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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) H7
管理番号 1366130 
判定請求番号 判定2019-600044
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2020-10-30 
種別 判定 
判定請求日 2019-12-27 
確定日 2020-08-31 
意匠に係る物品 テレビ受像機用スタンド 
事件の表示 上記当事者間の登録第1640078号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠の図面及びその説明により示された「テレビ受像機用スタンド」の意匠は、登録第1640078号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1 判定請求人の請求の趣旨及び理由
1 請求の趣旨
本件判定請求人は、イ号意匠は、登録1640078号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との趣旨の判定を求め、その理由を後記2のとおり主張し、証拠として、後記4の甲号証を提出した。

2 請求の理由
(1)判定請求の必要性
請求人は、本件判定請求に係る登録意匠(甲第1号証及び甲第2号証、以下「本件登録意匠」という。)及び本件登録意匠を関連意匠とする本意匠(甲第3号証、登録第1640021号、以下「本件本意匠」という。)の意匠権者である。
請求人は、通信販売商材の企画・開発・卸及び販売並びにECサイトを運営する株式会社であり、自社のオリジナル製品を数多く手がけている。特に、2015年に発売した壁寄せTVスタンド「WALL」は、2017年に「グッドデザイン賞」(公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞するなどそのデザインが高く評価されるとともに(甲第4号証)、同種製品の中で高い人気を誇っている(甲第5号証)。
現在、請求人は、「WALL」製品をシリーズ化し、約10種類の製品群となっている。この「WALL」シリーズの1つとして、請求人は、コンパクトサイズのテレビスタンドを企画し、その意匠である本件本意匠について、2019年2月14日に意匠登録出願し、そのバリエーションである本件登録意匠について、同月18日に関連意匠として意匠登録出願したところ、いずれも同年8月2日に意匠登録された。
また、請求人は、本件本意匠に係る製品「WALL TV STAND anataIRO」を2019年4月26日に発売している。
一方、被請求人は、甲第6号証に示す被請求人製品(商品番号45400015の壁寄せテレビスタンド、以下「イ号物件」という。)について、楽天株式会社が運営する楽天市場における被請求人の販売サイトで発売を予告し、2019年8月に発売して販売を継続している(甲第7号証)。
請求人は、イ号物件の意匠(以下「イ号意匠」という。)が本件登録意匠及び本件本意匠に類似することから、令和元年8月30日付け通知書で被請求人にイ号物件の製造・販売の中止等を求めた(甲第8号証)。
しかしながら、被請求人は、令和元年9月6日付けの「御連絡」と題する書面において、何らの理由も示すことなくイ号物件が本件登録意匠及び本件本意匠に類似していないとして、「販売中止等については対応致しかねます。」とだけ回答してきた。
こうした被請求人の対応から、請求人は、被請求人との建設的な話し合いは難しいと考え、本件判定請求に及んだ次第である。
(2)本件登録意匠の手続の経緯
出願 平成31年2月18日(意願2019-003162)
登録 令和元年8月2日(意匠登録第1640078号)
(3)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「テレビ受像機用スタンド」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載したとおりとし、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本件意匠部分」という。)としたものである。
ア 意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は、「テレビ受像機用スタンド」である。
イ 本件意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
本件意匠部分は、テレビ受像機用スタンドにおいて、床面に設置されるベースとテレビ受像機が取り付けられる取付部とを連結する支柱部分であり、使用者がテレビ受像機を視聴しやすい高さで取付部を支持する用途及び機能を有する。
また、本件意匠部分は、ウで後述する傾斜部及び水平部を有してベースの上面とベースの中央付近上方に位置する取付部の後面との間に介在し、本件意匠部分の高さ寸法は取付部の高さ寸法よりも大きく、水平部の軸方向の長さ寸法はベースの同方向の長さ寸法よりも小さい。
ウ 本件意匠部分の形態
(ア)本件意匠部分の全体の基本構成は、ベースから斜め後方に延在する傾斜部と、傾斜部の上端から前方に延在して前端に取付部が設けられる水平部とからなり、傾斜部及び水平部により側面視で「7」(当審注:鉤状部のない「7」である。以下同様。)の字状の形態を有する。
(イ)側面視において、傾斜部の後縁から水平部の上縁にかけての輪郭が、まず約12度上方に折曲した後に水平部の高さ寸法の分(本件意匠部分の高さ寸法全体に対して約5.6パーセントの長さ)だけ延び、その後に約90度折曲して前方に延びている。
(ウ)傾斜部がベースとなす角度は約78度であり、水平部が傾斜部となす角度も約78度である。
(エ)傾斜部の軸方向に直交する断面(横断面)の外形と水平部の軸方向に直交する断面の外形とが同一であり、いずれも正方形である(傾斜部も水平部も同径の正方形の角パイプからなる。)。
(オ)本件意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部及び水平部の径(幅寸法)の割合は、約5.6%である。
(カ)本件意匠部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合は、約17%である。
(キ)傾斜部の後面下部と前面上部に、破線で表した形態不特定の部分がある。
(4)イ号意匠の説明
イ号意匠は、製品名を「壁寄せテレビスタンド」とするテレビ受像機用スタンドに関するもので、その形態は、甲第6号証の「被請求人製品意匠\(イ号意匠)」に示すとおりである。以下では、イ号意匠において本件登録意匠の意匠登録を受けようとする部分(本件意匠部分)に相当する部分を「イ号意匠相当部分」とし、本件意匠部分及びイ号意匠相当部分をあわせて「両意匠部分」とする。
なお、甲第6号証には、両意匠部分の形態の対比に有益と思われるため、イ号意匠のみならず本件登録意匠(関連意匠)及び本件本意匠も示す。
ア 意匠に係る物品
イ号意匠の意匠に係る物品は、「テレビ受像機用スタンド」である。
イ イ号意匠相当部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
イ号意匠相当部分は、テレビ受像機用スタンドにおいて、床面に設置されるベースとテレビ受像機が取り付けられる取付部とを連結する支柱部分であって、使用者がテレビ受像機を視聴しやすい高さで取付部を支持する用途及び機能を有する。
また、イ号意匠相当部分は、ウで後述する傾斜部及び水平部を有してベースの上面とベースの中央付近上方に位置する取付部の後面との間に介在し、イ号意匠相当部分の高さ寸法は取付部の高さ寸法よりも大きく、水平部の軸方向の長さ寸法はベースの同方向の長さ寸法よりも小さい。
ウ イ号意匠相当部分の形態
(ア)イ号意匠相当部分の全体の基本構成は、ベースから斜め後方に延在する傾斜部と、傾斜部の上端から前方に延在して前端に取付部が設けられる水平部とからなり、傾斜部及び水平部により側面視で「7」の字状の形態を有する。
(イ)側面視において、傾斜部の後縁から水平部の上縁にかけての輪郭が、同じ傾斜で延びた後、約73度折曲して前方に延びている。
(ウ)傾斜部がベースとなす角度は約73度であり、水平部が傾斜部となす角度も約73度である。
(エ)傾斜部の軸方向に直交する断面の外形と水平部の軸方向に直交する断面の外形とが同一であり、いずれも正方形である(傾斜部も水平部も同径の正方形の角パイプからなる。)。
(オ)イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する傾斜部及び水平部の径の割合は、約5.3%である。
(カ)イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合は、約12%である。
(5)本件登録意匠とイ号意匠との対比
ア 意匠に係る物品の対比
本件登録意匠及びイ号意匠をあわせて「両意匠」とすると、両意匠の意匠に係る物品は「テレビ受像機用スタンド」であり、意匠に係る物品が一致する。
イ 両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の対比
両意匠部分は、いずれもテレビ受像機用スタンドにおけるベースと取付部とを連結する支柱部分であって、使用者がテレビ受像機を視聴しやすい高さで取付部を支持する用途及び機能を有し、両意匠部分の用途及び機能が一致する。
