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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1366123 |
審判番号 | 不服2020-3105 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-03-05 |
確定日 | 2020-09-15 |
意匠に係る物品 | 電気コネクタ用ハウジング |
事件の表示 | 意願2019- 6506「電気コネクタ用ハウジング」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成31年(2019年)3月27日の意匠登録出願であって、令和1年(2019年)9月27日付けの拒絶の理由の通知に対し、同年11月6日に意見書が提出されたが、同年12月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和2年3月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願は、意匠に係る物品を「電気コネクタ用ハウジング」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、特許庁が発行した意匠公報(公報発行日:平成9年(1997年)1月14日)に記載された、意匠登録第0972059号(意匠に係る物品、電気コネクタ用ハウジング)の意匠であって、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 第4 当審の判断 1 意匠の認定 (1)本願意匠 ア 意匠に係る物品 本願の意匠に係る物品は、「電気コネクタ用ハウジング」である。 イ 本願意匠の用途及び機能 本願意匠は、車両診断時に車両状態をチェックするために使用されるものであり、パネルに組み付けられて相手方のコネクタとは未かん合の状態で自動車内に搭載され、車両診断を行うテスト機器と接続するためのコネクタ用のハウジングを形成するという機能を有している。 ウ 本願意匠の形態 本願意匠は、(ア)前部に略台形柱形状の端子金具装着部(以下「装着部」という。)と、後部には略直方体状のハウジング部(以下「ハウジング部」という。)を有し、(イ)ハウジング部の上面中央には、前後方向に中央に凸状部を有する帯状部を配し、その左右両側には、正面側上方角部を斜めに切り欠いた略長方形板状のリブを3箇所ずつ設け、それらの後端側に後板を設けてなるものであり、左右両側寄り4箇所のリブは後板と同高であって、中央寄り2箇所のリブはそれらより低く形成してなるものである。また、(ウ)ハウジング部上下面の左右両端には、正面側に向けて、略半円形状のリブをそれぞれに計4箇所設けてなるものである。 (2)引用意匠 ア 意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は、「電気コネクタ用ハウジング」である。 イ 引用意匠の用途及び機能 引用意匠は、主として自動車の電気配線に使用するものであり、後部の電線引き出し側において、端子押えを係合して端子金具の後抜けに対する二重係止を行う機能を有している。 ウ 引用意匠の形態 引用意匠は、(ア)前部に略台形柱形状の装着部と、後部には略直方体状のハウジング部を有し、(イ)ハウジング部の上面中央は平坦に形成されており、その左右両側には、正面側上方角部を斜めに切り欠いた略長方形板状のリブを3箇所ずつ設け、それらの後端側に後板を設けてなるものであり、左右両側寄り4箇所のリブは後板より低く形成し、中央寄り2箇所のリブは、さらにそれらより低く形成してなるものである。また、(ウ)ハウジング部上面の左右両端には、正面側に向けて略直方体状の小突起を、ハウジング部上下面の左右両端には背面に向けて略台形状の突出部を設けてなるものである。 2 対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠と引用意匠(以下、「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、ともに「電気コネクタ用ハウジング」であるから一致する。 (2)本願意匠と引用意匠の用途及び機能の対比 両意匠は、ともに車両に設置され、車両診断時に車両状態をチェックするために使用されるものであり、車両診断の度にテスト機器のコネクタとかん合、離脱をする機能を有するものであるから、両意匠の用途及び機能は共通する。 (3)両意匠の形態の対比 両意匠の形態を対比すると、その形態には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。 なお、両意匠の形態の対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめることとする。 ア 両意匠の形態の共通点 (共通点1)両意匠は、前部に装着部と、後部にハウジング部を有する点で共通する。 (共通点2)両意匠は、ハウジング部の上面中央左右両側には正面側上方角部を斜めに切り欠いた長方形板状のリブを前後方向に3箇所ずつ設け、それらの後端側に後板を左右方向に設けてなるものである点、及び、左右両側寄り計4箇所のリブを同高とし、中央寄り計2箇所のリブをそれらより低く形成してなる点で共通する。 イ 両意匠の形態の相違点 (相違点1)ハウジング部上面中央の帯状部について、本願意匠は、中央に凸状部を有するのに対し、引用意匠は平坦に形成してなるものである点で相違する。 (相違点2)ハウジング部上面左右寄りに3箇所ずつ計6箇所に設けられたリブの具体的態様について、本願意匠は、左右両端寄りの計4箇所のリブが後板と同高に形成してなるものであるのに対し、引用意匠は後板より低く形成してなる点で相違する。 (相違点3)ハウジング部上下面左右両端部における突出態様について、本願意匠は、正面側上下面両端寄りに略半円状のリブを計4箇所設けてなるものであるのに対し、引用意匠は、正面側上下面両端部に略直方体状の小突起を計4箇所、及び背面側上下面両端部には略台形状の突出部を計4箇所設けてなるものである点で相違する。 (相違点4)装着部の右側面部分について、本願意匠には、引用意匠に見られる凹状溝を有さない点で相違する。 3 判断 本願意匠が意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するか否かについて、以下のように検討し、判断する。 なお、「電気コネクタ用ハウジング」は、車両状態をチェックするために使用するものであって、本願は車両に組み付けられる前のハウジングであるから、両意匠の需要者は、車両状態をチェックする者及び車両を設計する者である。 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠は、いずれも車両に設置され、車両診断時に車両状態をチェックするために使用されるものであり、車両診断の度にテスト機器のコネクタとかん合、離脱を繰り返す機能を有するものであるから、両意匠の意匠に係る物品は一致する。 (2)両意匠の形態の類否判断 ア 両意匠の形態の共通点の評価 (共通点1)は、両意匠の基本的な構成態様に係るものであって、全体の特徴を概括的に捉えたものに過ぎず、また、この種物品に従来から見られる形態である。このため、この(共通点1)が両意匠の美感に与える影響は限定的なものである。 (共通点2)は、両意匠のリブに関するものであるが、ハウジング部の上面に、正面側上方角部を斜めに切り欠いた長方形板状のリブを3箇所ずつ設けることは、両意匠のみに共通する態様とはいえないことから、この(共通点2)が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 イ 両意匠の形態の相違点の評価 (相違点1)は、ハウジング部の上面の中央部分におけるものであり、この種物品を観察する際に観察されやすい部分であることから、この(相違点1)が、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度存在する。 (相違点2)は、ハウジング部上下面左右両端部におけるリブの具体的態様に関するものであり、この種物品をパネルに組み付ける際にがたつきを防ぐなどの重要な働きをする部分であって、その形状は需要者に細かく観察されるものであることから、この(相違点2)が、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度存在する。 (相違点3)も、ハウジング部上下面左右両端部における突出態様に関するものであり、この種物品をパネルに組み付ける際にがたつきを防ぐなどの重要な働きをする部分であって、その形状は需要者に細かく観察されるものであること、また、本願意匠の略半円形のリブはこの種物品において新規なものであることから、この(相違点3)は、両意匠の類否判断に大きな影響を与えている。 (相違点4)は、両意匠の装着部の右側面分部に関するものであり、相手方のコネクタとかん合させる際に観察されやすい部分であることから、この(相違点4)が、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度存在する。 ウ 形態の類否判断 両意匠の形態における共通点と相違点の評価に基づき、両意匠を総合的に観察すると、この種物品においては、需要者は、パネルに組み付ける際に、がたつきを防ぐ機能を発揮するリブの形状を特に観察するものであるところ、両意匠のハウジング部上下左右両端のリブの具体的態様が異なり、また、本願意匠の略半円形のリブは、この種物品においては従来見られない新規な形状であるから、需要者に別異の印象を与え、両意匠に異なる美感を起こさせるものである。さらに、両意匠の前部の略台形柱形状部の側面側の溝の有無の相違は、相手方のコネクタとかん合する際に、需要者の注意を惹くものであるから、需要者に異なる美感を起こさせるものといえる。 そうすると、両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき意匠全体を総合的に観察した場合、両意匠の形態は、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、類似しない。 (5)小括 上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が類似し、両意匠の用途及び機能が一致するが、その形態において類似しないから、両意匠は類似しないものである。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-08-26 |
出願番号 | 意願2019-6506(D2019-6506) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清水 玲香 |
特許庁審判長 |
木村 恭子 |
特許庁審判官 |
濱本 文子 江塚 尚弘 |
登録日 | 2020-09-25 |
登録番号 | 意匠登録第1670062号(D1670062) |
代理人 | 特許業務法人栄光特許事務所 |