• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判    D7
管理番号 1366127 
審判番号 無効2020-880001
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-01-30 
確定日 2020-09-07 
意匠に係る物品 テーブル 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1641930号「テーブル」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 意匠登録第1641930号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
登録第1641930号の意匠(以下「本件意匠」又は「本件登録意匠」ともいう。)は,平成30年(2018年)10月30日に意願2018-23865号として出願され,令和1年(2019年)8月30日に設定登録され,同年9月24日に意匠公報が発行された。

そして,令和2年1月30日に,コクヨ株式会社(以下「請求人」という。)により,本件意匠の登録を無効とする旨の本件無効審判の請求がされ,当審は,期間を指定し,株式会社内田洋行(以下「被請求人」という。)に対して答弁を求めたが,被請求人は指定した期間までに答弁書を提出しなかった。

そこで,当審は,同年6月11日付けで,本件無効審判を書面審理とする旨を通知した。

第2 請求の趣旨及び理由の要点,並びに証拠方法
本件無効審判の請求の趣旨は「登録第1641930号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」というものであり,その理由として,(1)本件登録意匠は,その出願日前に意匠公報に掲載された甲第3号証の意匠(以下,各甲号証の意匠を「甲3意匠」などという。)と類似するから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである(無効理由1),(2)本件登録意匠は,その出願日前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,甲3,甲5及び甲7意匠に基づいて容易に創作をすることができたものであるから,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである(無効理由2),と主張した。

また,請求人は,証拠方法として,以下の書証を提出した。
甲第1号証 本件登録意匠公報写し
甲第2号証 拒絶理由通知書写し
甲第3号証 意匠登録第1602365号公報写し
甲第4号証 意見書写し
甲第5号証 テーブルの公知マップ
甲第6号証 本件審判請求人のホームページ写し
甲第7号証 台形天板の公知意匠マップ
甲第8号証 本件登録意匠と甲3号意匠との寸法対比図
甲第9号証 本件登録意匠と甲3号意匠との肘の位置を示す対比説明図
甲第10号証 本件登録意匠と甲3号意匠とのそれぞれの実施品の対比図
甲第11号証 類似意匠マップ
甲第12号証 本件登録意匠と甲3号意匠との対比図
(以下では,各甲号証を「甲1」などと記載する。)

第3 被請求人の答弁
審判長は,被請求人に対し,審判請求書の副本を送達し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。

第4 請求人の主張の概要
1.本件意匠について
(1)本件意匠に係る物品「テーブル」の用途,機能について
この種物品である「テーブル」は,「一人用のワークテーブル」であって,従来から多数存在する周知ないし公知(甲5参照)の「テーブル」である。
従来の,この種「テーブル」の天板は全て水平な平坦面からなるものである。
しかも,この種「テーブル」は,椅子やソファに座って使用するものである。

(2)本件意匠の部分意匠としての用途,機能
本件意匠は部分意匠であって,その範囲はテーブルの脚を除く,天板と該天板の後方側(奥側)に設けられたトレーの部分をその範囲とするもので,天板はパソコン等を載置して使用するためのものであって,トレーは筆記具やペットボトル等を載置するためのものである。

(3)部分意匠の位置,大きさ,範囲
本件意匠は,甲1の意匠公報の赤色で着色した部分以外の部分が部分意匠として登録を受けようとする部分であって,双柱脚上面の天板と該天板の後方側に設けたトレーがその部分意匠の範囲である。
天板は,右側面視,双柱脚頂部から左方向に下向き傾斜した傾斜横杆上に傾斜して横架設されてなり,しかも該天板の後方端側に設けたトレーは,天板に略水平に突設してなる。

(4)本件意匠の形状
本件意匠は,テーブル全体に対し天板及びトレーは,上記構成態様に示すような大きさ,範囲,位置からなるものであり,さらにその形状は下記構成態様からなる。
ア 基本的構成態様
〔態様A〕 天板は,平面視横長基調に形成されてなり,
〔態様B〕 天板の後方側には,平面視,天板より極めて縦幅が幅狭で,かつ略横長長方形状のトレーが突出して設けられてなり,
〔態様C〕 右側面視において,前記天板が傾斜して形成されてなり,
〔態様D〕 前記トレーは,水平に突設してなることで,前記天板と該トレーが側面視略への字状を呈してなる構成であり,

