホームズモデルハウスで展示された照明器具「umbel」の「照明用笠」の意匠であって、甲2の4意匠は、甲第3号証の1及び3(株式会社miura-ori lab代表取締役社長阿彦 由美氏による「陳述書」「フラワーシェード(umbel)」と記載。)(別紙第6及び別紙第7参照)及び甲19号証(平成30年5月18日出力の町田ひろ子アカデミー「AOYAMA Style」ウェブサイト抜粋「フラワーシェード」と記載。)(別紙第11参照)第2頁掲載の上段左右共に表された画像は背景その他からほぼ甲2の4意匠と同一のものと認められ、第3頁の8行目に「現在、モデルハウスは展示を終了しております。(2013/4?2017/3)」との記載から同展示は平成25年4月から平成29年3月まで行われたと認められる。なお、平成29年3月は本件登録意匠出願日の平成29年3月7日と同年同月であるが、前記より展示開始が約4年前の平成25年4月と認められるから、遅くとも甲2の4意匠は本件登録意匠出願日前に同展示により公然知られた意匠であったと認められる。
甲第2号証の4の第2頁の写真(写し)の下から1つめに現れた照明用笠に基づいて認定する。
ア.物品
甲2の4意匠の意匠に係る物品は、「照明用笠」の意匠である。
イ.形態
甲2の4意匠の形態は、以下のとおりである。(別紙第22参照)
基本的構成態様は、
a3 甲2の4意匠の現れた写真は一方向から撮影されたものであるが、照明器具の当業者知識に照らせば、全体は、くす玉状の略球形のものと認められ、複数個の略多弁花状の装飾体から成るものと認められる。
具体的構成態様は、
b3 (フレームに)装飾体を複数個、全面に、全方向、ほぼ等間隔に配して形成し、
c3 1つの装飾体の形態は、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成して、装飾体の左側面視で中心部に対して、周方向に放射状に略剣状の大片部を等分割位置に6つ、大片部の間に略剣状の小片部を等分割位置に6つ放射状に配し、軸部の形態は不明であるが、各片部は軸部でまとまって成り、
d3 各片部の形態は、照明が点灯された状態の写真であるので、細部は不鮮明であって、
d3-1 大片部について
大片部は、(第2頁下から1つ目の照明用笠の中央の装飾体のほぼ真下向きの大片部に基づけば)先端は折り返し部のない切っ先状で、長手方向の中央の折り部の有無は不明であるが、長手方向半ばに左側面視略V字状の山折り部を設けていると認められ、中心方向に向けて、間隔をおいて、略V字状の谷折り部、山折り部を交互に設け、中心にいくに従い幅狭となり、細幅のV字状の凹部と略棒形状の山折り凸部のみが観察できる態様となって、(前記の装飾体に加え、第2頁の下から1つ目の照明用笠の左上の装飾体も参照して観察すると)中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している。
d3-2 小片部について
小片部は、(前記装飾体のほぼ真下向きの大片部の左隣の小片部に基づけば)先端は切っ先状で、長手方向の中央の折り部の有無は不明であるが、長手方向半ばに略V字状の山折り部は確認でき、そこから中心に向けて、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となり(前記の装飾体に加え、第2頁の下から1つ目の照明用笠の左上の装飾体も参照して観察すると)中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している。
中心部は、それら大片部及び小片部の略棒形状の山折り状凸部が密集して、周方向でほぼ同位置に連なり、菊花状を呈している。
e3 各片部の左側面視の長手方向の中心から先端までの長さ比は(前記、装飾体のほぼ真下向きの大片部及び右隣(左のものは端部が重なって計測できない)の小片部に基づけば)大片部:小片部で約11:7であり、縦横比は、大片部が約11:3.5、小片部は約7:2であって、全体は、概ね白色である。
(2)本件登録意匠と甲2の4意匠の対比
ア.物品について
本件登録意匠は「シャンデリア用笠」であって、甲2の4意匠は「照明用笠」であって、表記は相違するが、共に照明器具の笠であって、本件登録意匠と甲2の4意匠(以下「両意匠3」という。)の意匠に係る物品は、同一である。
イ.形態について
(ア)共通点
具体的構成態様について
(α3-1)(フレームに)装飾体を、ほぼ等間隔に配して、1つの装飾体の形態は、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成して成り、(矛先状も剣状も共に先の尖った形態であるから)装飾体の左側面視で中心部から先端の尖った大片部が等分割位置に放射状に6つ、大片部の間に先端の尖った小片部が設けられ、各片部は軸部でまとまっている点、
(α3-2)大片部を斜め上向きに形成している点、
(α3-3)両意匠3の大片部と小片部(小片部1)の左側面視で、中心部から先端までの長さ比が約11:7であって、縦横比は、大片部が約11:3.5である点。
(イ)相違点
基本的態様について
(β3-1)本件登録意匠の全体は、略半球形状でフレームの大部分に装飾体を配したものであるのに対し、甲2の4意匠はくす玉状の略球形で全面に装飾体を配したものである点、
具体的構成態様について
(β3-2)フレームについて、本件登録意匠が球体の直径の約5分の1を水平に切り取って形成したような略逆ジオデシック・ドーム状桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、その差し込み部に装飾体を底面側寄りの全方向、ほぼ等間隔計41個配したものであるのに対し、甲2の4意匠は、全面が複数個の装飾体に覆われて、特段の余地部はなく、フレームの形状の全容は不明である点、