また、両意匠部分は、いずれも傾斜部及び水平部を有してベースの上面とベースの中央付近上方に位置する取付部の後面との間に介在し、両意匠部分の高さ寸法は取付部の高さ寸法よりも大きく、水平部の軸方向の長さ寸法はベースの同方向の長さ寸法よりも小さいから、両意匠部分の位置、大きさ及び範囲が一致する。
なお、本件意匠部分の水平部の先端は、願書に添付した図面のうち6面図においては取付部の後面の上部に連結し、イ号意匠相当部分の水平部の先端は、取付部の後面の下部に連結しているが、本件意匠部分の水平部の先端も取付部の後面の下部に連結可能であるから(そのことは、本件本意匠の願書に添付した【支持部材の位置を変更した状態を示す参考図】からも明らかである。)、両意匠部分の位置、大きさ及び範囲が一致するとの上記の結論は、取付部との位置関係によって変わることはない。
ウ 両意匠部分の形態の対比
(ア)両意匠部分の形態の共通点
(共通点1)両意匠部分は、全体の基本構成が、ベースから斜め後方に延在する傾斜部と、傾斜部の上端から前方に延在し、前端に取付部が設けられる水平部とからなり、傾斜部及び水平部により側面視で「7」の字状の形態を有する点において共通する。
(共通点2)両意匠部分は、傾斜部の軸方向に直交する断面の外形と水平部の軸方向に直交する断面の外形とが同一(正方形)である点において共通する。
(共通点3)両意匠部分は、両意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部及び水平部の径の割合が、いずれも5?6%である点において共通する。
(イ)両意匠部分の形態の相違点
(相違点1)本件意匠部分は、傾斜部がベースとなす角度及び水平部が傾斜部となす角度が約78度であるのに対し、イ号意匠相当部分は、傾斜部がベースとなす角渡及び水平部が傾斜部となす角度が約73度である点において、両意匠部分は相違する。
(相違点2)本件意匠部分は、側面視において、傾斜部の後縁から水平部の上縁にかけての輪郭が、まず約12度上方に折曲した後に水平部の高さ寸法の分(本件意匠部分の高さ寸法全体に対して約5.6パーセントの長さ)だけ延び、その後に約90度折曲して前方に延びているのに対し、イ号意匠相当部分は、その輪郭が、水平部の高さ寸法の分(本件意匠部分の高さ寸法全体に対して約5.3パーセントの長さ)も含めて同じ傾斜で延びた後、約73度折曲して前方に延びている点において、両意匠部分は相違する。
(相違点3)本件意匠部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合が約17%であるのに対し、イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合が約12%である点において、両意匠部分は相違する。
(相違点4)本件意匠部分には、傾斜部の後面下部と前面上部に、破線で表した形態不特定の部分があるのに対し、イ号意匠相当部分には、形態不特定の部分がない点において、両意匠部分は相違する。
(6)本件登録意匠とイ号意匠との類否
ア 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。
イ 両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の評価
両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は、同一である。
ウ 両意匠部分の形態の評価
(ア)共通点の評価
共通点1について、傾斜部及び水平部により側面視で「7」の字状の形態を有する両意匠部分の全体の基本構成は、本件登録意匠の審査においても、本件本意匠の審査においても、近似する公知意匠が引用されず、本件判定請求前の請求人の調査によっても発見されなかった。すなわち、傾斜部及び水平部からなる「7」の字状の形態は、「テレビ受像機スタンド」の物品分野において非常に特徴的な形態であり、需要者の注意を強く引きつけるから、共通点1が両意匠部分の全体の美感に与える影響は極めて大きい。
共通点2について、傾斜部の軸方向に直交する断面の外形と水平部の軸方向に直交する断面の外形とが同一(正方形)である点は、1本の直線状の部材を折曲させて「7」の字状としたような印象を需要者に与え、両意匠部分の共通点1による共通した印象をさらに強めるものであるから、共通点2は、共通点1と相俟って、両意匠部分の全体の美感に影響を及ぼす。
共通点3について、両意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部及び水平部の径の割合が5?6%である点は、両意匠部分の「7」の字状が同じ太さ(又は細さ)で構成されているような印象を需要者に与え、両意匠部分の共通点1による共通した印象をさらに強めるものであるから、共通点3は、共通点1と相俟って、両意匠部分の全体の美感に影響を及ぼす。
(イ)相違点の評価
相違点1について、両意匠部分の傾斜部がベースとなす角度及び水平部が傾斜部となす角度が約5度相違するが、甲第6号証に示すように、この角度差は、本件登録意匠とイ号意匠とを側面図で並べてもほとんど認識し得ない。ましてや、需要者が通常見るであろう正面側(前方又は斜め前方)から観察した場合や、本件登録意匠とイ号意匠とを離隔して観察した場合には、この角度差を認識することは困難であって、相違点1が両意匠部分の全体の美感に与える影響は小さい。
相違点2について、側面視で傾斜部の後縁から水平部の上縁にかけての輪郭が相違するが、本件意匠部分では、傾斜部から水平部に移行する箇所で折曲しているものの、その角度が約12度で傾斜を大きく変えているとの印象を与えない上に、その折曲前までの傾斜した輪郭の長さに対して僅か約6パーセントの長さだけ延びた後に大きく折曲して前方に向きを変えているから、2点で折曲しているといっても、1つ目の折曲は目立たず、事実上、2つ目の折曲で「7」の字状の形態を構成している。したがって、1点で折曲して「7」の字状の形態を構成しているイ号意匠相当部分と比べ、生じる美観に大きな差異はなく、相違点2が両意匠部分の全体に与える影響は限定的である。なお、相違点2と同様の相違は本件登録意匠と本件本意匠との間にも存するが、本件登録意匠は本件本意匠と類似するとして関連意匠登録が認められている。
相違点3について、両意匠部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合が相違するが、この相違は、取付部の厚み(前後方向の寸法)の違いに起因するものである。つまり、テレビ受像機スタンドにおいて、テレビ受像機は、取付部に取り付けられた状態でベースの中央付近の上方に位置することが安定上(テレビ受像機スタンドが倒れにくいという観点から)望ましく、本件登録意匠もイ号意匠もそのようにデザインされているが、甲第6号証に示すように、イ号意匠の取付部は、水平部の前端に設けられる上下に長尺なブロック状の部材が一定の厚みを有し、さらに、その前方に設けられてテレビ受像機が係止される左右に長尺な板状部材との間に距離もあるから、本件登録意匠の取付部よりも厚く、その分、イ号意匠相当部分の水平部が短くなっている。一方、この水平部の長短は、需要者には、取付部の厚みの違いによる反射的な差異程度にしか認識されず、加えて、需要者が通常見るであろう正面側から観察した場合には(とりわけ、テレビ受像機が取り付けられていると)、ほとんど目立たなくなるから、相違点3が両意匠部分の全体の美感に与える影響は限定的である。
相違点4については、本件意匠部分には傾斜部の後面下部と前面上部に形態不特定の部分があるというだけであって、その部分が、周囲の支柱周面と連続する面(傾斜部の後面下部と前面上部に破線で表した部分がない場合と同様の面)で構成されてもかまわないのであるから、相違点4は両意匠部分の全体の美感に影響を与えるとはいえない。
(ウ)類否判断
両意匠部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づいて、両意匠部分全体として総合的に観察すると、両意匠部分は、共通点1の評価のとおり、傾斜部及び水平部からなる「7」の字状の特徴的な形態によって共通した美感を有し、この美感の共通性は、共通点2乃至共通点3の評価のとおり、両意匠部分がいずれも傾斜部の後縁から水平部の上縁にかけての輪郭が折曲し、傾斜部の軸方向に直交する断面の外形と水平部の軸方向に直交する断面の外形とが同一の正方形であり、両意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部及び水平部の径の割合が5?6%であることによって、強められている。
これに対し、相違点1乃至相違点4の評価のとおり、傾斜部がベースとなす角度及び水平部が傾斜部となす角度の微差、後縁の輪郭の僅かな違い、水平部の長さの違い、並びに、形態不特定の部分の有無は、いずれも両意匠部分の全体の美感に大きな影響を与えるものではなく、共通点1乃至共通点3が需要者にもたらす上記の共通した美感を減殺するものではない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が同一で、両意匠部分の形態が需要者に共通した美感を起こさせるものであるから、相互に類似する。
(7)むすび
以上のとおり、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するから、請求人は、請求の趣旨のとおりの判定を求める。