イ 具体的構成態様
〔態様E〕 側面視,前記天板は厚みをもって形成され,トレーは該天板より薄板である,
〔態様F〕 平面視,前記天板は,手前側がやや幅広で奥側が幅狭な略台形状に形成されてなり,
〔態様G〕 前記天板の四隅は,平面視においてわずかに隅丸に形成されてなり,
〔態様H〕 前記トレーの後方端には,側面視,上向き突設した突部が形成されてなり,
〔態様I〕 該トレーは支持部材の一部を延伸して形成されてなり,
〔態様J〕 前記トレーの横幅は,天板の横幅に比しやや幅狭に形成されてなる。
以上のとおり,本件意匠は,上記〔態様A〕ないし〔態様J〕の構成態様からなる「テーブル」である。

2.無効理由1について
(1)甲3意匠について
ア 出願の経緯
甲3意匠は,請求人が所有する登録意匠で,本件意匠の出願日(平成30年10月30日)前の平成30年4月23日に意匠公報に掲載された意匠である。

イ 甲3意匠の創作ポイントについて
(ア)甲3意匠は「一人用のワークテーブル」として開発したもので,主として職場空間や広いスペースに個人用としてゆったり感を味わいながら業務効率を高めることをコンセプトとして開発したもので,その主たる創作ポイントは,従来固定観念化されていたテーブルの天板が水平であることを打破し,傾斜天板としたこと,及び天板とは別に筆記具やペットボトル等を載置するためのトレーを天板の後方側に別体で設けたことにある。
これによって,従来全く存在しない斬新で画期的な形状の「テーブル」を創作できたものである。

(イ)甲3意匠
甲3意匠は,本件意匠と同様に「テーブル」で,「一人用のワークテーブル」としての用途,機能は共通するのみならず,その部分意匠としての範囲もテーブルの「天板及び天板の後方側に突設したトレー」を範囲とするため共通するものである。

ウ 甲3意匠の形状
(ア)甲3意匠は,同意匠公報に掲載されているように実線であらわした部分を部分意匠として意匠登録を受けた部分で,その形状は下記構成からなる。

(イ)甲3意匠の構成
A 基本的構成態様
〔態様a〕 天板は,平面視横長基調に形成されてなり,
〔態様b〕 該天板の後方側には,平面視,天板より極めて縦幅が幅狭で,かつ略横長長方形状のトレーが突出して設けられてなり,
〔態様c〕 右側面視において,前記天板が傾斜して形成されてなり,
〔態様d〕 前記トレーは,水平に突設してなることで,前記天板と該トレーが側面視略への字状を呈してなる構成であり,
B 具体的構成態様
〔態様e〕 側面視,前記天板は,やや厚みをもって形成され,トレーは該天板より薄板状である,
〔態様f〕 平面視,前記天板は,略長方形状に形成されてなり,
〔態様g〕 前記天板の四隅は,平面視において手前側が隅丸に,奥側が角張って形成されてなり,
〔態様h〕 前記トレーの後方端には,側面視,上向き突設した突部が形成されてなり,
〔態様i〕 しかも,該トレーは,独立した部材により形成されてなり,
〔態様j〕 前記トレーの横幅は,天板と略同幅に形成されてなる。
以上のとおり,甲3意匠は,上記〔態様a〕ないし〔態様j〕の構成態様からなる「テーブル」である。

(2)本件登録意匠と甲3意匠との対比
本件意匠と甲3意匠とを対比すると,下記のとおりの共通点と相違点がある。
ア 両意匠に係る物品
両意匠に係る物品は,いずれも「テーブル」であって物品は共通する。
しかも,該テーブルは,「一人用のワークテーブル」であって,主として事務用として椅子やソファ等に座ってその前にテーブルを置きパソコン等を操作するためのものであって,いずれも物品としての用途,機能を共通するものである。

