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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 D4
管理番号 1367032 
審判番号 不服2020-981
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-24 
確定日 2020-10-13 
意匠に係る物品 エアーコンディショナー 
事件の表示 意願2018- 28005「エアーコンディショナー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成30年12月21日 意匠登録出願
令和 1年 6月28日付け 拒絶理由通知書
令和 1年 8月 9日 意見書提出
令和 1年10月24日付け 拒絶査定
令和 2年 1月24日 審判請求書提出

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとして、平成30年(2018年)12月21日に出願されたものであって、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「エアーコンディショナー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものであって、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下、本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び本意匠
原審における拒絶の理由は、本願意匠が、願書に記載した本意匠(意願2018-28004号(意匠登録第1640681号)の意匠(以下「本意匠」という。))に類似する意匠と認められず、意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。
本意匠は、物品の部分について意匠登録を受けようとして、平成30年(2018年)12月21日(本願の出願日と同日)に出願され、令和1年8月16日に登録の設定をされ同年9月9日意匠公報に掲載されたものであり、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「エアーコンディショナー」とし、その形態は、願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものであって、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下、願書に記載した本意匠について意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」という。)(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
1 本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、共に上面(平面)に取付け部(破線で表され両意匠部分を構成しない。)が設けられているため、天井もしくは天井寄りに設けられる「エアーコンディショナー」であって、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。
(2)本願部分と本意匠部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分と本意匠部分(以下「両部分」という。)は共に(略扁平な横長直方体のエアーコンディショナーの)正面左右両端寄りから背面左右両端寄りに亘る周側面に形成した複数本の水平方向溝部分を左右対称に形成した部分であって、室内で冷暖房に用いられるエアーコンディショナーの装飾用溝部であることから、その用途及び機能、並びに大きさは共通するが、位置については、本願部分は、周側面に縦方向ほぼ等間隔に、かつ近接して6カ所(上下端を含める縦略5等分位置の6カ所)設けられたものであるのに対して、本意匠部分は周側面に縦方向ほぼ等間隔に、かつ近接して9カ所(上下端を含める縦略8等分位置の9カ所)設けられたものであり、範囲については、本願部分は6つの縦方向ごく細幅の範囲が正面視で全体の端寄りの横幅約9分の1から背面視で吸気口近辺の背面端寄りの横幅約10分の1まで回り込んで占めているのに対し、本意匠部分は9つの縦方向ごく細幅の範囲が正面視で全体の端寄りの横幅約9分の1から背面側に僅かに回り込んで占めている点について相違する。
(3)形態
本願部分と本意匠部分の形態を対比すると、主として、以下の共通点と差異点が認められる。
(3-1)共通点
基本的構成態様として、
(A)略扁平な横長直方体(全体)の正面端寄りから背面端寄りに亘る周側面に沿って左右対称に設けられた、複数本の水平方向に直線状の溝部である点が共通し、
具体的構成態様として、
(B)各溝部は、略角溝に形成されている点
(C)正面:側面の横方向長さ比は、8:28である点
(D)ごく細幅(側面溝部長手方向長さの62分の1)で各溝部が同形状のものである点が共通する。
(3-2)相違点
具体的構成態様として、
(a)溝部の形成された周側面において本願部分は、正面から側面、側面から背面の各角部が大きく丸みを帯びて形成されているため、溝部の角部の態様が略隅丸状であるのに対し、本意匠部分は正面から側面、側面から背面の各角部がごくわずかに丸みをもって形成されているため、溝部の角部の態様がごくわずかに丸みのある略角状であって、
(b)溝部の本数について、本願部分は、6本であるのに対し、本意匠部分は9本であり、
(c)本願部分は、背面:側面の横方向長さ比は、6:28であるのに対し、本意匠部分は1.5:28である点が相違する。