3 「判定事件弁駁書」における主張
請求人は、令和2年6月19日付けで「判定事件弁駁書」を提出して、おおむね以下の主張をした。
(1)「請求人による『本件登録意匠の説明』についての反論」について
後記第2の2(1)には、「請求人による『本件登録意匠の説明』についての反論」として、次の記載がある。
「判定請求書の本件登録意匠(登録第1640078号意匠)の説明には、以下の2点について、記載が省かれている。
(A)本件意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合が約26.6%である点(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照。なお、乙第1号証は甲第6号証に基づいて作成されたものである)。
(B)本件意匠部分において、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約1.5倍の長さを有している点(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)。」(当審注:対象寸法の取り違えと推認され、後記第2の2(4)にならえば、「水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の」は「水平部の軸方向の寸法を基準として、傾斜部の奥行方向の寸法は」と認められる。以下同様。)
しかしながら、(A)については、「本件意匠部分の高さ寸法」とは「傾斜部」の高さ寸法と同様であるから、請求人が前記2(3)ウ(ウ)で「水平部が傾斜部となす角度も約78度である。」と説明し、同(オ)で「本件意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部及び水平部の径(輻寸法)の割合は、約5.6%である。」と説明したことと同義に過ぎない(tan12°(=90°-78゜)は約0.21(約21%)であるから、これに「約5.6%」(厳密には、「約5.6%」にcos12°(約0.98)を乗じたもの)を加えると「約26.6%」に近い値となる。)。
また、(B)については、「水平部の軸方向の寸法」は「傾斜部の奥行方向の寸法」よりも短いから、「水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約1.5倍の長さを有している」ことはあり得ない。
したがって、被請求人の後記第2の2(1)における主張は、失当である。
(2)「請求人による『イ号意匠の説明』についての反論」について
後記第2の2(2)には、「請求人による『イ号意匠の説明』についての反論」として、次の記載がある。
「判定請求書のイ号意匠の説明では、以下に述べる(C)の点が間違って記載されており、また(D)、(E)の2点について、記載が省かれている。
(C)イ号意匠相当部分に関して、『取付部がベースの中央付近上方に位置している』は間違いである。正しくは、『壁寄せテレビスタンド(イ号意匠)を部屋の壁に寄せて設置したとき、イ号意匠の取付部は、側面視してベースの後端付近(ベースの壁側付近)の上方に位置している。』である。
(D)イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合が約36.1%である点が省かれている(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)。
(E)イ号意匠相当部分において、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約3.1倍の長さを有している点が省かれている(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)。」(当審注:対象寸法の取り違えと推認され、後記第2の2(4)にならえば、「水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の」は「水平部の軸方向の寸法を基準として、傾斜部の奥行方向の寸法は」と認められる。以下同様。)
しかしながら、(C)については、テレビ受像機が取り付けられる取付部は、そもそもイ号意匠相当部分に合まれないし、イ号意匠においても、テレビ受像機が取り付けられる取付部がベースの中央付近上方に位置していることは、甲第6号証の左側面図、右側面図及び平面図から明白である。
付言すると、被請求人は、「正しくは、『壁寄せテレビスタンド(イ号意匠)を部屋の壁に寄せて設置したとき、イ号意匠の取付部は、側面視してベースの後端付近(ベースの壁側付近)の上方に位置している。』である。」と主張するが、「壁寄せテレビスタンド(イ号意匠)を部屋の壁に寄せて設置し」ようが、部屋の壁に寄せずに設置しようが、取付部とベースとの位置関係が設置場所によって変わることはないから、被請求人の「正しくは、…」との上記主張は、何ら正しくない。
また、(D)については、「イ号意匠相当部分の高さ寸法」とは「傾斜部」の高さ寸法と同様であるから、前記2(4)ウ(ウ)で「水平部が傾斜部となす角度も約73度である。」と説明し、同(オ)で「イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する傾斜部及び水平部の径の割合は、約5.3%である。」と説明したことと同義に過ぎない(tan17゜(=90゜-73°)は約0.31(約31%)であるから、これに「約5.3%」(厳密には、「約5.3%」にcos17゜(約0.96)を乗じたもの)を加えると「約36.1%」に近い値となる。)。
さらに、(E)については、「水平部の軸方向の寸法」は「傾斜部の奥行方向の寸法」よりも短いから、「水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約3.1倍の長さを有している」ことはあり得ない。
したがって、被請求人の後記第2の2(2)における主張は、失当である。
(3)「請求人による『本件登録意匠とイ号意匠との対比の説明』についての反論」(当審注:「本件登録意匠とイ号意匠との対比の説明」は「本件登録意匠とイ号意匠との対比」の誤記と認められる。以下同様。)について
後記第2の2(3)には、「請求人による『本件登録意匠とイ号意匠との対比の説明』についての反論」として、「判定請求書の本件登録意匠とイ号意匠との対比の説明には、以下の7つの追加相違点についての記載がない。」とした上で、追加相違点1ないし追加相違点7が記載されている。
しかしながら、以下のとおり、追加相違点1ないし追加相違点7なる相違点は認定し得ず、被請求人の後記第2の2(3)における主張は、失当である。
ア 追加相違点1について
被請求人は、追加相違点1として、「スタンドの使用方法において、本件登録意匠は部屋の中央部や外周部に拘わりなく、そのスタンドの構造上、部屋のどの位置に設置してもよいタイプのものである(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)。これに対して、イ号意匠は、“壁寄せテレビスタンド”の商品名からも判るように、そのスタンドの構造上、側面視して取付部がベースの後端付近の上方に配されるように“部屋の壁に寄せて設置する”タイプである(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)点が相違する。」と主張するが、この主張は、「スタンドの使用方法」に言及するだけで、両意匠部分の形態の相違点を指摘し得ていないし、前記2(1)で述べたとおり、本件登録意匠は壁寄せTVスタンド「WALL」シリーズに採用され、“壁寄せテレビスタンド”のイ号意匠と「壁寄せ」かどうかで異なるところはないから、追加相違点1なる相違点は存しない。
イ 追加相違点2について
被請求人は、追加相違点2として、「本件意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合が約26.6%であるのに対して、イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合が約36.1%である点が相違する。」と主張するが、これは、(1)及び(2)で述べたとおり、判定請求書で説明した相違点1(本件意匠部分は、傾斜部がベースとなす角度及び水平部が傾斜部となす角度が約78度であるのに対し、イ号意匠相当部分は、傾斜部がベースとなす角度及び水平部が傾斜部となす角度が約73度である点において、両意匠部分は相違する。)及び共通点4(両意匠部分は、傾斜部の高さ寸法に対する傾斜部及び水平部の径の割合が、いずれも5?6%である点において共通する。)の焼直しに過ぎず、相違点1に加えて追加相違点2なる相違点は存しない。
ウ 追加相違点3について
被請求人は、追加相違点3として、「本件意匠部分において、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約1.5倍の長さであるのに対して、イ号意匠相当部分では、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約3.1倍の長さを有している点が相違する。」と主張するが、(1)及び(2)で述べたとおり、「本件意匠部分において、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約1.5倍の長さである」ことはないし、「イ号意匠相当部分では、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約3.1倍の長さを有している」こともないから、追加相違点3なる相違点は存しない。
なお、仮に、追加相違点3に関する被請求人の主張が、本件意匠部分における(何らかの寸法に対する)水平部の軸方向の寸法割合とイ号意匠相当部分における(何らかの寸法に対する)水平部の軸方向の寸法割合との相違を意図したものであるとしても、それは判定請求書で相違点3(本件意匠部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合が約17%であるのに対し、イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合が約12%である点において、両意匠部分は相違する。)として既述であるから、いずれにしても、追加相違点3なる新たな相違点は存しない。
エ 追加相違点4について
被請求人は、追加相違点4として、「本件意匠部分は、傾斜部の下端がベースの中央部に固定されている(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)のに対して、イ号意匠相当部分は、傾斜部の下端がベースの前端部に固定されている(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)点が相違する。」と主張するが、イ号意匠相当部分の傾斜部の下端がベースの前端部(つまり、ベースの前縁近傍)に位置していないことは、甲第6号証の左側面図、右側面図及び平面図から明白であるから、追加相違点4なる相違点は存しない。
オ 追加相違点5について
