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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 D4
管理番号 1368170 
審判番号 不服2019-14112
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-23 
確定日 2020-11-04 
意匠に係る物品 油煙ろ過器 
事件の表示 意願2018- 9730「油煙ろ過器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年(2018年)5月1日に意匠登録出願され、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
平成31年 2月22日付け 原審拒絶理由の通知
平成31年 4月11日 意見書の提出
令和 元年(2019年)7月16日付け 拒絶査定
令和 元年10月23日 審判請求書の提出
令和 2年 2月13日付け 当審拒絶理由の通知(1回目)
令和 2年 3月30日 意見書の提出
令和 2年 7月10日付け 当審拒絶理由の通知(2回目)
令和 2年 8月24日 意見書の提出

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「油煙ろ過器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であり、一点鎖線は意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界線のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 当審における拒絶の理由及び引用意匠
当審における拒絶の理由(2回目)は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願は、願書及び添付図面の記載によれば、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、本願の意匠は、意匠に係る物品を「油煙ろ過器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であり、一点鎖線は意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界線のみを示す線である。」としたものです(以下「本願部分」という。別紙第1参照。)。

すなわち、本願意匠は、願書の【意匠に係る物品の説明】によれば、「本物品は、主に業務厨房で発生する油煙等をろ過する油煙ろ過器であり、吸い込み効率を向上させるために整流板が設けられているもの」であり、本願部分は、チャンバーの前方傾斜面側に配設した整流板のうち、周縁の立ち上がり部を除く板体部であって、本願部分の形態は、略隅丸正方形状とするものです。
また、本願部分は、油煙吸入口との間に僅かなすき間を設けて配設し、願書添付図面における【使用状態を示す参考図】によれば、油煙吸入口を覆うフード内に設置して用いるものです。

ここで、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について、すなわち、本願意匠における「意匠登録を受けようとする部分」全体の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形態に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否か、及び、当該部分の用途及び機能を考慮し、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、その大きさ、その範囲とすることが、当業者にとってありふれた態様であるか否かについて、以下、検討します。

まず、本願意匠に係る、厨房等で用いる油煙処理用器具の分野において、調理器具の上部に油煙吸入口を配置し、浮遊する油煙等を効率的に吸い込むために油煙吸入口の上流側に整流板を取り付けることは、意匠1にあるとおり、当業者であれば容易に創作することができたものです。

また、厨房等で用いる油煙処理用器具の分野においては、従来、業務用、家庭用の用途を限らず製品開発が行われていることだけでなく、業務用厨房に用いる油煙処理用器具に整流板を用いることも、例えば、以下の参考文献1ないし参考文献3に表れるとおりであり、業務用厨房における油煙ろ過器に整流板を取り付けることに、何ら着想の新しさや独創性があるとはいえず、当業者であれば容易に想到することができたものといえます。

参考文献1 特開2009?186132号公報
参考文献2 実用新案登録第3189435号公報
参考文献3 特開2015-161419号公報

次に、本願部分の位置、大きさ及び範囲についても、この種物品分野における油煙処理用器具のうち、本願部分を、油煙吸入口の上流側に、油煙吸入口と僅かなすき間を設け、かつ油煙吸入口を有する面を覆うように配設することは、意匠1及び意匠2に見られるとおりであるため、この出願前より公然知られているところであり、当業者であれば容易に創作することができたものと認められますから、これらの配設態様に着想の新しさないし独創性があるとはいえず、この創作に特筆すべき創意は認められません。

また、整流板のうち、板体部の形状を略隅丸正方形状とすることも、意匠1にみられるとおりであり、格別の創作を要するものとは認められません。

そうすると、本願部分の形態は、厨房等で調理器具上に配置して、調理時に発生する油煙等を捕集・排気する厨房用排気処理に係る器具のうち、油煙吸入口が配設されたチャンバーの上流側に、本願意匠の出願前に公然知られたと認められる意匠1の整流板を、公然知られた態様で配設したうちの周縁の立ち上がり部を除く板体部としたに過ぎないものであり、当該創作は、上記で述べたとおり、公然知られた形態に基づくものであって、特筆すべき創意は認められないものですから、本願意匠は、当業者であれば、容易に創作をすることができたものと認められます。

意匠1(別紙第2参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2012年 7月24日に受け入れた
▲時▼尚家居 188号
第43頁所載
レンジフードの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HB24004219号)

意匠2(別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1604174号
(意匠に係る物品、レンジフード)の意匠」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かに付いて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「油煙ろ過器」である。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は、厨房で発生する油煙等をろ過する油煙ろ過器の吸い込み効率を向上させる整流板に係る部分である。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、チャンバーの前方傾斜面側に、油煙吸入口との間に僅かなすき間を設けて配設した整流板の一部であって、当該整流板は、チャンバーの前方傾斜面のほぼ全面を覆うものであり、具体的には、チャンバーの左右幅の約97%、上下方向に約91%の大きさとするものである。