(β3-3)装飾体の構成について、本件登録意匠が軸部を中心に、小片部2の上側に中心部寄りの2辺の長さが短く先端の2辺が長い変形菱形状の先端寄り両縁に細長い三角形状のイカヒレ状張り出し片を備えた略イカ形状の中片部を3つ、中心から放射状に配して成るのに対し、甲2の4意匠は、軸部の形態は不明で、中片部はないものである点、
(β3-4)各片部の形態について、
(β3-4-1)大片部について
本件登録意匠の大片部は、左側面視、略菱形の矛先状で、中央長手方向の先端から半ばにかけて谷折り部を設け、長手方向先端から半ばにかけての両縁にある扁平三角形状の張り出し片部を山折り状に下方向に折り返し、長手方向半ばにV字角部を先端に向けて、左側面視略V字状のごく浅い谷折り部を設け、その内方にはV字角部を同じくする細幅の略V字状部及び中央直線状部を設けているのに対し、甲2の4意匠の大片部は、略剣状で、先端は、折り返し部がないから張り出し片部もない切っ先状で、長手方向の中央の折り部の有無は不明であるが、長手方向の半ばに左側面視略V字状の山折り部を設けていると認められ、中心に向けて、略V字状の谷折り部、山折り部を交互に設け、そこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、V字状の凹部と略棒形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となっており、
(β3-4-2)小片部について
本件登録意匠の小片部は、3つの小片部1と、3つの小片部2からなり、小片部1は、左側面視で、四辺の長さのほぼ等しい略菱形の矛先状で、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、V字角部を中心方向に向けた略倒扁平V字状の山折り部を設け、先端をほぼ水平方向に向けて形成しており、小片部2は矛先状で、長手方向先端は鋭角状で、短手方向の左右角は鈍角であると認められ、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、左側面視で中片部越しに見える短手方向角部は、小片部1より先端方向に位置し、先端を斜め下向きに形成しているのに対し、甲2の4意匠の小片部は、6つがほぼ同形同大の略剣状で、長手方向の中央の折り部の有無は不明で、長手方向の半ばに略左側面視略V字状の山折り部を設けていると認められ、そこから中心に向けて、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅V字状の凹部と略棒形状の山折り状凸部のみが観察でき、(前記の装飾体に加え、第2頁の下から一つ目の照明用笠の左上寄りの装飾体も参照して観察すると)中心から先端に掛けてやや上向きの斜状に形成している点、
(β3-5)中心部について、本件登録意匠は、左側面視で、中片部と小片部1の中心寄り端部(中片部の、略イカ形状の幅広の中心寄り端部と小片部1の菱形状の細幅軸の寄り端部)が交互に付き合わさるように並び、大片部の中心寄りはそれらに覆われて観察できないのに対し、甲2の4意匠は、大片部及び小片部の略棒形状の山折り状凸部が密集して周方向でほぼ同位置に連なって菊花状を呈し、中心寄りで片部は上下に重ならない点、
(β3-6)小片部の構成比について、本件登録意匠は、左側面視で縦横比は、小片部1は7:2.5、小片部2は不明であるのに対し、甲2の4意匠は、小片部は7:2である点、
(β3-7)色彩について、本件登録意匠は、図面で表されたものであるから、色彩の表されていないものであるのに対して、甲2の4意匠は、全体は、概ね白色である点。
(3)本件登録意匠と甲2の4意匠が類似するか否かの判断
両意匠3の意匠に係る物品は、同一である。
両意匠3の形態については、以下のとおり評価する。
(あ)共通点の評価
具体的構成態様としてあげた共通点(α3-1)は、照明用笠体の物品分野における、多弁花状の装飾体について、装飾体を複数個、ほぼ等間隔に配したもの、先端の尖った片部を用いたもの、片部を6つとしたもの、大小の片部を放射状に設けたもの、軸部でまとまったものもごく普通に見られる形態であり、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成した点については、両意匠3に共通する特徴的形態であるが、後記、相違点(β3-3)の具体的態様の相違もある中で、両意匠3の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまり、共通点(α3-2)及び共通点(α3-3)については、大片部の向き及び装飾体の部分的構成比に関わるところであって、大片部と小片部の長さ比及び大片部の縦横比はおおむね共通するものの、照明用笠体の物品分野において、片部が上向きであるものも、大片部と小片部の長さ比が約11:7であるものも、片部の縦横比が約11:3.5であるものも照明用笠体の物品分野において、普通に見受けられるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
よって、共通点(α3-1)は類否判断に与える影響は一定程度にとどまり、共通点(α3-2)及び共通点(α3-3)は類否判断に与える影響は、いずれも小さいものであって、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠3の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(い)相違点の評価
