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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1378794 
審判番号 不服2021-611
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-15 
確定日 2021-09-14 
意匠に係る物品 自動車用タイヤ 
事件の表示 意願2020- 7485「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年(2019年)12月27日の意匠登録出願(意願2019-29162)を原出願(以下「原意匠登録出願」という。)として、意匠法第10条の2第1項の規定による出願の分割がなされた、令和2年(2020年)4月9日の意匠登録出願(意願2020-7485)であり、同年7月16日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月24日に意見書が提出されたが、同年10月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和3年(2021年)1月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載および願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由および引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものであって、拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。また、本願の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分を、以下「引用部分」という。)は、日本国特許庁が平成25年(2013年)11月25日に発行した意匠公報に記載された、意匠登録第1484568号(意匠に係る物品、自動車用タイヤ)の意匠であり、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「自動車用タイヤ」であるから、一致するものである。

2 本願部分と引用部分の用途および機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも自動車用タイヤのトレッド部の溝部分であり、トレッド部は、自動車の重量を支え、路面からの衝撃を吸収し、路面をつかんで進路保持し、その発進、加速、減速および制動時のエンジンやブレーキの力を路面に伝える部分であるから、用途および機能が一致するものである。

3 両部分の位置、大きさおよび範囲の対比
両部分は、いずれも全体が環状体をなすタイヤの、横方向溝部を除く、外周を周方向に略帯状に並行して一周する3本の溝部分であって、それぞれ大きさは共通するが、位置および範囲については、本願意匠は、正面視で左側の溝部分(以下「左側溝部」という)は位置が全体の横方向の左から約4/13で、範囲は、横幅の約1/13幅の縦方向溝部であるのに対して、引用意匠は、位置が全体の横方向の左から約1/3で、範囲は、横幅の約1/15幅の縦方向溝部である点で相違し、正面視で中央の溝部分(以下「中央溝部」という)は、本願意匠の位置が横方向の中央よりもやや左寄りの左から約2/5で、範囲は、横幅の約2/43幅の縦方向溝部であるのに対して、引用意匠は位置が横方向の略中央で、範囲は、横幅の約2/37幅の縦方向溝部である点で相違し、正面視で右側の溝部分(以下「右側溝部」という)は本願意匠の位置が横方向の中央よりもやや右寄りの左から約4/7で、範囲は、横幅の約1/16幅の縦方向溝部であるのに対して、引用意匠の位置は全体の横方向の左から約2/3で、範囲は、横幅の約1/15幅の縦方向溝部である点で相違する。

4 両部分の形態の対比
両部分の形態を対比すると、両部分の形態には、主として以下の共通点および相違点が認められる。
(1)両部分の形態の共通点
基本的構成態様
(共通点A)両部分は、タイヤの外周を、近接して周方向に一周する、正面視で縦方向の3本の蛇行する溝部である点、
具体的構成態様
(共通点B)両部分は、3本の溝部が正面視で縦方向に同間隔で蛇行し、中央溝部が左右側溝部に比して最も細いものである点で共通する。
(2)両部分の形態の相違点
具体的構成態様
(相違点a)正面視の蛇行形態について、本願部分は、正面視で蛇行の右側の山部が11個看取できる縦長の緩やかな蛇行形態であるのに対して、引用部分は、正面視で右側の山部が29個看取できる縦に短く細かい蛇行形態である点、
(相違点b)溝部の形態について、本願部分は、断面視で略隅丸逆等脚台形状の溝部であるのに対し、引用部分は、断面視で底が丸みを帯びた略谷状の溝部である点、
(相違点c)蛇行山一単位(谷部から谷部)に対するそれぞれの溝部の縦横長さ比について、本願意匠は、左側溝部の蛇行山一単位の縦幅に対する横幅の長さ比が約5.4:1で、中央溝部は、約9:1、左側溝部は6.8:1であるのに対し、引用部分は、左側溝部の蛇行山一単位の縦幅に対する横幅の長さ比が3.3:1で、中央溝部は、3.6:1、右側溝部は3.3:1である点、
(相違点d)3本の溝部の横幅の長さの比率については、左から順に本願意匠が約4.5:3:4であるのに対し、引用部分は、約11:10:11である点、
(相違点e)横方向の溝部による内壁の除外部について、両部分は横方向の溝部を除く部分であるから、溝部内壁には、横溝部が除かれた箇所が存在し、本願部分の左側溝部は左側の蛇行の谷部の底付近および左側の山部と谷部の切り替え付近の内壁から横溝形成箇所を除き、中央溝部の内壁に除外部はなく、右側溝部は右側の山部頂点の内壁から横溝形成箇所を除いているのに対し、引用部分は、左側溝部は左側の山部頂点および右側の山部頂点内壁から横溝形成箇所を除き、中央溝部は左側の山部の谷部寄りおよび右側の谷部の山部寄りの内壁から横溝形成箇所を除き、右側溝部は左側の谷部底付近の内壁から横溝形成箇所を除いたものである点で、両意匠は相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 両部分の用途および機能の類否判断
両部分の用途および機能は一致するものであるから、同一である。

