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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F5 |
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管理番号 | 1362417 |
審判番号 | 不服2019-16033 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-28 |
確定日 | 2020-05-23 |
意匠に係る物品 | ショーケース付冷蔵庫 |
事件の表示 | 意願2018- 28027「ショーケース付冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は,平成30年(2018年)12月21日の意匠登録出願であって,令和1年5月22日付けの拒絶理由の通知に対し,同年7月8日に意見書が提出されたが,同年8月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年11月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願の意匠は,意匠に係る物品を「ショーケース付冷蔵庫」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。)(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠は,日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成16年(2004年)4月12日)に記載された,意匠登録第1201925号(意匠に係る物品,ショーケース付冷蔵庫)の意匠であって,その形態を,同公報に記載されたとおりとしたものである(以下「引用意匠」という。)(別紙第2参照)。 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「ショーケース付冷蔵庫」であって,一致する。 (2)形態の対比 両意匠の形態を対比すると,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形態の共通点 (共通点1)両意匠は,全体の形態を,略直方体形状の冷蔵庫(以下「冷蔵庫部」という。)の天板上面部の背面側部分に,側面視略直角台形状のショーケース(以下「ネタケース部」という。)を設け,ネタケース部の左右側面部分に,ネタケース部及び天板の側面部背面側部分を覆う化粧板を設けた構成とした点で共通する。 (共通点2)両意匠は,冷蔵庫部の形態を,正面視の左端部分を除いた大部分に,前面に開き扉を配した正面視略横長長方形状の冷蔵室部分(以下「冷蔵室部」という。)を設け,冷蔵庫部の正面視左端の部分に,正面視略縦長長方形状の温度調節部分(以下「温度調節部」という。)を設け,冷蔵庫部の底面部四隅部分に略倒円錐台状の脚部を1つずつ配設した構成とした点で共通する。 (共通点3)両意匠は,ネタケース部の形態を,その上面部を正面側に向かって下に傾斜した側面視略直角台形状の筐体とし,上面部に,透明なスライド扉を,その端部を重ねて配設した点で共通する。 (共通点4)両意匠は,冷蔵室の各開き扉の形態を,ほぼ同じ大きさの略正方形板状体とし,左開き扉では右上角部付近に,右開き扉では左上角部付近に,略半楕円状の切り欠き部を形成し,各切り欠き部の前方側に把手部を水平に1つ配設した点で共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)本願意匠の温度調節部の形態が,正面部の上端部付近に左側面視略「く」の字状の折曲部を形成した略縦長直方体形状とし,正面側上方から,6つの細長長方形状のスリットからなる細長長方形状の部分,二重の略隅丸長方形状の部分(以下「温度表示部」という。),略逆ハット状に表れる部分,及び13行×3列の細長長方形状のスリットからなる略正方形状のエアフィルターの部分(以下「エアフィルター部」という。)を配した構成であるのに対し,引用意匠の温度調節部の形態が,全体を略縦長直方体形状とし,正面部の略上半分左端部付近に22個の略細長小長円形状の開口部を,僅かに間隔をあけて1列形成し,この開口部右側の上方付近に略横長長方形の部分を配し,略下半分に8行×2列の略細長大長円形状の開口部を配した構成である点で,両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠の冷蔵室部の形態が,2つの開口部を有し,この開口部に冷蔵室部左側から左開き扉と右開き扉をやや間隔をあけて配したものに対し,引用意匠の冷蔵室部の形態が,3つの開口部を有し,これらの開口部に冷蔵室部左側から左開き扉と右開き扉を僅かな間隔をあけて配し,さらに右開き扉をやや間隔をあけて配したものである点で,両意匠は相違する。 (相違点3)本願意匠のネタケース部の上面部には,透明な3枚のスライド扉を中央部の1枚が上側になるように,その端部を重ねて配設しているのに対し,引用意匠のネタケース部の上面部には,透明な4枚のスライド扉を両端部の2枚が上側になるように,その端部を重ねて配設して配設している点で,両意匠は相違する。 (相違点4)本願意匠のネタケース部のスイッチが,正面側板体の左端部に1つ配設しているのに対し,引用意匠のネタケース部のスイッチが,正面側板体の右端部に1つ配設している点で,両意匠は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品についての判断 両意匠の意匠に係る物品は,同一である。 (2)形態の類否についての判断 ア 共通点の評価 (共通点1)は全体の形態に係るものであるが,ショーケース付冷蔵庫の形態としてごく普通に見られるものであって,両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)の冷蔵庫部の形態,(共通点3)及び(共通点4)のネタケース部の形態及び開き扉の形態は,この種物品において既に見られるものであって,両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,この(共通点2)ないし(共通点4)が意匠全体の美感に与える影響も小さい。 イ 相違点の評価 (相違点1)は,この物品の需要者である業務として料理を行う専門の調理師等が使用時に強い関心を持って観察する温度調節部の形態に係る相違であるが,本願意匠が,略「く」の字状の折曲部により視認しやすい温度表示部やメンテナンスのしやすいエアフィルターが設けられた使い勝手の良い洗練された印象を与えるのに対し,引用意匠は,従来からある業務用の冷蔵庫の形態にすぎず,無骨でありふれた印象を与えるものであるから,両意匠は温度調節部の美感に大きな相違がある。 (相違点2)及び(相違点3)は,冷蔵室部及びネタケース部における開き扉及びスライド扉に係る相違であるが,本願意匠が,収納部分が大きい大型のショーケース付冷蔵庫であるとの印象を与えるのに対し,引用意匠は,やや小型のものであるとの印象を与えるものであるから,両意匠は冷蔵室部及びネタケース部における開き扉及びスライド扉の美感に大きな相違がある。 (相違点4)は,ネタケース部のスイッチの配置態様についての相違であるが,スイッチをネタケース部の正面側板体右端部に設けたものも,左端部に設けた者も既に見られるありふれた形態に係る相違にすぎないから,この(相違点4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 ウ 形態の類否判断 両部分の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両意匠は,需要者が使用時に強い関心を持って観察する温度調節部の美感に大きな差異があり,冷蔵室部及びネタケース部における開き扉及びスライド扉についても大きく異なるものであるから,両意匠の全体の形態や各部位の形態が共通することを考慮しても,意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえるから,両意匠の形態は類似しないものである。 3 小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,その形態において類似しないから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-04-30 |
出願番号 | 意願2018-28027(D2018-28027) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 一柳 萌、中村 遥子 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2020-06-03 |
登録番号 | 意匠登録第1662038号(D1662038) |