2 類否判断
以上の一致点、共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
なお、両意匠はそれぞれ複数の範囲を占める部分から成るが、形態的一体性をもって形成されたものであるから、1意匠として認められ、互いに対比可能なものである。
(1)意匠に係る物品の評価
前記、第4の1(1)のとおり、両意匠の意匠に係る物品は、一致するから同一であるが、同様の意匠に係る物品(本願意匠においては「エアーコンディショナー」)であるものは、多数見受けられ、意匠に係る物品が同一であることにより、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(2)用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の評価
前記、第4の1(2)のとおり、両部分は、その用途及び機能、並びに大きさが共通し、位置及び範囲が相違するが、両意匠の意匠に係る物品「エアーコンディショナー」の物品分野において、両部分と同様の部分として対比可能な、用途及び機能を持つものについては、エアーコンディショナーに装飾のための溝を設けることは、良く見受けられ(例:意匠登録第540586号の「エアーコンディショナー」など)、大きさについても室内で冷暖房に用いられる大きさのものと認められるので、それぞれ両意匠の類否判断に与える影響は小さい。また、位置及び範囲については、位置については、周側面に縦方向等間隔に6カ所(上下端を含める縦略5等分位置の6カ所)設けられたものか9カ所(上下端を含める縦略8等分位置の9カ所)設けられたかの相違であり、同じ周側面に同じく複数近接して設けられたものであるから、この相違が両意匠の類否判断に与える影響は小さく、範囲については、縦方向に並んだごく細幅の6つの範囲か9つの範囲かの相違であって、近接した複数の範囲である点で共通し、背面側での占める範囲の相違は、目立たない箇所の相違でもあるから、これも両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
(3)形態の評価
(3-1)形態の共通点の評価
天井もしくは天井寄りに設けられる「エアーコンディショナー」の物品分野においては、需用者は下側若しくは斜め下側から見上げることになり、斜め下側からの正面及び側面は、よく観察される箇所であって、特にエアーコンディショナーは、冷風、温風を吹き出して室温を整えるものであるから、その吹き出し口のある正面側に最も注意を向けるところといえ、基本的構成態様としてあげた共通点(A)は、その正面側から側面を経て、背面に亘る周側面における両部分の共通点であって、周側面に沿って、左右対称に設けられた複数本の水平方向に直線状の溝部である点は、両部分の形態の基調を形成して、両部分の独自の共通する特徴に係るものといえるから、この点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。また、共通点(B)は、具体的な溝部の形態に係り、共通点(D)と相まって、複数のごく細幅の略角溝が周側面を横方向にライン様にめぐるシャープな印象を強めるものであって、両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものである。そして共通点(C)の両部分の正面:側面の横方向長さ比は、8:28である点は、正面と側面の横方向の長さ比であって、斜め下側からの正面及び側面は、よく観察される箇所でもあるから、この共通点は、需要者の注意を惹き、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
したがって、共通点(A)ないし(D)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きく、共通点全体であいまって生じる効果は、両部分の類否判断を決定付けるものである。
(3-2)形態の相違点の評価
これに対して、両部分の具体的構成態様に係る相違点は、相違点(a)は、両部分の溝部の角部の丸みの大小に関わるものであって、需要者に十分目につく正面から側面の溝部の角部の態様についてであるが、角部にわずかに丸みを持ったものも大きく丸みを帯びたものも、「エアーコンディショナー」の物品分野においては、よく見受けられる角部の態様であって、この点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。また、相違点(b)は、溝部の本数について、6本か、9本かの相違であって、どちらも注視して、それとわかる程度の複数の溝部の本数の相違であって、両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度のものである。相違点(c)は、背面の側面に対する溝部の横方向の長さ比の相違であるが、目に付きにくい背面側の長さの相違であるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(3-3)形態の総合評価
そうすると、形態における共通点(A)ないし(D)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両部分の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形態の相違点(b)の両部分の類否判断に与える影響は、一定程度あるとしても、相違点(a)及び相違点(c)が両部分の類否判断与える影響小さいものであって、それら相違点(a)ないし相違点(c)があいまっても、相違点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さく、共通点が相違点を凌駕し、両部分は類似するものである。

3 小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一であって、両部分の用途及び機能、並びに大きさが共通し、位置及び範囲の相違が類否判断に与える影響は小さいものの、形態においては、共通点が両部分の類否判断に及ぼす影響は相違点のそれを凌駕しており、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は、願書に記載した本意匠に類似するものである。

4 本願意匠が意匠法第10条1項の規定に該当するか否かについて
本意匠の意匠登録出願人は、本願の意匠登録出願人と同一であるから、意匠法第10条1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。
また、本願意匠の意匠登録の出願の日は本意匠の意匠登録出願の日以後(同日)であって、本意匠の意匠登録公報の発行の日の前であるから意匠法第10条1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。
さらに、前記3のとおり、本願意匠は本意匠に類似するものと認められるので意匠法第10条1項に規定されている本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たしている。
したがって本願意匠が意匠法第10条1項の規定に該当するものである。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、願書に記載した本意匠に類似し、意匠法第10条第1項の規定に該当するものと認められるから原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲


審決日 2020-09-23 
出願番号 意願2018-28005(D2018-28005) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (D4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 一柳 萌中村 遥子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
北代 真一
登録日 2020-10-16 
登録番号 意匠登録第1671919号(D1671919) 
代理人 原田 雅美 
代理人 渡邉 知子 
代理人 川越 弘 

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