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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L6
管理番号 1028463 
審判番号 審判1999-35513
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-09-20 
確定日 2000-10-13 
意匠に係る物品 溝蓋用格子材 
事件の表示 上記当事者間の登録第1049525号「溝蓋用格子材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1049525号意匠の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.請求人の申立及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として要旨以下のように主張し、立証として甲第1号証乃至甲第43号証(枝番を含む)を提出した。
1).無効事由1
登録第1049525号の意匠(以下、「本件登録意匠」という)は、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である実開昭63-86186号公報(特に第4図)に記載された意匠(以下、「無効事由1の意匠」という)に類似する意匠であるから意匠法第3条第1項第3号に該当するものであるから、その登録を無効とすべきである。
2).無効事由2
本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である第854857号意匠公報に記載された意匠(以下、「無効事由2の意匠」という)に類似する意匠であるから意匠法第3条第1項第3号に該当するものであるから、その登録を無効とすべきである。
2.被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、乙第1号証乃至乙第5号証を提出し、その理由について要旨以下のように主張した。
1).本件登録意匠
A.基本的構成態様
長さ方向に連続する板片部の上部に、同じく長さ方向に連続する溝付頭部を続かせてある。
B.具体的構成態様
イ.板片部は、上部にのみ肉厚頸部を続かせたものである。
ロ.溝付頭部は、板片部の肉厚頸部から二股状に溝片部を分岐させて断面略V字状としたうえ、各溝片部の上部に溝内側の傾斜が外側の傾斜より僅かに大きい略逆台形状の立ち上がり部を続かせて内部溝を断面略ホームベース状としたものである。
2).無効事由1の意匠
A.基本的構成態様
長さ方向に連続する板片部の上部に、同じく長さ方向に連続する溝付頭部を続かせてある。
B.具体的構成態様
イ.板片部は、単なる平板状のものである。
ロ.溝付頭部は、板片部の上部に、直接、二股状に溝片部を分岐させて断面略V字状としてその内部溝を単純なV字状としたものである。
3).本件登録意匠と無効事由1の意匠との対比
両意匠は、長さ方向に連続する板片部の上部に、同じく長さ方向に連続する溝付頭部を続かせたという基本的構成態様において共通するが、このような基本的構成態様は、乙第5号証(特に、第4図、第6図)に見られるように、この種溝蓋用格子材として何等新規なものではなく、この点に意匠の要部がないことはあまりにも明白である。
次に、具体的構成態様を見ると、板片部について、本件登録意匠は、上部に肉厚頸部を有しているのに対し、無効事由1の意匠は有していない点、溝付頭部についても、本件登録意匠は、板片部の肉厚頸部から二股状に溝片部を分岐させて断面略V字状としたうえ、各溝片部の上部に溝内側の傾斜が外側の傾斜より僅かに大きい略逆台形状の立ち上がり部を続かせて内部溝を断面略ホームベース状としたという独特の構成を備えているのに対し、無効事由1の意匠は、板片部の上部に、直接、二股状に溝片部を分岐させて断面略V字状としてその内部溝を単純なV字状としたものであり、周知のY型鋼、または、脚である板片部が極端に長い変形Y型鋼を溝蓋用格子材に転用したに過ぎず、何等意匠上の創作性が認められない単純な形状であって、美的印象に乏しいものであり、本件登録意匠は、一見しただけで肉厚頸部に続く溝付頭部の形状の斬新さが看者の目をひき、単なるV溝状の溝付頭部とは異なる美的印象を与えるから、無効事由1の意匠と非類似であることはあまりにも明白である。
4).無効事由2の意匠
A.基本的構成態様
長さ方向に連続する板片部の上部に、同じく長さ方向に連続する溝付頭部を続かせてある。
B.具体的構成態様
イ.板片部は、上部に肉厚頸部を下部に肉厚脚先部を形成したいわゆるI形鋼状のものである。
