• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1370921 
審判番号 不服2020-7648
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-03 
確定日 2021-02-09 
意匠に係る物品 内視鏡用フード 
事件の表示 意願2018- 23893「内視鏡用フード」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成30年10月31日 意匠登録出願
令和 1年 5月30日付け 拒絶理由通知書(1回目)
令和 1年 7月16日 意見書提出
令和 1年 9月24日付け 拒絶理由通知書(2回目)
令和 1年11月11日 意見書提出
令和 2年 2月26日付け 拒絶査定
令和 2年 6月 3日 審判請求書提出

第2 本願意匠
本願は、平成30年(2018年)10月31日の意匠登録出願(意願2018-23893)であって、その意匠は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「内視鏡用フード」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものである(以下、本願の意匠を「本願意匠」という(別紙第1参照)。)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠と合わせて「両意匠」という。)は、
「特許庁発行の公開特許公報記載
特開2010-017289
(発明の名称:内視鏡用先端フード及びそれを用いる内視鏡ユニット)
の図7中、符号200で表された内視鏡用先端フード(先端フード)の意匠」(別紙第2参照)である。

第4 当審の判断
1 対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「内視鏡用フード」であり、引用意匠の意匠に係る物品も「内視鏡用先端フード」であって、その表記は異なるが、いずれも、内視鏡の先端に装着して用いられるものであるから、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。
(2)形態
両意匠の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。
引用意匠の向きのうち、引用意匠の図7(B)の「断面図」は本願意匠の向きに合わせて、右に90度回転して認定する。
ア 共通点
基本的構成態様として、
(A)全体を上下に貫通した略円筒形状とし、全体を半ばで2分する上側部分(上半部)の周側面を下から上に向けて徐々に径を縮小するテーパー状に形成した点が共通し、
具体的構成態様として、
(B)全体が透明である点が共通する。
イ 相違点
具体的構成態様として、
(a)縦横の長さ及び上半部と下半部の縦の長さの比率は、本願意匠は、正面視で、縦横の長さの比率は約9:8で、上半部と下半部の長さの比率は約1:1.15であるのに対し、引用意匠は、約10.6:8で、約1:1である点、
(b)上半部の傾斜角度について、本願意匠は、正面視で、鉛直方向に対し内側に向けての傾きが約6度であるのに対し、引用意匠は約12度である点、
(c)内壁の形状について、本願意匠は、上端から下端まで等幅の略円筒状の内壁形状で、上半部の壁部の厚みは周側面のテーパーと内壁形状によって、下から上に向けて徐々に薄くなっているのに対し、引用意匠は、上半部は、周側面のテーパーに沿って、内壁に勾配を設け、壁部の厚みを均一に形成し、下半部は、全高約2分の1の段部を経て、上半部より一段径を拡大して略円筒状に形成し、全高の下から約4分の1に内周に沿って略弧状に膨出した凸条部を設けた内壁形状である点、
(d)壁部の厚みと横幅の長さの比率について、本願意匠は上端の壁部の厚みが、横幅の約20分の1で、下端の厚みは約11分の1で、上端の厚みが下端の厚みより薄くなっているのに対し、引用意匠は、上端の壁部の厚みが、横幅の約6分の1で、下端の厚みが約10分の1であって、上端の厚みが下端の厚みより厚くなっている点、
(e)上端開口部の内径と上端の壁部の厚みの長さの比率について、本願意匠は、約17:1であるのに対し、引用意匠は、約1.7:1である点が相違する。