これに対して、両意匠3の各相違点を見ると、基本的構成態様の相違点(β3-1)は、本件登録意匠の全体は、略半球形状でフレームの大部分に装飾体を配したものであるのに対し、甲2の4意匠はくす玉状の略球形で全面に装飾体を配したものである点であって、略半球状及び略球形状の笠は照明用笠の物品分野において、どちらも見受けられる形態ではあるが、略球形状か略半球状かは、一目で看取できる基本的構成態様の相違であって、この相違点が両意匠3の類否判断に与える影響は大きく、相違点(β3-2)は具体的構成態様の相違であって、本件登録意匠が、略逆ジオデシック・ドーム状の桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、装飾体を底面側寄りに配したものであるのに対し、甲2の4意匠がフレームの全容が観察できず、全体的に余地部なく装飾体が配された点は、視覚的に与える印象が大きく異なり、相違点(β3-1)の印象をさらに強め、両意匠3の類否判断に与える影響はきわめて大きい。本件登録意匠に係る物品である「シャンデリア用笠」は、装飾性の強い照明用の笠体であって、そのため需要者は、照明全体を覆う笠体全体及びその構成要素である装飾体の態様に注目するところ、相違点(β3-3)については、具体的構成態様である中片部の有無の相違であるが、中片部は本件登録意匠の装飾体の各片部の中でも上側に位置し、装飾体を上方向から見たときに、中心部の大きな構成要素であり、かつ、中片部は、中心部寄りの2辺の長さが短く先端の2辺が長い変形菱形状の先端寄り両縁に張り出し片を備えた略イカ形状で、本件登録意匠の他の片部(小片部1、大片部)のような略菱形状ではない形態でもあるから目に付き、その有無に係る相違点が両意匠3の類否判断へ与える影響は大きい。次に、相違点(β3-4)は、各片部の形態についての相違であって、本件登録意匠の小片部は、3つの小片部1と、3つの小片部2からなり、小片部1は、左側面視で、四辺の長さのほぼ等しい略菱形の矛先状であって、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、V字角部を中心方向に向けた略倒扁平V字状の山折り部を設け、先端をほぼ水平方向に形成しており、小片部2は、矛先状の長手方向先端は鋭角状で、短手方向の左右角は鈍角であると認められ、短手方向角部は、小片部1より先端方向に位置し、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、先端を斜め下向きに形成しているのに対し、甲2の4の意匠の小片部は、6つがほぼ同形同大で、長手方向の中央の折り部の有無は不明であるが、長手方向の半ばに略左側面視略V字状の山折り部を設けていると認められ、そこから中心方向に向けて、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察でき、中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している点は、装飾体の小片部が2種の形態からなるものとほぼ同じ形態からなるもので異なり、向き及び具体的形態も異なるから、両意匠3は、構成から別異のものであるとの印象を与え、大片部についても、本件登録意匠の大片部は中央長手方向の先端から半ばにかけて谷折り部を形成し、長手方向先端から半ばにかけての両縁にある扁平三角形状の張り出し片部を山折り状に下方向に折り返し、左側面視で、長手方向半ばにV字角部を先端に向けた左側面視略倒V字状のごく浅い谷折り部を設け、その内方にはV字角部を同じくする細幅の略V字状部及び中央直線部を設けているのに対し、甲2の4意匠は、先端は、折り返し部がない切っ先状で、長手方向の中央の折り部の有無は不明であって、長手方向の半ばに略左側面視略V字状の山折り部を設け、中心に向けて、略V字状の谷折り部、山折り部を交互に設け、そこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、V字状の凹部と略紡錘形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となっている点は、先端の扁平三角形状の張り出し片、長手方向中央の谷折り部から生じる細長い凹部及び先端へ向いた略V字状の谷折り部が長手方向の流れを強調し、シャープな印象を与える本件登録意匠と、長手方向半ばの略V字状の山折り部を設けて、谷折り、山折りをくり返してほぼ同形の山折りの連なりが八重花のような華やかな印象を与える甲2の4意匠の相違として、需要者に両意匠3の美感を異にするとの印象を喚起し、とりわけ、装飾体において大片部は最も長く大きな割合を占め、笠体全体で観察する場合も、先端が最も外周面突き出して見えるものであるから、本件登録意匠の大片部の先端の形態が、長手方向中央の谷折り部から生じる細長い凹部両縁の山折り部外方に扁平三角形状の張り出し片部を備えたものであるのに対し、甲2の4意匠の大片部の中央の折り部の有無は不明で、先端の折り返し部がなく張り出し片部もない長手方向半ばが略V字状の山折り状である相違は、両意匠3全体の視覚的印象に大きく関わり、この相違点が類否判断へ与える影響は極めて大きい。