ロ.溝付頭部は、板片部の上部の肉厚頸部から二股状に溝片部を分岐させて断面略V字状としてその内部溝を単純なV字状とするとともに、各溝片部の上端より外向きの水平鍔部を張出させて溝片部の端部を断面鍵状に形成したものである。
5).本件登録意匠と無効事由2の意匠との対比
両意匠は、長さ方向に連続する板片部の上部に、同じく長さ方向に連続する溝付頭部を続かせたという基本的構成態様において共通するが、この基本的構成態様に意匠の要部がないことは、前記した無効事由1の反論に記載した理由により明白である。
次に、具体的構成態様を見ると、板片部について、無効事由2の意匠は、下部に肉厚脚先部を有しているのに対し、本件登録意匠は、有していない点が異なり、しかも、この板片部の上下幅や頭幅の占める比率の差異に伴う意匠全体のバランスも異なり、溝付頭部についても、本件登録意匠は、板片部の肉厚頸部から二股状に溝片部を分岐させて 断面略V字状としたうえ、各溝片部の上部に溝内側の傾斜が外側の傾斜より僅かに大きい略逆台形状の立ち上がり部を続かせて内部溝を断面略ホームベース状としたという独特の構成を備えているのに対し、無効事由2の意匠は、内部溝を単純なV溝であるうえに、各溝片部の上端より外向きの水平鍔部を張出させて溝片部の端部を断面鍵形に形成してあり、一見しただけでこの溝付頭部の形状の違いが看者に対して異なる美的印象を与えるから、無効事由2の意匠と非類似であることも明白である。
1).そもそも、本件意匠のような「溝蓋用格子材」は、もともと型鋼を転用したもので、このような型鋼を転用した程度の意匠は登録要件としての創作性が認められず、平型鋼,I型鋼、T型鋼、L型鋼などを転用した程度のものが登録されている事実はなく、Y型鋼を転用した程度に過ぎない無効事由1の意匠は登録要件を満たしていない。また、「溝蓋用格子材」は溝蓋の構成部品であって、鋼材メーカと溝蓋メーカという特定のメーカ間においてのみ取り引きされるから、意匠の範囲も極めて狭いものであることは、乙第1号証〜乙第4号証などからも明らかであって、溝付頭部の内部溝にV字状の部分があるものは全て類似するかの如き請求人の主張は明らかに失当である。
3.当審の判断
1).本件登録意匠
本件登録意匠は、平成10年4月8日に意匠登録出願をし、平成11年6月11日に設定の登録がなされたものであって、当該意匠登録原簿及び出願書面の記載によれば、意匠に係る物品を「溝蓋用格子材」とし、その形態については、別紙第一に示すとおりとしたものである。
A.全体の基本的構成態様
長手方向に連続する板片部の上端の前後に、略細帯状の板状体でなる溝片を斜め上方に向け突出して側面視して略V字状を呈する溝部を形成し、形態全体を溝部に比し板片部を長めとし、側面形状を縦長の略Y字状に形成したものである。
B.各部の具体的な構成態様
板片部の上端部分に細幅の肉厚部分を設け、両溝片は厚みを上方に向けて漸次薄めに形成し、この両溝片の上端寄りの部位から上方を急傾斜に折曲し、内壁面の上端部分を小さく略三角形状に切り欠いて側面視した溝の形状を扁平な略五角形状とし、両溝片の上端面は細幅の平坦面に形成したものである。
2).無効事由1の意匠
無効事由1の意匠は、昭和63年6月6日公開の公開実用新案公報に所載の実用新案出願公開昭63-86186(考案の名称「溝蓋」)に記載の意匠(特に第4図)であって、当該公報の記載によれば、形態については以下のとおりである。
A.全体の基本的構成態様
長手方向に連続する板片部の上端の前後に、略細帯状の板状体でなる溝片を斜め上方に向け突出して側面視して略V字状を呈する溝を形成し、形態全体を溝部に比し板片部を長めとし、側面形状を縦長の略Y字状に形成したものである。
B.各部の具体的な構成態様
両溝片の厚みを上方に向けて漸次薄めに形成し、上端面は細幅の平坦面に形成したものである。
3).無効事由2の意匠
無効事由2の意匠は、平成4年12月10日発行の意匠公報に所載の登録第854857号の意匠であって、当該公報の記載によれば、意匠に係る物品を「溝ぶた用格子材」とし、その形態については、別紙第二に記載のとおりである。
A.全体の基本的構成態様
長手方向に連続する板片部の上端の前後に、略細帯状の板状体でなる溝片を斜め上方に向け突出して側面視して略V字状を呈する溝部を形成し、形態全体を溝部に比し板片部を長めとし、側面形状を縦長の略Y字状に形成したものである。
B.各部の具体的な構成態様
板片部の上端部分及び下端部分に細幅の肉厚部分を設け、両溝片は厚みを上方に向けて漸次薄めに形成し、この両溝片の上端にはごく短い鍔片を前後に水平に突設し、側面視した溝の形状を扁平な略三角形状とし、両溝片の上端面を細幅の平坦面に形成したものである。
4).本件登録意匠と無効事由2の意匠との対比