部分意匠としての用途,機能
部分意匠の範囲として特定された前記天板とトレーの範囲は,両意匠とも共通し,その範囲であるテーブルの天板及び天板の後方側に設けたトレーも用途,機能を共通にするものである。

ウ 位置,大きさ,範囲
両意匠は,いずれも双柱脚(一対の支柱としての脚)の頂部から右側面視,左方向に下向き傾斜した傾斜横杆上に天板を横架設した点,及び略水平にトレーを天板の後方端側に突設してなる点はいずれも共通するものである。

エ 両意匠の形状の対比
(ア)共通点
前記のように,本件登録意匠の基本的構成態様である〔態様A〕ないし〔態様D〕は,甲3意匠の〔態様a〕ないし〔態様d〕に相当し,両意匠はその基本的構成態様において共通する他,その具体的構成態様においても〔態様E〕と〔態様e〕,〔態様H〕と〔態様h〕の構成が共通するものである。

(イ)相違点
これに対し,本件登録意匠と甲3意匠とは下記具体的構成態様において相違する。

A 本件登録意匠の天板は,手前側がやや幅広な略台形状に形成されてなる(〔態様F〕)のに対し,甲3意匠の天板は,略長方形状に形成されてなる点(〔態様f〕)が相違する。

B 本件登録意匠の天板の四隅が,平面視においてわずかに隅丸に形成されてなる(〔態様G〕)のに対し,甲3意匠の天板は,平面視において手前が隅丸に,奥側が角張って形成されてなる(〔態様g〕)点が相違する。

C 本件登録意匠のトレーが,支持部材の一部を延伸して形成されてなる(〔態様I〕)のに対し,甲3意匠のトレーは,独立した部材により形成されてなる(〔態様i〕)点が相違する。

D 本件登録意匠のトレーの横幅が,天板よりもやや幅狭に形成されてなる(〔態様J〕)のに対し,甲3意匠のトレーの横幅は,天板と略同幅に形成されてなる点(〔態様j〕)が相違する。

オ 両意匠の相違点の評価
(ア)天板形状の相違
本件意匠と甲3意匠とは,天板形状において相違するが,本件意匠のような略台形状の天板は,例えば甲7に示すように従来周知ないし公知形状で,この種テーブルの天板としてはありふれた形態であって,テーブルの天板として何ら新規な形態ではない。
さらに,略台形状とはいえ,甲8の寸法比から明らかなように,上辺(600mm)に対し,下辺の寸法は660mmで,その寸法差は約60mmであって,天板の横幅寸法からすれば,全体観察するとそれほど極端なものではなく,むしろ両意匠は横長形状を基調とするものであるとの共通感の方が需要者に強く印象付けるため,係る天板形状の相違は両意匠の類否判断に影響を与えるものではない。

(イ)天板の隅丸形状の相違
両意匠は,天板の奥側の角が隅丸に形成されてなるか,角張って形成されてなるかにおいて相違するが,天板の四隅を隅丸に形成されてなるテーブルは,甲7に示すように,周知ないしは少なくとも公知な形状であり,また,使用時においては手前側に手や腕等が当たる頻度が多いため,需要者は奥側よりも手前側の形状により着目するといえることから,両意匠の天板奥側の形状相違よりも,手前側の隅丸形状における共通の構成態様の方が,需要者に共通の審美感を与えるものである。
よって,奥側の角が隅丸か否かは類否に影響を与えるものではない。