また、相違点(β3-5)は装飾体の中心部についてであって、本件登録意匠は、左側面視で、中片部と小片部1の中心寄り端部が交互に付き合わさるように並び、中片部と小片部1のそれぞれ異なる形態の中心寄り端部の交互の連なりとして看取されるのに対し、甲2の4意匠は、大片部及び小片部の幅狭の略棒形状の山折り状凸部が密集して周方向でほぼ同位置に連なり、菊花状を呈している点については、照明用笠の構成要素の装飾体の中心部については、需要者も十分注意を払うところであるから、前記、相違点(β3-3)の印象を強めるものであって、この相違点の類否判断へ与える影響は大きい。相違点(β3-6)は、両意匠3の小片部の具体的態様の相違に関わり、本件登録意匠は、左側面視で縦横比は、小片部1は7:2.5、小片部2は不明であるのに対し、甲2の4意匠は、小片部は7:2である点であって、それぞれ小片部は7:2?2.5と、さほど大きな長さの差ではなく、類否判断に与える影響は小さい。そして、相違点(β3-7)は、色彩の有無の相違であって、本件登録意匠は出願に際し図で表したもので、甲2の4意匠は、実製品を撮影した写真であるが、概ね白色であるものは、広く照明具の物品分野において、よく見受けられる形態であって、この相違点が類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、相違点(β3-6)及び相違点(β3-7)は、両意匠3の類否判断に与える影響は小さく、相違点(β3-1)、相違点(β3-3)及び相違点(β3-5)は類否判断に与える影響が大きく、相違点(β3-2)及び相違点(β3-4)は類否判断に与える影響が極めて大きいものであるから、それら相違点(β3-1)ないし相違点(β3-7)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、相違点が両意匠3の類否判断に与える影響は大きく、共通点は両意匠3の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点は、共通点を凌駕して、両意匠3を別異のものと印象づけるものであるから本件登録意匠が甲2の4意匠に類似するということはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件登録意匠と甲2の4意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、両意匠3の相違点が共通点を凌駕し、両意匠3は類似するものではない。
すなわち、本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に公然知られた甲2の4意匠に類似する意匠ではなく、したがって、無効理由3によって、本件登録意匠の登録が、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とされるべき理由はない。

5 無効理由4について
本件登録意匠が、甲2の7意匠と類似する意匠であるか否かについて検討する。
本件登録意匠については、前記1.に記載のとおりである。
(1)甲2の7意匠
甲2の7意匠は、本件登録意匠出願前の平成26年11月28日から12月28日まで、カッシーナ・イクスシー青山本店にて展示された照明器具「LUCIS」(装飾体24個)の「照明用笠」の意匠であって、甲2の7意匠は、甲第30号証(株式会社商店建築社から平成27年2月1に発行された「商店建築」2月号の第30頁)(別紙第12参照)第2頁タイトル下に、「会場/カッシーナ・イクスシー青山本店(東京・外苑前)会期/2014年11月28日?12月28日」と記載があり、甲第35号証の1(平成30年5月18日出力の株式会社カッシーナ・イクスシーウェブサイト抜粋)(別紙第13参照)2014年12月吉日と頁右上に記載のある「世界初の「立体映像スノードーム」が登場するインスタレーション DESIGN YOUR CHRISTMAS.Presentation with Takahiro Matsuo」と題された記事の第1頁本文1行目から2行目に「カッシーナ・イクスシー青山本店にて2014年11月28日(金)よりアーティスト松尾高弘氏によるクリスマスインスタレーションを展開しています。」との記載があり、同頁右下に「LUCIS」と示された画像及び第4頁に「青山本店1Fエントランス」として示された画像にも甲2の7意匠とほぼ同一の照明器具が認められるから、本件登録意匠の出願前の平成26年11月28日から12月28日までカッシーナ・イクスシー青山本店にて「DESIGN YOUR CHRISTMAS.」と題された展示が行われ、遅くとも平成26年12月28日には同展示により公然知られた意匠であったと認められる。
甲第2号証の7の第3頁の写真(写し)に現れた照明用笠に基づいて認定する。
ア.物品
甲2の7意匠の意匠に係る物品は、「照明用笠」の意匠である。
イ.形態
甲2の7意匠の形態は、以下のとおりである(別紙第23参照)。
基本的構成態様は、
a4 甲2の7意匠の現れた写真は一方向から撮影されたものであるが、照明器具の当業者知識に照らせば、全体は、くす玉状の略球形のものと認められ、複数個の略多弁花状の装飾体から成るものと認められる。
具体的構成態様は、
b4 (フレームに)装飾体を複数個、全面に、全方向、ほぼ等間隔に配して形成し、
c4 1つの装飾体の形態は、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成して、装飾体の左側面視で中心部に対して周方向に放射状に略剣状の大片部を等分割位置に6つ、大片部の間に略剣状の小片部を等分割位置に6つ放射状に配し、軸部の形態は不明であるが、各片部は軸部でまとまって成り、
d4 各片部の形態は、それぞれ面の反射光が干渉しあっている写真であるので、細部は不鮮明であるが、
d4-1 大片部について
大片部は、(第3頁照明用笠の右下寄り中央の装飾体のほぼ上向きの大片部に基づけば)折り返し部のない切っ先状の先端から半ばにかけての中央を山折り状とし、(先端が下向きの大片部で認定すると)、その中央の山折り部端部にV字角部を接する左側面視略V字状の山折り部を設けて、略Yの字状の山折り部とし、そこから中心に向けて、略Y字状の谷折り部、山折り部を交互に設け、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略棒形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となり(前記の装飾体に加え、第3頁の照明用笠の右下寄りの装飾体も参照して観察すると)中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している。