(4)本願部分の形態
本願部分の形態は、整流板のうち、周縁の立ち上がり部を除く板体部であって、略正方形薄板状とするものである。

2 引用意匠の認定
当審における拒絶の理由に引用された、意匠1及び意匠2の意匠に係る物品及び形態は、概要以下のとおりである。

(1)意匠1
意匠1の意匠に係る物品は、「レンジフード」であり、意匠1のうち、当審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、厨房等で発生する油煙等をろ過する油煙ろ過器の吸い込み効率を向上させる整流板に係る部分であり、レンジフードの前方傾斜面に、油煙吸入口との間に僅かなすき間を設けて配設した整流板の一部であって、当該整流板を、正面視においてレンジフードの略中央に配設し、整流板の形態は、略正方形薄板状とするものである。

(2)意匠2
意匠2の意匠に係る物品は、「レンジフード」であり、意匠2のうち、当審拒絶理由における本願部分の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、厨房等で発生する油煙等をろ過する油煙ろ過器の吸い込み効率を向上させる整流板に係る部分であり、レンジフードの前方傾斜面に、油煙吸入口との間に僅かなすき間を設けて配設した整流板の一部であり、当該整流板は、チャンバーの前方傾斜面よりやや小さいものであり、具体的には、整流板は、背面側チャンバー左右幅の約87%、上下方向に約83%の大きさとするものであり、正面視においてはレンジフードの約中央部に左右幅の約58%、上下方向に約64%の大きさを占めるものであって、具体的には整流板の形態は、略横長長方形薄板状とするものである。

3 本願意匠の創作非容易性について
意匠法第3条第2項の適用についての判断は、(1)「意匠登録を受けようとする部分」の全体の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形態に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に、当該部分の用途及び機能を考慮し、(2)「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、その大きさ、その範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うものであるから、これらの点について、以下検討する。

(1)本願部分全体の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形態に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かについて
本願部分全体の形態は、前記1(4)のとおり、整流板のうち、周縁の立ち上がり部を除く板体部であって、略正方形薄板状とするものであるが、整流板のうち、板体部の形状を略正方形薄板状とすることは、意匠1に見られるとおりであり、格別の創作を要するものとは認められない。
また、業務用厨房に用いる油煙処理用器具に整流板を用いることが、当業者であれば容易に想到することができたかどうかについても、当審拒絶理由で記載のとおり、厨房等で用いる油煙処理用器具の分野においては、従来、業務用、家庭用の用途を限らず製品開発が行われていることだけでなく、業務用厨房に用いる油煙処理用器具に整流板を用いることも、例えば、以下の参考文献1ないし参考文献3に表れるとおりであり、業務用厨房における油煙ろ過器に整流板を取り付けることに、何ら着想の新しさや独創性があるとはいえず、当業者であれば容易に想到することができたものといえる。

参考文献1 特開2009?186132号公報
参考文献2 実用新案登録第3189435号公報
参考文献3 特開2015-161419号公報

(2)本願部分を当該物品全体の形態の中において、その位置、その大きさ、その範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かについて
本願部分の当該物品全体の形態の中における、位置、大きさ及び範囲は、上記1(3)のとおり、チャンバーの前方傾斜面側に、油煙吸入口との間に僅かなすき間を設けて配設した整流板の一部であって、当該整流板は、チャンバーの前方傾斜面のほぼ全面を覆うものであり、具体的には、チャンバーの左右幅の約97%、上下方向に約91%の大きさとするものである。
この点、引用意匠2の該整流板は、前記2(2)のとおり、チャンバーの前方傾斜面よりやや小さいものであり、具体的には、整流板は、背面側チャンバー左右幅の約87%、上下方向に約83%の大きさとするものであり、正面視においてはレンジフードの約中央部に左右幅の約58%、上下方向に約64%の大きさを占めるものである。
また、この種物品分野において、チャンバーの前面傾斜面のほぼ全面に整流板を配することは、例えば以下の参考意匠4に表れるとおり、この出願前より公然知られた態様である。
しかしながら、本願部分のように、正方形状板体からなる整流板を、チャンバーの前方傾斜面側に、油煙吸入口との間に僅かなすき間を設けて配設し、当該整流板は、チャンバーの前方傾斜面のほぼ全面、具体的には、チャンバーの左右幅の約97%、上下方向に約91%の範囲を覆う大きさとする態様については、これらの意匠からは導き出せず、この種物品分野において一定の創作を有するものといわざるを得ない。

参考意匠4(別紙第4参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1524420号
(意匠に係る物品、厨房用排気装置の整流板)の
「使用状態を示す参考図」に表れた整流板の配設態様

(3)小括
そうすると、本願意匠は、(1)本願部分全体の形態である、整流板の板状部分を略正方形薄板状とすることは、当該意匠登録出願前に公然知られた形態に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであって、当該形態に特段の創作性を認めることはできないものの、(2)本願部分に係る整流板を、チャンバーの前面にチャンバーと僅かなすき間を設けて、チャンバーの前面傾斜面よりやや小さい整流板を配設する態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといえ、一定の創作性を認める余地があるといえる。また、意匠1及び意匠2の形態に基づいて、本願意匠の形態を容易に創作することができたことを示す証拠は見られないから、本願意匠の形態は、この種物品分野において独自の着想によって創出したといわざるを得ず、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-10-19 
出願番号 意願2018-9730(D2018-9730) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (D4)
最終処分 成立 
前審関与審査官 加藤 真珠小曽根 智成松下 香苗 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 木村 恭子
北代 真一
登録日 2020-11-25 
登録番号 意匠登録第1674609号(D1674609) 
代理人 特許業務法人 英知国際特許事務所 
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