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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない L3
管理番号 1010653 
審判番号 審判1998-35584
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-11-25 
確定日 2000-01-26 
意匠に係る物品 柵用支柱 
事件の表示 上記当事者間の登録第1013659号意匠「柵用支柱」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申し立て及び請求の理由
1.申し立て及び理由
請求人は、「登録第1013659号の意匠の登録は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
(1)無効理由の要点
登録第1013659号の意匠(以下、本件登録意匠という。)は、その出願前に国内において頒布された刊行物である特許庁発行の意匠公報に所載の登録第940360の類似1号に記載されたフェンス用支柱の意匠(以下、甲1号意匠という。)及び同登録第940360の類似2号に記載されたフェンス用支柱の意匠(以下、甲2号意匠という。)又は同登録第940360号に記載された道路用さくの支柱の意匠(以下、甲3号意匠という。)に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであって、同法第48条第1項の規定により、その登録は無効とすべきである。
(2)本件登録意匠の特徴
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「柵用支柱」とし、その形態の特徴が、基本的な構成態様について、円筒状の支柱の上端に、平面部に割り溝状の挟持部を有するジョイント受けを取り付け、その挟持部に二叉状のジョイント部を取り付け、ジョイント部の上端部間に裏板を架け渡した構成からなる態様のものである。その具体的な態様については、支柱につき、太い円筒状のものであり、ジョイント受けにつき、キャップ状の基部の上部に上方を弧状に形成した2枚の挟持板によって割り溝状の挟持部を形成したものであり、ジョイント部につき、角棒状の支持杆で正面視略Vの宇状の二叉状に形成して、両上端部を水平な薄い角板状の座板部に形成し、支持杆の基部を太く形成して上端に向かってわずかに細く形成し、支持杆の側面側に中空孔を設けたものであり、裏板につき、両座板間と同じ長さの板状のもので、支持杆の両座板間に架け渡したものであり、ジョイント部と裏板によって、正面視略逆三角形状を呈する態様に形成したものである。
(3)甲1号意匠の特徴
甲1号意匠は、本件登録意匠の出願前の平成7年12月18日、特許庁発行の登録第940360の類似1号「フェンス」の意匠公報に記載された「フェンス用支柱」の意匠であり、その形態の特徴が、基本的な構成態様について、円筒状の支柱の上端に、平面部に割り溝状の挟持部を有するジョイント受けを取り付け、その挟持部に二叉状のジョイント部を取り付け、ジョイント部の上端部間に裏板を架け渡した構成からなる態様のものである。その具体的な態様については、支柱につき、太い円筒状のものであり、ジョイント受けにつき、キャップ状の基部の上部に上方を弧状に形成した2枚の挟持板によって割り溝状の挟持部を形成したものであり、ジョイント部につき、角棒状の支持杆で正面視略Vの字状の二叉状に形成して、両上端部を水平な薄い角板状の座板部に形成したものであり、裏板につき、両座板間と同じ長さの板状のもので、支持杆の両座板間に架け渡した態様のものであり、ジョイント部と裏板によって正面視略逆三角形状を呈する態様に形成したものである。
(4)本件登録意匠と甲1号意匠との対比
▲1▼意匠に係る形態の対比
本件登録意匠と甲1号意匠とは、その形態についてほぼ同一性の範囲である。すなわち、両意匠の形態について先に述べた両意匠の特徴において、基本的な構成態様につき、本件登録意匠と甲1号意匠は余すところなく共通しており、具体的な態様についても共通する両者はほぼ同一の態様のものである。すなわち、両意匠の端的な特徴は、円筒状の支柱の上端の挟持部を介して、角棒状の支持杆で二叉状に形成したジョイント部の上端間に裏板を架け渡して、ジョイント部があたかも逆三角形状を呈する態様に形成した点にあり、この点において両者の創作の原点を軌を一にしているものである。
しかしながら、本件登録意匠と甲1号意匠とは具体的な態様において下記のようなごくわずかな差異がある。すなわち、(a)ジョイント部の支持杆について、本件登録意匠は、基部をわずかに太くするとともに上方に向かって極めてわずかに細くし、支持杆の側面側に中空孔を設けたものであるのに対して、甲1号意匠は、直線的な棒状のものである点、(b)ジョイント受けについて、本件登録意匠は、キャップ状の基部の上部に厚板の上方を弧状に形成した2枚の挟持板によって割り溝状に形成した挟持部としているものであるのに対して、甲1号意匠は、キャップ状の基部の上部に厚板の上方を弧状に形成し、一方のみ外側に膨らみをもたせた2枚の挟持板によって割り溝状に形成した挟持部としたものである点に差異がある。
▲2▼差異点の検討
(a)の点については、本件登録意匠の基部の太さ及びなめらかに細くした点については甲第1号証にも示されるとおり、さほどには顕著なものではなく、極めてわずかなものであり、二叉状のVの字状を呈する態様の支持杆としてみた場合極めて微細な差異であって、云われて初めて気がつく程度のなめらかさ、細さであり、意匠全体の類否判断に影響を与えるほどの差異ではない。そして、支持杆の側面側の中空孔の有無の点についても、本件登録意匠のものは、斜状の支持杆の側面側という比較的二義的な部位における見えにくい部位についての差異であり、また、各種の物品の支持杆、腕木等において軽量化のために中空孔を設けることがよく知られているところであり、中空孔を設けること自体にさほどの特異性もみられず、その差異はかなり軽微な差異に止まり、両意匠間の類否判断に影響を与えるほどのものではい。
(b)の点については、ジョイント受けの挟持板と云う部分のうち、背面側のもののみが外側に膨らみを持たせたというごく限られた部位における差異であり、正面側のものは正面側を削成した板状を呈するものであって共通しており、意匠全体からみればその差異は極めて軽微な差異に止まる。