被請求人は、追加相違点5として、「本件意匠部分は、ベースの上面を基準とした傾斜部の傾斜角度が78゜と大きく、かつ水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約1.5倍と水平部が長尺であるため、水平部の先端下には傾斜部との間に、吊下状態の取付部を収納可能な大きい空間が存在する(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)。これに対して、イ号意匠相当部分は、ベースの上面を基準とした傾斜部の傾斜角度が73°と小さく、かつ水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約3.1倍と、本件意匠部分に比べて、水平部の長さが半分しかないため、水平部の先端下には傾斜部との間に、吊下状態の取付部を収納可能な空間が存在しない(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)点が相違する。」と主張するが、仮に、被請求人が、本件登録意匠の取付部とイ号意匠の取付部との相違を主張しているのであれば、取付部を含まない両意匠部分の形態の相違点を指摘し得ていないし、本件意匠部分の水平部とイ号意匠相当部分の水平部との長さ寸法割合の相違を主張しているのであれば、判定請求書で相違点3として既述であるから(ウ参照)、いずれにしても、追加相違点5なる新たな相違点は存しない。
カ 追加相違点6について
被請求人は、追加相違点6として、「この追加相違点5を踏まえて、本件登録意匠が、取付部とこれに連結されたテレビとを、主に水平部より下方に配置する吊下式のテレビスタンドである(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)のに対して、イ号意匠は、もっぱら取付部とテレビとを水平部より上方に配するしかない、持上げ式のテレビスタンドである(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)点が相違する。」と主張するが、オで述べたとおり、追加相違点5なる相違点は存しないことに加え、この主張は両意匠部分の形態の相違点を何ら指摘するものではなく、さらに、甲第2号証の意匠公報に【支持部財の位置を変更した状態を示す参考図】として明示のとおり、本件登録意匠は「取付部とテレビとを水平部より上方に配する」こともでき(前記第1の2(5)イ参照)、「吊下式」としてイ号意匠と区別される謂れはないから(乙第1号証にも、本件登録意匠について、「テレビ持上げ状態」と記載されている。)、追加相違点6なる相違点は存しない。
キ 追加相違点7について
被請求人は、追加相違点7として、「同じく上記追加相違点5を踏まえて、スタンド使用時、本件登録意匠では重量物であるテレビの略直下に、ベースの中央部に固定された傾斜部の下端が配置される(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)。これに対して、イ号意匠ではテレビの略直下には、ベースの前端部に下端が固定された傾斜部のうち、その長さ方向の略中間部が配されている点(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)が相違する。なお、イ号意匠では、テレビのさらに直下にベースの中央部が配されている。」と主張するが、オで述べたとおり、追加相違点5なる相違点は存しないことに加え、この主張は両意匠部分の形態の相違点を何ら指摘するものではないから(いうまでもなく、「テレビ」も「ベース」も両意匠部分に含まれない。)、追加相違点7なる新たな相違点は存しない。
(4)「請求人による『本件登録意匠とイ号意匠との類否の説明』についての反論」(当審注:「本件登録意匠とイ号意匠との類否の説明」は「本件登録意匠とイ号意匠との類否」の誤記と認められる。以下同様。)について
後記第2の2(4)には、「請求人による『本件登録意匠とイ号意匠との類否の説明』についての反論」として、次の第1の主張ないし第9の主張が記載されている。
しかしながら、以下のとおり、被請求人の後記第2の2(4)における各主張は、いずれも失当である。
ア 第1の主張について
被請求人の「相違点3について、『7』の字状の両意匠部分の形状を比較する際に、請求人は『両意匠部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合』での比較を採用している。被請求人は、この観点からの比較は不適切と考える。」との主張は、「その理由は、“両意匠部分の高さ寸法”を基準とした場合、例えば、本件意匠部分の傾斜部の長さが“1m”で、イ号意匠相当部分の傾斜部の長さが“2m”と、その長さに2倍の違いがあっても、各傾斜部の傾斜角度を調整すれば、両意匠部分の高さ寸法を同一にすることが可能になるからである。まさに、本件はこれに該当するものと思料する。」との記載を勘案しても、請求人は、その趣旨を理解することができない。
まず、本件意匠部分の傾斜部の傾斜角度が約78度、イ号意匠相当部分の傾斜部の傾斜角度が約73度と定まっている前提下で、「各傾斜部の傾斜角度を調整すれば、」との仮定に何の意味があるのか不明であるし、「各傾斜部の傾斜角度を調整すれば、両意匠部分の高さ寸法を同一にすることが可能になる」との主張が成り立つのであれば、「各傾斜部の傾斜角度を調整すれば、両意匠部分の傾斜部の奥行寸法を同一にすることが可能になる」との主張も成り立つはずであり、被請求人の「『7』の字状の両意匠部分の形状比較において、一般的な比較項目である『水平部の軸方向の寸法と、傾斜部の奥行方向の寸法との対比』を行」うべきであるとの主張とも矛盾する(ちなみに、請求人は、「水平部の軸方向の寸法と、傾斜部の奥行方向の寸法との対比」を「一般的な比較項目」と称し得る理由も理解することができない。)。
仮に、第1の主張の趣旨が、前記2(6)ウ(イ)の相違点3についての次の評価を否定する点にあるならば、第1の主張には、次の評価に対する具体的な反論(美感に関する反論)があるはずであるが、そのような反論も一切見られない。
「相違点3について、両意匠部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合が相違するが、この相違は、取付部の厚み(前後方向の寸法)の違いに起因するものである。つまり、テレビ受像機スタンドにおいて、テレビ受像機は、取付部に取り付けられた状態でベースの中央付近の上方に位置することが安定上(テレビ受像機スタンドが倒れにくいという観点から)望ましく、本件登録意匠もイ号意匠もそのようにデザインされているが、甲第6号証に示すように、イ号意匠の取付部は、水平部の前端に設けられる上下に長尺なブロック状の部材が一定の厚みを有し、さらに、その前方に設けられてテレビ受像機が係止される左右に長尺な板状部材との間に距離もあるから、本件登録意匠の取付部よりも厚く、その分、イ号意匠相当部分の水平部が短くなっている。一方、この水平部の長短は、需要者には、取付部の厚みの違いによる反射的な差異程度にしか認識されず、加えて、需要者が通常見るであろう正面側から観察した場合には(とりわけ、テレビ受像機が取り付けられていると)、ほとんど目立だなくなるから、相違点3が両意匠部分の全体の美感に与える影響は限定的である。」
したがって、被請求人の第1の主張は、失当である。
イ 第2の主張について
被請求人の第2の主張は、追加相違点1に基づくようであるが、(3)アで述べたとおり、追加相違点1なる相違点は存しないから、失当である。
なお、イ号意匠を採用した被請求人の製品について、後方への転倒が本当に懸念されるのであれば、そのような製品の製造、販売は、消費者の安全の観点から、請求人の求め(甲第8号証)の有無にかかわらず中止すべきである。
ウ 第3の主張について
被請求人の第3の主張は、追加相違点2に基づくようであるが、(3)イで述べたとおり、相違点1に加えて追加相違点2なる相違点は存しないし、前記2(6)ウ(イ)の相違点1についての次の評価に反論するものでもない。
「相違点1について、両意匠部分の傾斜部がベースとなす角度及び水平部が傾斜部となす角度が約5度相違するが、甲第6号証に示すように、この角度差は、本件登録意匠とイ号意匠とを側面図で並べてもほとんど認識し得ない。ましてや、需要者が通常見るであろう正面側(前方又は斜め前方)から観察した場合や、本件登録意匠とイ号意匠とを離隔して観察した場合には、この角度差を認識することは困難であって、相違点1が両意匠部分の全体の美感に与える影響は小さい。」
したがって、被請求人の第3の主張は、失当である。
エ 第4の主張について
被請求人の第4の主張は、追加相違点4に基づくようであるが、(3)エで述べたとおり、追加相違点4なる相違点は存しないから、失当である。
オ 第5の主張について
被請求人の第5の主張は、追加相違点5に基づくようであるが、(3)オで述べたとおり、追加相違点5なる新たな相違点は存しないし、前記2(6)ウ(イ)の相違点1についての評価(ウ参照)及び相違点3についての評価(ア参照)に反論するものでもない。
したがって、被請求人の第5の主張は、失当である。
カ 第6の主張について
被請求人の第6の主張は、追加相違点6に基づくようであるが、(3)カで述べたとおり、追加相違点6なる相違点は存しないから、失当である。
キ 第7の主張について
被請求人の第7の主張は、追加相違点7に基づくようであるが、(3)キで述べたとおり、追加相違点7なる相違点は存しない。
また、被請求人は、「側面視して『7』の字状を有する両意匠部分の形状対比において、この点はデザイン的に顕著な違いになるものと思料する。」と主張するが、「この点」とは、もっぱら、両意匠部分に含まれない「テレビ」や「ベース」を巻き込んで「側面視して『7』の字状を有する両意匠部分の形状対比」の域から著しく逸脱した主張を指すから、被請求人の第7の主張は矛盾も内包し、失当である。
ク 第8の主張について
被請求人の第8の主張は、要するに、本件意匠部分の傾斜部の位置(ベースに対する相対的位置)を本件登録意匠よりも前方に移動させると、簡単に倒れたり適正な視聴距離を確保できないおそれがあったりするから、請求人の「両意匠は、両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が同一である」との主張は誤っているというものであるが、簡単に倒れたり適正な視聴距離を確保できないおそれがあったりするとの主張自体が正当性を欠く上、それをもって「両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が同一である」ことを否定するという論理が不合理といわざるを得ない。
したがって、被請求人の第8の主張は、失当である。
ケ 第9の主張について
被請求人の第9の主張は、第1の主張ないし第8の主張を根拠に「両意匠は、両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は同一でなく、両意匠部分の形態が需要者に共通した美感を起こさせるものでもないから、相互に類似するものではない。」との結論に至っている。
しかしながら、アないしキで述べたとおり、第1の主張ないし第8の主張は失当であるから、被請求人の第9の主張も失当である。
(5)むすび
以上のとおり、被請求人の答弁書における主張は、全て、請求人の判定請求書における主張に対する反論になっておらず、請求人は、請求の趣旨のとおりの判定を速やかに求める次第である。