(ウ)トレーの構成の相違
両意匠は,トレーの構成について,支持部材の一部を延伸して形成されてなるか,独立した部材により形成されてなるかにおいて相違し,この点について,意匠権者は,意見書(甲4の11ページ)において,本件意匠のトレーは天板下から延伸して形成されてなることにより,天板とトレーとが非連続となることで,天板が強調されるのに対し,甲3意匠のトレーは天板に直接固定され,それにより隙間が無く,天板とトレーとが連続的に接続されることから,天板とトレーにまとまり感があるため,天板のみが独立して看取される態様となっていないと主張してなる。
しかしながら,本件意匠のように,トレーが天板下から延伸して形成されてなるから天板が強調されて看取されるとか,甲3意匠のように,トレーが独立した部材であって,天板に直接固定されてなるから,天板とトレーとが一体感があって,天板のみが独立看取されないとの判断は,明らかに局部的観察手法であり,該相違は正面視からは視認できない部分であって,この相違は両意匠を全体観察するに際し類否を左右する程の大なる差ではない。
むしろ需要者は傾斜天板の後方側にトレーが突設していること及びトレーの後端縁に突部が突出している全体の形態に注意が喚起されるものである。
すなわち両意匠は,何れも厚みのある傾斜天板の後方側に,薄板状からなるトレーが水平に形成されてなり,しかも天板とトレーが角度をつけて形成されてなる構成は,テーブルを観察する際に,需要者が必ず目にし,かつ,注意を惹く箇所におけるものであり,さらに,使用時における使い勝手や使用感に直結するものであることから,意匠的効果が大であって,需要者は,トレーが天板直下から延伸して形成されているとか,天板に直接固定されている等の構造に着目するのではなく,上記した,甲3意匠独自の,極めて斬新な形態と天板とトレーとの角度が付いた組み合わせ形態にこそ着目するものである。
よって,トレーの構成相違は,両意匠を非類似と判断する程大なる差異ではないのである。

(エ)トレーと天板の幅との関係相違
本件意匠の天板は,平面視,略台形状なるため手前側の最大横幅に対し,奥側の横幅と略同幅なトレーは幅狭状で,かつ天板の奥側両側端部は隅丸形状となっているため,トレーと天板との間にわずかな段差が生じて天板とトレーとが非連続で一直線状ではないのに対し,甲3意匠の天板とトレーとは平面視,同幅で,トレーと天板とは略一直線状に連続的である点相違すると本件意匠権者は主張する(甲4の11ページ)。
しかるに,天板の最大横幅とトレーとの横幅とは天板が略台形状で両側辺が傾斜している以上同一幅ではないが,その傾斜角度も極めて小さく,しかも略台形状の天板がありふれた形状である以上,前記段差の有無や段差を介しての非連続的か連続的かは全体観察,特に使用者が座った状態で天板にパソコン等を置いて業務や事務を行う場合に,上記相違はほとんど視認できず,意匠的に需要者の注意力が格別喚起されるほどの相違点ではないのである。
むしろ,使用状態を考慮するならば,傾斜天板と該天板の後方側に筆記具やペットボトル等を載置するトレーが,水平に一体的に設けられてなるワークテーブルの形状に需要者の注意力が喚起されるのであって,前記相違点はテーブル全体を観察すると微差である。

カ 意見書の主張の不当性
意匠権者は,審査官が引用した甲3意匠と本件意匠の最大の相違点として,意見書(甲4)の12頁の「小括」で,要旨「本件登録意匠は天板の形状に特徴がありかつ天板自体が独立して目立つように形成されてなる構成に特徴がある」と主張している。
しかしながら,本件登録意匠の意匠に係る物品は,「テーブル」であって,決して「天板」ではないのである。
さすれば,前記のように「テーブル」の天板のみの形状を局部的に観察してその相違点を殊更強調して非類似を主張する判断手法は,明らかに部分意匠類否判断を誤った判断手法であって明らかに失当である。

(3)本件意匠と甲3意匠との類否
ア 本件意匠は部分意匠であるが,部分意匠類否判断は,単に部分意匠の形態のみならず物品全体の位置,大きさ,範囲を勘案しながら部分意匠の類似の範囲を判断するべきであるとするのが,従前の判決である(例えば知財高裁平成22年(ネ)第10014号,大阪地裁平成23年(ワ)第14336号)。
このことを前提として本件意匠と甲3意匠との類否を検討する。