2 類否判断
以上の一致点、共通点及び相違点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、一致するから同一である。
(2)形態の評価
両意匠の意匠に係る物品である「内視鏡用フード」は、内視鏡先端に装着して使用するものであって、先端(上端)は処置具などの出入り、カメラによる観察等を行う開口部でもあるから、需要者が最も注目する部分であり、また、後端(下端)部も内視鏡に装着する側であるから、需要者は一定の注意を払うものである。したがって、両意匠の類否判断においては、特に、上記部分の形態を評価し、かつそれ以外の形態も併せて、各部を総合して意匠全体として形態を評価することとする。
(2-1)形態の共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)については、このような全体を上下に貫通した略円筒形状とし、上半部の周側面を下から上に向けて徐々に径を縮小するテーパー状に形成した態様は、「内視鏡用フード」の物品分野において、ごく普通に見受けられる基本的構成態様であるから、この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さく、共通点(B)の全体が透明である点も、「内視鏡用フード」の物品分野において、透明の素材は、内視鏡の視野を確保するために一般的に採用されるものであるから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
したがって、共通点(A)及び(B)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は、いずれも小さく、共通点全体で総じても、両意匠の類否判断を決定付けるとはいえないものである。
(2-2)形態の相違点の評価
これに対して、相違点(a)ないし相違点(b)は両意匠全体のプロポーションに関わり、上半部と下半部の長さの比率については、本願意匠の約1:1.15に対し引用意匠の約1:1と、僅かな相違にとどまるものの、縦横の長さの比率及び上半部の傾斜角度については、本願意匠は、約9:8と縦横の長さにおいて差が少なく、上半部の傾斜角度も約6度とごく浅いため、上端の径が大きく、先細りの印象の弱い、全体に幅広で、安定した印象を与えるのに対し、引用意匠は約10.6:8と縦長で、上半部の傾斜角度も約12度で、本願意匠の2倍ほどと深いため、上端の径が小さく、上方に向けて強く先細りするとがった印象を与え、需要者に全く異なる美感を与えるから、この点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
次に、相違点(c)は、内部の形態ではあるが、両意匠共に、略円筒形状であるから、内壁の形状は、需要者が上方及び下方から観察でき、かつ、全体が透明であるから、壁部の厚みは、注視を要するとしても、段部や凸条部などは側方からも観察できる形態であって、本願意匠が略円筒状の内壁形状で、上半部の壁部の厚みは下から上に向けて徐々に薄く形成したものであるのに対し、引用意匠は、上半部は、内壁に勾配を設け、壁部の厚みを均一に形成し、下半部は、段部を経て、上半部より一段径を拡大した略円筒状で、全高の下から約4分の1に内周に沿って略弧状に膨出した凸条部を設けた内壁形状である点は、一見してわかる相違であって、凸条部については、内視鏡の装着態様にも関わるものであるから、この点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
また、相違点(d)及び相違点(e)は需要者が注意を払う、上端及び下端の相違であって、相違点(d)について、下端の壁部の厚みは、本願意匠は横幅の約11分の1で、対する引用意匠は約10分の1であるから、引用意匠の下端の壁部の厚みは本願意匠のものよりやや厚めである印象にとどまる一方、上端の壁部の厚みについては、本願意匠は横幅の約20分の1で、対する引用意匠は約6分の1と大きく相違しており、加えて相違点(e)の上端開口部の内径と上端の壁部の厚みの長さ比率が、本願意匠は約17:1であるのに対し引用意匠は約1.7:1である点も相違点(d)を補強し、本願意匠が、開口部に比して、極めて薄い上端の壁部との印象を与えるのに対し、引用意匠は、極めて厚い上端の壁部との印象を与え、相違点(d)の本願意匠の上端の壁部の厚みは、下端の壁部の厚みに比して薄く、引用意匠は下端の壁部の厚みより厚い点もあいまって両意匠の別異の感を強め、上端は、需要者の最も注目する箇所でもあるから、本願意匠の、より処置具などの出入りにも余裕があり、視野もクリアであるとの印象を与える薄い上端の壁部と、引用意匠の、頑丈であるものの、処置具の出入りについては余裕がないとの印象も与える厚い上端の壁部の相違は大きく、この点が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(2-3)形態の総合評価
そうすると、形態における相違点(a)ないし相違点(e)の両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きく、相違点(a)ないし相違点(e)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両意匠の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形態における共通点(A)及び共通点(B)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は、いずれも小さく、それら共通点(A)及び共通点(B)が総じても、共通点の両意匠の類否判断に与える影響は小さく、相違点が共通点を凌駕し、両意匠の類否判断を決定付けるものであるから、両意匠は類似しない。
したがって、両意匠の意匠に係る物品は同一であるが、形態においては、両意匠は類似しないから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-01-20 
出願番号 意願2018-23893(D2018-23893) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石川 天乃竹下 寛 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2021-02-18 
登録番号 意匠登録第1680684号(D1680684) 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