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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B7
管理番号 1362401 
審判番号 不服2019-11497
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-02 
確定日 2020-05-15 
意匠に係る物品 コンパクト 
事件の表示 意願2018- 12810「コンパクト」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、意匠法第4条第2項の規定(新規性喪失の例外)の適用を受けようとする、平成30年6月11日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 7月10日付け 意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受 けるための証明書の提出
平成31年 1月15日付け 拒絶理由通知書
平成31年 2月27日 意見書の提出
令和 1年 5月29日付け 拒絶査定
令和 1年 9月 2日 審判請求書の提出

第2 本願意匠

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「コンパクト」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を、「赤色で着色した部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

また、この拒絶の理由には、以下のとおりの付記がなされたものである。

「この意匠登録出願の意匠と下記の意匠とは、平面視矩形のコンパクトの外側を、面ごとに色彩を異ならせた基本的構成態様が大きく共通し、類似します。

なお、提出の新規性の喪失の例外証明書においては、下記の意匠の公開の事実等は示されておらず、また、前記証明書に記載の公開に基づく公開であるものとも認められないことから、下記の意匠に関しては、当該規定の適用を受けることはできません。」

そして、拒絶理由通知において引用された意匠は、以下のとおりである(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)。

「独立行政法人工業所有権情報・研修館が2018年3月30日に受け入れた
POLA CATALOG 2018
第39頁所載
化粧品入れの意匠(当審注:引用意匠において本願部分と対比、判断する部分、すなわち、本願部分に相当する部分は、化粧品入れの蓋を開けた内側を除くケース外側部分(以下「引用部分」という。)である。)
(特許庁意匠課公知資料番号第HC30002331号)」

第4 意匠法第4条第2項に基づく新規性の喪失の例外の規定の適用につい て

1 意匠法第4条第2項について
意匠法第4条第2項の規定は、創作された意匠が、その公開時において意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して、同法第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至った意匠(以下「公開意匠」という。)となったときは、その公開意匠が最初に公開された日から1年以内に当該公開意匠についての意匠登録出願を受ける権利を有する者が意匠登録出願し、所定の要件を満たした場合、その意匠登録出願に限り、新規性及び創作非容易性の要件の判断において、当該公開意匠を公知の意匠ではないとみなすものである。
本来であれば出願前に新規性及び創作非容易性の要件の判断となる公開意匠を、例外的に公知の意匠でないとみなすものであることから、同法第4条第3項に規定された手続を行うことが必要であり、それは、原則として同一の意匠が複数回公開された場合、それぞれの「公開の事実」が「証明する書面」に記載されていることが求められ、例えば、出願前に百貨店Aで公開した後、さらに百貨店Bでも同じ意匠を公開した場合、その両方の公開について、新規性の喪失の例外証明書に記載する必要があるものと解される。

2 新規性の喪失の例外証明書に記載された意匠の公開行為と引用意匠の公 開行為
(1)新規性の喪失の例外証明書に記載された意匠の公開行為
新規性の喪失の例外証明書に記載された意匠(以下「証明書記載意匠」という。)は、2017年12月12日に、請求人によるインターネット上でのニュースリリース、及び、東京都渋谷区神宮前6-16-26所在の展示会場「CASE B」における請求人主催の新製品発表会にて、請求人が公表したものであり、平成30年7月10日付けの「意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書」によると、当該証明書の別紙1ないし別紙3に公開の事実を示す書類が添付されている(別紙第3参照)。
ア 別紙1は、請求人による2017年12月12日付けインターネット上でのニュースリリースの記事の写し。
イ 別紙2は、株式会社アイスタイルが提供する化粧品関連の情報サイト「@COSMEブログ」に掲載された2017年12月12日付け記事の写し。
ウ 別紙3は、株式会社小学館が提供する美容関連の情報サイト「DIETポストセブン」に掲載された2018年2月25日付けの記事の写し。

(2)引用意匠の公開行為
引用意匠は、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2018年3月30日に受け入れた紙媒体のカタログ「POLA CATALOG 2018」に掲載されたものであり、当該カタログの裏表紙の記載によると、本誌発行日を2018年1月1日とするもので、請求人によって発行されたものと認められる(別紙第4参照)。