さらには、その使用状態においては両意匠の骨格的態様のみが目立つばかりであり、両者の差異点は減却されていると云っても過言ではないほどである。
▲3▼対比の結論
本件登録意匠と甲1号意匠とは、意匠に係る物品については同一物品であり、そして、形態については、本件登録意匠の特徴と甲1号意匠の特徴を構成する基本的な構成態様およびその具体的な態様について、前述のとおり極めてわずかな微弱な差異点を除いて一致ないし共通しているものである。そうすると、本件登録意匠は、甲1号意匠が具有する構成態様と同一ないし類似する程度の態様をほとんどそのまま持ち合わせていることとなり、創作の原点を軌を一にしているものであって、いわば甲1号意匠の創作と同値の創作の範囲内のものである。したがって、本件登録意匠は甲1号意匠に類似するものであることは免れないものと確信される。
(5)本件登録意匠と甲2号意匠の概要
甲2号意匠は、その特徴が甲1号意匠とはほぼ同一のものである。そして、登録940360の類似2号意匠であるフェンスの意匠全体としては、登録940360の類似1号意匠であるフェンスの意匠とは、笠木(フェンス本体)部分が円筒状であるか楕円筒状であるかの相違を除いてほぼ同一である。したがって、甲2号意匠の特徴、本件登録意匠と甲2号意匠との対比及びその結論については、本件登録意匠と甲1号意匠との対比と同様であり、これと同様の理由により、本件登録意匠は甲2号意匠に類似するものであると確信される。
(6)甲3号意匠の特徴
甲3号意匠は、本件登録意匠の出願前の平成7年11月29日、特許庁発行の登録第940360号「道路用さく」の意匠公報に記載された「道路用さくの支柱」の意匠であり、その形態の特徴が、基本的な構成態様について、円筒状の支柱の上端に、平面部に割り溝状の挟持部を有するジョイント受けを取り付け、その挟持部に二叉状のジョイント部を取り付け、ジョイント部の上端部間に断面蒲鉾型の連結筒を架け渡した構成からなる態様のものである。その具体的な態様については、支柱につき、太い円筒状のものであり、ジョイント受けにつき、キャップ状の基部の上部に上方を極めてわずかな弧状に形成した2枚の挟持板によって割り溝状の挟持部を形成したものであり、ジョイント部につき、角棒状の支持杆で正面視略Vの字状の二叉状に形成して、両上端部を水平な薄い角板状の座板部に形成したものであり、連結筒につき、両座板間と同じ長さの断面蒲鉾型の筒状のもので、支持杆の両座板間に架け渡した態様のものであり、ジョイント部と連結筒によって正面視略逆三角形状を呈する態様に形成したものである。
(7)本件登録意匠と甲3号意匠との対比
▲1▼意匠に係る形態の対比
本件登録意匠と甲3号意匠とは、その形態についてほぼ同一性の範囲である。すなわち、両意匠の形態について先に述べた両意匠の特徴において、基本的な構成態様につき、本件登録意匠と甲3号意匠は余すところなく共通しており、具体的な態様についても共通する両者はほぼ同一の態様のものである。すなわち、両意匠の端的な特徴は、円筒状の支柱の上端の挟持部を介して、角棒状の支持杆で二叉状に形成したジョイント部の上端間に裏板(連結筒)を架け渡して、ジョイント部があたかも逆三角形状を呈する態様に形成した点にあり、この点において両者の創作の原点を軌を一にしているものである。
しかしながら、本件登録意匠と甲3号意匠とは具体的な態様において下記のようなごくわずかな差異がある。すなわち、(a)ジョイント部の支持杆について、本件登録意匠は、基部をわずかに太くするとともに上方に向かって極めてわずかに細くし、支持杆の側面側に中空孔を設けたものであるのに対して、甲3号意匠は、直線的な棒状のものである点、(b)ジョイント受けについて、本件登録意匠は、キャップ状の基部の上部に厚板の上方を弧状に形成した2枚の挟持板によって割り溝状に形成した挟持部としているものであるのに対して、甲3号意匠は、キャップ状の基部の上部に厚板の上方を極めてわずかな弧状に形成した2枚の挟持板によって割り溝状に形成した挟持部としたものである点、(c)裏板について、本件登録意匠は、両座板間と同じ長さの板状のもので、支持杆の両座板間に架け渡したものであるのに対して、甲3号意匠は、裏板というよりは連結筒であり、両座板間と同じ長さの断面蒲鉾型の筒状のもので、支持杆の両座板間に架け渡したものである点に差異がある。
▲2▼差異点の検討
(a)の点については、両意匠の態様とも甲1号意匠との対比の場合とほぼ同じ態様のものであることから、同様の理由により、その差異はかなり軽微な差異に止まり、両意匠間の類否判断に影響を与えるほどのものではない。
(b)の点については、その差異は本件登録意匠が上方をかなり大きな弧状に形成しており、甲3号意匠は極めてわずかな弧状のものであって、いわば同じ厚板の上方が半弧状であるか水平状に近いかの差異である。この点はほぼ同じ態様のジョイント受け部の挟持板の上部と云う極めて小さい限られた部分の差異であって、挟持板2枚によってジョイント受け部を形成した共通の態様からみれば、その差異は極めて微弱な差異であり、差異点として取り上げるほどのものでもない程度のものであって、類否判断への影響は皆無に等しいほどである。
(c)の点については、両者とも機能的には手摺りとジョイント部との固定を目的としているものであり、端的に云えば板状か筒状かの相違に尽きるが、甲3号意匠のものもさほどに大きいものではなく、また直線的なものであって外観的にはそれほど目立つものでもなく、正面視における、割り溝状のジョイント受けを上端に有する太い円筒状の支柱と二叉状のジョイント部と直線的な裏板によって構成される逆三角形状の態様の連結部の組み合わせた態様のもつ創作の特異性は共通しているものである。その共通点における上方の裏板部分についてのわずかな差異であって、その差異は両意匠の共通する創作の特異性を阻害するほどのものではないことから、かなり軽微な差異に止まり、類否判断への影響についても軽微なものに止まる。
▲3▼対比の結論
本件登録意匠と甲3号意匠とは、意匠に係る物品については同一物品であり、そして、形態については、本件登録意匠の特徴と甲3号意匠の特徴を構成する基本的な構成態様およびその具体的な態様について、前述のとおりわずかな差異ないし軽微な差異点を除いて一致ないし共通しているものである。したがつて、本件登録意匠は甲3号意匠に類似するものであることは免れないものと確信される。
2.答弁に対する弁駁