d4-2 小片部について
小片部は(第3頁照明用笠の左下寄り中央の装飾体のほぼ上向きの大片部の左隣の小片部に基づけば)切っ先状の先端から中心方向に向けて、略Y字状の山折り部を設けて、そこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅V字状の凹部と略棒形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となり、(前記の装飾体に加え、第3頁の照明用笠の右下寄りの装飾体も参照して観察すると)中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している。
中心部は、それら大片部及び小片部の幅狭の略棒形状の山折り状凸部が密集して、周方向でほぼ同位置に連なり、菊花状を呈している。
e4 各片部の左側面視の長手方向の中心から先端までの長さ比は(第3頁照明用笠の右下寄り中央の装飾体のほぼ上向きの大片部及び左隣の小片部に基づけば)大片部:小片部で約11:6であり、縦横比は、縦横比は、大片部が約11:3、小片部は約6:2であって、全体が反射体であるので、光を反射する略銀色のものである。
(2)本件登録意匠と甲2の7意匠の対比
ア.物品について
本件登録意匠は「シャンデリア用笠」であって、甲2の7意匠は「照明用笠」であって、表記は相違するが、共に照明器具の笠であって、本件登録意匠と甲2の7意匠(以下「両意匠4」という。)の意匠に係る物品は、同一である。
イ.形態について
(ア)共通点
具体的構成態様について
(α4-1)(フレームに)装飾体を複数個、ほぼ等間隔に配して、1つの装飾体の形態は、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成して成り、(矛先状も剣状も共に先の尖った形態であるから)装飾体の左側面視で中心部から先端の尖った大片部が等分割位置に放射状に6つ、大片部の間に先端の尖った小片部が設けられ、各片部は軸部でまとまっている点、
(α4-2)大片部を斜め上向きに形成している点、
(イ)相違点
基本的態様について
(β4-1)本件登録意匠の全体は、略半球形状でフレームの大部分に装飾体を配したものであるのに対し、甲2の7意匠はくす玉状の略球形で全面に装飾体を配したものである点、
具体的構成態様について
(β4-2)フレームについて、本件登録意匠が球体の直径の約5分の1を水平に切り取って形成したような略逆ジオデシック・ドーム状の桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、その差し込み部に装飾体を底面側寄りの全方向、ほぼ等間隔計41個配したものであるのに対し、甲2の4意匠は、前面が複数個の装飾体に覆われて、特段の余地部はなく、フレームの形状の全容は不明である点、
(β4-3)装飾体の構成について、本件登録意匠が軸部を中心に、小片部2の上側に中心部寄りの2辺の長さが短く先端の2辺が長い変形菱形状の先端寄り両縁に張り出し片を備えた略イカ形状の中片部を3つ、中心から放射状に配して成るのに対し、甲2の7の意匠は、軸部の形態は不明で、中片部はないものである点、
(β4-4)各片部の形態について、
(β4-4-1)大片部について
本件登録意匠の大片部は、左側面視、略菱形の矛先状で、中央長手方向の先端から半ばにかけて谷折り部を設け、長手方向先端から半ばにかけての両縁にある扁平三角形状の張り出し片部を山折り状に下方向に折り返し、長手方向半ばから中心に向けてV字角部を先端に向けて、左側面視略V字状のごく浅い谷折り部を設け、その内方にはV字角部を同じくする細幅の略V字状部及び中央直線状部を設けているのに対し、甲2の7意匠の大片部は、略剣状で折り返し部がないから張り出し片部もない切っ先状の先端から長手方向の半ばから先端を略Y字状の山折り部とし、そこから中心に向けて、略Y字状の谷折り部、山折り部を交互に設け、横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略棒形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となり、
(β4-4-2)小片部について
本件登録意匠の小片部は、3つの小片部1と、3つの小片部2からなり、小片部1は、左側面視で、四辺の長さのほぼ等しい略菱形の矛先状で、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、V字角部を中心方向に向けた略倒扁平V字状を設け、先端をほぼ水平方向に向けて形成しており、小片部2は矛先状で、長手方向先端は鋭角状で、短手方向の左右角は鈍角であると認められ、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、左側面視で中片部越しに見える短手方向角部は、小片部1より先端方向に位置し、先端を斜め下向きに形成しているのに対し、甲2の7意匠の小片部は、6つほぼ同形同大で略剣状の小片部は切っ先状の先端から中心方向に向けて、略Y字状の山折り部を設けて、そこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅V字状の凹部と略棒形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となり、中心寄りから先端に掛けてやや上向きの斜状に形成している点、
