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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 E3
管理番号 1372784 
審判番号 不服2020-13447
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-25 
確定日 2021-04-06 
意匠に係る物品 ゴルフクラブヘッド 
事件の表示 意願2019- 12737「ゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、パリ条約による優先権(最初の出願:アメリカ合衆国、2018年12月12日)を主張する、令和1年(2019年)6月10日の意匠登録出願であって、主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年(2019年)9月26日付け 拒絶理由の通知
令和2年(2020年)2月 7日 意見書の提出
令和2年(2020年)6月23日付け 拒絶査定
令和2年(2020年)9月25日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「ゴルフクラブヘッド」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、「実線で表された部分(当審注:以下「本願部分」という。)が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願意匠が属するゴルフクラブヘッドの分野においては、シャフト挿入部の位置を種々の位置に配置することは、例えば下記の意匠1、意匠2においてみられるとおり、本願出願前からごく一般的に見受けられます。
また、この種物品分野において、フェースの略全面からソールのフェース側の一部にかけて設けられるフェースインサートの形状を、種々の形状に置き換えることは、下記の意匠3、意匠4のように本願出願前よりごく一般的に行われています。
また、この種物品分野において、ソールを平坦面としたものは、本願出願前よりごく一般的に見受けられます。
そうすると、下記の意匠2のシャフト挿入部の配置を、本願出願前よりごく一般的に見受けられる手法によって変更するとともに、下記の意匠2のフェースインサートの形状を、本願出願前に公然知られた下記の意匠3のフェースインサートの形状に置き換え、さらに下記の意匠2のソールを平坦面に置き換えたに過ぎない本願意匠部分は、当業者であれば容易に創作をすることができたものです。

意匠1:
意匠登録第1578369号の意匠

意匠2:
著者の氏名 野村タケオ
表題 スコッツデールTR ハーフパイプ! : 野村タケオのゴルフバカ日記!
掲載箇所 ホームページの製品画像掲載欄
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2013年10月17日
検索日 [2019年9月25日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL: http://blog.livedoor.jp/nomtak/archives/51830590.html
に掲載されたゴルフクラブ用ヘッドの意匠
(上記アドレスに掲載されたページの一部を抜粋して添付しています。)

意匠3、意匠4:
著者の氏名 PCMラボ
表題 12/14発売 PING『SIGMA(シグマ)2』パター発表会&工場見学 | PCMラボ
掲載箇所 ホームページの製品画像掲載欄
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2018年10月18日
検索日 [2019年9月25日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:
http://www.pcm-lab.com/12-14%E7%99%BA%E5%A3%B2-ping%E3%80%8Esigma%EF%BC%88%E3%82%B7%E3%82%B0%E3%83%9E%EF%BC%89%EF%BC%92%E3%80%8F%E3%83%91%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%99%BA%E8%A1%A8%E4%BC%9A%EF%BC%86%E5%B7%A5%E5%A0%B4%E8%A6%8B/
に掲載されたゴルフクラブヘッドの意匠
(上記アドレスに掲載されたページの一部を抜粋して添付しています。)」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について、すなわち、本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)本願意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「ゴルフクラブヘッド」である。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は、ゴルフボールを打つ用途と機能を有している。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、ゴルフクラブヘッドのうち、シャフト挿入部を除く位置、大きさ、範囲を占める部分であり、ゴルフクラブヘッドのほぼ全体を占めている。

(4)本願部分の形態
ア 全体の形状
本願部分は、全体を、平面視略倒D字状の板体部(以下「D字状板体部」という。)の正面側に、正面視略横長等脚台形状のフェース部を有する厚板状部(以下「立ち上がり部」という。)を設けて、右側面視略L字状に形成してなるものであり、右側面視において立ち上がり部の厚みをD字状板体部の長さの約4分の1の幅とし、縦横比を約2対1とするものである。なお、以下において、D字状板体部から立ち上がり部を除いた部分を「延出部」という。
イ 立ち上がり部の態様
立ち上がり部のフェース部にはソール側を開放側とする略倒扁平コ字状(上部の両端の角は略直角)のフェースインサートが設けられている。このフェースインサートには干渉縞が表れており、当該干渉縞は次第に互いの間隔が変化する連続弧が上下方向から重なり、左右両端部では略菱形、中央部では略紡錘形の格子状模様となるものである。また、立ち上がり部のヒール部近傍の上面側には、シャフト挿入部(意匠登録を受けようとする部分以外の部分)が設けられており、立ち上がり部の背面側にはシャフト挿入部にあわせて約3分の1円柱状部が突出した態様となっている。さらに、立ち上がり部の背面側中央には浅い凹み部(キャビティ部)を有する。
ウ 延出部の態様
延出部には、その両脇の弧部に沿って、略4分の1円弧状の、立ち上がり部よりも一段低い略弧状壁体部が左右に1つずつ有り、また、前記イのキャビティ部と、延出部を平面視でヒール部からトウ部の方向の幅を略三等分した中央部の浅い溝部分(以下「中間部」という。)が一体となって1つの大きな窪みを形成している。また、この中間部の中央には細溝が設けられている。
エ ソール部の態様
ソール部は、ヒール部からトウ部の方向にかけて、全面がわずかに湾曲しており、底面から見るとフェースインサートの端部が細幅帯状にあらわれる。