4 請求人の提出した証拠
甲第1号証:意匠登録原簿謄本
甲第2号証:本件登録意匠の意匠公報
甲第3号証:本件本意匠の意匠公報
甲第4号証:グッドデザイン賞ウェブサイトの写し
(https://www.g-mark.org/award/describe/45248)
甲第5号証:楽天週間ランキングに関する資料
甲第6号証:本件登録意匠とイ号意匠との比較資料
甲第7号証:被請求人ウェブサイトの写し
(https://item.rakuten.co.jp/tansu/45400015/)
甲第8号証:令和元年8月30日付け通知書
甲第9号証:令和元年9月6日付け御連絡

第2 判定被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
イ号意匠は登録第1640078号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、という判定を求める。

2 答弁の理由
(1)請求人による「本件登録意匠の説明」についての反論
前記の第1の2(3)の本件登録意匠(登録第1640078号意匠)の説明には以下の点について、記載が省かれている。
(A)本件意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合が約26.6%である点(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照。なお、乙第1号証は甲第6号証に基づいて作成されたものである)。
(B)本件意匠部分において、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約1.5倍の長さを有している点(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)。(当審注:前記第1の3(1)(B)の「当審注」参照。)
特に、本件意匠部分を側面視した際において、(B)の“水平部の軸方向の寸法”と、“傾斜部の奥行方向の寸法”との割合は、本件意匠部分の形状を把握する重要点の1つと考える。
(2)請求人による「イ号意匠の説明」についての反論
前記の第1の2(4)のイ号意匠の説明では、以下に述べる(C)の点が間違って記載されており、また(D)、(E)の2点について、記載が省かれている。
(C)イ号意匠相当部分に関して、「取付部がベースの中央付近上方に位置している」は間違いである。正しくは、「壁寄せテレビスタンド(イ号意匠)を部屋の壁に寄せて設置したとき、イ号意匠の取付部は、側面視してベースの後端付近(ベースの壁側付近)の上方に位置している。」である。
(D)イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合が約36.1%である点が省かれている(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)。
(E)イ号意匠相当部分において、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約3.1倍の長さを有している点が省かれている(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)。(当審注:前記第1の3(2)(E)の「当審注」参照。)
特に、イ号意匠相当部分を側面視したとき、(E)の“水平部の軸方向の寸法”と、“傾斜部の奥行方向の寸法”との割合は、イ号意匠相当部分の形状を把握する重要点の1つと考える。
(3)請求人による「本件登録意匠とイ号意匠との対比の説明」についての反論
前記の第1の2(5)の本件登録意匠とイ号意匠との対比の説明には、以下の7つの追加相違点についての記載がない。
(追加相違点1)スタンドの使用方法において、本件登録意匠は部屋の中央部や外周部に拘わりなく、そのスタンドの構造上、部屋のどの位置に設置してもよいタイプのものである(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)。これに対して、イ号意匠は、“壁寄せテレビスタンド”の商品名からも判るように、そのスタンドの構造上、側面視して取付部がベースの後端付近の上方に配されるように“部屋の壁に寄せて設置する”タイプである(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)点が相違する。
(追加相違点2)本件意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合が約26.6%であるのに対して、イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合は約36.1%である点が相違する。
(追加相違点3)本件意匠部分において、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約1.5倍の長さであるのに対して、イ号意匠相当部分では、水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約3.1倍の長さを有している点が相違する。
(追加相違点4)本件意匠部分は、傾斜部の下端がベースの中央部に固定されている(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)のに対して、イ号意匠相当部分は、傾斜部の下端がベースの前端部に固定されている(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)点が相違する。
(追加相違点5)本件意匠部分は、ベースの上面を基準とした傾斜部の傾斜角度が78°と大きく、かつ水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約1.5倍と水平部が長尺であるため、水平部の先端下には傾斜部との間に、吊下状態の取付部を収納可能な大きい空間か存在する(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)。これに対して、イ号意匠相当部分は、ベースの上面を基準とした傾斜部の傾斜角度が73゜と小さく、かつ水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約3.1倍と、本件意匠部分に比べて、水平部の長さが半分しかないため、水平部の先端下には傾斜部との間に、吊下状態の取付部を収納可能な空間が存在しない(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)点が相違する。
(追加相違点6)この追加相違点5を踏まえて、本件登録意匠が、取付部とこれに連結されたテレビとを、主に水平部より下方に配置する吊下式のテレビスタンドである(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)のに対して、イ号意匠は、もっぱら取付部とテレビとを水平部より上方に配するしかない、持上げ式のテレビスタンドである(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)点が相違する。