3 両部分の位置、大きさおよび範囲の評価
両部分の位置、大きさおよび範囲については、両部分は、物品全体の形態の中における大きさは、一致するから同一であるが、それぞれ位置については、引用意匠が左から約1/3、略中央、約2/3(右から約1/3)と横方向の中央に対し線対称に配置されているのに対し、本願部分は中央に対して左寄りに配置され、横方向の中央が、中央溝部と右側溝部間に位置する点は、本願部分の特徴でもあるから、範囲については多少の相違にとどまるものの、類否判断に一定程度の影響を与えるものである。

4 両部分の形態の共通点および相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品の需要者は、主に、その使用者である一般ドライバーや自動車メーカーおよびタイヤ販売業者等の取引者がその需要者であって、発進、加速、減速および制動時の力を路面に伝えるトレッド部の溝部等の形態を特に注視して観察するといえる。
(1)両部分の形態の共通点
(共通点A)および(共通点B)は、いずれも両部分全体の態様に係るものではあるが、周方向に一周する3本の縦方向の蛇行する溝部とすることも、同間隔で蛇行し、中央溝部が左右側溝部に比して最も細いものとすることも通常取り得る形態であるから、これらの共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(2)両部分の形態の相違点
(相違点a)および(相違点c)について、(相違点a)は、溝部の具体的な蛇行態様であって、正面視での比較であるが、本願部分は、正面視で蛇行の右側への山部が11個看取できるのに対して、引用部分は、29個看取できる点は、溝部の視覚的印象に大きく関わり、また、(相違点c)の蛇行山一単位に対する溝部の縦横の長さ比の相違も、引用部分が横幅の長さに対し短く細かな蛇行形態であるのに対し、本願意匠がより縦長で緩やかな蛇行形態であるとの印象を強め、溝部の形態を特に関心を持って注視する需要者にとって、全く別異の印象を与えるものであるから、いずれも両部分の類否判断におよぼす影響は大きい。
次に、(相違点d)の3本の溝部の横幅の長さの比率については、本願意匠各々の溝部の横幅の長さがそれぞれ相違するものであるのに対し、引用部分は左右側溝部は同幅で、それに比して中央溝部が僅かに細く、注視してそれと分かるような各々の横幅の長さの差である点は、溝部の具体的形態の印象に関わり、類否判断におよぼす影響は大きい。
そして、(相違点b)および(相違点e)は、溝部の断面視での形態および内壁の形態であって、正面視で看取し難いものの、斜め方向からは観察可能であって、溝部内の具体的態様に関わるから、両部分の類否判断におよぼす影響は一定程度あるものである。

5 両意匠の類否判断
そうすると、形態における相違点の(相違点b)および(相違点e)は両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものであり、(相違点a)、(相違点c)および(相違点d)は、類否判断に及ぼす影響は大きいものであるから、(相違点a)ないし(相違点e)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両部分の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形態の共通点の(共通点A)および(共通点B)の両部分の類否判断に与える影響は、いずれも小さく、それら(共通点A)および(共通点B)があいまっても、共通点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さく、相違点が共通点を凌駕し、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、両部分は類似しない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品並びに両部分の用途および機能は同一であり、大きさも同一であるが、両部分の位置および範囲は相違するものであって、類否判断に一定の影響を与え、また、形態においては、両部分は類似しないものであって、これは、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲
審決日 2021-08-25 
出願番号 意願2020-7485(D2020-7485) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤澤 崇彦 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2021-10-18 
登録番号 意匠登録第1698795号(D1698795) 
代理人 特許業務法人栄光特許事務所 

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