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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1367024 
審判番号 不服2020-5810
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-28 
確定日 2020-10-13 
意匠に係る物品 医療用コネクタ用キャップ 
事件の表示 意願2019-13552「医療用コネクタ用キャップ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,令和1年(2019年)6月19日の意匠登録出願であって,同年10月30日付けの拒絶理由の通知に対し,同年12月16日に意見書が提出されたが,令和2年1月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「医療用コネクタ用キャップ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。断面図を含めて『部分意匠として意匠登録を受けようとする部分』を特定している。」「平面図,A-A線断面図及び斜視図に表された一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の公表特許公報記載
2009年特許出願公表第537220号
特表2009-537220
図3?5においてキャップ48として表された「医療用コネクタ用キャップ」のうち当該意匠に該当する部分の意匠

第4 当審の判断
1 本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「医療用コネクタ用キャップ」である。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,キャップの中央に位置する,鉛直方向の貫通孔の内側周面上端に全周にわたって設けた小さな突起部分であって,突起した長さはキャップ上部外径の約37分の1である。
本願部分には,医療用コネクタのキャップに設けられた貫通孔の内周面上端に設けられた突起部分の用途と機能がある。

(3)本願部分の形状
突起部分の下面は水平面であって,その先端からごく僅かに垂直面があり,そこから放物線状に横に曲がって,横長長円形を縦横に4等分した断面形状(楕円扇形(だえんせんけい))に成る様な斜面である。

2 引用意匠
引用意匠は,上記「第3」の公表特許
公報の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「静脈アクセスポートアセンブリのキャップ」である。

(2)引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,キャップの中央に位置する,鉛直方向の貫通孔の内側周面上端に全周にわたって設けた突起部分であって,突起した長さはキャップ上部外径の約8分の1である。
引用部分には,静脈アクセスポートアセンブリのキャップに設けられた貫通孔の上端に設けられた突起部分の用途と機能がある。

(3)引用部分の形状
突起部分の下面は水平面であって,その先端から僅かに垂直面があり,そこから約45度の傾斜面である。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「医療用コネクタ用キャップ」であり,引用意匠に係る物品は「静脈アクセスポートアセンブリのキャップ」である。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比
本願部分は,医療用コネクタ用キャップの中央に位置する,鉛直方向の貫通孔の内側周面上端に全周にわたって設けた小さな突起部分であって,突起した長さはキャップ上部外径の約37分の1であるのに対して,引用部分は,静脈アクセスポートアセンブリのキャップの中央に位置する,鉛直方向の貫通孔の内側周面上端に全周にわたって設けた突起部分であって,突起した長さはキャップ上部外径の約8分の1である。
本願部分には,医療用コネクタのキャップに設けられた貫通孔の内周面上端に設けられた突起部分の用途と機能があるのに対して,引用部分には,静脈アクセスポートアセンブリのキャップに設けられた貫通孔の上端に設けられた突起部分の用途と機能がある。

(3)両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
突起部分の下面は水平面であって,その先端から僅かに垂直面があり,そこから斜面である点。

イ.相違点について
(ア)突起部分の先端の垂直面につき,本願部分は,ごく僅かであるのに対して,引用部分は,僅かである点。
(イ)斜面の形状につき,本願部分は,放物線状に横に曲がって,横長長円形を縦横に4等分した断面形状(楕円扇形)に成る様な斜面であるのに対して,引用部分は,約45度の傾斜面である点。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠に係る物品は「医療用コネクタ用キャップ」であり,引用意匠に係る物品は「静脈アクセスポートアセンブリのキャップ」であるが,いずれも医療用のチューブなどを接続するために用いるキャップであるから,共通している。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価
本願部分は,医療用コネクタ用キャップの中央に位置する,鉛直方向の貫通孔の内側周面上端に全周にわたって設けた小さな突起部分であって,引用部分は,静脈アクセスポートアセンブリのキャップの中央に位置する,鉛直方向の貫通孔の内側周面上端に全周にわたって設けた突起部分であるから,両部分の位置及び範囲は共通している。
本願部分の突起した長さは,キャップ上部外径の約37分の1であるのに対して,引用部分の突起した長さは,キャップ上部外径の約8分の1であって,両意匠の類否判断において,別異な印象を与えるほど大きさに差があり,共通しているとはいえない。
本願部分の用途及び機能と引用部分の用途及び機能は,共に医療用コネクタ,又は静脈アクセスポートアセンブリのキャップに設けられた貫通孔の上端に設けられた突起部分の用途と機能というものであるから,両部分の用途及び機能は共通しているといえる。

(3)両部分における形状の評価
ア.共通点について
共通点は,大まかに捉えた形状であり,その水準(レベル)においては,この種物品分野においては,ありふれた形状といえ,両意匠のみの特徴とはいえないし,具体的には,相違点(ア)及び(イ)の相違を内包しているから,両部分の形状の類否判断に与える影響は小さい。
イ.相違点について
相違点(ア)は,相違点(イ)と合わさって,本願部分は,薄く,平面的であるのに対して,引用部分は,縦方向に量感があるものであって,両部分について別異の印象を与えるものであるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は大きい。

(4)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両部分の位置及び範囲が共通し,用途及び機能が共通している。
しかし,両部分の大きさは,共通しているとはいえず,なおかつ形状は,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり,共通点は,類否判断に及ぼす影響は小さいものであるのに対して,相違点は,相違点(ア)及び(イ)が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいものであり,両部分の形状は,類似するとは認められないものである。
よって,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。

5 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。


別掲

審決日 2020-09-23 
出願番号 意願2019-13552(D2019-13552) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 杏子 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2020-10-23 
登録番号 意匠登録第1672367号(D1672367) 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 

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