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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1370925 
審判番号 不服2020-7649
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-03 
確定日 2021-02-09 
意匠に係る物品 内視鏡用フード 
事件の表示 意願2018- 23894「内視鏡用フード」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
平成30年10月31日 意匠登録出願
令和 1年 5月30日付け 拒絶理由通知書(1回目)
令和 1年 7月16日 意見書提出
令和 1年 9月27日付け 拒絶理由通知書(2回目)
令和 1年11月11日 意見書提出
令和 2年 2月26日付け 拒絶査定
令和 2年 6月 3日 審判請求書提出

第2 本願意匠
本願は、平成30年(2018年)10月31日の物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願(意願2018-23894)であって、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「内視鏡用フード」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものであって、「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(以下、本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)(別紙第1参照)。)

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用した意匠(以下、「引用意匠」といい、本願意匠と合わせて「両意匠」という。)は、
「特許庁発行の公開特許公報記載
特開2010-017289
(発明の名称:内視鏡用先端フードおよびそれを用いる内視鏡ユニット)
の図7中、符号200で表された内視鏡用先端フード(先端フード)の意匠
のうち、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分の意匠」(引用意匠のうち本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分を、以下「引用部分」という。(別紙第2参照))である。

第4 当審の判断
1 対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「内視鏡用フード」であり、引用意匠の意匠に係る物品も「内視鏡用先端フード」であって、その表記は異なるが、いずれも、内視鏡の先端に装着して用いられるものであるから、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。
(2)本願部分と引用部分の用途及び機能
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも内視鏡用フードの全体の半ばより下側の部分(下半部)を除く、周側面をテーパー状に形成して成る半ばより上側の部分(上半部)であって、内視鏡への装着時は、内視鏡よりも先方に突出し、内視鏡先端を保護して、体内への挿入を助け、観察面との距離を保って、カメラの視界を確保するなどの機能及び用途を有するから、用途及び機能が共通する。
(3)両部分の位置、大きさ及び範囲
両部分は、いずれも、内視鏡に装着する「内視鏡用フード」の上半部であって、上半部の全体の範囲を占めたものであるから、位置、大きさ及び範囲が一致する。
(4)形態
両部分の形態を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。
引用部分の向きのうち、図7(B)の「断面図」は本願部分の向きに合わせて、右に90度回転して認定する。
ア 共通点
基本的構成態様として、
(A)略円筒形状とし、周側面を下から上に向けて徐々に径を縮小するテーパー状に形成した点が共通し、
具体的構成態様として、
(B)全体が透明である点が共通する。
イ 相違点
具体的構成態様として、
(a)縦横の長さ比率は、本願部分は、正面視で、縦横の長さの比率は約4:8であるのに対し、引用部分は、約5.3:8である点、
(b)上半部の傾斜角度について、本願部分は、正面視で、鉛直方向に対し内側に向けての傾きが約6度であるのに対し、引用部分は約12度である点、
(c)内壁の形状について、本願部分は、上端から下端まで等幅の略円筒状の内壁形状で、壁部の厚みは周側面のテーパーと内壁形状によって、下から上に向けて徐々に薄くなっているのに対し、引用部分は、周側面のテーパーに沿って、内壁に勾配を設け、壁部の厚みを均一に形成した内壁形状である点、
(d)壁部の厚みと横幅の長さの比率について、本願部分は上端の壁部の厚みが、横幅の約20分の1であるのに対し、引用部分は、上端の壁部の厚みが、横幅の約6分の1である点、
(e)上端開口部の内径と上端の壁部の厚みの長さの比率について、本願部分は、約17:1であるのに対し、引用部分は、約1.7:1である点が相違する。