(1)被請求人の主張は、客観的な差異を把握して、その正当な評価を行う必要があるとして、各対比意匠間について、それぞれ物品の物理的な側面からの各部分、部位を分節的に対比したにすぎない。とくに、本件登録意匠と甲各号意匠のごとく、単純明快でしかもシャープな基本的な構成態様と微細な部分を具有していない具体的な態様を備えたこれらの意匠においては、ジョイント部の角度、ボルトナットでの締着などの細部についてまで踏み込むまでもなく、形態的特徴を十分に把握することができるものである。したがって、被請求人が主張するように具体的構成態様における客観的な差異を捨象したり、あるいは使用状態等による意匠の把握とその評価を看過してなされた旨の主張については、この種の意匠、とくに本件の場合のような意匠の類否判断の場合には、その主張は当たらないものと思われる。
(2)被請求人の提出した乙第1号証ないし乙第6号証については、乙第1号証意匠は、本件登録意匠と甲各号意匠との間にみられるシャープな抽象的な形態の特徴を何ら持ち合わせていないものである。したがって本件登録意匠と甲各号意匠との間にみられる形態的特徴及びその特異性を阻害ないし減ずる要素として斟酌する要素はほとんど認められない。乙第2号証ないし同6号証意匠は、公知意匠として斟酌すべき要素はほとんど見当たらない。
(3)被請求人は、本件登録意匠、甲各号意匠におけるその意匠の要部は、設置使用状態で看者の注意を惹く部分であるV字状連結部すなわちジョイント部にのみ存するがごとき主張であるが、この種の物品の意匠である柵用支柱は、柵あるいはフェンスなどとして、公園、道路、建築物の外回り等に設置されることは当然としても、そのことから直ちに本件柵用支柱の意匠の要部がジョイント部に集中するがごとき主張には首肯しかねるところである。何故なら、意匠の類否判断の場がその物品の意匠の使用状態に片寄ってなされることになる恐れがあり、そのことが意匠本来の創作とその創作の類似性の判断を歪めることになるからである。さらに付け加えるならば、被請求人の主張のごとく、使用状態を念頭におくとすれば、本件柵用支柱は、柵ないしフェンスとして使用した状態においては、本件登録意匠および甲各号意匠は、柵ないしフェンスの一構成部分であり、意匠的構成要素としては半減すること疑うべくもなく、斯く様な場合には、被請求人の主張する要部ないし差異点はなおのこと微弱な差異となり、結果、要部ともならないことに帰することになり、ひいては、本件登録意匠が甲各号意匠に類似するものであることが明らかとなる。
第2 被請求人の答弁及び答弁の理由
1.被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として、要旨以下のとおり主張し、立証として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
2.本件登録意匠と甲各号意匠の構成態様
(1)本件登録意匠の基本的構成態様は、円筒支柱部の上端に笠木設置用V字状の連結部を備えた柵用支柱にある。そして本件登録意匠の具体的構成態様は、(A)V字状の連結部が支柱ジョイントと笠木ジョイントを備えていること、(B)支柱ジョイントが、円盤状の基板と該基板に起立した半円形垂直一対の対向起立片を備えていること、(C)支柱ジョイントの対向起立片間に笠木ジョイントの下端部を受入れて、貫通するボルトナットで締着固定していること、(D)笠木ジョイントは、(a)板幅を上方に向けて湾曲先細り状とした端面を側方に向けた湾曲板を左右対称に配置することによってそれ自体下方幅広にして内側空間を90度から100度に拡開し、外側を70度から90度に拡開する湾曲先細りのV字状としたジョイント本体を有すること、(b)該ジョイント本体はその下方幅広の基部部分を含めて支柱ジョイントから上方に大きく突出して、湾曲した滑らかな分岐部分を支柱ジョイント上方に位置するようにしていること、(c)該ジョイント本体の上記左右の湾曲板は、これを上下端の対向面側の連結部を介して一体に連結することによってそれぞれ前後に離隔対向した同幅同形の一対とし、該各一対の湾曲板間に該湾曲板の板厚の2倍幅にして6倍高さを有する縦長矩形の各側面開口を有すること、(d)該ジョイント本体上端の水平片にボルト固定した笠木取付板を有すること。
(2)甲各号意匠は、その基本的構成態様は、円筒支柱部の上端に笠木設置用V字状の連結部を備えた柵用支柱にある。そして甲1号意匠及び甲2号意匠の具体的構成態様は、(A)V字状の連結部が支柱ジョイントと笠木ジョイントを備えていること、(B)支柱ジョイントが、前後中央に溝を形成した半球形ブロック状にして正面に半円状の開口を備えていること、(C)支柱ジョイントの溝に笠木ジョイントの下端部を受け入れるとともに支柱ジョイントの半円状の開口に笠木ジョイント下部の正面側膨出部を嵌合し、正面側の上下一対のボルトで締着固定していること、(D)笠木ジョイントは、(a)板厚を同一とし端面を前後に向けた幅広の傾斜平板を左右対称に配置することによって70度の傾斜角度のそれぞれ直線V字状としたジョイント本体を備えていること、(b)該ジョイント本体の端面を前後に向けた幅広の傾斜平板はその下方部分を支柱ジョイントから直接突出するようにしていること、(c)該ジョイント本体の上記左右の傾斜平板は、その幅広面を側面に向けてそれぞれ単一同幅のものとしていること、(d)該ジョイント本体上端の水平片にボルト固定した笠木取付板を有すること。
また甲3号意匠の具体的構成態様は、甲1号意匠及び甲2号意匠と上記(A)及び(D)を同様とする一方、(B)V字状の連結部において、円盤状の基板と該基板に起立したやや上端を湾曲した横長矩形状垂直一対の対向起立片を備えていること、(C)支柱ジョイントの対向起立片間に笠木ジョイントの下端部を受入れて、貫通するボルトナットで締着固定していること。
3.意匠構成態様の共通点、差異点
本件登録意匠と甲各号意匠とは、その基本的構成態様において共通し、また具体的構成態様において上記(A)と(D)の(d)を共通とし、甲3号意匠にあっては更に(C)を共通とする(なお(D)の(d)は、使用状態において外部から見えない差異である)。
しかし乍ら本件登録意匠と甲各号意匠とはその余の具体的構成態様において差異がある(甲1号意匠及び甲2号意匠にあっては(B)(C)及び(D)の(a)乃至(c)、甲3号意匠にあっては(B)及び(D)の(a)乃至(c)の構成態様)。
4.本件登録意匠と甲各号意匠の差異の評価
(1)本件登録意匠及び甲各号意匠は、ありふれた円筒支柱の上方にV字状連結部を有するという、比較的単純の構成態様のものであるから、自ずからV字状連結部のウエイトが高いことが明らかであるが、乙第1号証、乙第2号証及び乙第3号証のとおりV字状連結部の構成態様やV字状連結部を介して笠木を載置固定した柵が周知であるし、柵や手摺りにおいてV字状の連結部乃至支持部が広く使用され、またそのための支柱ジョイントや笠木ジョイントも広く知られてありふれたものである。