イ 甲3意匠の評価
本件意匠よりも先に開発され登録された甲3意匠に係る「テーブル」は,甲6に示すように,名称「コクヨパーソナルテーブルペルソ」として販売されており,「ソロワークをもっと快適に。新しい働き方を提案するパーソナルテーブル」をキャッチコピーに,ソファ等に座って使用する際の後傾姿勢であっても快適に業務が行えるように,1対の双柱脚の頂部の横杆を傾斜横杆とし,該横杆上に天板を横架設して,天板を傾斜させて形成してなるものである。
しかも,天板が傾斜していても,コップや筆記具等が転落しないよう,安定して置くことができるための水平な薄板状のトレーを天板の後方端側に設けてなる全体のテーブル形態は,従来全く存在しない極めて斬新な構成からなるテーブルである。
すなわち,甲3意匠は極めて機能的で独創的な美感を備えたものであり,特に天板とトレーの組み合わせ態様は,先にも述べたように,テーブルを観察する際に,需要者が必ず目にし,かつ,注意を惹く箇所におけるものであって,さらに,使用時における使い勝手や使用感に直結するものであることから,その創作性は高く評価されるべきものである。このことは,前記テーブルが市場において高く評価されていることからも裏付けできる。
以上のように甲3意匠は,前記形状的特徴としてのテーブルの形状は,まさにパイオニア的デザインであって,該デザインの評価は高く評価されなければ意匠的保護に欠くことになる。

ウ よって,検討すると,本件意匠も甲3意匠もいずれも左右両側の脚の頂部に設けた傾斜横杆上に横架設した天板の位置,及び天板の傾斜形状並びに該天板の後方側に天板より縦幅が小なるトレーを水平に一体的に設けた基本的な構成態様において共通するものである。

部分意匠の物品全体における位置,大きさ,範囲も共通し,しかも前記基本的構成態様からなる「テーブル」は従来全く存在しなかった極めて斬新な形状であることを考慮すると,需要者はテーブルの基本的形態に着目するため,両意匠は明らかに類似するものである。

オ 両意匠の類否判断(結論)
上記を踏まえて,本件意匠と甲3意匠との類否を検討すると,本件意匠と甲3意匠との共通する基本的構成態様及び共通する具体的構成態様からなるテーブルは,前記のように従来全く存在しない斬新な形状で,特に傾斜天板と水平なトレーとの組み合わせによる一体感からなるテーブルにおいて,両意匠は明らかにその意匠の要部が共通し,かつ需要者に与える印象を共通にするものであるため,両意匠は類似することは明らかである。

(4)小括
以上のように,本件意匠と甲3意匠とは,(ア)天板形状の相違,(イ)天板の隅丸形状の相違,(ウ)トレーの構成の相違,(エ)トレーと天板の幅との関係相違についての相違点があるが,いずれの相違点も両意匠を非類似と根拠付けるほどの相違ではない。
むしろ,需要者は,従来全く存在しなかった斬新な「テーブル」としての基本的形状に着目するもので,特に使用時に一人用のワークテーブルとして使用できる利便性とペットボトル等を載置できるトレーとの組み合わせに格別な魅力あるテーブルとして注目するため,両意匠が需要者に共通の美感を与えるもので両意匠が類似することは多言を要しない。
特に,この種「テーブル」として従来全く存在しない画期的なテーブルとしてパイオニア的意匠である甲3意匠が開発された経緯を鑑みると,先駆者である甲3意匠の意匠権者にとって本件意匠のようなわずかな改変意匠が非類似意匠として登録されることになるならば,先行意匠の保護に欠くのみならず,意匠権者の出願意欲を減退させることになり,意匠法第1条の精神に反することになるのである。
いずれにしても,本件意匠は,甲3意匠に類似するため,意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたことは明白である以上,同法第48条第1項第1号により無効にされるべきものである。

3.無効理由2について
(1)本件意匠は,前記のように無効理由1によって明白な無効理由が存在するものである。
しかしながら,万一,甲3意匠と本件意匠とが非類似であると判断されたとしても,本件意匠は本件無効理由2によって無効にされるべきである。以下無効理由2について論述する。

(2)本件意匠の「テーブル」について
ア テーブルの基本的形態
(ア)本件意匠に係る「テーブル」,特に一人用のワークテーブルは,甲5に示すように古くから存在する周知の形状で,その主たる構成は双柱脚上に横杆等を設け,該横杆上に平らな天板を載置してなる態様からなる。

(イ)一方,本件意匠の特徴は,(A)前記双柱脚の頂部に下向き傾斜した傾斜横杆を設け,該一対の傾斜横杆上に天板を手前側に下向き傾斜させて構成した点,(B)該天板の上端側後方側に天板より小なる薄板状のトレーを突設した点にテーブルの基本的形態としての特徴がある。