2 類否判断
以上の一致点、共通点及び相違点が、両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、一致するから同一である。
(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、主たる用途及び機能が共通するから、類似する。
(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分は、いずれも、内視鏡に装着する「内視鏡用フード」の上半部であって、上半部の全体の範囲を占めたものであるから、位置、大きさ及び範囲が一致する。
(4)形態の評価
両意匠の意匠に係る物品である「内視鏡用フード」は、内視鏡先端に装着して使用するものであって、先端(上端)は処置具などの出入り、カメラによる観察等を行う開口部でもあるから、需要者が最も注目する部分である。したがって、両部分の類否判断においては、特に、上記部分の形態を評価し、かつそれ以外の形態も併せて、各部を総合して意匠全体として形態を評価することとする。
(4-1)形態の共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(A)については、このような全体を略円筒形状とし、周側面を下から上に向けて徐々に径を縮小するテーパー状に形成した態様は、「内視鏡用フード」の物品分野において、ごく普通に見受けられる基本的構成態様であるから、この共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さく、共通点(B)の全体が透明である点も、「内視鏡用フード」の物品分野において、透明の素材は、内視鏡の視野を確保するために一般的に採用されるものであるから、両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
したがって、共通点(A)及び(B)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、いずれも小さく、共通点全体で総じても、両部分の類否判断を決定付けるとはいえないものである。
(4-2)形態の相違点の評価
これに対して、相違点(a)ないし相違点(b)は両部分全体のプロポーションに関わり、縦横の長さの比率及び傾斜角度については、本願部分は、約4:8と横幅が高さの2倍程度に横長で、傾斜角度も約6度とごく浅いため、上端の径が大きく、先細りの印象の弱い、周側面の傾斜の僅かな低めの中空円錐台形状との印象を与えるのに対し、引用部分は約5.3:8とやや横長で、上半部の傾斜角度も約12度で、本願部分の2倍ほどと深いため、上端の径が小さく、上方に向けて強く先細りするとがった印象を与え、需要者に全く異なる美感を与えるから、この点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。
次に、相違点(c)は、内部の形態ではあるが、両部分共に、略円筒形状であるから、内壁の形状は、需要者が上方及び下方から観察でき、かつ、全体が透明であるから、注視すれば、壁部の厚みなども側方から観察できる形態であって、本願部分が略円筒状の内壁形状で、壁部の厚みは下から上に向けて徐々に薄く形成したものであるのに対し、引用部分の、周側面のテーパーに沿って、内壁に勾配を設け、壁部の厚みを均一に形成した内壁形状である点は、視覚的印象が大きく異なり、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
また、相違点(d)及び相違点(e)は需要者が注意を払う、上端の相違であって、相違点(d)について、上端の壁部の厚みについては、本願部分は横幅の約20分の1で、対する引用部分は約6分の1と大きく相違しており、加えて相違点(e)の上端開口部の内径と上端の壁部の厚みの長さ比率が、本願部分は約17:1であるのに対し引用部分は約1.7:1である点も相違点(d)を補強し、本願部分が、開口部に比して、極めて薄い上端の壁部との印象を与えるのに対し、引用部分は、極めて厚い上端の壁部との印象を与え、上端は、需要者の最も注目する箇所でもあるから、本願部分の、より処置具などの出入りにも余裕があり、視野もクリアであるとの印象を与える薄い上端の壁部と、引用部分の、頑丈であるものの、処置具の出入りについては余裕がないとの印象も与える厚い上端の壁部の相違は大きく、この点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。
(4-3)形態の総合評価
そうすると、形態における相違点(a)ないし相違点(e)の両部分の類否判断に及ぼす影響はいずれも大きく、相違点(a)ないし相違点(e)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両部分の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形態における共通点(A)及び共通点(B)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、いずれも小さく、それら共通点(A)及び共通点(B)が総じても、共通点の両部分の類否判断に与える影響は小さく、相違点が共通点を凌駕し、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、両部分は類似しない。
したがって、両意匠の意匠に係る物品は同一であって、その用途及び機能が類似し、位置、大きさ及び範囲は同一であるが、形態においては、両部分は類似しないから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-01-20 
出願番号 意願2018-23894(D2018-23894) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石川 天乃竹下 寛 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2021-02-18 
登録番号 意匠登録第1680685号(D1680685) 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 

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