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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4
管理番号 1371749 
審判番号 不服2020-13434
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-25 
確定日 2021-02-16 
意匠に係る物品 生理用ナプキン 
事件の表示 意願2019- 26351「生理用ナプキン」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,令和1年(2019年)11月28日の意匠登録出願であって,令和2年4月2日付けの拒絶理由の通知に対し,同年5月21日に意見書が提出されたが,同年7月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「生理用ナプキン」としたものであって,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,「実線で表された部分が,意匠登録を受けようとする部分である。『A-A線拡大断面図』,『B-B線拡大断面図』,『C-C線拡大断面図』及び『D-D線拡大断面図』を含めて,意匠登録を受けようとする部分を特定している。」(以下,本願において意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができないとしたものであって,当該拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

「特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1443551号
(意匠に係る物品,生理用ナプキン)の本願意匠に相当する部分の意匠」

第4 当審の判断
1 本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載によると,以下のとおりのものと認められる。なお,形状の認定に当たっては,平面図を右に90度回転させた形状により行う。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「生理用ナプキン」である。
(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は,多数の凹部を設けた9本の溝部分で構成されたものであり,生理用ナプキンにおける凹部を設けた溝の用途及び機能を有するものである。
(3)本願部分の位置,大きさ及び範囲
本願部分は,9本の溝部分を,物品全幅の中央約3分の1の幅において,上下両端寄りを除く全体にわたって配置した位置,大きさ及び範囲としたものである。
(4)本願部分の形状
本願部分は,平面視において左右対称形を成し,9本の溝部分を上(着用時の前方)から順に,概略で,1本の溝部分から成る上端で途切れたハート形状,2本の溝部分から成る逆ハ字形状,2本の溝部分から成る上下のない紡錘形状,2本の溝部分から成る逆八字形状及び2本の溝部分から成る上下両端で途切れた逆ハート形状の部分を配置し,各部分の上下方向の長さの比率を約2対1対6対2対3,最大幅の比率を約4対7対7対3対5としたものであり,各部分は,細い溝に,多数の小円形の凹部をやや間隔を狭くして設けたものである。

2 引用意匠
引用意匠は,上記「第3」の意匠公報の記載によると,以下のとおりのものと認められる。なお,形状の認定に当たっては,本願意匠と同様に,平面図を右に90度回転させた形状により行う。また,以下,引用意匠において,本願部分に相当する部分を「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」という。
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は,「生理用ナプキン」である。
(2)引用部分の用途及び機能
引用部分は,多数の凹部を設けた7本の溝部分で構成されたものであり,生理用ナプキンにおける凹部を設けた溝の用途及び機能を有するものである。
(3)引用部分の位置,大きさ及び範囲
引用部分は,7本の溝部分を,物品全幅の中央約3分の1の幅において,上下両端寄りを除く全体にわたって配置した位置,大きさ及び範囲としたものである。
(4)引用部分の形状
引用部分は,平面視において左右対称形を成し,7本の溝部分を上(着用時の前方)から順に,概略で,1本の溝部分から成る上端で途切れたハート形状,2本の溝部分から成る逆ハ字形状,2本の溝部分から成る上下のない紡錘形状及び2本の溝部分から成る上下両端で途切れた逆ハート形状の部分を配置し,各部分の上下方向の長さの比率を約2対1対6対3,最大幅の比率を約4対7対6対5としたものであり,各部分は,細い溝の中に,多数の小円形の凹部をやや間隔を広くして設けたものである。