2 原審の拒絶の理由において引用された公知意匠の認定
原審の拒絶の理由において引用された、意匠1ないし意匠4を以下のとおり認定する。
なお、引用意匠は、本願意匠の図面の向きにあわせて認定する。
(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠1はゴルフクラブヘッドの分野において、シャフト挿入部を種々の位置に配置することが本願出願前からごく一般的に行われていた例として掲載されたものである。
意匠1の意匠に係る物品は、「ゴルフクラブヘッド」であり、意匠1(破線部も含めて認定する。)のシャフト挿入部は、立ち上がり部のヒール部近傍の上面側に設けられており、立ち上がり部の背面側はシャフト挿入部にあわせて約3分の2円柱状部が突出した態様となっている。

(2)意匠2(別紙第3参照)
ア 意匠2の意匠に係る物品
意匠2の意匠に係る物品は、「ゴルフクラブ用ヘッド」である。

イ 意匠2の本願部分に相当する部分(以下「引用部分2」という。)の用途及び機能
引用部分2は、ゴルフボールを打つ用途と機能を有している。

ウ 引用部分2の位置、大きさ及び範囲
引用部分2は、ゴルフクラブ用ヘッドのうち、シャフト挿入部を除く位置、大きさ、範囲を占める部分であり、ゴルフクラブ用ヘッドのほぼ全体を占めている。

エ 引用部分2の形態
(ア)全体の形状
引用部分2は、全体を、平面視略倒D字状の板体部(以下、「D字状板体部」という。)の正面側に正面視略横長等脚台形状のフェースを有する厚板状部を設けて、右側面視略L字状に形成してなるものであり、右側面視において、立ち上がり部の厚みはD字状板状体の長さの約4分の1の幅とし、縦横比を約2対1とするものである。
(イ)立ち上がり部の態様
立ち上がり部の正面側が略横長等脚台形状のフェース部となっており、中央部には、明灰色で水平方向の多数の平行線が、略楕円形をなすように施されている。また、立ち上がり部のヒール部直上に、シャフト挿入部が立ち上がり部の幅内に収まるように設けられている。
(ウ)延出部の態様
延出部には、その両脇の弧部に沿って、略4分の1円弧状の、立ち上がり部よりも一段低い略弧状壁体部が左右に1つずつ有り、中間部が大きな窪み部分を形成しており、中間部の中央部には、立ち上がり部に対して垂直方向に細幅の白線が存在する。
(エ)ソール部の態様
ソール部は、フェース面を正面視すると、下辺がわずかに湾曲していることから、ヒール部からトウ部の方向にかけての全面がわずかに湾曲していると推認される。

(3)意匠3(別紙第4参照)
ア 意匠3の意匠に係る物品
意匠3の意匠に係る物品は、「ゴルフクラブヘッド」である。

イ 意匠3の、拒絶理由通知で引用する部分(以下「引用部分3」という。)の用途及び機能
意匠3は「ゴルフクラブヘッド」の意匠として拒絶理由通知に掲載されたものであるが、引用部分3はフェースインサート部分であり、打感を整えつつゴルフボールを打つ用途と機能を有している。

ウ 引用部分3の位置、大きさ及び範囲
引用部分3は、ゴルフクラブヘッドのフェースインサート部分であって、フェース面の上下左右の輪郭形状に沿った部分であり、フェース面のほぼ全範囲を占めるものである。

エ 引用部分3の形態
意匠3の写真がやや下側の左側から撮影されたものであるため正確な形状は不明であるものの、引用部分3は、フェース面より一回り小さい相似形状であって略横長等脚台形状であり、高さ、上辺、下辺の長さの比は、約1対4対4.5であり、上部の左右の角は約120度、下部の左右の角は約60度であると推察される。また、意匠3の写真が不鮮明であるため、全面が濃色であると推認されるものの、詳細は不明である。