(β4-5)中心部について、本件登録意匠は、左側面視で、中片部と小片部1の中心寄り端部(中片部の略イカ形状の幅広の中心寄り端部と小片部1の菱形状の細幅軸の寄り端部)が交互に付き合わさって並び、大片部の中心寄りはそれらに覆われて観察できないのに対し、甲2の7意匠は、大片部及び小片部の略棒形状の山折り状凸部が密集して周方向でほぼ同位置に連なって菊花状を呈している点、
(β4-6)各片部の構成比について、本件登録意匠は、大片部:小片部の長さ比は約11:7であるのに対し甲2の7意匠は11:6で、左側面視で縦横比は、本件登録意匠は、大片部が11:3.5、小片部1は7:2.5、小片部2は不明であるのに対し、甲2の7意匠は、縦横比は、大片部が約11:3、小片部は約6:2である点、
(β4-7)色彩について、本件登録意匠は、図面で表されたものであるから、色彩の表されていないものであるのに対して、甲2の7意匠は、全体が反射体であるので、光を反射する略銀色のものである点。
(3)本件登録意匠と甲2の7意匠が類似するか否かの判断
両意匠4の意匠に係る物品は、同一である。
両意匠4の形態については、以下のとおり評価する。
(あ)共通点の評価
具体的構成態様としてあげた共通点(α4-1)は、照明用笠体の物品分野における、多弁花状の装飾体について、装飾体を複数個、ほぼ等間隔に配したもの、先端の尖った片部を用いたもの、片部を6つとしたもの、大小の片部を放射状に設けたもの、軸部でまとまったものもごく普通に見られる形態であり、折紙細工などのように、ごく薄い平面体を折り曲げるなどして立体的に形成した点については、両意匠4に共通する特徴的形態であるが、後記、相違点(β4-3)の具体的態様の相違もある中で、両意匠4の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまり、共通点(α4-2)については、照明用笠体の物品分野において、装飾体の片部が上向きであるものは、ごく普通に見受けられるから両意匠4の類否判断に与える影響は小さい。
よって、共通点(α4-1)は類否判断に与える影響は一定程度にとどまり、共通点(α4-2)は類否判断に与える影響は、いずれも小さいものであって、共通点全体があいまって生ずる効果を考慮したとしても、両意匠4の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
(い)相違点の評価
これに対して、両意匠4の各相違点を見ると、基本的構成態様の相違点(β4-1)は、本件登録意匠の全体は、略半球形状でフレームの大部分に装飾体を配したものであるのに対し、甲2の7意匠はくす玉状の略球形で全面に装飾体を配したものである点であって、略半球状及び略球形状の笠は照明用笠の物品分野において、どちらも見受けられる形態ではあるが、略球形状か略半球状かは、一目で看取できる基本的構成態様の相違であって、この相違点が両意匠4の類否判断に与える影響は大きく、相違点(β4-2)は具体的構成態様の相違であって、本件登録意匠が、略逆ジオデシック・ドーム状の桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、装飾体を底面側寄りに配したものであるのに対し、甲2の7意匠がフレームの全容が観察できず、全体的に余地部なく装飾体が配された点は、視覚的に与える印象が大きく異なり、相違点(β4-1)の印象をさらに強め、両意匠4の類否判断に与える影響はきわめて大きい。本件登録意匠に係る物品である「シャンデリア用笠」は、装飾性の強い照明用の笠体であって、そのため需要者は、照明全体を覆う笠体全体及びその構成要素である装飾体の態様に注目するところ、相違点(β4-3)については、具体的構成態様である中片部の有無の相違であるが、中片部は本件登録意匠の装飾体の各片部の中でも上側に位置し、装飾体を上方向から見たときに、中心部の大きな構成要素であり、かつ、中片部は、中心部寄りの2辺の長さが短く先端の2辺が長い変形菱形状の先端寄り両縁に張り出し片を備えた略イカ形状で、本件登録意匠の他の片部(小片部1、大片部)のような略菱形状ではない形態でもあるから目に付き、その有無に係る相違点が両意匠4の類否判断へ与える影響は大きい。次に、相違点(β4-4)は、各片部の形態についての相違であって、本件登録意匠の小片部は、3つの小片部1と、3つの小片部2からなり、小片部1は、左側面視で、四辺の長さのほぼ等しい略菱形の矛先状であって、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、V字角部を中心方向に向けた略倒扁平V字状の山折り部を設け、先端をほぼ水平方向に形成しており、小片部2は、矛先状の長手方向先端は鋭角状で、短手方向の左右角は鈍角であると認められ、短手方向角部は、小片部1より先端方向に位置し、長手方向中央を先端から半ばまで山折り状とし、先端を斜め下向きに形成しているのに対し、甲2の7意匠の小片部は、6つがほぼ同形同大で、切っ先状の先端から中心方向に向けて、略Y字状の山折り部を設けて、そこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、略V字状の凹部と略棒形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となり、中心から外側に掛けてやや上向きの斜状に形成している点は、装飾体の小片部が2種の形態からなるものとほぼ同じ形態からなるもので異なり、向き及び具体的形態も異なるから、両意匠4は、構成から別異のものであるとの印象を与え、大片部についても、本件登録意匠の大片部は中央長手方向の先端から半ばにかけて谷折り部を形成し、長手方向先端から半ばにかけての両縁にある扁平三角形状の張り出し片部を山折り状に下方向に折り返し、