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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L6 |
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管理番号 | 1364050 |
審判番号 | 不服2019-12599 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-09-24 |
確定日 | 2020-04-20 |
意匠に係る物品 | 壁板材 |
事件の表示 | 意願2018- 14035「壁板材」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成30年(2018年) 6月26日 意匠登録出願 同年 12月25日付け 拒絶理由通知書 平成31年 3月 5日 意見書提出 令和 1年(2019年) 6月 4日付け 拒絶査定 同年 9月24日 審判請求書提出 第2 本願の意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「壁板材」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、「この意匠は、正面図において左右に連続する。」とし、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「この凹凸柄模様及び実線で示した部分が部分意匠として、意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠(別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1055374号 (意匠に係る物品、建築用壁板)の意匠の当該部分の意匠 第4 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「壁板材」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「建築用壁板」であって、表記は異なるが、いずれも建物の壁面に用いる板材であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。 (2)本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲 本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分をあわせて「両部分」という。)は、壁板材の表面部分であるから、両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲は一致する。 (3)両部分の形態 両部分の形態については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 ア 共通点 全体は、上下幅を固定した略横長矩形状で、その表面に、縦横の長さの比率が異なる複数種類の略横長長方形状の区画(以下「ブロック部」という。)を横一列に並べたものを上下に複数行配置し、上下左右に隣接するブロック部の境界に細溝状の目地を形成して面全体をいわゆる長手積みとし、さらに、各ブロック部の表面全体に不均一な浅い凹凸からなる石積み模様を施している点。 イ 相違点 (ア)全体 本願部分は、左右に連続する略横長帯状であるのに対し、引用部分は、略横長長方形状で、左右に連続していない点。 (イ)ブロック部の構成及び配置 (イ-1)行の数について、本願部分は、7行配置しているのに対し、引用部分は、6行である点。 (イ-2)ブロック部の構成について、本願部分は、ブロック部の縦の長さはすべて同じで、横の長さは大別すると長短あわせて7種類の異なる長さからなるブロック部を行ごとに適宜組み合わせているのに対し、引用部分は、上端及び下端の行のブロック部のみ他より僅かに縦が長く横の長さはすべて同じである点。 (イ-3)ブロック部の配置について、本願部分は、(イ-2)のとおり、横の長さが異なるブロック部を行ごとに適宜組み合わせているため、全体的に縦目地の位置が揃っていないのに対し、引用部分は、横の長さが同じブロック部を、行ごとに半分ずつ横にずらした千鳥状に配置しているため、縦目地の位置が1行置きに揃っている点。 (ウ)ブロック部の形態 (ウ-1)表面の態様について、本願部分は、軽く均した表面に、縦に線彫りしたような凹みや掻き取ったような凹みを無作為に多数形成し、ところどころ不均一なアメーバ状の凹みを形成したものとし、凸面にも微細な孔を多数形成しているのに対し、引用部分は、平坦面状で全体に細かいドット状の孔を設けた表面に、大小さまざまな島状の凹みが点在している点。 (ウ-2)周側面について 本願部分は、周側面全体を傾斜面としているのに対し、引用部分は、表面に対し垂直面としている点。 2 類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、いずれも建物の壁面に用いる板材であるから、同一である。 (2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲 両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は、同一である。 (3)両部分の形態 以下、両部分の形態について検討する。 ア 共通点の評価 この種物品の分野において、両部分のように、略横長長方形状のブロック部を長手積み状に配置したものは、本願出願前からごく普通にみられるありふれた態様であり、また、ブロック部の表面全体を不均一な浅い凹凸からなる石積み模様としたものも両部分の他にも普通にみられるものであって、両部分のみに共通する態様とはいえないものであることから、これらの共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 まず、相違点(ア)について、本願意匠は、使用時に端部加工される建築用資材であるところ、左右に連続するものである本願部分と定尺の引用部分との相違が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 次に、相違点(イ)について、(イ-1)は、1行のみの僅かな違いであることと、両意匠ともに単体で使用するものではなく上下に連接して使用するものであることから、(イ-1)の行の数の相違が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。一方、(イ-2)及び(イ-3)は、ブロック部の横の長さが7種類ある本願部分と1種類のみの引用部分とを比較すると、本願部分は、行ごとに長さの異なるブロック部を2個ないし3個用いることにより上下にアンバランスで変化に富んだ視覚的効果をもたらしているのに対し、引用部分は、横の長さがすべて同じである上、行ごとに半分ずつずらして千鳥状に配置しているため、全体的に単調で変化に乏しい視覚的印象を与えているから、看者に異なる美感をもたらすものといえ、両部分の類否判断に与える影響は大きい。 また、相違点(ウ)について、(ウ-1)は、表面を縦に削り取ったような凹みを多数形成した本願部分と、全体的に平坦面状で島状の凹みが点在した引用部分とは、表面の凹凸感が顕著に相違し、一見して、看者に異なる視覚的印象をもたらしているものであるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。一方、(ウ-2)は、目地脇で、これ自体は、さほど目立つものではないことから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 以上のとおり、相違点のうち、相違点(ア)、相違点(イ)の(イ-1)、相違点(ウ)の(ウ-2)は両部分の類否判断に与える影響は小さいが、相違点(イ)の(イ-2)及び(イ-3)、相違点(ウ)の(ウ-1)が、両部分の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。 3 小括 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、形態においては、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-03-10 |
出願番号 | 意願2018-14035(D2018-14035) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L6)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 樫本 光司 |
特許庁審判長 |
北代 真一 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 宮田 莊平 |
登録日 | 2020-07-22 |
登録番号 | 意匠登録第1665772号(D1665772) |