3 引用意匠について意匠法第4条第2項の規定を適用するか否かの判断
上記2(1)証明書記載意匠の公開行為は、請求人によるインターネット上でのニュースリリース、及び、展示会場における請求人主催の新製品発表会での公表であり、当該証明書添付の別紙1ないし別紙3からそれらの公開の事実を認めることができる。
一方、引用意匠の公開行為は、上記2(2)のとおり、請求人による紙媒体のカタログの発行であり、証明書記載意匠の公開行為と同一の公開行為とは認められない。
それでも、当該カタログの裏表紙の記載(本誌発行日:2018年1月1日)から、当該カタログは、証明書記載意匠の公開行為の後に発行されたものと解され、この証明書記載意匠の公開行為に基づいたものであれば、別個の手続を要することなく同項の適用を受けることができるものと解するのが相当であるところ、当該カタログに掲載されているキャッチコピーは、ニュースリリースのものと異なり、製品カタログとして製品を紹介する情報以外に、ニュースリリースに基づく記事、展示会における発表会に基づく記事のいずれの記載もなく(別紙第5参照)、また、当該カタログに掲載された引用意匠の写真は、証明書に添付された証明書記載意匠のいずれの写真とも異なっており、証明書記載意匠の公開行為の一連として、この行為に基づいたものとする事実を見いだすことができないから、引用意匠については同法第4条第2項の規定の適用を受けることができない。
加えて、引用意匠は、本願意匠の出願前に請求人自身が公開したものであり、新規性喪失の例外の規定を受けようとする者であれば、自ら公開した意匠について、新規性及び創作非容易性の要件の判断となるその公開意匠を例外的に公知の意匠でないとみなすためには、同法第4条第3項に規定された手続を行う必要があるところ、当該規定に基づいて引用意匠を公知の意匠でないとみなすことができないのは、そのための所定の証明書が提出されていないことに帰するから、引用意匠について同法第4条2項の適用を受ける余地はない。

第5 本願意匠と引用意匠の類否について

次に、本願意匠と引用意匠の類否について検討する。

1 本願意匠及び引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「コンパクト」である。一方、引用意匠の意匠に係る物品は「化粧品入れ」であり、白粉とパフを収納するケースであることから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、共通する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれもケースの内側を除く、蓋部及び本体部に係り、用途及び機能は共通する。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分の位置、大きさ及び範囲は、いずれもケースの内側を除く、蓋部及び本体部の外側の面とするものであり、一致する。

(4)両部分の形態の対比
以下、本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。
ア 両部分の形態の共通点
(ア)色彩について
蓋部の上面を淡い桃色とし、前面を淡い水色がかった黄緑色の異なる2色の構成とした点。
(イ)全体の構成について
平面視における横:縦を約3:2とし、正面側から開口する蓋部と本体部による構成としている点。
(ウ)蓋部の形状について
平面視における横:縦、及び厚みの比率を約3:2:0.2とする点。

イ 両部分の形態の相違点
(ア)色彩について
(ア-1)本願部分の蓋部は、左右の両側面及び背面を上面と同じ淡い桃色としているのに対し、引用部分は、蓋部の両側面及び背面側が表れておらず、不明である点。
(ア-2)本願部分の本体部は、正面中央の略横長長方形部を淡い黄色とし、その他を淡い灰色としているのに対し、引用部分の本体部は、正・背面、両側面、及び底面が表れておらず、不明である点。
(ア-3)本願部分は、4色の異なる色彩によって構成しつつ、それぞれの色彩は、淡い色調で統一しているのに対し、引用部分で特定できるのは淡い色調の2色にとどまっている点。
(イ)全体形状について
本願部分は、平面視における横:縦、及び厚みの比率を約3:2:0.4とする薄い略直方体形状であるのに対し、引用部分は、本体の厚みが表れておらず、不明である点。
(ウ)蓋部と本体部の具体的構成について
(ウ-1)本願部分は、外周側面の厚みのおおむね半分の位置で蓋部と本体部が水平に合わさっているのに対し、引用部分は、本体の外周側面が表れておらず、不明である点。
(ウ-2)本願部分は、外周側面すべてにわたり、蓋部と本体部の合わさる部分に向けてごく僅かに突出した略「く」の字状の構成としているのに対し、引用部分は、不鮮明あるいは表れていないことによりそれらの構成が不明である点。
(ウ-3)本願部分は、本体部の正面側中央に開蓋ボタン状の略横長長方形部を有しているのに対し、引用部分は、本体部の正面側中央に同様の機構が平面視で見て取れるが、正面側が表れていないため、具体的な形状が不明である点。

