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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする D2
管理番号 1015025 
審判番号 審判1995-6122
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 1995-03-17 
確定日 2000-02-16 
意匠に係る物品 靴収納棚 
事件の表示 上記当事者間の登録第902450号意匠「靴収納棚」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第902450号意匠の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1.請求の趣旨及び理由
請求人は、「登録第902450号意匠の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として、大要以下のとおり主張し、立証として甲第1号証、甲第2号証の1ないし3,甲第3号証ないし甲第14号証、甲第15号証の1ないし4、甲第16号証ないし甲第18号証を提出した。
登録第902450号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠、即ち、▲1▼平成4年3月21日発行の「家庭用品新聞第1508号」において、第16頁に「スチール製シューズボックス(ミラー付き)」として記載された意匠(甲第1号証の意匠)、▲2▼平成3年12月1日株式会社千趣会発行の「BELLE MAISON収納専科特別号」において、第28頁に「シューズラック」として記載された意匠(甲第2号証の2の意匠)、▲3▼「注文締切日11月4回11月23日月〜11月27日金商品配達日12月2回12月7日月〜12月11日金」と記された「生活百科」と題する広告チラシにおいて、「3057 シューズ収納タワー」として記載された意匠(甲第15号証の3及び4の意匠)、▲4▼1992年(平成4年)11月に小田急百貨店新宿店通信販売部が頒布した「でんわショッピング」と題する広告チラシにおいて「両面シューズラック(組立式)」として記載された意匠(甲第18号証の意匠)、に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当し意匠登録を受けることができないものであり、その登録は無効とされるべきものである。
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として、審判事件答弁書に記載ののとおりの反論をし、立証として乙第1号証の1及び2、乙第2号証の1ないし4、乙第3号証の1及び2、乙第4号証の1及び2、乙第5号証、乙第6号証、乙第7号証、乙第7号証の2、及び乙第8号証ないし乙第10号証を提出した。その反論は、大要以下のとおりである。
(1)本件登録意匠と甲第1号証の意匠、甲第2号証の2の意匠、及び甲第18号証の意匠とは、その差異が意匠の要部に係る顕著なもので、本件登録意匠はいずれの意匠とも類似しない。
(2)甲第15号証の2及び3は、本件登録意匠(登録第902450号意匠)の登録を無効とする、との審決を求めた、件外平成8年審判第864号事件において甲第3号証〜4号証として提出されたチラシであるが、このチラシの存在、及びその記載内容の不自然不可解さは、上記件外審判事件請求人が同被請求人に本件登録意匠の先使用による通常実施権の認定を求めた際に、その先使用(甲第3号証〜甲第4号証のチラシの配布等)の立証ができなかったという事実から明らかである。
また、甲第3号証〜4号証のチラシに記載の靴収納棚の意匠について、件外事件請求人は自ら平成4年12月25日に意匠登録出願をしており、これを掲載したチラシの頒布や商品の発注など、その新規性を喪失する行為をその出願前に自ら行うことはありえず、少なくとも、チラシの頒布は、本件登録意匠の出願日前ではない。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成4年12月21日に意匠登録出願があり、平成6年4月22日に意匠権の設定の登録がなされた登録第902450号意匠であって、その意匠登録原簿の記載によれば、意匠に係る物品が「靴収納棚」であり、その形態は、別紙第一に示すとおりのものである。
2.甲号意匠
請求人が、本件登録意匠の無効理由に引用した意匠は、甲第1号証、甲第2号証の2、甲第15号証の3及び4、甲第18号証、に記載された複数のものがあるが、そのうち、甲第15号証の3及び4に記載された意匠を「甲号意匠」として以下検討する。
甲号意匠は、上部に「勉強小物とお裁縫グッズ」と記載された広告チラシ(甲第15号証の3)の中段右部に、商品番号を3057とし、商品名を「シューズ収納タワー」として写真版により表された靴収納棚の意匠であり、その形態は別紙第二に示すとおりのものであることが当該写真版、及びこれを拡大した写真版(甲第15号証の4)から認められる。
3.甲号意匠の公知性
ところで、甲第15号証の3には、その頒布日等を示す記載は認められないものであるが、甲第15号証の2の「生活百科 わが家のお掃除&台所グッズ」と題する広告チラシにおいて、上段に、「注文締切日11月4回 11月23日月〜11月27日金 商品配達日12月2回 12月7日月〜12月11日金」との記載が認められ、そして、甲第15号証の2及び3は、件外平成8年審判第864号事件(登録第902450号意匠(本件登録意匠)の登録を無効とする、との審決を求めた事件、以下「件外事件」とする。)において、立証として提出された甲第3号証の1(2葉からなる)を写真撮影したもので、甲第15証の2はその1葉目を、甲第15号証の3はその2葉目に対応するものであることは被請求人も認めるところである。
