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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K3 |
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管理番号 | 1366118 |
審判番号 | 不服2019-17420 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-24 |
確定日 | 2020-07-27 |
意匠に係る物品 | じょうろ |
事件の表示 | 意願2018- 24029「じょうろ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は,平成30年(2018年)10月31日の意匠登録出願であって,平成31年4月10日付けの拒絶理由の通知に対し,令和1年7月11日に意見書が提出されたが,同年9月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年12月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,令和2年2月26日に手続補正書の提出がなされたものである。 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願の意匠は,意匠に係る物品を「じょうろ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。)(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する,というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠は,電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠であって,その形態を,同ホームページに記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 記 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2012年 2月27日 受入日 特許庁意匠課受入2012年 3月 2日 掲載者 株式会社リッチェル 表題 ミニじょうろ:株式会社リッチェル 園芸用品 掲載ページのアドレス http://gardening.richell.co.jp/view.html?gid=79341 に掲載された「じょうろ」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ23075661号) 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「じょうろ」であるから一致する。 (2)形態の対比 両意匠の形態を対比する(以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)と,その形態には,主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形態の共通点 (共通点1)両意匠は,全体の形態を,貯水容器の上端部に,注水用の開口部(以下「注水口」という。)を形成した蓋を冠着し,貯水容器の左側面下方部分に,先端部に蓮口を設けたノズルを配設し,貯水部の右側面上下端部付近に,略横アーチ状の把手を設けた構成とした点が共通する。 (共通点2)両意匠は,蓋の形態を,側面部を垂直で細幅の帯状周側面とし,上面部の縁部分を水平面とし,その内側全体を上方になだらかに膨出させた形状とし,その膨出部の略右半分の部分に平面視略角丸三角形状の注水口を形成し,注水口の開口縁部を僅かに上方に折曲して形成した点で共通する。 (共通点3)両意匠は,貯水容器の蓋部下端部が接する周側面に凸状の段差部を1条形成した点で共通する。 (共通点4)両意匠は,ノズルの形態を,貯水容器の左側面下方部分に約40°の角度で配設したノズル本体を略細長円筒形状とし,蓮口のノズル取り付け部分を先端に向かって断面が略楕円形状のラッパ状とし,蓮口の上端部を上方になだらかに膨出させた平面視略略楕円形状とし,この上端部分に,一定の間隔で配置した複数の小円孔12列を略放射線状に配した放水部分(以下「放水部」という。)を形成した点で共通する。 (共通点5)両意匠は,把手の左右側面部分に,断面視略H字状になるように略凹状の溝部を1条ずつ形成した点で共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)本願意匠の貯水容器の形態が,正面からみて縦横奥行きの比率を約1:1.2:0.7とする略有底楕円筒形状とした構成であるのに対し,引用意匠の貯水容器の形態が,正面からみて縦横奥行きの比率を約1:0.7:0.7と認められる(引用意匠ホームページ中の「サイズ/37×13×18.7H(cm)」の記載参照)略有底円筒形状とした構成である点で,両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠のノズル取り付け部の形態が,ノズル本体下方部分と貯水容器左側面中央やや上方部分の間に,薄板状の梁材を設けてノズルを固定した形態であるのに対し,引用意匠ノズル取り付け部の形態が,ノズル本体下端部付近を断面が略楕円形状のラッパ状としてノズルを固定した形態である点で,両意匠は相違する。 (相違点3)本願意匠の把手の形態が,正面視略フの字状に形成しているのに対し,引用意匠の把手の形態が,正面視略半円弧状に形成している点で,両意匠は相違する。 (相違点4)本願意匠の放水部の小円孔の配置態様が,正面視において,上下方向に4つの小円孔からなる1列を中央部分に間隔をあけて2列配し,その左右側に3つの小円孔からなる1列を中央部分に間隔をあけて斜め方向に計4列配し,さらにその左右側及び左右方向に5つの小円孔からなる1列を中央部分に間隔をあけて計6列配した構成としているのに対し,引用意匠の放水部の小円孔の配置態様が,正面視において,中央部分に1つの円孔を配し,その回りに4つの小円孔からなる1列と3つの小円孔からなる1列を交互に12列配した構成としている点で,両意匠は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品についての判断 両意匠の意匠に係る物品は,同一である。 (2)形態の類否についての判断 本願意匠の意匠に係る物品である「じょうろ」は,貯水容器に水を溜めて,手に持って植物に水を与えるために使用することから,その需要者は,その使用時に重視する部位である貯水容器の大きさや把手及び放水部の具体的な形状が,需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。 したがって,本願意匠と引用意匠の類否判断に際しては,需要者は,貯水容器,把手,及び放水部の具体的な形態について強い関心を持って観察するとの前提に基づいて,両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について評価することとする。 ア 共通点の評価 (共通点1)は全体の形態に係るものであるが,じょうろの形態として既に見られるものであって,両意匠のみに認められる格別の特徴であるとはいえないから,この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)の蓋の形態,及び(共通点3)の貯水容器の段差部の形態は,引用意匠の前にはみられない両意匠にのみ共通する特徴的な形態であるとしても,部分的な部位における形態であるから,この(共通点2)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度のものである。 (共通点4)のノズル部の形態,及び(共通点5)の把手の溝部の形態は,本願意匠出願前から既にみられる形態にすぎず,これらの共通点が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 (相違点1)は,この物品の需要者が使用時に強い関心を持って観察する貯水容器の形態に係る相違であって,本願意匠が,楕円形状で正面から見た奥行きが短く高さの低いスリムで横長な容器のじょうろであるとの印象を与えるのに対し,引用意匠は,円筒形状で正面から見た奥行きがあり高さもある縦長なポットのような容器のじょうろであるとの印象を与えるものであるから,両意匠は貯水容器の縦長美感に大きな相違がある。 (相違点2)は,ノズル取り付け部の形態に係る相違であって,本願意匠が,ノズル本体を貯水容器にシンプルに取り付けているとの印象を与えるのに対し,引用意匠は,ノズル本体を貯水容器にしっかりと固着しているとの印象を与えるものであるから,両意匠はノズル取り付け部の美感に大きな相違がある。 (相違点3)は,需要者が注視する把手の形態に係る相違であって,本願意匠が,複雑な正面視略フの字状であるのに対し,引用意匠は,単なる半円弧状円筒形状であるから,両意匠は把手の美感に大きな相違がある。 (相違点4)は,需用者が水やりの際に注視する放水部の小円孔の配置態様であるが,その配置態様の相違は,いわれて気付く程度のものであって,両意匠とも複数の小円孔からなる12列を略放射線状に配したという共通性に埋没する相違であるから,両意匠は放水部の美感の相違は僅かなものである。 ウ 形態の類否判断 両部分の形態における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき,意匠全体として全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合,両意匠は,需要者が使用時に強い関心を持って観察する貯水容器,ノズル取り付け部及び把手の美感が異なるものであるから,両意匠の全体の構成態様や蓋及びノズルといった各部分の形態が共通することを考慮しても,意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえるから,両意匠の形態は類似しないものである。 3 小括 以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,その形態において類似しないから,本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2020-07-08 |
出願番号 | 意願2018-24029(D2018-24029) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 樫本 光司 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2020-10-02 |
登録番号 | 意匠登録第1670642号(D1670642) |
代理人 | 神保 欣正 |