(ウ)しかるに,上記傾斜天板(A)と該天板の後方に薄板状のトレーを設けて(B)なる基本的形態は,甲3意匠によって公知な形状であることは明白である。

イ 台形天板について
一方,本件意匠のように天板を略台形状とした形態からなるテーブルは,甲7に示すように周知であり,天板の各辺がなす角度や縦横比を若干変更することも,当業者において通常行われている常套手段である。

ウ 天板の角部を隅丸にする手法について
天板の角部を隅丸とすることも,甲7に示すように慣用的な手法である。

(3)創作容易
そうすると,本件意匠は,周知形状のテーブルに,甲3意匠の天板形状を,甲7のような隅丸の略台形天板とし,当業者においてありふれた手法である略台形状の各辺のなす角度や縦横比を改変することで容易に創作をすることができたものである。
なお,天板の後方に設けられたトレーを天板幅よりも狭くすることは,台形天板の角部が隅丸の場合において,トレーを台形天板の略幅に収めるように設置することに特段の困難性は認められず,天板の角が隅丸であれば,トレーが天板幅よりも狭くなることは当然の結果であることから,トレーの幅を天板よりも狭くすることに何ら格別な創作性を有するものではない。

(4)小括
以上,検討の結果,本件意匠が,仮に意匠法第3条第1項第3号の無効理由に該当しないとしても,本件意匠は意匠法第3条第2項によってこの種物品分野のいわゆる当業者にとっては容易に創作できたものであることは明らかである。
よって,本件登録意匠は意匠法第3条第2項に該当する無効理由を有するものである。

4.むすび
以上のとおり,本件意匠は無効理由1及び2のいずれかによって無効とされるべきものであるため,意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し,同法同条同項柱書に基づいて無効とすべきである。

第5 当審の判断
1.本件意匠
本件意匠は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって,「赤色で着色した部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。赤色で着色した部分と部分意匠として意匠登録を受けようとする部分との境界線のうち,参考B-B’部分拡大右側面図において青色で示す境界線(引出線1で示す境界線)は形状線を表すものではなく,単にこれら部分の境界のみを表している。」としたものである(別紙第1参照)。
そして,本件意匠については,以下の点を認めることができる。

(1)意匠に係る物品
本件意匠の意匠に係る物品は,テーブルである。

(2)本件部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本件意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本件部分」という。)は,脚を除く,天板とトレーの部分である。
本件部分は,脚の上端に載置した天板及びその奥側に設けたトレーの位置,大きさ及び範囲である。
本件部分の天板は斜めになっているため,通常のテーブルにおける水平状態の天板の用途や機能はなく,テーブルにおける斜めになった天板の用途及び機能と,その奥に設けたトレーの用途及び機能を有している。

(3)本件部分の形状
ア 基本的構成態様
(ア)略横長四角形の天板と,その奥側に設けた扁平(へんぺい)な溝状のトレーから成っている。
(イ)天板は,手前が下がっているように僅かに傾斜している。
(ウ)トレーは,水平になっている。

イ 具体的態様
(エ)テーブルは,その上で手作業ができるほどの厚さがあり,トレーは,それほど重いものは載せられない程度の薄板である。
(オ)天板は,手前をやや広くした横長の略台形状である。
(カ)天板の四隅は,平面視において角丸になっている。
(キ)トレーは,側面視においてL字状であって,水平状の部分を置き場所にしており,その奥側が上側に折れ曲がって落下防止用壁と成る垂直状の突部を形成していて,その突部は,天板の厚さより低いものである。
(ク)トレーは,天板の下面に取り付けられている。
(ケ)トレーの横幅の長さは,天板の奥側の横幅の長さよりもやや短くしている。

2.甲3意匠
甲3に係る意匠(以下「甲3意匠」といい,本件意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,甲3に記載されたとおりとしたものであり,甲3意匠については,以下の点を認めることができる(別紙第2参照)。