(2)意匠に係る物品及び用途からみれば、本件登録意匠、甲各号意匠において、その意匠の要部は、設置使用状態で看者の注意を惹く部分に求めるべきであり、このとき単に正面からの視点に止まらず、看者が斜め前方から歩行するに従う観察角度の変化を考慮し、総合的な評価を行う必要がある。
(3)本件登録意匠は上記(A)(B)(C)及び(D)における(a)乃至(d)の構成態様のものであるから、本件登録意匠においてその要部をなすV字状連結部は、笠木長手方向の幅広感、前後に一対の笠木長手方向に添う奥行感、左右対称にして先細りながら幅広の湾曲板とその空間の丸み、支柱ジョイントの一対の対向起立片の丸み等による、丸みが多く柔和さに富んだ審美的印象を看者に与えることになる。
これに対して甲各号意匠は、上記(A)(B)(C)及び(D)における(a)乃至(d)の構成態様をとるものであるから、甲各号意匠においてその要部をなすV字状連結部は、笠木交差方向の幅広感、一体にしてブランクであることによる笠木交差方向に添う厚み感、左右対称にして鋭角に傾斜し且つ前後に端面と向けた傾斜平板とその空間の鋭角、支柱ジョイントの、甲1号意匠及び甲2号意匠における上方膨出感、甲3号意匠の横長矩形感による、丸みが支柱ジョイントの部分に部分的に限定され傾斜した直線の多いストレートなシャープさに富んだ審美的印象を看者に与えることになる。
(4)この対比からも判るように本件登録意匠と甲各号意匠とは、上記基本的構成態様を共通とするが、一方で意匠の要部における具体的構成態様において顕著な差異があり、またこれが異なる審美的印象を看者に与えることになっている。してみれば本件登録意匠が、甲各号意匠のいずれにも類似することはないというべきである。
第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書類の記載によれば、平成8年8月10日の意匠登録出願(意匠法第4条第2項の規定の適用)に係り、平成10年4月17日に登録第1013659号として意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「柵用支柱」とし、その形態を別紙第一に示すとおりとするものである。
すなわち、基本的な構成態様について、全体を支柱本体の頂上に笠木を受ける連結部を設けた構成としたものであって、支柱本体は、縦長の円筒形状とし、連結部は、支柱本体上端に固着した支柱ジョイントと上方の笠木を固定する笠木ジョイントからなり、支柱ジョイントは、その上部中央の左右方向に溝部を形成して、笠木ジョイントの下端を継ぎ合わせるための挟持片を前後に対向状に設け、笠木ジョイントは、正面視略V字状のもので、その左右の支持杆の上端間に裏板を架け渡した態様のものである。そして、各部の具体的な態様について、支柱本体は、下方寄りの部位から下端までの径をごく僅かに小さく形成したものであり、支柱ジョイントにつき、支柱本体上端に連なる基部は、支柱本体の径と同径の肉薄に形成し、溝部は、基部の径の三分の一程度の幅のもので、基部に達する深さに形成し、挟持片は、前後とも上辺を半円弧状とし、前側の挟持片の前面及び後側の挟持片の後面をそれぞれ面取り状の垂直面に形成し、前後の挟持片の上辺寄りに固定具を突出させて設けたものであり、笠木ジョイントにつき、左右の支持杆は、それぞれ外側へごく僅かに湾曲した態様のもので、正面幅を下方から上方に向かって漸次細く形成し、側面部分を貫く側面視略縦長矩形状の大きな孔を形成し、支持杆の上端部分にそれぞれ外側へ水平状に短く突出した略矩形板状の座部を形成したものであり、裏板は、左右の座部先端間の長さと同じ長さの細幅の薄板状のものである。
2.甲1号意匠
甲1号意匠は、請求人が甲第1号証として提出した刊行物に記載されたものに係り、本件登録意匠の出願前、平成7年12月18日付で特許庁が発行、頒布した意匠公報に記載の登録第940360号の類似第1号(意匠に係る物品「フェンス」)の図面に表された支柱の意匠であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「フェンス用支柱」とし、その形態を別紙第二に示すとおりとするものである。
すなわち、基本的な構成態様について、全体を支柱本体の頂上に笠木を受ける連結部を設けた構成としたものであって、支柱本体は、縦長の円筒形状とし、連結部は、支柱本体上端に固着した支柱ジョイントと上方の笠木を固定する笠木ジョイントからなり、支柱ジョイントは、その上部中央の左右方向に溝部を形成して、笠木ジョイントの下端を継ぎ合わせるための挟持片を前後に対向状に設け、笠木ジョイントは、正面視略V字状のもので、その左右の支持杆の上端間に裏板を架け渡した態様のものである。そして、各部の具体的な態様について、支柱本体は、上端から下端までを同径に形成したものであり、支柱ジョイントにつき、支柱本体上端に連なる基部は、支柱本体の径よりごく僅かに大きい径の肉薄に形成し、溝部は、基部の径の三分の一程度の幅のもので、基部に達する深さに形成し、挟持片は、前後とも上辺を半円弧状とし、前側の挟持片の前面のほぼ上半分を面取り状の垂直面に、後側の挟持片の後面を外膨らみの曲面に形成し、前側の挟持片の中央と上辺寄りに固定具を突出させて設けたものであり、笠木ジョイントにつき、左右の支持杆は、細幅の角棒状に形成し、支持杆の上端部分にそれぞれ外側に水平状に短く突出した座部を形成したものであり、裏板は、左右の座部先端間の長さと同じ長さの細幅のものである。
3.甲2号意匠
甲2号意匠は、請求人が甲第2号証として提出した刊行物に記載されたものに係り、本件登録意匠の出願前、平成7年12月18日付で特許庁が発行、頒布した意匠公報に記載の登録第940360号の類似第2号(意匠に係る物品「フェンス」)の図面に表された支柱の意匠であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「フェンス用支柱」とし、その形態を別紙第三に示すとおりとするものである。
