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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1362385 
審判番号 不服2017-995
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-24 
確定日 2017-04-25 
意匠に係る物品 洗浄消毒器 
事件の表示 意願2016-6106「洗浄消毒器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,平成28年(2016年)3月22日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「洗浄消毒器」とし,形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するというものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1496858号(意匠に係る物品,洗浄消毒器)の意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と合わせて「両意匠」という。)であって,その形態は,同公報の図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.両意匠の対比
(1)両意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「洗浄消毒器」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「洗浄消毒器」であるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
<共通点>
基本的態様として,
(A)全体は,縦長の略直方体状の本体下面に4つのキャスターが設けられ,横幅:高さ:奥行きの比率が,略6:9:7である点。
(B)本体の正面は,本体下部と,その上方に設けられた下開きの開閉扉で構成されており,開閉扉は,中央に横長長方形の窓を備えた平板部と,平板部の上端縁に設けられた庇状の取っ手部で構成され,取っ手部:平板部:本体下部の高さの比率が,略1:5:2である点。
具体的な態様として,
(C)取っ手部の中央下部には,横長スリット状の溝が設けられており,右端寄りには,横長長方形の表示部が設けられている点。
(D)本体の左右側面の上方には,手掛け部が2つ横に並べて設けられ,下方の背面寄りには,矩形状の通気口が設けられている点。

<相違点>
具体的態様として,
(ア)取っ手部正面に,本願意匠では,左端から水平方向に延び,徐々に下方に向き,中央やや右寄りの位置で下端に至る帯状面が形成されているのに対して,引用意匠では,そのような帯状面が形成されていない点。
(イ)本体下部について,本願意匠では,左端やや下方から右上端にかけて,緩やかな弧状の帯状面が形成されているのに対して,引用意匠では,本体下端の台板と下面パネルで構成され,下面パネルにはそのような帯状面が形成されていない点。
(ウ)引用意匠の取っ手部には,横長スリット状の溝の上に接するように,略偏平ドーム状であって,前方に僅かに隆起している部分が設けられているのに対して,本願意匠の取っ手部には,そのような部分が設けられていない点。
(エ)本願意匠は,本体背面右に縦長のパイプが設けられているのに対して,引用意匠は,本体背面にそのようなパイプが設けられていない点。

2.両意匠の類否判断
以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

(1)両意匠の意匠に係る物品の評価
両意匠の意匠に係る物品は,洗浄消毒器として一致するが,医療機器等の洗浄および消毒を行う洗浄消毒器は,ありふれた物品であるから,両意匠の意匠に係る物品が一致することによる,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

(2)両意匠の形態についての共通点の評価
基本的態様として示す共通点(A)は,物品全体に表れて,非常に目に付くものではあるが,これによる両意匠の類否判断に及ぼす影響は,限定的なものにとどまるといわざるを得ない。
その理由を詳述すると,両意匠の意匠に係る物品である洗浄消毒器は,下端に4つのキャスターが設けられていることからもわかるように,ある程度の大きさを備えている。そして,例えば,冷蔵庫,洗濯機,電子レンジのような,設置する際にある程度大きな容積を必要とする物品を買い換える際には,購入者は,既存品を設置していた同じ場所に新規購入品を設置しようとすることから,新規購入品に対して,既存品と同程度の外形寸法を求める傾向があるといえる。そのため,設置する際にある程度大きな容積を必要とする物品の分野においては,先行して発売されている既存品の外形寸法と同程度の寸法で新製品が開発及び販売され,複数の製造業者間で,製品寸法がほぼ一致することは,よく見受けられる現象であり,既存品の外形寸法を踏襲することは,製品開発におけるありふれた手法ということができる。
両意匠の共通点(A)は,全体は,縦長の略直方体状の本体下面に4つのキャスターが設けられ,横幅:高さ:奥行きの比率が,略6:9:7であるというものであるが,これにより,需要者は,既存品を設置していた同じ場所に設置できるように,既存品の外形寸法を踏襲して製品開発がされたという印象を受けるにすぎないから,共通点(A)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的なものというほかない。
次に,両意匠の共通点(B)は,本体の正面は,本体下部と,その上方に設けられた下開きの開閉扉で構成されており,開閉扉は,中央に横長長方形の窓を備えた平板部と,平板部の上端縁に設けられた庇状の取っ手部で構成され,取っ手部:平板部:本体下部の高さの比率が,略1:5:2であるというものであり,また,共通点(C)は,取っ手部の中央下部には横長の溝が設けられ,右端寄りには表示部が設けられているというものであるところ,これらは,参考意匠(特許庁発行の公開特許公報記載 特開2015-171412(発明の名称,洗浄機)の図2の意匠(別紙第3参照))に示すように,本願の出願時には,両意匠のほかにも既に見られる形態であり,両意匠だけに見られる形態とはいい難いから,共通点(B)及び共通点(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も限定的なものにとどまるといわざるを得ない。
最後に,両意匠の共通点(D)は,本体の左右側面の上方には,手掛け部が2つ横に並べて設けられ,下方の背面寄りには,矩形状の通気口が設けられているというものであるが,いずれも本体側面の形態である。洗浄消毒器を使用する際には,需要者は本体に正対し,側面を見る必要がないことから,共通点(D)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も,限定的なものというべきである。
そして,共通点(A)ないし共通点(D)を総合した,共通点全体としても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

(3)両意匠の形態についての相違点の評価
まず,相違点(エ)は,背面という目立たない部位であって,設置時には隠れてしまう部位に係る相違であるから,相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,微弱である。
これに対して,両意匠の具体的態様に係る相違点(ア)及び相違点(イ),すなわち本願意匠の取っ手部や本体下部に帯状面が形成されている点は,正面視において非常に目に付きやすい部位に係る相違であって,両意匠の立体形状に係る相違であり,洗浄消毒器の先行意匠に照らして,本願意匠のみに見られる形態であるから,帯状面の有無の相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きいというべきである。そして,相違点(ア)及び相違点(イ)が相乗することにより,左右方向に帯状面が広がってうねるような非対称的な視覚効果が得られるといえる。
さらに,相違点(ウ)は,取っ手部の中央という目に付きやすい部位に係る相違であるから,やはり両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。そして,相違点(ア)ないし(ウ)を総合すると,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきである。

(4)小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-04-12 
出願番号 意願2016-6106(D2016-6106) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 日比野 杏香加藤 真珠 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2017-05-19 
登録番号 意匠登録第1578754号(D1578754) 
代理人 河合 徹 

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