(追加相違点7)同じく上記追加相違点5を踏まえて、スタンド使用時、本件登録意匠では重量物であるテレビの略直下に、ベースの中央部に固定された傾斜部の下端が配置される(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)。これに対して、イ号意匠ではテレビの略直下には、ベースの前端部に下端が固定された傾斜部のうち、その長さ方向の略中間部が配されている点(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)が相違する。なお、イ号意匠では、テレビのさらに直下にベースの中央部が配されている。
(4)請求人による「本件登録意匠とイ号意匠との類否の説明」についての反論
前記の第1の2(6)の本件登録意匠とイ号意匠との類否の説明について、以下の点に異論がある。
すなわち、相違点3について、「7」の字状の両意匠部分の形状を比較する際に、請求人は「両意匠部分の高さ寸法に対する水平部の軸方向の長さ寸法の割合」での比較を採用している。被請求人は、この観点からの比較は不適切と考える。
その理由は、“両意匠部分の高さ寸法”を基準とした場合、例えば、本件意匠部分の傾斜部の長さが“1m”で、イ号意匠相当部分の傾斜部の長さが“2m”と、その長さに2倍の違いがあっても、各傾斜部の傾斜角度を調整すれば、両意匠部分の高さ寸法を同一にすることが可能になるからである。まさに、本件はこれに該当するものと思料する。
すなわち、請求人は「7」の字状の両意匠部分の形状比較において、一般的な比較項目である「水平部の軸方向の寸法と、傾斜部の奥行方向の寸法との対比」を行っていない。その理由は、これを行えば両意匠部分の違いが顕著になるためと思料する。具体的には、水平部の軸方向の寸法を基準にして、傾斜部の奥行方向の寸法が何倍になるかを示すと、本件意匠部分の場合には“約1.5倍”であるのに対して、イ号意匠相当部分の場合には“約3.1倍”となり、その差は2倍以上となる。
また、追加相違点1で述べたように、スタンドの使用方法において、本件登録意匠は、傾斜部の傾斜が小さくて倒れにくく、そのため、使用(設置場所)に制約がないことから、部屋の中央部や外周部等に拘わりなく、部屋のどこに設置してもよいタイプのものと考えられる。
これに対して、イ号意匠は、取付部に取り付けられたテレビを水平部より上方に配する持上げ式のテレビスタンドであって、かつ壁寄せテレビスタンドの商品名からも明らかなように、側面視して、取付部がベースの後端付近の上方に配置される“部屋の壁に寄せて設置する”タイプのものである。すなわち、このように傾斜部の傾斜角度が大きいテレビ持上げ式のスタンドの場合、使用状態でのスタンドの重心は、一般的にスタンドの後側上方に配されるため、スタンドの後方への転倒が懸念される。そこで、この方向への万が一の転倒を避けるため、イ号意匠は壁寄せ式のテレビスタンドとしている。
さらには、追加相違点2で述べたように、本件意匠部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合は約26.6%であるのに対して、イ号意匠相当部分の高さ寸法に対する傾斜部の奥行方向の寸法の割合は約36.1%である点が相違する。この点についても、請求人は、「7」の字状の両意匠部分の形状比較の際に不利となるため、開示を避けたものと思料する。
さらにまた、追加相違点4に述べたように、本件意匠部分は、傾斜部の下端がベースの中央部に固定されているのに対して、イ号意匠相当部分は、傾斜部の下端がベースの前端部に固定されている。これは、傾斜部の傾斜を大きくとるために採用されたものである。
また、追加相違点5で述べたように、本件意匠部分は、ベースの上面を基準とした傾斜部の傾斜角度が78°(仮想の垂直面を基準とした傾斜部の傾斜は12°)で、かつ側面視して水平部の軸方向の寸法が、傾斜部の奥行方向の寸法の約1.5倍と、比較的水平部が長尺であるため、水平部の先端下には傾斜部との間に、吊下状態の取付部を収納する大きな空間か存在している。その結果、本件登録意匠は、主にテレビ吊下式のスタンドとして利用される。
これに対して、イ号意匠相当部分は、ベースの上面を基準とした傾斜部の傾斜角度が73゜(仮想の垂直面を基準とした傾斜部の傾斜は17°)で、かつ水平部の軸方向の寸法は傾斜部の奥行方向の寸法の約3.1倍と、本件意匠部分に比べて、水平部の長さが半分しがないため、水平部の先端下には傾斜部との問に、吊下状態の取付部を収納可能な空間は存在しない。そのため、イ号意匠は、もっぱらテレビ持上げ式のものとなる。
さらに、追加相違点6で述べたように、本件登録意匠が、取付部とこれに連結されたテレビとを、主に水平部より下方に配置する吊下式のテレビスタンドであるのに対して、イ号意匠は、取付部とテレビとを水平部より上方に配するしかない、持上げ式のテレビスタンドである点が相違する。
さらにまた、追加相違点7で述べたように、スタンド使用時において、本件登録意匠では、重量物であるテレビの略直下に、ベースの中央部に固定された傾斜部の下端が配されている(乙第1号証の本件登録意匠の左側面図を参照)。これに対して、イ号意匠では、テレビの略直下には、傾斜部のうち、その長さ方向の略中間部が配され、さらにその下方にベースの中央部が存在している(乙第1号証のイ号意匠の左側面図を参照)。側面視して「7」の字状を有する両意匠部分の形状対比において、この点はデザイン的に顕著な違いになるものと思料する。
ところで、請求人は、「両意匠は、両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が同一である」と主張している。仮にそうであれば、イ号意匠相当部分の基端が固定されるベースの前端部に、本件意匠部分の傾斜部の下端を固定しても何ら問題はないはずである。また、この配置の本件意匠部分の水平部に、持上げ式で取付部にテレビを取り付けても、同様に間題はないはずである。
しかしながら、このように構成した場合、乙第1号証の本件登録意匠(仮想)の左側面図に示すように、テレビの直下はベースの前端付近となり、本件登録意匠のテレビスタンドの重心が、ベースの前側上方に偏ってしまう。その結果、例えば、ベースの前方に配されたテレビや傾斜部に、何らかの原因で人や物が衝突したとき、本件登録意匠のテレビスタンドは、簡単に前倒れまたは横倒れするおそれがある。
また、このような配置のスタンドでは、仮に、イ号意匠の使用形態のように、ベースの後端を部屋の壁に当接した状態で使用したとき、テレビの画面はイ号意匠の際に比べて前方(視聴者方向)に配されることとなる(乙第1号証の本件登録意匠(仮想)の左側面図を参照)。この場合、視聴者は、テレビ画面との適正な視聴距離を確保するため、後方へ移動しなければならない。もし、部屋が狭いときには、視聴者は、この適正な視聴距離を確保できないおそれもある。
以上のことから、被請求人は、両意匠は、両意匠部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は同一でなく、両意匠部分の形態が需要者に共通した美感を起こさせるものでもないから、相互に類似するものではない。
(5)むすび
以上のとおり、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属するものではなく、被請求人は、請求の趣旨の通りの判定を求める。