そして、甲第15号証の2及び3、即ち、件外事件で提出された甲第3号証の1が、広告チラシとして一体不可分のものであることは、商品掲載スタイルの統一性から推認されるのみならず、件外事件で提出された甲第3号証の1について、平成8年12月19日に、件外事件請求人代理人の杉本勝徳氏(本件の被請求人代理人)が、その原本を当庁に持参し、提示され、これを当審が確認した(ちなみに、甲第3号証の1は、その2葉目(甲第15号証の3)が、1葉目(甲第15号証の2)を表頁とする、商品番号3001から3078までが連続して掲載された全8頁からなる広告チラシの第6頁目であることが認められた。)ことからも明らかである。
そして、甲第15号証の2に記載された「注文締切日11月4回 11月23日月〜11月27日金 商品配達日12月2回 12月7日月〜12月11日金」の日付について、郵便局頒布の、1990年ないし2001年の各年度のカレンダー(甲第17号証)によれば、甲第15号証提出年の平成8年以前においては、最も新しいところで平成4年(1992年)のそれに該当し、そして通常この種の広告チラシに記載された注文締切日については、その締切日以前には配布が完了しているのが普通であることから、甲第15号証の2及び3の広告チラシは、記載された注文締切日、即ち、平成4年11月23日〜27日以前には、配布がなされていたものと認められ、少なくとも、本件登録意匠の出願日である平成4年12月21日以前に、日本国内において刊行物として頒布されていたものと認めざるを得ない。
4.本件登録意匠と甲号意匠との類否
本件登録意匠と甲号意匠とを対比するに、両意匠は、意匠に係る物品が同一のものと認められ、形態について、(1)前後に稍長い略方形状の浅い皿状の棚板を、側面から見て等間隔のジグザグ状に複数段配置し、この複数段の棚板間の4隅、及び最下段の棚板下面の4隅に円柱状の支柱部材を嵌め込み、上下に通し状の支柱を形成してその下端にキャスターを取り付けた基本的な構成のものである点、その具体的な態様について、(2)棚板は、前下がりに傾斜する棚板と、この棚板間に、これと等角度の傾斜で後下がりに掛け渡された棚板とが側面から見て稍扁平な「く」の字の連続状を成して連なるものである点、(3)各棚板は、平面から見て、左右両辺が直線状で、前後両辺が緩やかな弧状に膨出するもので、棚板面が平らで、その全周に断面略倒「コ」の字状の周縁を巡らせたものであり、周縁は縁幅と高さがほぼ同程度で、その4隅に支柱部材を嵌め込むための短円筒状の嵌合部が設けられており、これら全体は一体状に形成されたものである点、(4)前後面において上下の棚板が重なる部分は、外周面が略垂直面状を呈して面一状に接するものである点、(5)各支柱部材は、太さが周縁の縁幅と同程度で、長さが棚板横幅より稍短い程度のものである点、が共通点として認められる一方、(イ)棚板の段数につき、本件登録意匠は11段であるのに対し、甲号意匠は12段で、最下段にも水平の棚板が認められる点、(ロ)最上段の棚板の上部後方に、本件登録意匠は、舟形の浅い小物入れを設けているのに対し、甲号意匠は、これを設けていない点、(ハ)棚板上面につき、本件登録意匠は防滑用の小突起を縦横格子状に配しているのに対し、甲号意匠はこれを配していない点、(ニ)棚板の周縁につき、本件登録意匠は、内周面が弧面状で、上面から外周面にかけても弧面状を呈する全体が上窄まり状のもので、外周面の上下幅についてもその前後辺のうちの一方が幅広で、他方及び左右両辺のそれが幅狭であるのに対し、甲号意匠は、断面が略矩形状の稍角張ったもので、外周面の上下幅も4周が等しい幅広のものである点、に差異が認められる。
しかしながら前記差異点のうち、(イ)の点については、段数の差は実際に数えて始めて認識できる程度の差で、最下段の水平の棚板の有無についてもさほど目に付かない部分の差異である上、両意匠の形態上の特徴をなすところとも言えず、(ロ)の点は、本件登録意匠の小物入れが付加的に設けられたものであり、またさほど大きいものでもなく、(イ)、(ロ)のいずれの差異も(1)及び(2)の形態全体にかかる共通点に吸収される程度の差異であり、(ハ)及び(ニ)の点についても、棚板についての(3)及び(4)の共通する態様の中で見られる差異であって、前記いずれの差異も形態全体としてみると限られた部分についての小さな差異に止まるもので、これら差異点が相俟った効果を勘案しても、その差異は、到底両意匠の類否判断を左右するまでには至らないものである。
一方、両意匠の共通点につき、(1)及び(2)の点は、形態全体の骨格をなす態様であって、その基調を形成し、これが各部の態様を端的に表す(3)、(4)、及び(5)の共通点と相俟ったところは形態全体におよび、その共通感を看者に強く印象付けるものであり、これら共通点は両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものであり、そして、前記差異点がこの共通点をを凌駕するものでないことは明らかであるから、結局、両意匠は、全体として類似するものである。
5.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、その出願前に頒布された刊行物に記載された意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないにもかかわらず、意匠登録を受けたものであるから、他の証拠について検討するまでもなく、その登録を無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別紙第一


審理終結日 1998-10-14 
結審通知日 1998-10-27 
審決日 1998-11-05 
出願番号 意願平4-37821 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (D2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 裕和 
特許庁審判長 森本 敬司
特許庁審判官 市村 節子
川越 弘
登録日 1994-04-22 
登録番号 意匠登録第902450号(D902450) 
代理人 杉本 勝徳 
代理人 安達 信安 

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