すなわち、基本的な構成態様について、全体を支柱本体の頂上に笠木を受ける連結部を設けた構成としたものであって、支柱本体は、縦長の円筒形状とし、連結部は、支柱本体上端に固着した支柱ジョイントと上方の笠木を固定する笠木ジョイントからなり、支柱ジョイントは、その上部中央の左右方向に溝部を形成して、笠木ジョイントの下端を継ぎ合わせるための挟持片を前後に対向状に設け、笠木ジョイントは、正面視略V字状のもので、その左右の支持杆の上端間に裏板を架け渡した態様のものである。そして、各部の具体的な態様について、支柱本体は、上端から下端までを同径に形成したものであり、支柱ジョイントにつき、支柱本体上端に連なる基部は、支柱本体の径よりごく僅かに大きい径の肉薄に形成し、溝部は、基部の径の三分の一程度の幅のもので、基部に達する深さに形成し、挟持片は、前後とも上辺を半円弧状とし、前側の挟持片の前面のほぼ上半分を面取り状の垂直面に、後側の挟持片の後面を外膨らみの曲面に形成し、前側の挟持片の中央と上辺寄りに固定具を突出させて設けたものであり、笠木ジョイントにつき、左右の支持杆は、細幅の角棒状に形成し、支持杆の上端部分にそれぞれ外側に水平状に短く突出した座部を形成したものであり、裏板は、左右の座部先端間の長さと同じ長さの細幅のものである。
4.甲3号意匠
甲3号意匠は、請求人が甲第3号証として提出した刊行物に記載されたものに係り、本件登録意匠の出願前、平成7年11月29日付で特許庁が発行、頒布した意匠公報に記載の登録第940360号(意匠に係る物品「道路用さく」)の図面に表された支柱の意匠であって、同公報の記載によれば、意匠に係る物品を「さく用支柱」とし、その形態を別紙第四に示すとおりとするものである。
すなわち、基本的な構成態様について、全体を支柱本体の頂上に笠木を受ける連結部を設けた構成としたものであって、支柱本体は、縦長の円筒形状とし、連結部は、支柱本体上端に固着した支柱ジョイントと上方の笠木を固定する笠木ジョイントからなり、支柱ジョイントは、その上部中央の左右方向に溝部を形成して、笠木ジョイントの下端を継ぎ合わせるための挟持片を前後に対向状に設け、笠木ジョイントは、正面視略V字状のもので、その左右の支持杆の上端間に裏板を架け渡した態様のものである。そして、各部の具体的な態様について、支柱本体は、上端から下端までを同径に形成したものであり、支柱ジョイントにつき、支柱本体上端に連なる基部は、支柱本体の径よりごく僅かに大きい径のやや肉厚に形成し、溝部は、基部の径の三分の一程度の幅のもので、基部に達する深さに形成し、挟持片は、前後とも高さの低いもので、上辺をごく緩やかな弧状とし、前側の挟持片の前面及び後側の挟持片の後面をそれぞれ面取り状の垂直面に形成し、前後の挟持片の中央に固定具を突出させて設けたものであり、笠木ジョイントにつき、左右の支持杆は、細幅の角棒状に形成し、支持杆の上端部分にそれぞれ外側へ水平状に短く突出した座部を形成したものであり、裏板は、左右の座部先端間の長さと同じ長さの略半円筒状のものである。
5.本件登録意匠と甲1号意匠の比較検討
(1)意匠に係る物品については、両意匠は、共に土地や道路、公園、建築物の境界、区画などに設ける柵(フェンス)の支柱として使用されるものであるから、意匠に係る物品が共通している。
(2)次に、両意匠の形態については、以下の共通点及び差異点が認められる。
両意匠の形態は、基本的な構成態様において、全体を支柱本体の頂上に笠木を受ける連結部を設けた構成としたものであって、支柱本体は、縦長の円筒形状とし、連結部は、支柱本体上端に固着した支柱ジョイントと上方の笠木を固定する笠木ジョイントからなり、支柱ジョイントは、その上部中央の左右方向に溝部を形成して、笠木ジョイントの下端を継ぎ合わせるための挟持片を前後に対向状に設け、笠木ジョイントは、正面視略V字状のもので、その左右の支持杆の上端間に裏板を架け渡した態様とした点が共通しており、その各部の具体的な態様においても、支柱ジョイントにつき、支柱本体上端に連なる基部を肉薄に形成している点、溝部は、基部の径の三分の一程度の幅のもので、基部に達する深さに形成している点、挟持片は、前後とも上辺を半円弧状としている点、笠木ジョイントにつき、左右の支持杆の上端部分にそれぞれ外側に水平状に短く突出した座部を形成している点、裏板は、左右の座部先端間の長さと同じ長さの細幅のものである点が共通していると認められる。
一方、両意匠の形態には、具体的な態様のうち、主として、▲1▼支柱本体について、本件登録意匠は、下方寄りの部位から下端までの径をごく僅かに小さく形成しているのに対し、甲1号意匠は、上端から下端までを同径に形成している点、▲2▼支柱ジョイントの基部について、本件登録意匠は、支柱本体の径と同径に形成しているのに対し、甲1号意匠は、支柱本体の径よりごく僅かに大きい径に形成している点、▲3▼支柱ジョイントの挟持片の態様について、本件登録意匠は、前側の挟持片の前面及び後側の挟持片の後面をそれぞれ面取り状の垂直面に形成しているのに対し、甲1号意匠は、前側の挟持片の前面のほぼ上半分を面取り状の垂直面に、後側の挟持片の後面を外膨らみの曲面に形成している点、▲4▼挟持片の固定具について、本件登録意匠は、前後の挟持片の上辺寄りに突出させて設けているのに対し、甲1号意匠は、前側の挟持片の中央と上辺寄りに突出させて設けている点、▲5▼笠木ジョイントの支持杆の態様について、本件登録意匠は、左右の支持杆がそれぞれ外側へごく僅かに湾曲した態様のもので、正面幅を下方から上方に向かって漸次細く形成し、側面部分を貫く側面視略縦長矩形状の大きな孔を形成しているのに対し、甲1号意匠は、左右の支持杆を細幅の角棒状に形成している点、▲6▼支持杆上端の座部の態様について、本件登録意匠は、略矩形板状に形成しているのに対し、甲1号意匠は、その態様が明確でない点、▲7▼裏板の態様について、本件登録意匠は、薄板状のものであるのに対し、甲1号意匠は、その態様が明確でない点に差異が認められる。
(3)そこで、両意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について総合的に検討する。なお、被請求人は、意匠に係る物品及び用途からみれば、意匠の要部は、設置使用状態で看者の注意を惹く部分に求めるべきであり、このとき単に正面からの視点に止まらず、看者が斜め前方から歩行するに従う観察角度の変化を考慮して行う必要がある旨主張するが、この点については、この種の物品は、土地や道路、公園、建築物の境界、区画などに設ける柵(フェンス)の支柱として使用されるものであるから、笠木を受ける連結部の上端と支柱本体の下端を除く大部分の部位が様々な角度から観察されるものであるが、特に、この種の物品の看者は、歩行者や一般需要者に限らず、道路や公園、建築物の施工者等の専門的な当業者である場合が多いから、これら看者は、支柱の全体の構成や、支柱本体、連結部の各部分の形状にも注意を払うものである。したがって、被請求人の主張を直ちに採用することはできない。
