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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F4
管理番号 1378808 
審判番号 不服2021-8032
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-18 
確定日 2021-10-19 
意匠に係る物品 包装用チューブ 
事件の表示 意願2020-1469「包装用チューブ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,意願2020-1468号(不服2021-8031)の意匠を本意匠とする関連意匠に係る,令和2年(2020年)1月29日の意匠登録出願であって,同年9月18日付けの拒絶理由の通知に対し,同年10月29日に意見書が提出されたが,令和3年5月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年6月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用チューブ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第0974476号
(意匠に係る物品,包装用容器)の意匠の孔及び切り込みの部分

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「包装用チューブ」である。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,包装用チューブに設けた孔と切り込みを含む部分である。
本願部分は,包装用チューブの上辺に接しつつ,上辺中央に位置する,縦の長さが全体の約8分の1,横の長さが全体の3分の1弱の略正方形の大きさ及び範囲であり,吊し棒を差し込み挿入して,本願物品を吊すという用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の形状
本願部分は,縦横比が約1対1の略正方形であって,その下から約3分の1の位置に本願部分の横長さの約2分の1の直径の正円の孔を設けたものであり,当該正円の孔の中心を通り,上辺と直角に交わる線上に,辺と孔を結ぶ切り込みを設けてある。この切り込みは,鋭角のV字状であって,上端にて左右対称な小円弧を介して包装用チューブの上辺につながっている。

2.引用意匠
引用意匠は,上記「第3」の意匠公報の記載の内容によると,以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「包装用容器」である。

(2)引用部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
引用意匠中,本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい,本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は,包装用容器に設けた孔と切り込みを含む部分である。
引用部分は,包装用容器の右辺に接しつつ,包装用容器の右下角丸部に触れる箇所に位置する,縦の長さが全体の約12分の1,横の長さが全体の約9分の1の横長長方形の大きさ及び範囲であり,包装用容器の上方に位置するもう一方の孔と共に上下2本の取り付け棒を挿入して,当該包装用容器を固定することを前提とする,他方の孔という用途及び機能を有するものと推認できるものである。

(3)引用部分の形状
引用部分の形状の認定は,本願部分の形状に合わせるように向きを左に90度回転した状態で認定する。(これ以降の,両意匠の形状の対比及び判断においても同様である。)
引用部分は,縦横比が約3対2の縦長長方形であって,その下から約3分の1の位置に引用部分の横長さの約2分の1の直径の正円の孔を設けたものであり,当該正円の孔の中心を通り,上側辺と直角に交わる線上に,辺と孔を結ぶ切り込みを設けてある。この切り込みは,一定幅の細幅状であって,上端にて,左側は小円弧を,右側はやや大きな円弧を介して包装用容器の辺につながっている。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「包装用チューブ」であり,引用意匠に係る物品は「包装用容器」である。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比
本願部分は,包装用チューブに設けた孔と切り込みを含む部分であるのに対して,引用部分は,包装用容器に設けた孔と切り込みを含む部分である。
本願部分は,包装用チューブの上辺に接しつつ,上辺中央に位置する,縦の長さが全体の約8分の1,横の長さが全体の約3分の1弱の略正方形の大きさ及び範囲であるのに対して,引用部分は,包装用容器の右辺に接しつつ,包装用容器の右下角丸部に触れる箇所に位置する,縦の長さが全体の約12分の1,横の長さが全体の約9分の1の横長長方形の大きさ及び範囲である。
そして,本願部分は,吊し棒を差し込み挿入して,本願物品を吊すという用途及び機能を有するものであるのに対して,引用部分は,2本の取付け棒を挿入して,引用物品を固定することを前提とする,片方の孔という用途及び機能を有するものである。

(3)両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
(ア)四角形の横辺の長さの,約2分の1の直径の正円の孔を設けたものである。
(イ)四角形の下から約3分の1の位置に正円の孔を設けている。
(ウ)正円の孔の中心を通り,物品の辺と直角に交わる線上に,物品の辺と孔を結ぶ切り込みを設けている。
(エ)切り込みは,上端部にて円弧を介して辺につながっている。

イ.相違点について
(ア)本願部分は,縦横比が約1対1の略正方形であるのに対して,引用部分は,縦横比が約3対2の縦長長方形である。
(イ)切り込みの形状につき,本願部分は,鋭角のV字状であるのに対して,引用部分は,一定幅の細幅状である。
(ウ)切り込みの端部の円弧につき,本願部分は,左右対称な小円弧であるのに対して,引用部分は,左側は小円弧であり,右側はやや大きな円弧である。

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠に係る物品は「包装用チューブ」であり,引用意匠に係る物品は「包装用容器」であって,共に包装に供するものであるから,共通する。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価
両部分共に,包装に供するものに設けた孔と切り込みを含む部分である。
本願部分は,包装用チューブの上辺に接しつつ,上辺中央に位置する,縦の長さが全体の約8分の1,横の長さが全体の3分の1弱の略正方形の大きさ及び範囲であるのに対して,引用部分は,包装用容器の右辺に接しつつ,包装用容器の右下角丸部に触れる箇所に位置する,縦の長さが全体の約12分の1,横の長さが全体の約9分の1の横長長方形の大きさ及び範囲であるから,本願部分と引用部分の位置,大きさ及び範囲は異なる。
本願部分は,吊し棒を差し込み挿入して,本願物品を吊すという用途及び機能を有するものであるのに対して,引用部分は,もう一方の孔と合わせて,2本の取付け棒を差し込み挿入して,引用物品を固定することを前提とする,他方の孔という用途及び機能を有するものであるから,本願部分と引用部分の用途及び機能は異なる。

(3)両部分における形状の評価
ア.共通点について
共通点(ア)ないし(エ)は,両部分の形状を概略的に捉えたときの共通点であって,具体的には相違点(イ)及び(ウ)が含まれているものであるから,両部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ.相違点について
相違点(ア)は,意匠登録を受けようとする部分を定めるものと,それに伴うものであって,意匠の創作内容ではないから,両部分の形状に関する類否判断に関する評価はできない。
相違点(イ)は,僅かな角度の相違ではあるが,この相違によって,本願部分の方が,吊し棒が差し込みやすいという印象を視覚的に与える形状であるから,両部分の形状の類否判断に与える影響は一定程度認められる。
相違点(ウ)によって,引用部分の方が対称形でなく特異な造形処理を,本願部分の方が素直な(シンプルな)造形処理を想起させ,僅かながらも両部分に別異な印象を与えると認められ,両部分の形状の類否判断に与える影響は一定程度認められる。

ウ.小括
そうすると,両部分の形状については,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり,共通点は,類否判断に及ぼす影響は小さいのに対して,相違点(イ)及び(ウ)によって類否判断に及ぼす影響は一定度認められるものであり,両部分の形状は,類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通している。
しかし,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能が異なり,加えて両部分の形状は,類似するとは認められないものである。
よって,本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。

5.結び
以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似するとはいえず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-09-29 
出願番号 意願2020-1469(D2020-1469) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 重坂 舞 
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2021-10-26 
登録番号 意匠登録第1699577号(D1699577) 
代理人 宗助 智左子 
代理人 松井 宏記 

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