2 類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、同一である。

(4)両部分の形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の需用者は、化粧品を使用する購入者であり、手に持ったり、かばんに収納したり、台等に置いて使用する等の観点から、両意匠を観察するものということができる。
したがって、色彩が与える印象も需用者の注意を惹く部分であり、また、手に持ちやすい等の点についても注視するものということができる。

ア 形態の共通点
共通点(ア)の、淡い桃色と淡い水色がかった黄緑色の組合せによる印象は、需用者に共通した印象を強く持たせるものであるが、上面と正面を異なる2色とすることについては、本願意匠の出願前より既に公知となっている点を考慮すると(参考意匠1及び2)、この共通点が類否判断に与える影響は、一定程度のものにとどまる。
共通点(イ)は、両意匠の物品分野においては従来から見られるものであり、類否判断に与える影響は小さい。
共通点(ウ)も、両意匠の物品分野においては特徴的な構成ということもなく、類否判断に与える影響は小さい。

参考意匠1(別紙第6参照)
特許庁意匠課公知資料番号HJ20057759号の「コンパクト」の意匠

参考意匠2(別紙第7参照)
特許庁意匠課公知資料番号HJ21054641号の「コンパクト」の意匠

イ 形態の相違点
相違点(ア-1)ないし(ア-3)は、本願部分の淡い色調で統一した4色の異なる色彩による構成とした点が、需用者の注意を惹くポイントとなっているのに対し、引用部分は、蓋部の左右両側面や本体部の外周側面等、一部が表れていないことにより、淡い色調による2色の構成にとどまっており、色彩による構成を共通としたものとすることはできず、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)は、引用部分の本体部の具体的な厚みは不明であるが、本願部分の構成が当該物品分野において特徴的なものではないことから、引用部分の本体部の具体的な厚みが不明であっても、当該物品分野における通常の知識を有する者であれば、厚みはそれほどないものであることは想定できるため、両部分の類否判断に与える影響は大きなものとすることはできない。
相違点(ウ-1)は、本願部分の態様が、当該物品分野においてよく見られるものであるとしても、外周側面の厚みのおおむね半分の位置で蓋部と本体部が接合しているのか、本体部の厚みが不明でどのような構成となっているのか特定できないといった相違は、両部分の類否判断に一定の影響を与えるものといわざるを得ない。
相違点(ウ-2)は、本願部分は当該物品分野において出願前より公知となっている態様ではあるが(参考意匠3)、引用部分が不明で、どのような態様となっているのか特定できないため、両部分の類否判断に一定の影響を与えるものといわざるを得ない。
相違点(ウ-3)は、本願部分は、本体部の正面側中央に開蓋ボタン状の略横長長方形部を有しているのに対し、引用部分は、正面側が表れていないため、不明であり、どのような態様となっているのか特定できないため、両部分の類否判断に一定の影響を与えるものといわざるを得ない。

参考意匠3(別紙第8参照)
日本国意匠公報(発行日:2015年(平成27年)年3月30日)に掲載された、「化粧品入れ」(意匠登録第1520454号)の意匠

(5)両部分の類否判断
両部分の形態における共通点、相違点の評価に基づき、両部分を全体として観察する。
色彩について、共通点(ア)が、両部分の類否判断に一定程度の影響を与えるものと認められものであるが、相違点(ア-1)ないし相違点(ア-3)が両部分に与える影響は大きい。
一方、形状においても共通点(イ)、共通点(ウ)は共に類否判断に与える影響は小さいのに対し、相違点(ウ-1)ないし相違点(ウ-3)はいずれも類否判断に一定程度の影響を与えており、相違点(イ)の類否判断への影響は大きなものではないとしても、相違点の方が共通点を上回っている。
そして、両部分を全体として観察した場合、相違点が与える影響は、共通点が与える影響よりも大きく、両部分の形態は類似するとはいえない。

(6)両意匠の類否判断
両意匠の「意匠に係る物品」が同一で、両部分の「用途及び機能」及び「位置、大きさ及び範囲」が同一ではあるが、「形態」が類似していない。
よって、これらを総合して判断すると、両意匠は、類似しない。

第6 むすび

以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-04-24 
出願番号 意願2018-12810(D2018-12810) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 重坂 舞 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 北代 真一
正田 毅
登録日 2020-05-26 
登録番号 意匠登録第1661597号(D1661597) 
代理人 五味 飛鳥 
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