左側面視で、長手方向半ばにV字角部を先端に向けた左側面視略倒V字状のごく浅い谷折り部を設け、その内方にはV字角部を同じくする細幅の略倒V字状部を設けているのに対し、甲2の7意匠は、折り返し部のない切っ先状の先端から長手方向の半ばにかけて略Y字状の山折り部とし、中心方向に向けて、略Y字状の谷折り部、山折り部を交互に設けて、そこから横幅を徐々に幅狭とし、中心近くは、細幅略V字状の凹部と略棒形状の山折り状凸部のみが観察できる態様となっている点は、先端の扁平三角形状の張り出し片部、長手方向中央の谷折り部から生じる細長い凹部及び先端へ向いた略V字状の谷折り部が長手方向の流れを強調し、シャープな印象を与える本件登録意匠と、先端のY字状山折り部から始まり、谷折り、山折りをくり返してほぼ同形の山折りの連なりが八重花のような華やかな印象を与える甲2の7意匠の相違として、需要者に両意匠4の美感を異にするとの印象を喚起し、とりわけ、装飾体において大片部は最も長く大きな割合を占め、最も長い大片部は、笠体全体で観察する場合、先端が最も外周に突き出して見えるものであるから、本件登録意匠の大片部の先端の形態が、長手方向中央の谷折り部から生じる細長い凹部両縁の山折り部外方に扁平三角形状の張り出し片部を備えたものであるのに対し、甲2の7意匠の大片部の先端は折り返し部がなく、張り出し片部のない略Y字状の山折り状である相違は、両意匠4全体の視覚的印象に大きく関わり、この相違点が類否判断へ与える影響は極めて大きい。
また、相違点(β4-5)は装飾体の中心部についてであって、本件登録意匠は、左側面視で、中片部と小片部1の中心寄り端部が交互に付き合わさるように並び、中片部と小片部1のそれぞれ異なる形態の中心寄り端部の交互の連なりとして看取されるのに対し、甲2の7意匠は、大片部及び小片部の略棒形状の山折り状凸部が密集して周方向でほぼ同位置に連なり、菊花状を呈している点については、照明用笠の構成要素の装飾体の中心部については、需要者も十分注意を払うところであるから、前記、相違点(β4-3)の印象を強めるものであって、この相違点の類否判断へ与える影響は大きい。相違点(β4-6)は、両意匠4の各片部の具体的態様の相違に関わり、大片部:小片部の長さ比が11:7であって、左側面視で縦横比は、大片部が11:3.5小片部1は7:2.5、小片部2は不明であるのに対し、甲2の7意匠は、大片部:小片部の長さ比が11:6であって、大片部が11:3、小片部は6:2である点であって、大片部:小片部の長さ比が11:6?7で、縦横比は、大片部は、11:3?3.5、小片部は6:2(縦の長さ揃えて縦横比率をみると7:2.3)?7:2.5と、さほど大きな長さの差ではなく、類否判断に与える影響は小さい。そして、相違点(β4-7)は、色彩の有無の相違であって、本件登録意匠は出願に際し図で表したもので、甲2の7意匠は、実製品を撮影した写真であるが、光を反射する略銀色であるものは、広く照明具の物品分野において、よく見受けられる形態であって、この相違点が類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、相違点(β4-6)及び相違点(β4-7)は両意匠4の類否判断に与える影響は小さく、相違点(β4-1)、相違点(β4-3)及び相違点(β4-5)は類否判断に与える影響が大きく、相違点(β4-2)及び相違点(β4-4)は類否判断に与える影響が極めて大きいものであるから、それら相違点(β4-1)ないし相違点(β4-7)があいまった視覚的効果も考慮して総合すると、相違点が両意匠4の類否判断に与える影響は大きく、共通点は両意匠4の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対し、相違点は、共通点を凌駕して、両意匠4を別異のものと印象づけるものであるから本件登録意匠が甲2の7意匠に類似するということはできない。
(4)小括
以上のとおり、本件登録意匠と甲2の7意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、両意匠4の相違点が共通点を凌駕し、両意匠4は類似するものではない。
すなわち、本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に公然知られた甲2の7意匠に類似する意匠ではなく、したがって、無効理由4によって、本件登録意匠の登録が、意匠法第48条第1項第1号に該当し同項柱書の規定によって、無効とされるべき理由はない。

6 無効理由5について
本件登録意匠が、甲2の2意匠ないし甲2の4意匠及び甲2の7意匠に基づいて、本件登録意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合について容易に創作することができたもの意匠であるか否かについて検討し、判断する。
(1)本件登録意匠及び各公知意匠
本件登録意匠は、前記1.に記載のとおりであって、各公知意匠の形態は、前記1ないし4のとおりである。
(2)創作非容易性の判断