(1)意匠に係る物品
甲3意匠の意匠に係る物品は,テーブルである。

(2)甲3部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
甲3意匠のうち,本件部分に相当する部分(以下「甲3部分」といい,本件部分と併せて「両部分」という。)は,脚を除く,天板とトレーの部分である。
甲3部分は,脚の上端に載置した天板及びその奥側に設けたトレーの位置,大きさ及び範囲である。
甲3部分の天板は斜めになっているため,通常のテーブルにおける水平状態の天板の用途や機能はなく,テーブルにおける斜めになった天板の用途及び機能と,その奥に設けたトレーの用途及び機能を有している。

(3)甲3部分の形状
ア 基本的構成態様
(ア)略横長四角形の天板と,その奥側に設けた扁平な溝状のトレーから成っている。
(イ)天板は,手前が下がっているように僅かに傾斜している。
(ウ)トレーは,水平になっている。

イ 具体的態様
(エ)テーブルは,その上で手作業ができるほどの厚さがあり,トレーは,それほど重いものは載せられない程度の薄板である。
(オ)天板は,横長の略長方形である。
(カ)天板の手前側の角は,平面視において角丸になっており,奥側の角は直角である。
(キ)トレーは,側面視においてU字状であって,水平状の部分を置き場所にしており,その手前側が上側に折れ曲がっていて,天板との取付け突部となっており,奥側も上側に折れ曲がって落下防止用壁と成る垂直状の突部を形成していて,手前側の突部は天板の厚さと同じ高さで,奥側の突部は天板の厚さよりも高いものである。
(ク)トレーは,天板の奥側端面に取り付けられている。
(ケ)トレーの横幅の長さは,天板の横幅の長さと同じ長さである。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本件意匠に係る物品は「テーブル」であり,甲3意匠に係る物品も「テーブル」であるから,両意匠に係る物品は一致する。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比
両部分共に,テーブル中,脚を除く天板とトレーの部分である。
両部分は,脚の上端に載置した天板及びその奥側に設けたトレーの位置,大きさ及び範囲である。
両部分は,テーブルにおける斜めになった天板の用途及び機能と,その奥に設けたトレーの用途及び機能を有している。

(3)両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す共通点と相違点が認められる。
ア 共通点について
(ア)略横長四角形の天板と,その奥側に設けた扁平な溝状のトレーから成っている。
(イ)天板は,手前が下がっているように僅かに傾斜している。
(ウ)トレーは,水平になっている。
(エ)テーブルは,その上で手作業ができるほどの厚さがあり,トレーは,それほど重いものは載せられない程度の薄板である。
(オ)天板の手前側の角は,平面視において角丸になっている。
(カ)トレーは,水平状の部分を置き場所にしており,その奥側が上側に折れ曲がって落下防止用壁と成る垂直状の突部を形成している。

イ 相違点について
(ア)天板の形状につき,本件部分は,略台形状であるのに対して,甲3部分は,略長方形である点。
(イ)天板の奥側の角における平面視の形状につき,本件部分は,角丸になっているのに対して,甲3部分は,直角である点。
(ウ)トレーの側面視形状につき,本件部分は,L字状であるのに対して,甲3部分は,U字状である点。
(エ)トレーにおける突部の高さにつき,本件部分は,天板の厚さより低いものであるのに対して,甲3部分は,手前側の突部は天板の厚さと同じ高さで,奥側の突部は天板の厚さよりも高いものである点。
(オ)トレーの取付け位置につき,本件部分は,天板の下面に取り付けられているのに対して,甲3部分は,天板の奥側端面に取り付けられている点。
(カ)トレーの横幅の長さにつき,本件部分は,天板の奥側の横幅の長さよりもやや短くしているのに対して,甲3部分は,天板の横幅の長さと同じ長さである点。

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の,意匠に係る物品は,いずれも「テーブル」であるから,一致している。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価
両部分共に,テーブル中,脚を除く天板とトレーの部分で,脚の上端に載置した天板及びその奥側に設けたトレーの位置,大きさ及び範囲であるから,位置,大きさ及び範囲は一致し,両部分共に,テーブルにおける斜めになった天板の用途及び機能と,その奥に設けたトレーの用途及び機能を有しているから,用途及び機能が一致している。