3 被請求人が提出した証拠
乙第1号証:本件本意匠(意匠登録第1640021号)および本件登録意匠(仮想を含む)と、イ号意匠との比較資料

第3 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠は平成31年2月18日に意匠登録出願され(意願2019-003162)、意願2019-002950号(意匠登録第1640021号)を本意匠とする関連意匠として、令和1年8月2日に設定の登録(登録第1640078号)がなされ、令和1年8月26日に意匠公報が発行されたものであって、願書の記載及び願書に添付された図面によれば、意匠に係る物品は「テレビ受像機用スタンド」であり、本件登録意匠の形態は、その意匠登録出願の願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって、願書の意匠の説明には、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(当審注:以下「本件意匠部分」という。)である。」と記載されている(別紙第1参照)。
(1)本件意匠部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本件意匠部分は、テレビ受像器取付け側を前側として、テレビ受像機の設置のため取り付けて用いる「テレビ受像機用スタンド」の取付部及び台座部を除く支柱部分(前側上部長円孔及び後側下端寄り長円孔部分を除く)であって、用途及び機能は、テレビ受像機の鑑賞のために見やすい高さに保持するものあり、位置は、物品全体の取付部及び台座部、両端の部材を除く中継部分に当たり、大きさは、載置台などを用いずに床に置かれた状態で鑑賞に適した程度の高さを保持しうるものであると認められ、範囲は、背面視でテレビ受像機用スタンドの全長(全体の高さ)の下から約20分の19の長さで、横方向の中程、全幅の約10分の1の幅を占めている。
(2)本件意匠部分の形態
基本的構成態様は、
(あ)細長い略角柱状材から成り、右側面視で支柱部分の全体形状は、前後方向に伸びた水平な腕部(以下「腕部」という。)と略鉛直方向に伸び後方に傾斜した脚部(以下「脚部」という)を接合したような縦に長い略「7」の字状の形状であって、右上の角部は、鉛直状平坦面が形成されている。
具体的構成態様は、
(い)テレビ受像器取付け側を正面として縦横及び奥行きの長さ比は、約38:2.1:9.6で、腕部と脚部の長手方向の長さ比は、約1.8:10、支柱材の径の縦横比は1:1である。
(う)右側面視において、脚部の水平方向に対する後方への傾斜角度は約78度である。
(え)縦に長い略「7」の字状の屈曲部分にあたる角部は、水平方向の腕部の鉛直状に平坦な後端部の下側に傾斜した脚部の上端部が接合したような形態で、平坦面を経てから傾斜した脚部につながる鈍角状の角部が形成され、内側の角度は、脚部の後方への傾斜角度(内角)と同様である。

2 イ号意匠
イ号意匠は、判定請求書に添付された本件登録意匠とイ号意匠の「比較資料」(甲第6号証)中に示された「被請求人製品意匠(イ号意匠)」であって、意匠に係る物品はその実施品の名称「壁寄せテレビスタンド」から「テレビ受像機用スタンド」であると認められ、その形態を、「比較資料」中の「正面図」「背面図」「左側面図」「右側面図」「平面図」各図に「被請求人製品意匠(イ号意匠)」として現されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
(1)用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
イ号意匠部分は、本件意匠部分に対比する、テレビ受像機用スタンドの取付部及び台座部を除く支柱部分であって、用途及び機能は、テレビ受像機の鑑賞のために見やすい高さに保持するものあり、位置は、台座部左右方向略中央、前後方向前から約3分の1から上方向後側に伸びて前側に折り返す、物品全体の下端及び前端の部材を除く中継部分に当たり、大きさは、載置台などを用いずに床に置かれた状態で鑑賞に適した程度の高さを保持しうるものであると認められ、範囲は、背面視でテレビ受像機用スタンドの全長(全体の高さ)の下から約20分の14.5の長さで、横方向の中程で、全幅の約11分の1の幅を占めている。
(2)イ号意匠部分の形態
基本的構成態様は、
(ア)細長い略角柱状材から成り、右側面視で支柱部分の全体形状は、腕部と脚部を接合したような縦に長い略「7」の字状の形状であって、右上の角部は、鋭角状にとがっている。
具体的構成態様は、
(イ)テレビ受像器取付け側を正面として縦横及び奥行きの長さ比は、約38:2:13で、腕部と脚部の長手方向の長さ比は、約1.2:10、支柱材の径の縦横比は1:1である。
(ウ)右側面視において、脚部の水平方向に対する後方への傾斜角度(内角)は約73度である。
(エ)略「7」の屈曲部分にあたる角部は、腕部の後端部と脚部の上端部を斜めに切断して突き合わせて接合したような形態で、支柱材の外側で形成する角度も内側の角度と同様である。
(オ)全体は黒色に現されている。

3 本件登録意匠とイ号意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠は「テレビ受像機用スタンド」であり、イ号意匠も上記2(1)のとおり、「テレビ受像機用スタンド」と認められ、共に「テレビ受像機用スタンド」であって、本件登録意匠とイ号意匠(以下、両意匠ともいう。)の意匠に係る物品は、共通する。
(2)用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本件意匠部分とイ号意匠部分(以下、両部分ともいう。)の用途及び機能は、上記のとおり、テレビ受像機の鑑賞のために見やすい高さに保持するものであるから共通し、大きさは、載置台などを用いずに床に置かれた状態で鑑賞に適した程度の高さを保持しうるものであるから共通するものの、位置については、物品全体の中継部分である点は共通するが、台座部に対して略中央から上方向後側に伸びるものか台座部左右方向略中央、前後方向前から約3分の1から上方向後側に伸びるものかの点で相違し、範囲については、本件意匠部分は背面視で全長(全体の高さ)の約20分の19の長さ、全幅の約10分の1の幅を占める範囲であるのに対し、イ号意匠部分は、全長(全体の高さ)の約20分の14.5の長さ、全幅の約11分の1の幅を占める範囲であるから相違する。
(3)両部分の形態
両部分の形態を対比すると、主として以下の共通点及び相違点が認められる。
(3-1)共通点
基本的構成態様として、
(A)細長い略角柱状材から成り、右側面視で支柱部分の全体形状は(水平な)腕部と(傾斜した)脚部を接合したような縦に長い略「7」の字状の形状である点、
具体的構成態様として、
(B)略「7」の屈曲部分にあたる角部の内側の角度は、脚部の後方への傾斜角度(内角)と同様である点、
(C)径の縦横比は1:1の支柱材である点
について共通する。
(3-2)相違点
基本的構成態様として
〔a〕本件意匠部分の右上の角部は、鉛直状平坦面が形成されているのに対して、イ号意匠部分は、鋭角状にとがっている点、
具体的構成態様として
〔b〕本件意匠部分はテレビ受像器取付け側を正面として縦横及び奥行きの長さ比は、約38:2.1:9.6であり、側面視で、腕部と脚部の長手方向の長さ比は、約1.8:10であるのに対し、イ号意匠部分は、縦横奥行きの長さ比は、約38:2:13で、腕部と脚部の長手方向の長さ比は、約1.2:10である点、
〔c〕本件意匠部分は右側面視において、脚部の水平方向に対する後方への傾斜角度は約78度であるのに対し、イ号意匠部分は、約73度である点、
〔d〕本件意匠部分は、屈曲部分にあたる角部は、水平方向の腕部の鉛直状に平坦な後端部の下側に傾斜した脚部の上端部が接合したような形態で、平坦面を経てから傾斜した脚部につながる鈍角状の角部が形成されているのに対し、イ号意匠部分は、腕部の後端部と脚部の上端部を斜めに切断して突き合わせて接合したような形態で、支柱材の外側で形成する角度も内側の角度と同様である。
〔e〕イ号意匠部分は、全体に黒色が現されたものであるのに対し、本件意匠部分は、全体に色彩は表されていないものである点、
について相違する。