まず、本件登録意匠の基本的構成態様である、笠体全体が略半球形状で、多数の略多弁花状の装飾体をほぼ等間隔に配して成るものは、「シャンデリア用笠」の物品分野において本件登録意匠の出願前(「各公知意匠」に限らず、例えば、2003年7月11日特許庁受入の内国カタログ「2003-2004 CATALOGUE A 施設・屋外照明カタログ」 517頁掲載「シャンデリア」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号HC15023501))にごく普通に見受けられるものであり、また、具体的構成態様のうちでも、略正三角形状を一単位にその一角をつきあわせて略六角形状及び略五角形状に配置しながら全体を略球形状もしくは略半球形状を形成するジオデシック・ドームの構造を用いてドーム体を形成することは、シャンデリア用笠の物品分野に限らず、広く、建造物などにも採用され、よく見受けられる造形手法であって、当業者においては、ジオデシック・ドーム構造を用いて、多数の略多弁花状の装飾体をほぼ等間隔に配した、略半球形状のシャンデリア用笠とすることは、格別の困難を要さず、容易に創作することができたものと認められる。しかしながら、本件登録意匠のフレームを球体の直径の約5分の1を水平に切り取って形成したような(直径の直交方向長さが直径の約5分の4)略逆ジオデシック・ドーム状の桟体で構成されたものとし、フレームを構成する略三角格子状の桟体の交点に円板状差し込み部を設けて、フレームの上部に余地を残して、その差し込み部に装飾体を計41個、底面側(頂面側)寄りに全方向、ほぼ等間隔に配して形成したものは、前記各公知意匠のいずれにも表されておらず、正面視平面側周縁に余地部を設けた点については、装飾体を正面視平面側周縁に配さず、余地を残して照明用笠を形成することが、設置時の必要及び使用時態様などから、当業者が選択するありふれた手法であるとしても、いずれも略球形状である各公知意匠に基づいて、本件登録意匠の前記1.Bの形態とすることが、本件登録意匠出願前にシャンデリア用笠の物品分野において、ありふれた手法であったとする証拠は認められない。加えて、装飾体の形態についてもみてみると、1つの装飾体は、ごく薄い平面体を折り曲げて形成したような態様で、装飾体の左側面視で中心部から先端の尖った大片部が等間隔に放射状に6つで、軸部が各片部をまとめているもの、大片部の間に先端の尖った小片部が設けられたもの、大片部を側面視で斜め上向きに形成しているもの、大片部と小片部が左側面視で、中心部から先端までの長さ比が約11:7であるものは、甲2の2意匠ないし甲2の4意匠に見られるように本件登録意匠の出願前に公然知られたものと認められるが、本件登録意匠の具体的構成態様である前記1.Cのうち、装飾体が略菱形の矛先状の6つの大片部と略菱形の矛先状の3つずつの小片部1と小片部2と、軸部寄りが幅広角形の略矢印状(イカ形)の3つの中片部から成り、中片部は小片部2の上に形成している形態、及び、中心部が、中片部と小片部1の軸部寄り端部が交互に付き合わさるように並び、大片部の軸部寄りは中片部の幅広角形の軸部寄り端部が重なっている形態、また、前記1.Dに表れた本件登録意匠の各片部の形態は、各公知意匠のいずれにも表されていない。
特に、各公知意匠に設けられていない本件登録意匠の中片部について、中片部を設け、かつ大片部及び小片部とも形態の異なる中片部の具体的形態にまで想到することは、困難であるといわざるをえず、また、大片部について、各公知意匠のように、縁に折り返し片のない、略剣状とした先方から長手方向半ばまでを略Yの字状の山折りとし、軸方向に向けて略Y字の蛇腹状に形成した形態に基づいて、本件登録意匠の、中央長手方向を谷折り状とし、先端部の両縁の扁平三角状片を下方に折り返して先の尖った略矛状とし、長手方向半ばに先端を先方に向けた略V字状の谷折り部を設け、その内方に先端を同じくする細幅の略V字状の山折り部を設けた形態とすることが、ありふれた手法であるとする証拠もない。
そうすると、各公知意匠の形態から本件登録意匠の形態が容易に創作できたということはできない。
以上のとおり、本件登録意匠は、当業者がその意匠登録出願の出願前に日本国内又は外国において公然知られた甲2の2意匠ないし甲2の4意匠及び甲2の7意匠に基づいて容易に創作することができたものであるということはできない。
(3)小括
以上のとおり、本件登録意匠が、甲2の2意匠ないし甲2の4意匠及び甲2の7意匠に見られる公然知られた形態に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえず、意匠法第3条第2項に該当するということはできないから、したがって、無効理由5によって、本件登録意匠の登録が、意匠法第48条第1項第1号に該当し、同項の規定によって、無効とされるべき理由はない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1ないし無効理由5に係る理由によっては、本件登録意匠の登録は無効とすることはできない。

審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。


別掲

審決日 2020-02-21 
出願番号 意願2016-18281(D2016-18281) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (D3)
D 1 113・ 111- Y (D3)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 木村 智加
渡邉 久美
登録日 2017-03-17 
登録番号 意匠登録第1574099号(D1574099) 
復代理人 木下 恵理子 
代理人 有吉 修一朗 
代理人 田中 雅敏 
代理人 森田 靖之 
代理人 高見 香織 
代理人 田中 雅敏 
代理人 北山 元章 
代理人 植松 祐二 
代理人 植松 祐二 
代理人 田辺 信彦 
代理人 山腰 健一 
代理人 堀田 明希 
代理人 岡部 讓 
代理人 森田 靖之 
代理人 田辺 信彦 
代理人 松原 香織 
代理人 有吉 修一朗 
代理人 高見 香織 
代理人 山腰 健一 
代理人 岡部 讓 
復代理人 木下 恵理子 
代理人 堀田 明希 
代理人 松原 香織 
代理人 北山 元章 
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