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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C6
管理番号 1364054 
審判番号 不服2020-461
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-14 
確定日 2020-06-30 
意匠に係る物品 加熱調理器 
事件の表示 意願2018- 24865「加熱調理器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成30年(2018年)11月14日の意匠登録出願であって,その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 2月28日付け 拒絶理由通知書
平成31年 4月 9日 意見書
令和 1年(2019年)7月 8日付け 拒絶理由通知書
令和 1年 8月21日 意見書
令和 1年11月14日付け 拒絶査定
令和 2年 1月14日 審判請求書

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「加熱調理器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載したとおりとし,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,この部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原審の拒絶の理由
原審において令和1年7月8日付けで通知した拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

「この種ガスコンロにおいて,コンロ本体部の正面右側に操作パネル部を形成し,該操作パネル部は,薄板状のもので,縦と横の寸法をほぼ同じ大きさに形成したものが,本願意匠の出願前に公然知られています【意匠1】。
また,操作パネル部において,前面下方側を,前側に膨出する態様の傾斜面に形成したものが,本願意匠の出願前に公然知られています【意匠2】。
本願意匠が意匠登録を受けようとする部分は,その出願前公然知られた【意匠1】の意匠に基づいて,操作パネル部を【意匠2】の意匠のように前面下方側を,前側に膨出する態様の傾斜面に形成したまでのものにすぎませんから,容易に意匠の創作をすることができたものと認められます。
なお,本願意匠の操作パネル部の下辺側が本体部下端より下方に位置する点及び背面側の構成が相違しますが,いずれも,意匠登録を受けようとする部分以外の部分との比較であって,これらの点が創作非容易性の判断に及ぼす影響は微弱にすぎません。

【意匠1】(当審注:別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1454102号の意匠
(意匠に係る物品:ガスこんろ)の本願意匠が意匠登録を受けようとする 部分に相当する部分の意匠

【意匠2】(当審注:別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1402045号の意匠
(意匠に係る物品:ガスこんろ)の本願意匠が意匠登録を受けようとする 部分に相当する部分の意匠 」

なお,上記【意匠2】の意匠に係る物品については,「ガスこんろ」は誤記であり,正しくは「電磁誘導加熱調理器」である。

第4 当審の判断
1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,願書の記載によれば「加熱調理器」であるが,願書の記載及び願書に添付した図面の記載を総合的に判断すれば,キッチン・カウンター等に埋め込んで使用する「ガスこんろ」と認められる。
(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は,こんろの操作パネルとしての用途及び機能を有するものである。
(3)本願部分の位置,大きさ及び範囲
本願部分は,こんろの部分に係るものであって,こんろ本体の前面において右側に,下方が,こんろ本体の下辺よりも少し下に,右方が,本体の右側面よりも少し右に張り出す位置に設けた,操作パネル部分を範囲とし,こんろ本体の全幅の約3.3分の1の横幅の大きさとしたものである。
(4)本願部分の形状
本願部分は,全体として前方斜め上方を向くように,約20度の角度で傾斜したものであって,全体をやや横長の長方形の薄い板状とし,その正面の縁に沿って枠状の線が表れているものである。

2 引用意匠の認定
(1)意匠1
意匠1は,本願の出願前に公然知られた意匠であって,キッチン・カウンター等に埋め込んで使用する「ガスこんろ」に係るものであり,点消火や火力調整は,天板に着脱自在に設けた操作つまみによって行うものである。
意匠1における本願部分に相当する部分は,こんろ本体の前面において右側に,右方が,本体の右側面よりも少し右に張り出す位置に設けた,やや横長の長方形に区画された部分を範囲とし,こんろ本体の全幅の約3.3分の1の横幅の大きさとしたものである。
そして,当該引用部分の形状は,前面がその他の部分の前面と面一で,垂直面とし,全体をやや横長の長方形の薄い板状としたものであって,下端面は,左右に亘り前方から後方へ下る傾斜を有している。
当該引用部分は,本願部分のように操作パネルとしての機能を有するかは不明である。
(2)意匠2
意匠2は,本願の出願前に公然知られたものであって,キッチン・カウンター等に埋め込んで使用する「電磁誘導加熱調理器」に係るものである。
意匠2における本願部分に相当する部分は,こんろ本体の前面において右側に,右方が,本体の右側面よりも少し右に張り出した位置に設けた,横長の長方形の部分を範囲とし,こんろ本体の全幅の約2.5分の1の横幅の大きさとしたものである。
そして,当該引用部分の形状は,前面がその他の部分の前面と面一で,前方斜め上方を向くように約8度の角度で傾斜し,全体を横長の長方形の板状体とし,その厚みは,前面が前方斜め上方を向く斜面となるように,下方へ向かって漸次厚みが増したものであり,上端面よりも奥行き幅のある下端面には,左右方向に細長く延びたスリットを設けたものである。
当該引用部分は,本願部分のように操作パネルとしての機能を有するかは不明である。

3 本願意匠の創作性の検討
本願意匠に係る物品分野において,こんろ本体の前面において右側を,やや横長の長方形の薄い板状としたものは,意匠1により公然知られた形状といえる。
しかしながら,本願部分の操作パネルとしての用途及び機能を有する点については,意匠1及び意匠2において引用した部分に,操作パネルとしての用途及び機能が認められないし,本願部分の,下方が,こんろ本体の下辺よりも少し下に位置し,全体が,前方斜め上方を向くように,約20度の角度で傾斜した形状についても,意匠1及び意匠2により公然知られたものとはいえない。
そうすると,本願意匠は,その出願前に当業者が公然知られた形状に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえない。

4 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-06-10 
出願番号 意願2018-24865(D2018-24865) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北代 真一前畑 さおり 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2020-07-22 
登録番号 意匠登録第1665774号(D1665774) 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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