先ず、両意匠において共通しているとした基本的な構成態様、すなわち、全体を支柱本体の頂上に笠木を受ける連結部を設けた構成としたものであって、支柱本体は、縦長の円筒形状とし、連結部は、支柱本体上端に固着した支柱ジョイントと上方の笠木を固定する笠木ジョイントからなり、支柱ジョイントは、その上部中央の左右方向に溝部を形成して、笠木ジョイントの下端を継ぎ合わせるための挟持片を前後に対向状に設け、笠木ジョイントは、正面視略V字状のもので、その左右の支持杆の上端間に裏板を架け渡した構成態様は、両意匠の形態についての骨格的要素となるものであるが、この種の物品の分野においては、全体の基本構成が近似した態様のものや、笠木を固定するジョイント部分を略V字状とした態様のものが本件登録意匠及び甲1号意匠の他にも見受けられ(乙第1号証、乙第2号証参照)、また、支柱本体が一般的な態様のものであるから、連結部の基本構成が両意匠にのみ共通している態様のものであっても、共通しているとした基本的な構成態様のみでは類否判断の要素としてはそれほど高く評価することができない。
そうすると、上記態様を基本構成とする意匠については、形態各部の造形処理に意匠の創作上の配慮がなされ、評価すべき要素となり得る場合があるから、各部の具体的な態様も要素として判断すべきところ、両意匠において共通しているとした各部の具体的な態様のうち、先ず、支柱ジョイントの支柱本体上端に連なる基部を肉薄に形成している点については、格別の態様ではなく、看者の注意を惹くほどの特徴とは認められないものであるから、両意匠の全体的な観察の際に与える影響も微弱である。次に、支柱ジョイントの溝部を基部の径の三分の一程度の幅とし、基部に達する深さに形成している点及び挟持片の上辺を前後とも半円弧状としている点については、いずれも支柱ジョイントを特徴づける要素の一つと認められ、両意匠の全体的な観察の際に看者の注意を惹くほどのものとなり得るが、一方で挟持片の態様については、類否判断において考慮すべき要素と認められる差異点▲3▼があるから、支柱ジョイントにおける共通点が両意匠の要部判断に影響を及ぼす度合いは相対的に低いものというべきである。そして、笠木ジョイントの支持杆の上端部分にそれぞれ外側へ水平状に短く突出した座部を形成している点及び裏板を左右の座部先端間の長さと同じ長さの細幅のものとしている点については、形態上の特徴を表す要素としては微弱といえる態様に係り、また、物品の使用状態においては看者の注意を惹く度合いが相対的に低い部位における共通点であることから、両意匠の全体的な観察の際に与える影響も微弱である。そうして、共通しているとしたこれらの態様が相俟って形成する意匠的なまとまりを考慮しても、いまだ両意匠の類否判断を左右する要素には至っていないものと認められる。
これに対して、差異点の▲1▼については、本件登録意匠の支柱本体は、下方寄りの部位から下端までの径をごく僅かに小さく形成した態様のものであって、格別のものではなく、一方の甲1号意匠の支柱本体は、上端から下端までを同径に形成した極めて一般的な態様のものであるから、その差異は、支柱本体の下方部分における形状の僅かな変更に止まり、両意匠の全体的な観察の際に与える影響も小さく、類否判断の要素としては評価することができない。差異点の▲2▼については、甲1号意匠は、支柱ジョイントの基部を支柱本体の径よりごく僅かに大きい径に形成した態様のものであるが、形態全体からみれば、その部位を詳細に観察した場合に僅かに目立つ程度の極めて軽微な差異であるから、両意匠の全体的な観察の際にその差異が与える影響も微弱である。差異点の▲3▼については、本件登録意匠は、前側の挟持片の前面及び後側の挟持片の後面をそれぞれ面取り状の垂直面に形成した態様のものであり、一方の甲1号意匠は、前側の挟持片の前面のほぼ上半分を面取り状の垂直面に、後側の挟持片の後面を外膨らみの曲面に形成した態様のものであるから、支柱ジョイントの挟持片を注視した場合にはその態様の差異が目立つものの、両意匠とも前後の挟持片の上辺を半円弧状とした態様において共通しているから、形態上は際立った態様の差異とは認められない。しかしながら、支柱ジョイントは、連結部のかなりの部分を占める大きさを有しており、挟持片は、その支配的な構成要素に係る部位であること、また、物品の使用状態においても看者の目に常時触れる部位における態様の差異である点を勘案すると、その差異は、両意匠の全体的な観察の際に看者の注意を惹くほどのものとなり得るから、両意匠の類否判断において考慮すべき要素と認められる。差異点の▲4▼については、両意匠とも、挟持片に設けた固定具は、小さくありふれた態様のものであって、その構成も格別ではなく、形態上の特徴を表す要素とはなり得ないものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は極めて微弱である。差異点の▲5▼については、連結部の主要部を構成する笠木ジョイントの支持杆の態様についての差異であるが、本件登録意匠は、左右の支持杆がそれぞれ外側へごく僅かに湾曲した態様のもので、正面幅を下方から上方に向かって漸次細く形成し、側面部分を貫く側面視略縦長矩形状の大きな孔を形成したものであって、支柱本体と連結部からなるこの種の物品においては、本件登録意匠の出願前に見受けられない態様のものであるから、形態上の特徴を表す要素と認められ、両意匠の要部判断に影響を及ぼすというべきであり、一方の甲1号意匠は、左右の支持杆を細幅の角棒状に形成したものであって、笠木ジョイントの支持杆の態様としては、他にも見受けられる態様に形成したものであるから(乙第2号証参照)、笠木ジョイントの支持杆の態様における差異は、看者に別異の意匠を構成したとの印象を与えるほどのものとなり得る大きな差異であり、両意匠の類否判断を左右するほどの要素ということができる。差異点の▲6▼及び▲7▼については、甲1号意匠は、支持杆上端の座部及び裏板の態様が明確でないものの、公報記載の図面全体を観察すると、格別の態様のものであるとは考えられず、また、物品の使用状態においては、看者の目に触れることのあまりない部位における差異である点を勘案すると、本件登録意匠との差異が多少あたっとしても、両意匠の全体的な観察の際にそれほどの影響を及ぼさないといえるから、両意匠の類否判断に与える影響も微弱である。