3 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は,共に「生理用ナプキン」である。
(2)両部分の用途及び機能
本願部分は,生理用ナプキンにおける多数の凹部を設けた9本の溝部分の用途及び機能を有するものであるのに対して,引用部分は,生理用ナプキンにおける多数の凹部を設けた7本の溝部分の用途及び機能を有するものであり,上下のない紡錘形状の部分と上下両端で途切れた逆ハート形状の部分の間に逆八字形状の部分を設けたか否かに伴う相違が認められる。
(3)両部分の位置,大きさ及び範囲
本願部分は,9本の溝部分を,物品全幅の中央約3分の1の幅において,上下両端寄りを除く全体にわたって配置した位置,大きさ及び範囲としたものであるのに対して,引用部分は,7本の溝部分を,物品全幅の中央約3分の1の幅において,上下両端寄りを除く全体にわたって配置した位置,大きさ及び範囲としたものである。
(4)両部分の形状
(4-1)共通点
共通点1:平面視において左右対称形を成す,複数本の溝部分から構成されたものである。
共通点2:平面視において上から順に,概略で,上端で途切れたハート形状,逆ハ字形状及び上下のない紡錘形状の部分を配置すると共に,一番下に上下両端で途切れた逆ハート形状の部分を配置したものであり,これらの部分の上下方向の長さの比率を約2対1対6対3としたものである。
また,各部分の最大幅の比率については,上端で途切れたハート形状,逆ハ字形状及び上下両端で途切れた逆ハート形状の部分を約4対7対5としたものである。
共通点3:各部分は,細い溝の中に,多数の小円形の凹部を設けたものである。
(4-2)相違点
相違点1:本願部分は,9本の溝部分から成るものであるのに対して,引用部分は,7本の溝部分から成るものである。
相違点2:各部分の配置構成について,本願部分は,上下のない紡錘形状の部分と上下両端で途切れた逆ハート形状の部分の間に逆八字形状の部分を設けたものであるのに対して,引用部分は,逆八字形状の部分を設けていないものである。
相違点3:上下のない紡錘形状の部分の最大幅について,本願部分は,逆ハ字形状の部分の最大幅と同程度としたものであるのに対して,引用部分は,逆ハ字形状の部分の最大幅よりも明らかに狭くしたものである。
相違点4:溝に設けた凹部について,本願部分は,やや間隔を狭くして設けたものであるのに対して,引用部分は,やや間隔を広くして設けたものである。

4 両意匠の類否
(1)意匠に係る物品について
両意匠の意匠に係る物品は,共に「生理用ナプキン」であり,同一である。
(2)両部分の用途及び機能について
本願部分は,生理用ナプキンにおける多数の凹部を設けた9本の溝部分の用途及び機能を有するものであるのに対して,引用部分は,生理用ナプキンにおける多数の凹部を設けた7本の溝部分の用途及び機能を有するものであるところ,その本数の相違は,上下のない紡錘形状の部分と上下両端で途切れた逆ハート形状の部分の間に逆八字形状の部分を設けたか否かの相違によるものであるが,需要者は,逆八字形状の部分について,その配置から,溝に挟まれた部分を身体側に膨出させる機能を有し,当該膨出部が,着用した際に臀部の溝に入り込むようにフィットし,経血が臀部側に流れて漏れることを防ぐことを目的として設けたものであると理解できることから,生理用ナプキンにおいて重要な用途及び機能であると認められ,当該用途及び機能の有無という相違は,軽視できるものではない。
(3)両部分の位置,大きさ及び範囲について
両部分の位置,大きさ及び範囲については,両部分共に両部分の全体が,物品全幅の中央約3分の1の幅において,上下両端寄りを除く全体にわたって配置したものであるから,共通する。
(4)両部分の形状について
(4-1)共通点について
共通点1は,両部分の全体を概括したものであって,この種物品においてありふれた形状といえるから,この共通点が両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
共通点2は,各部分の具体的な形状及び配置に係るものであるが,相違点2を内包するものであるし,当該物品において各部分の形状は新規なものではなく,配置も両意匠のみの特徴とはいえないものであるから,この共通点が両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,一定程度にとどまるものである。
共通点3は,部分の全体に及ぶものであるが,この種物品においてありふれたものであるから,この共通点が両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,一定程度にとどまるものである。
(4-2)相違点について
相違点1は,具体的には相違点2,つまり,逆八字形状の部分の有無による相違であって,前記(2)で述べた逆八字形状の部分の用途及び機能を考慮すれば,当該部分は,需要者が注意を引く部分といえるものであり,当該部分の有無の相違が存在する両部分の形状は,需要者に別異の印象をもたらすから,相違点1及び相違点2が両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,大きい。
相違点3及び相違点4は,大差の無い相違であるから,両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
(4-3)両部分の形状の類否
両部分の形状の共通点及び相違点の評価は上記のとおりであって,相違点1及び相違点2が両部分の形状の類否判断に及ぼす影響は,共通点のそれを凌駕するものであるから,両部分の形状は類似しない。
(5)小括
そうすると,両意匠は,意匠に係る物品が同一であり,両部分の位置,大きさ及び範囲が共通するものの,両部分の用途及び機能における相違は軽視できるものではなく,両部分の形状は類似しないから,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。

5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定の引用意匠に類似する意匠ではなく,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとして,同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2021-01-28 
出願番号 意願2019-26351(D2019-26351) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀高田 紗里 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2021-03-15 
登録番号 意匠登録第1682339号(D1682339) 
代理人 伊東 忠重 
代理人 伊東 忠彦 

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