ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E3 |
---|---|
管理番号 | 1361550 |
審判番号 | 不服2020-580 |
総通号数 | 245 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-15 |
確定日 | 2020-05-07 |
意匠に係る物品 | 吹矢用の矢 |
事件の表示 | 意願2018- 27116「吹矢用の矢」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年(2018年)12月13日の意匠登録出願であって、令和元年(2019年)7月26日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月27日に意見書が提出されたが、同年9月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和2年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、その意匠は、意匠に係る物品を「吹矢用の矢」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」とするものであって、「『右側面図』と『背面図』と『参考右側面図中央縦断面図』における一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」とするものである(以下「本願部分」という。別紙第1参照。)。 第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものであり、具体的には、以下のとおりである。 以下、本審決では、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分、すなわち、本願部分に相当する部分を「引用部分」という。 「特許庁発行の公開特許公報記載 特開2013-061112 【図1】、【図3】において示された吹矢の矢の意匠の本願意匠が意匠登録を受けようとする部分に相当する部分の意匠 本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠のそれに相当する部分とは、主に、右側面視における載頭円錐形状の載頭部の形状、右側面視における右端部に平坦部を有する矢じりの先端部が共通する一方、右側面視における矢じりの先端部形状に関して、本願意匠では、隅丸略台形状であるのに対して、引用意匠では、右端部に平坦部を有する略楕円形状である点で相違します。 そこで、共通点及び相違点を評価すると、上記共通点は、両意匠の大部分を占め、基調を構成し、類否判断に大きな影響を及ぼしているのに対して、上記相違点は、上記共通点に比して、見る者の注意をひかないものですから、意匠全体として見た場合、これらの相違点は、類否判断に及ぼす影響が微弱であって、上記共通点を凌駕するほどのものではありません。 したがって、本願意匠は引用意匠に類似するものといえます。」 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、願書の意匠に係る物品の説明欄によれば、「この物品は、薄い樹脂製フィルムを截頭円錐形に巻いてなる羽根の截頭部に、的に突き刺さる金属製の矢じりを取り付けた吹矢用の矢である。」とする「吹矢用の矢」であり、引用意匠の意匠に係る物品も同様な「吹矢の矢」であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通する。 2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも吹矢に用いる矢のうち、矢じり及び直進性を高める羽根からなる部分であるから、両部分の用途及び機能が共通する。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は、矢じりのヘッド部(以下、「矢じり」という。)と、矢じりの後端に連接する羽根のうち、羽根先端部から矢じりの約2倍の長さを占める部分(以下「羽根先端部」という。)であるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。 4 両部分の形態の対比 引用部分の形態については、引用文献の【0065】には、「上述の実施形態では、矢2のピンに丸ピン4を用いたが、丸ピン4の代わりに楕円ピン12を用いることもできる。」旨の記載があることから、以下、【図1】の丸ピンを【図3】の楕円ピンに置き換えた形態として、対比、評価を行う。 (1)両部分の形態の共通点 (共通点1)両部分は、意匠登録を受けようとする部分を、矢じりと矢じりの後端部に連接する羽根の先端部とする点が共通する。 (共通点2)両部分は、矢じりの形状について、外形を膨出面からなる回転体で形成した点が共通する。 (共通点3)両部分は、羽根先端部の形態について、中心角を約5度とする切頭円錐形とする点で共通する。 (2)両部分の形態の相違点 矢じりの具体的形状について、本願部分が略切頭椎(しい)の実形状を呈するものであるのに対し、引用部分の矢じりの形状が略短カプセル形状である点で、両部分は相違する。 第5 判断 この種物品分野における需要者は、主に吹矢を用いて競技をする者であり、使用時における吹矢の矢の直進性や正中性、及び、飛翔の安定性に影響を及ぼす部分の形状について、高い関心を持って観察をするものといえる。 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、主たる用途及び機能が共通するから、同一である。 2 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、主たる用途及び機能が共通するから、同一である。 3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。 4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価 共通点1は、矢じりと羽根との構成態様に係るものではあるが、この種物品分野において、矢じりの後ろ側に羽根を設けることは、例えば、参考意匠に表れるとおり、この出願前より公然知られた態様であって、当該点にのみ需要者の注意を格別に引くものとは認められないから、部分全体の美感に与える影響は小さい。 また、共通点2及び共通点3についても、例えば、参考意匠に表れるとおり、この出願前より公然知られた態様であって、これらの点が需要者の注意を格別に引くものとは認められないから、部分全体の美感に与える影響は小さい。 しかしながら、矢じりの具体的形状に係る相違点は、この種物品分野における需要者が、主に吹矢を用いて競技をする者であり、使用時における吹矢の矢の直進性や正中性、及び、飛翔の安定性に影響を及ぼす部分の形状として、矢じりの羽根への配設態様とともに矢じりの形状についても、高い関心を持って観察する部分であるといえることから、当該相違点が部分全体の類否判断に及ぼす影響は大きい。 参考意匠(別紙第3参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1502347号 意匠に係る物品「吹矢の矢」の意匠 5 両意匠の類否判断 両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両部分は、矢じりの具体的形状において大きな差異があり、当該部分は、この種物品分野における需要者が強い関心を持って観察する部分であるから、これらを総合すると、両部分は全体として美感に大きな差異があるといえる。そうすると、上記第3 4(1)の共通点があるとしても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似し、両部分の用途及び機能が類似し、両部分の位置、大きさ及び範囲が同一であるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2020-04-15 |
出願番号 | 意願2018-27116(D2018-27116) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(E3)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 塩治 雅也 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
木村 恭子 江塚 尚弘 |
登録日 | 2020-05-11 |
登録番号 | 意匠登録第1660546号(D1660546) |
代理人 | 藤野 清規 |
代理人 | 山本 洋三 |