そうすると、差異点の▲1▼、▲2▼、▲4▼、▲6▼、▲7▼については、微弱な差異に止まるものの、差異点の▲3▼については、両意匠の類否判断において考慮すべき要素と認められ、差異点の▲5▼については、大きな差異であって、両意匠の類否判断を左右するほどの要素であり、そうして、差異点の▲3▼及び▲5▼に係る具体的な態様の差異が他の差異点とも相俟って、本件登録意匠と甲1号意匠との前記の共通点を大きく凌駕して、看者に別異の意匠を構成したとの印象を与えているといえるところであるから、差異点の▲3▼及び▲5▼については、両意匠の全体的な観察の際に与える影響が大きく、かつ、両意匠の類否判断を左右する要部における差異といわざるを得ない。
(4)したがって、本件登録意匠と甲1号意匠は、意匠に係る物品が共通しているが、両意匠の形態については、前記のように共通する点があっても、類否判断を左右する要部において大きな差異があるから、本件登録意匠は、甲1号意匠に類似するものということはできない。
6.本件登録意匠と甲2号意匠の比較検討
甲2号意匠は、意匠に係る物品及びその形態が前記3において認定したとおりのものであり、甲1号意匠とほぼ同一のものと認められるから、本件登録意匠と甲2号意匠の共通点及び差異点については、前記5(1)、(2)と同様の共通点及び差異点があるものと認められる。したがって、両意匠の共通点及び差異点の類否判断に与える影響についても前記5(3)のとおりであるから、本件登録意匠は、甲2号意匠に類似するものということはできない。
7.本件登録意匠と甲3号意匠の比較検討
(1)意匠に係る物品については、両意匠は、共に土地や道路、公園、建築物の境界、区画などに設ける柵(フェンス)の支柱として使用されるものであるから、意匠に係る物品が共通している。
(2)次に、両意匠の形態については、以下の共通点及び差異点が認められる。
両意匠の形態は、基本的な構成態様において、全体を支柱本体の頂上に笠木を受ける連結部を設けた構成としたものであって、支柱本体は、縦長の円筒形状とし、連結部は、支柱本体上端に固着した支柱ジョイントと上方の笠木を固定する笠木ジョイントからなり、支柱ジョイントは、その上部中央の左右方向に溝部を形成して、笠木ジョイントの下端を継ぎ合わせるための挟持片を前後に対向状に設け、笠木ジョイントは、正面視略V字状のもので、その左右の支持杆の上端間に裏板を架け渡した態様とした点が共通しており、その各部の具体的な態様においても、支柱ジョイントにつき、溝部は、基部の径の三分の一程度の幅のもので、基部に達する深さに形成している点、挟持片は、前側の挟持片の前面及び後側の挟持片の後面をそれぞれ面取り状の垂直面に形成し、前後の挟持片に固定具を突出させて設けている点、笠木ジョイントにつき、左右の支持杆の上端部分にそれぞれ外側へ水平状に短く突出した座部を形成している点、裏板は、左右の座部先端間の長さと同じ長さのものである点が共通していると認められる。
一方、両意匠の形態には、具体的な態様のうち、主として、▲1▼支柱本体について、本件登録意匠は、下方寄りの部位から下端までの径をごく僅かに小さく形成しているのに対し、甲3号意匠は、上端から下端までを同径に形成している点、▲2▼支柱ジョイントの基部について、本件登録意匠は、支柱本体の径と同径の肉薄に形成しているのに対し、甲3号意匠は、支柱本体の径よりごく僅かに大きい径のやや肉厚に形成している点、▲3▼支柱ジョイントの挟持片の態様について、本件登録意匠は、前後とも上辺を半円弧状に形成しているのに対し、甲3号意匠は、前後とも高さの低いもので、上辺をごく緩やかな弧状に形成している点、▲4▼挟持片の固定具について、本件登録意匠は、前後の挟持片の上辺寄りに設けているのに対し、甲3号意匠は、前後の挟持片の中央に設けている点、▲5▼笠木ジョイントの支持杆の態様について、本件登録意匠は、左右の支持杆がそれぞれ外側へごく僅かに湾曲した態様のもので、正面幅を下方から上方に向かって漸次細く形成し、側面部分を貫く側面視略縦長矩形状の大きな孔を形成しているのに対し、甲3号意匠は、左右の支持杆を細幅の角棒状に形成している点、▲6▼支持杆上端の座部の態様について、本件登録意匠は、略矩形板状に形成しているのに対し、甲3号意匠は、その態様が明確でない点、▲7▼裏板の態様について、本件登録意匠は、細幅の薄板状のものであるのに対し、甲3号意匠は、略半円筒状のものである点に差異が認められる。
(3)そこで、両意匠を全体として観察し、共通点及び差異点の類否判断に与える影響について総合的に検討する。
先ず、両意匠において共通しているとした基本的な構成態様、すなわち、全体を支柱本体の頂上に笠木を受ける連結部を設けた構成としたものであって、支柱本体は、縦長の円筒形状とし、連結部は、支柱本体上端に固着した支柱ジョイントと上方の笠木を固定する笠木ジョイントからなり、支柱ジョイントは、その上部中央の左右方向に溝部を形成して、笠木ジョイントの下端を継ぎ合わせるための挟持片を前後に対向状に設け、笠木ジョイントは、正面視略V字状のもので、その左右の支持杆の上端間に裏板を架け渡した構成態様は、両意匠の形態についての骨格的要素となるものであるが、この種の物品の分野においては、全体の基本構成が近似した態様のものや、笠木を固定するジョイント部分を略V字状とした態様のものが本件登録意匠及び甲3号意匠の他にも見受けられ(乙第1号証、乙第2号証参照)、また、支柱本体が一般的な態様のものであるから、連結部の基本構成が両意匠にのみ共通している態様のものであっても、共通しているとした基本的な構成態様のみでは類否判断の要素としてはそれほど高く評価することができない。
そうすると、上記態様を基本構成とする意匠については、形態各部の造形処理に意匠の創作上の配慮がなされ、評価すべき要素となり得る場合があるから、各部の具体的な態様も要素として判断すべきところ、両意匠において共通しているとした各部の具体的な態様のうち、先ず、支柱ジョイントの溝部を基部の径の三分の一程度の幅とし、基部に達する深さに形成している点、挟持片につき、前側の挟持片の前面及び後側の挟持片の後面をそれぞれ面取り状の垂直面に形成している点については、いずれも支柱ジョイントを特徴づける要素の一つと認められ、両意匠の全体的な観察の際に看者の注意を惹くほどのものとなり得るが、一方で挟持片の態様については、類否判断において考慮すべき要素と認められる差異点▲3▼があるから、支柱ジョイントにおける共通点が両意匠の要部判断に影響を及ぼす度合いは相対的に低いものというべきである。次に、前後の挟持片に固定具を突出させて設けている点については、固定具自体が小さくありふれた態様のものであって、看者の注意を惹くほどの特徴とは認められないものであるから、両意匠の全体的な観察の際に与える影響も微弱である。そして、笠木ジョイントの支持杆の上端部分にそれぞれ外側へ水平状に短く突出した座部を形成している点及び裏板を左右の座部先端間の長さと同じ長さのものとしている点については、形態上の特徴を表す要素としては微弱といえる態様に係り、また、物品の使用状態においては看者の注意を惹く度合いが相対的に低い部位における共通点であることから、両意匠の全体的な観察の際に与える影響も微弱である。そうして、共通しているとしたこれらの態様が相俟って形成する意匠的なまとまりを考慮しても、いまだ両意匠の類否判断を左右する要素には至っていないものと認められる。