(3)両部分における形状の評価
ア 共通点について
共通点(ア)ないし(エ)を評価するために,公知の態様を検討すると,甲3意匠の出願前より,テーブルの分野において,以下の(a)ないし(c)の態様が存在する。
(a)作業効率を考慮して,天板を水平から斜めに角度を任意に変更できるものや,天板が僅かに傾斜しているものは存在する。
(b)天板の角度が変更できるもの又は傾斜しているもの(以下「天板の角度が変更できるもの」や「天板が傾斜しているもの」を併せて「傾斜天板」といい,傾斜天板を用いたテーブルを「傾斜テーブル」という。)で,飲物が入ったコップなどが置けるように,傾斜天板である主天板の横や奥側に,主天板と同じ厚さの水平な補助的天板を用意しているテーブルは存在する。
(c)傾斜天板の手前に,筆記具などを置けるように,付加的に薄板のトレーを設けたテーブルは存在する。
しかし,傾斜テーブルであって,傾斜天板上の作業中に,飲物が入ったコップなどが倒れないように,付加的に,水平でかつ薄板のトレーを天板の奥側に設けたものは,甲3意匠の出願前及び本件意匠の出願前には見当たらず,両意匠のみの特徴と認められるから,共通点(ア)ないし(エ)が,両部分の形状の類否判断に与える影響はとても大きい。
また,加えて,共通点(エ)については,主となる傾斜天板の存在を際立たせ,かつ,テーブル全体にシンプルでスマートな印象を与えるものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。
共通点(オ)については,テーブルの天板の角を角丸にしたものは,この物品分野においてありふれた形状であって,数多く見られるものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は無い。
共通点(カ)については,この種物品分野におけるトレーとしては,有りがちな形状であるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は限定的である。

イ 相違点について
相違点(ア)については,本件部分は台形ではあるが,底角の角度が直角に近く,脚(「台形の脚」のこと。天板の左右辺のこと。)の傾きが小さいことから,一般的な長方形のテーブルを見慣れた需要者であれば,注意深く観察しなければ,台形であることが気付きにくいといえるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は,一定程度にとどまるものといわざるを得ない。
相違点(イ)については,使用状態においては,主要な作業場である天板の奥側の相違であるから,需要者の目につきにくい箇所の相違といえ,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(ウ)及び(オ)の,トレーの側面視形状と取付け位置の相違については,使用状態においては,天板に隠れて見えない部分の相違であり,共通点(カ)に埋没する程度のものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。
そして,相違点(エ)の,奥側の突部における高さの相違については,置き場所の奥の突部の高さの相違であり,かつ,僅かな高さの違いであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(カ)については,僅かな幅であって,天板上面と面一のものであれば,その幅の僅かな相違も観者は認識するかも知れないが,相違点(カ)は,使用状態において,目に入るのは,天板の上面より低い高さの置き場所と,その奥側の突部であるから,段差があり,観者が僅かな相違を意識するとは考えられず,なおかつ,天板の奥側の僅かな幅の相違であるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。

(4)小括
そうすると,両部分の形状は,その共通点の類否判断に及ぼす影響が相違点のそれを凌駕するものであり,需要者に共通の美感を起こさせるものであるから,類似するものと認められる。

(5)両意匠における類否判断
以上のとおり,本願意匠と引用意匠を対比した場合,意匠に係る物品が一致し,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能が一致しており,両部分の形状も類似すると認められるものであるから,本願意匠と引用意匠とは類似する。

第6 結び
以上のとおりであって,本件意匠は,無効理由1によって,意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し,同条同項柱書の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから,無効理由2を検討するまでもなく,登録第1641930号の意匠登録は,無効にすべきものである。

審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
別掲


審理終結日 2020-07-08 
結審通知日 2020-07-13 
審決日 2020-07-29 
出願番号 意願2018-23865(D2018-23865) 
審決分類 D 1 113・ - Z (D7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 松下 香苗 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2019-08-30 
登録番号 意匠登録第1641930号(D1641930) 
代理人 特許業務法人藤本パートナーズ 
代理人 五味 飛鳥 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