(4)意匠4(別紙第4参照)
意匠4はゴルフクラブヘッドの分野において、フェースインサートの形状を種々の形状に置き換えることは本願出願前よりごく普通に行われていた例として拒絶理由通知に掲載されたものである。
意匠4の意匠に係る物品は、「ゴルフクラブヘッド」であり、意匠4の写真がやや下側の左側から撮影されたものであるため正確な形状は不明であるものの、フェースインサート部の形状は、フェース面より一回り小さい相似形状であって、横長の略台形であり、上下の辺は略平行であると推認される。また、高さ、上辺、下辺の長さの比は、約1対4対5であり、ヒール側の角は上部が約120度、下部が約60度、トウ側の角は上下共に約90度であると推察される。また、意匠4の写真が不鮮明であるため、全面が濃色であると推認されるものの、詳細は不明である。

3 本願意匠の創作非容易性の判断
意匠法第3条第2項の規定の適用についての判断は、「意匠登録を受けようとする部分」の全体の形態が、当該意匠登録出願前に公然知られた形態に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものであるか否かを判断すると共に、当該部分の用途及び機能を考慮し、「意匠登録を受けようとする部分」を当該物品全体の形態の中において、その位置、その大きさ、その範囲とすることが、当業者にとってありふれた手法であるか否かを判断することにより行うものである。
そこで、「ゴルフクラブヘッド」の、フェースインサートを含めたフェース部、延出部、シャフト挿入部、ソール部の形状の創作について考察するに、当業者は、ゴルフクラブをボールに対して構えたときのボールの中心位置の視覚的な把握しやすさ、地面に対するすべりの良さ、ゴルフクラブヘッドの各部の重さの配分や重心位置の適切さを調整して創作を行うとともに、ゴルフクラブがボールを打った際の打感にも配慮しつつ、ゴルフクラブヘッドの外観上の魅力も向上させるという観点で創作を行うということができる。
そして、本願部分の形態は前記第4の1に示すとおりであって、「ゴルフクラブヘッド」の分野においては、D字状板体部の正面側に、正面視略横長等脚台形状のフェース部を有する厚板状部を設けて、右側面視略L字状に形成してなり、また、右側面視において立ち上がり部の厚みはD字状板体部の長さの約4分の1の幅であって、縦横比を約2対1とするものは、本願出願前より見受けられるものである。
しかしながら、本願部分のフェース部において、ソール側を開放側とする略倒扁平コ字状のフェースインサートが設けられ、このフェースインサートには干渉縞状の模様が表されており、当該干渉縞は次第に互いの間隔が変化する連続弧が上下方向から重なり、左右両端部では略菱形、中央部では略紡錘形の格子状模様となる点は、原審の拒絶の理由において引用された意匠2のフェースインサート部に、意匠3のフェースインサート部の形状を置き換えたとしても、意匠3には干渉縞状の模様が表れておらず、また、意匠3のフェースインサートは上部の角が約120度、下部の角が約60度の略等脚台形であって、本願のフェースインサート部分はソール側を開放側とする略倒扁平コ字状であることから、トウ側が略直角でありヒール側は上部が約120度、下部が約60度の略台形状の意匠4のフェースインサートの形状が本願出願前から存在していたとしても、意匠3から本願のフェースインサート部分の形状を導き出すことはできず、当業者であれば容易に創作できるものであるということができない。
また、本願意匠のように、立ち上がり部を有し、立ち上がり部の下部に平面視倒D字状の延出部を有し、この延出部の両脇の弧部に沿って、略4分の1円弧状であって立ち上がり部よりも一段低い略弧状壁体部を左右に1つずつ有しており、さらに、立ち上がり部の背面側のキャビティ部と中間部で1つの大きな窪みを形成し、また、中間部の中央に細溝が設けられる形態は、本願部分に特有の形態であって、当業者が、中間部の中央に白線が存在するのみである意匠2に基づいてその形態を容易に創作できたということはできない。
さらに、本願意匠のように、立ち上がり部から、約3分の1円柱状にシャフト挿入部が膨出する形態は、拒絶理由通知書内でシャフト挿入部を様々な位置に配置する例として示された、約3分の2円柱状にシャフト挿入部が膨出する意匠1とは大きく異なり、また、壁体から略円柱ないし略半円柱が膨出する形状を形成する際には、様々な膨出の程度があり得るものであるから、意匠1、意匠2が本願出願前より存在していたとしても、本願意匠のシャフト挿入部の形状をそれらから容易に導き出せず、当業者であれば本願意匠を意匠1、意匠2に基づいて容易に創作できたということはできない。
したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2021-03-22 
出願番号 意願2019-12737(D2019-12737) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (E3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 塩治 雅也藤原 宗久良 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 濱本 文子
渡邉 久美
登録日 2021-05-06 
登録番号 意匠登録第1685964号(D1685964) 
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所 

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