これに対して、差異点の▲1▼については、本件登録意匠の支柱本体は、下方寄りの部位から下端までの径をごく僅かに小さく形成した態様のものであって、格別のものではなく、一方の甲3号意匠の支柱本体は、上端から下端までを同径に形成した極めて一般的な態様のものであるから、その差異は、支柱本体の下方部分における形状の僅かな変更に止まり、両意匠の全体的な観察の際に与える影響も小さく、類否判断の要素としては評価することができない。差異点の▲2▼については、甲3号意匠は、支柱ジョイントの基部を支柱本体の径よりごく僅かに大きい径のやや肉厚に形成した態様のものであるが、形態全体からみれば、その部位を観察した場合に目立つ程度の軽微な差異であるから、両意匠の全体的な観察の際にその差異が与える影響も微弱である。差異点の▲3▼については、本件登録意匠は、前後の挟持片の上辺を半円弧状に形成した態様のものであり、一方の甲3号意匠は、前後の挟持片とも高さの低いもので、上辺をごく緩やかな弧状に形成した態様のものであるから、支柱ジョイントの挟持片を注視した場合にはその態様の差異が目立つものの、両意匠とも前側の挟持片の前面及び後側の挟持片の後面をそれぞれ面取り状の垂直面に形成した態様において共通しているから、形態上は際立った態様の差異とは認められない。しかしながら、支柱ジョイントは、連結部のかなりの部分を占める大きさを有しており、挟持片は、その支配的な構成要素に係る部位であること、また、物品の使用状態においても看者の目に常時触れる部位における態様の差異である点を勘案すると、その差異は、両意匠の全体的な観察の際に看者の注意を惹くほどのものとなり得るから、両意匠の類否判断において考慮すべき要素と認められる。差異点の▲4▼については、固定具を設けた部位が僅かに相違している程度の差異であって、しかも両意匠とも固定具が小さくありふれた態様のものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は極めて微弱である。差異点の▲5▼については、連結部の主要部を構成する笠木ジョイントの支持杆の態様についての差異であるが、本件登録意匠は、左右の支持杆がそれぞれ外側へごく僅かに湾曲した態様のもので、正面幅を下方から上方に向かって漸次細く形成し、側面部分を貫く側面視略縦長矩形状の大きな孔を形成したものであって、支柱本体と連結部からなるこの種の物品においては、本件登録意匠の出願前に見受けられない態様のものであるから、形態上の特徴を表す要素と認められ、両意匠の要部判断に影響を及ぼすというべきであり、一方の甲3号意匠は、左右の支持杆を細幅の角棒状に形成したものであって、笠木ジョイントの支持杆の態様としては、他にも見受けられる態様に形成したものであるから(乙第2号証参照)、笠木ジョイントの支持杆の態様における差異は、看者に別異の意匠を構成したとの印象を与えるほどのものとなり得る大きな差異であり、両意匠の類否判断を左右するほどの要素ということができる。差異点の▲6▼については、甲3号意匠は、支持杆上端の座部の態様が明確でないものの、公報記載の図面全体を観察すると、格別の態様のものであるとは考えられず、また、物品の使用状態においては、看者の目に触れることのあまりない部位における差異である点を勘案すると、本件登録意匠との差異が多少あたっとしても、両意匠の全体的な観察の際にそれほどの影響を及ぼさないといえるから、両意匠の類否判断に与える影響も微弱である。差異点の▲7▼については、裏板の態様の差異としては大きいものの、物品の使用状態においては、看者の目にふれることのあまりない部位における差異である点を勘案すると、その差異は、両意匠の全体的な観察の際にそれほどの影響を及ぼさないといえるから、両意匠の類否判断に与える影響も微弱である。
そうすると、差異点の▲1▼、▲2▼、▲4▼、▲6▼、▲7▼については、微弱な差異に止まるものの、差異点の▲3▼については、両意匠の類否判断において考慮すべき要素と認められ、差異点の▲5▼については、大きな差異であって、両意匠の類否判断を左右するほどの要素であり、そうして、差異点の▲3▼及び▲5▼に係る具体的な態様の差異が他の差異点とも相俟って、本件登録意匠と甲3号意匠との前記の共通点を大きく凌駕して、看者に別異の意匠を構成したとの印象を与えているといえるところであるから、差異点の▲3▼及び▲5▼については、両意匠の全体的な観察の際に与える影響が大きく、かつ、両意匠の類否判断を左右する要部における差異といわざるを得ない。
(4)したがって、本件登録意匠と甲3号意匠は、意匠に係る物品が共通しているが、両意匠の形態については、前記のように共通する点があっても、類否判断を左右する要部において大きな差異があるから、本件登録意匠は、甲3号意匠に類似するものということはできない。
8.結び
以上のとおりであって、請求人の主張及び提出した証拠によっては、本件登録意匠は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠に類似するものということはできないから、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものとすることはできない。
よって、本件登録意匠の意匠登録を無効とすることができないので、結論のとおり審決する。
別掲 別紙第一




審理終結日 1999-10-28 
結審通知日 1999-11-09 
審決日 1999-12-03 
出願番号 意願平8-24188 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (L3)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富永 亘梅澤 修 
特許庁審判長 足立 光夫
特許庁審判官 藤木 和雄
鍋田 和宣
登録日 1998-04-17 
登録番号 意匠登録第1013659号(D1013659) 
代理人 田村 公総 
代理人 杉本 文一 

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