4 両意匠の評価
上記3のとおり、両意匠の意匠に係る物品は、共通し、用途及び機能、並びに大きさは共通するが、位置及び範囲は相違する。
そして、両部分の用途及び機能は、テレビ受像機の鑑賞のために見やすい高さに保持するものであるところ、「テレビ受像機用スタンド」の物品分野において、両部分と同様の、用途及び機能並びに大きさを有する意匠は、本願出願前にごく普通に見受けられるので、両部分の用途及び機能並びに大きさの共通点が、両部分の類否判断に与える影響は、小さい。
また、両部分の位置については、物品全体の中継部分である点は共通し、本件意匠部分は台座部に対して略中央から上方向後側に伸びるものであるのに対し、イ号意匠部分は台座部左右方向略中央、前後方向前から約3分の1から上方向後側に伸びるものである点で相違するが、物品全体の中で上下方向の位置はおおむね共通し、相違点である前後方向の位置における台座部に対する支柱部の位置についても、略中央に位置するものも、前寄りに位置するものもないものとはいえず、この点のみをもって、位置が大きく相違するとはいえず、両部分の類否判断に与える影響が大きいとはいえない。
さらに範囲については、本件意匠部分は背面視で全長(全体の高さ)の約20分の19の長さで、全幅の約10分の1の幅を占める範囲であるのに対し、イ号意匠部分は、全長(全体の高さ)の約20分の14.5の長さで、全幅の約11分の1の幅を占める範囲である点は、上下方向の範囲については、イ号意匠は取付部について、上に突出させた態様で、全長(全体の高さ)の中での取付部の割合が本件意匠部分より大きいものであるから、全長(全体の高さ)の約20分の14.5と約20分の19であっても両部分として対比する場合は顕著に相違するとはいえず、全幅の約10分の1の幅か11分の1の幅かは、注視してわかる程度のわずかな差であるから、両部分の範囲の相違はテレビ受像機用スタンド同士の全体に対する部分の多少の範囲の相違にとどまり、両部分の類否判断に与える影響は、小さいものである。
(1)両部分の形態の評価
上記の両部分の形態の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し、本件登録意匠の出願前に存在する公知意匠を参酌し、需要者の注意を引きやすい部分を考慮した上で、両部分が類似するか否かについて、判断する。
まず、基本的構成態様に係る共通点(A)については、右側面視で支柱部分の全体形状が(水平な)腕部と(傾斜した)脚部を接合したような略「7」の字状の形状である点は、他に見受けられず、両部分共通の特徴に関わるところであり、両部分の基調を形成し、共通の印象を強く与えるものであって、両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。
次に、具体的構成態様の共通点(B)については両部分の具体的な部分的プロポーションの共通点にも関わり、両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものである。また、共通点(C)は、珍しい態様ではなく、両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいが、正面視からも左右側面視からも一定の太さの材から成る印象を需要者に与え、共通点(A)の細長い略角柱状から成る「7」の字状の印象を補強している。
そうすると、この種「テレビ受像機用スタンド」の物品分野においては、共通点(B)が両意匠の類否判断に与える影響は両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものであって、共通点(A)は両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きく、共通点(C)は両意匠の類否判断に与える影響は小さいとしても、共通点(A)を補強し、これらの共通点は、あいまって、見る者に与える共通の印象を一層強くするものである。
これに対し、相違点〔a〕及び相違点〔d〕は、両部分の腕部及び脚部の接合態様の相違からくる角部の形態の相違ではあるが、基本的構成態様に係る共通点(A)がある中での、右上角部の鉛直状平坦面の有無についての部分的形態の相違であるといえ、これらの相違点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。そして、相違点〔b〕は、縦横奥行きの長さ比と腕部と脚部の長手方向の長さ比についての相違であり、縦横奥行きの長さ比については、縦方向長さ(両部分の高さ)を基準として、横方向(支柱幅)はごくわずかな長さ比の相違であり、縦方向長さに対する奥行き方向の相違は9.6、と13で本件意匠部分を1とするとイ号意匠部分は1.3程度で、脚部に対する腕部の長さ比の相違も1.8と1.2で本件意匠部分を1とするとイ号意匠部分は0.7程度の長さ比であって、それぞれ、顕著な長さ比の相違とまではいえない。これら長さ比の相違があいまって、全体のプロポーションに関わり、本件意匠部分よりもイ号意匠部分の奥行きが深く、腕部が短く、そのため、より後ろに反った位置でテレビ受像器などを保持するものとの印象を与えるとしても、両部分の他にない縦に長い略7の字状の支柱部の強い共通する印象を凌ぐほどのものとは認められず、この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまる。次に、相違点〔c〕は、右側面視において、斜状部の角度が、本件意匠部分が約78度であるのに対し、イ号意匠部分は、約73度である点であるが、これも5度程度の傾斜角度の相違であって、一見して分かる顕著な相違とまではいえず、後方に傾斜した脚部の共通する印象の中で僅かな角度の相違であるから、この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。また、相違点〔e〕は、色彩に係る相違であって、イ号意匠部分は全体に黒色が現されたものにすぎず、特段の特徴を有するものでもないため、この相違点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
これら相違点は、相違点〔b〕については両部分の類否判断に一定の影響を与えるものであるとしても、相違点〔a〕、相違点〔c〕及び相違点〔d〕については類否判断に及ぼす影響は小さく、あいまっても両部分の類否判断を左右するほどの影響を及ぼすには至らないものである。
なお、被請求人の第2の2(4)「請求人による『本件登録意匠とイ号意匠との類否の説明』についての反論」における主張は、「請求人は「7」の字状の両意匠部分の形状比較において、一般的な比較項目である「水平部の軸方向の寸法と、傾斜部の奥行方向の寸法との対比」を行っていない。その理由は、これを行えば両意匠部分の違いが顕著になるためと思料する。具体的には、水平部の軸方向の寸法を基準にして、傾斜部の奥行方向の寸法が何倍になるかを示すと、本件意匠部分の場合には“約1.5倍”であるのに対して、イ号意匠相当部分の場合には“約3.1倍”となり、その差は2倍以上となる。」と「顕著な相違として」述べているが、それは、上記3(3-2)〔b〕にあげた相違点に係り、上述のとおり、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度にとどまり、縦に長い後方に傾斜する脚部と前後方向に水平の腕部から成る略7の字状の支柱部の全体形状の両部分共通の特徴からくる強い共通感に埋没するものであって、本件登録意匠とイ号意匠の特徴ある共通点を凌駕して、類否を決するほどの特徴であるということはできず、両部分を別異のものとすることはできない。
したがって、被請求人の主張は採用できない。

5 両意匠の類否判断
上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品については共通し、両部分の用途及び機能、並びに大きさは共通し、両部分の位置及び範囲は相違するものの、位置は大きく相違するとはいえず、範囲も多少の相違にとどまるからこれらの点は、両部分の類否判断に大きな影響は与えるものとはいえない。
両部分の形態については、相違点がいずれも類否判断を左右するほどの影響を及ぼすには至らないものであるのに対して、共通点は総じて需要者に与える共通の印象を一層強くし、両部分の類否判断に大きな影響は与えるものであって、相違点の印象は、共通点の印象を覆すには至らないものである。
そうすると、意匠全体として見た場合に、上記に基づき総合して判断すると、両意匠は、類似するものである。

第4 むすび
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。

よって、結論のとおり判定する。

別掲

判定日 2020-08-17 
出願番号 意願2019-3162(D2019-3162) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (H7)
最終処分 成立 
前審関与審査官 中田 博康 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 北代 真一
渡邉 久美
登録日 2019-08-02 
登録番号 意匠登録第1640078号(D1640078) 
代理人 野田 薫央 
代理人 白井 重隆 
代理人 西村 公芳 
代理人 松田 純一 
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