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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C7
管理番号 1364982 
審判番号 不服2020-433
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-14 
確定日 2020-05-20 
意匠に係る物品 墓石 
事件の表示 意願2018- 27369「墓石」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)12月14日の意匠登録出願であり、令和元年(2019年)7月30日付けの拒絶理由通知に対し、同年9月10日に意見書が提出されたが、同年10月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和2年1月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「墓石」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表した部分(墓石の平面視右端に高低差を付けて開けた花立て及び線香立て用の穴部)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照。)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、下記に示すように、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には以下のとおりである。

「本願は、意匠に係る物品を『墓石』とし、墓石に2つの穴を設け、それらの穴の内壁部分を意匠登録を受けようとする部分とされたものですが、本願出願前より、花立てや線香立てのために石等に細穴を設けることは普通に行われています(例えば意匠1、意匠2、意匠3、意匠4、意匠5)。そうすると、墓石に、花立てと線香立てとして細穴を単に2つ設け、それらの穴の内壁部分を意匠登録を受けようとする部分とした本願意匠は、当業者であれば容易に創作できたものです。

意匠1(当審注:別紙第2参照):
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2011年11月 7日
受入日 特許庁意匠課受入2011年11月11日
掲載者 三洋電機株式会社(MoMAstore)
表題 ストーンシェイプ ベース(3個セット):(Tatsuo Yamada (b.1958)) MoMA STOREの通販 ホームアクセサリー・雑貨
掲載ページのアドレス http://www.momastore.jp/search/item210-91856-HA.html
に掲載された『花器』の意匠(真ん中の『花器』の意匠)
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23044359号)

意匠2(当審注:別紙第3参照):
特許庁特許情報課が2003年 3月20日に受け入れた
ドイツ意匠公報 2003年 1月25日2号
第378頁所載
置物の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH15003328号)

意匠3(当審注:別紙第4参照):
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2012年11月 5日
受入日 特許庁意匠課受入2012年11月 9日
掲載者 株式会社タカタレムノス
表題 http://lemnos.jp/2012_SHIROKANE_up.pdf
掲載ページのアドレス http://lemnos.jp/2012_SHIROKANE_up.pdf
に掲載された『香立て』の意匠(一番奥側の『香立て』の意匠)
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ24045369号)

意匠4(当審注:別紙第5参照):
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2015年11月12日
受入日 特許庁意匠課受入2015年12月 4日
掲載者 iichi株式会社
表題 ガラスの香立て8 作品詳細 | ツパイ工房 |ハンドメイド通販 iichi(いいち)
掲載ページのアドレス https://www.iichi.com/listing/item/703887
に掲載された『香立て』の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ27041333号)

意匠5(当審注:別紙第6参照)
特許庁発行の公開実用新案公報記載
昭和61年実用新案出願公開第161359号
第2図 『墓用蝋燭及び線香立』の意匠」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「墓石」である。

(2)本願部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分は、略扁平状の自然石風の墓石の上面右端に位置する2つの小円孔の内面であって、使用状態を示す参考図の記載によれば、花き及び線香を立てるための用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の形態
ア 本願部分の形態は、本願意匠である墓石の上面右端部に設けた2つの小円孔の内周面及び底面であって、

イ 2つ小円孔は、平面視において上下に並設したものである。

2 引用意匠の認定
原査定における拒絶の理由で引用された、意匠1ないし意匠5の意匠に係る物品及び形態は、概要以下のとおりである。

(1)意匠1
意匠1の意匠に係る物品は「花器」であり、意匠1のうち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、石等の上面に円孔を設けて花器とした態様である。

(2)意匠2
意匠2の意匠に係る物品は「置物」であり、意匠2のうち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、石等の上面に円孔を設けて置物とした態様である。

(3)意匠3
意匠3の意匠に係る物品は「香立て」であり、意匠3のうち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、略立法八面体のうちの一面の略正方形状面中央に小円孔を設けて香立てとした態様である。

(4)意匠4
意匠4の意匠に係る物品は「香立て」であり、意匠4のうち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、略直方体の上面に小円孔を設けて香立てとした態様である。

(5)意匠5
意匠5の意匠に係る物品は「墓用蝋燭及び線香立」であり、意匠5のうち、原審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、略横長四角錐台形の上面に一列に通穴を配して墓用蝋燭及び線香立とした態様である。

3 本願意匠の創作非容易性について
意匠法第3条第2項の規定の適用についての判断は、「意匠登録を受けようとする部分」の全体の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に、当該部分の用途及び機能を考慮し、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、その大きさ、その範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うものである。

また、この種物品分野における当業者は、近年の葬儀や埋葬方法の多様化を踏まえ、需要者の嗜好に合わせた選択を可能とすべく、墓地の形式や、墓石の形態だけでなく、墓参時における墓石への花きや線香の供え方等にも留意して意匠の創作を行うものといえる。

上記1(3)アの態様のうち、意匠に係る物品上面に、花き及び線香を立てるための円孔を設けることは、例えば、意匠1、意匠2及び意匠4に見られるとおりこの出願前から公然知られた態様であり、その円孔を小円孔とすることも、例えば意匠3及び意匠4に見られるとおり公然知られた態様であるといえる。
しかしながら、上記1(3)ア及びイの態様を、花立てや香立てに配することは意匠1ないし意匠5に表れるとしても、墓石そのものに配することについては、それらの意匠からは導き出せず、この種物品分野においてありふれた形状といえるものでもなければ、ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものといえる証拠もない。

そうすると、本願意匠は、意匠登録を受けようとする部分全体の形態である、小円孔の配設態様としては、ありふれた態様であって、当該態様に特段の創作性を認めることはできないものの、墓石そのものの上面右端に小円孔を2つ前後に配設する態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといえるものであり、意匠1ないし意匠5の形態に基づいて、本願意匠の形態を容易に創作することができたことを示す証拠は見られないから、本願意匠の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといわざるを得ず、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2020-04-08 
出願番号 意願2018-27369(D2018-27369) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 濱本 文子 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
木村 恭子
登録日 2020-08-18 
登録番号 意匠登録第1667588号(D1667588) 
代理人 中村 仁 
代理人 土生 真之 

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