本件登録意匠と無効事由2の意匠とを対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形態においては以下に示す共通点及び差異点が認められる。
すなわち、両意匠は、長手方向に連続する板片部の上端の前後に、長手方向に連続する略細帯状の板状体でなる溝片を斜め上方に向け突出して側面視して略V字状を呈する溝を形成し、形態全体を溝部に比し板片部を長めとし、側面形状を縦長の略Y字状に形成した全体の基本的構成態様が共通し、また、板片部の上端部分に細幅の肉厚部分を設け、両溝片は厚みを上方に向けて漸次薄めに形成し、上端面を細幅の平坦面に形成した各部の具体的な構成態様においても共通するものである。
一方、両意匠は、各部の具体的な構成態様において、まず、a.板片部について、本件登録意匠は、上端部分にのみ肉厚部分を形成しているのに対し、無効事由2の意匠は、上端部分および下端部分の双方にそれぞれ肉厚部分を形成している点、次に、b.溝片について、本件登録意匠は、両溝片の上端寄りの部位から上方を急傾斜に折曲し、内壁面の上端部分を小さく略三角形状に切り欠いているのに対し、無効事由2の意匠は、両溝片の上端の前後に小さな鍔片を水平に突設している点、また、c.側面視した溝の形状について、本件登録意匠は、扁平な略五角形状であるのに対し、無効事由2の意匠は、扁平な略三角形状である点に差異が認められる。
そこで、前記の共通点及び差異点を総合し、両意匠を全体としてその類否について考察すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形態については、長手方向に連続する板片部の上端の前後に、略細帯状の板状体でなる溝片を斜め上方に向けて突出し、側面視して略V字状を呈する溝を形成し、形態全体の側面形状を縦長の略Y字状に形成した全体の基本的構成態様は、この種の「溝蓋用格子材」の意匠にあっては、無効事由2の意匠の出願前においては存在しなかった新規な態様であって、無効事由2の意匠のみにみられる格別の特徴を現し、形態全体の基調を決定づけるところであり、両意匠に共通する全体の基本的構成態様が、両意匠の類否判断を左右する支配的要素をなすところと認められ、各部の具体的な構成態様にみられる共通点と相俟って、両意匠間に類似する印象を惹起させるところといわざるを得ない。
これに反し、差異点のうち、まず、a.の板片部の肉厚部分についての差異は、この種物品の意匠にあって、無効事由2の意匠の出願前まで、全体形状を板片部のみで構成したものしか見受けられず、かつ、その板片部の態様については、被請求人の述べているとおり、Iバー、Tバー等といわれるものが、普遍的な態様となっていることは周知のとおりであり、例えば、そのうちのIバーすなわち側面視して略I字状を呈するものにあって、当該肉厚部分を上部および下部の双方に形成したもの上部にのみに形成したものも、ともに無効事由2の意匠の出願前より極めて普通に知られた態様であって、この点が両意匠の格別の特徴をなすところとはいえず、類否判断に大きな影響を及ぼすものとはいえない。次に、b.溝片の差異については、確かに、この点に差異が認められるものの、形態全体から見た場合、無効事由2の意匠の形態全体の基調を決定づけている特徴と認められる側面形状を縦長の略Y字状に形成したという従来より見られなかった、新規で特徴的な全体の基本的構成態様の共通点に包摂され、また、c.の溝の形状の差異についても、当該部位を側面から観察した場合に目に付く差異であるが、その差異も、ともに底部を略V字状とする扁平な溝を形成しており、形態全体から見れば、溝内壁の上端部分に見られる細部における部分的で軽微なものといえるので、b.と同様に無効事由2の意匠の形態全体の基調を決定づけている特徴と認められる、側面形状を縦長の略Y字状に形成したという従来より見られなかった、新規で特徴的な全体の基本的構成態様の共通点に包摂される程度の微弱なもので、かつ、当該意匠を用いて溝蓋を形成し、溝内に充填材を充填した使用態様が、殆ど同様の態様をなすことを考慮すると、b.及びc.の差異についても、類否判断に与える影響は微弱なものといえる。
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、形態全体の基調を決定づけるところの全体の基本的構成態様及び各部の具体的な構成態様の一部においても共通するものであり、各部の具体的な構成態様の一部において差異が認められるとしても、いずれも類否判断に影響を及ぼす要素としては微弱な差異に止まり、これらの差異点が相俟って意匠全体に与える影響を考慮したとしても、前記した両意匠の全体の基本的構成態様及び、各部の具体的な構成態様の共通点が相俟って醸し出す、類似する印象を凌駕し本件登録意匠のみが有する格別の特徴を表出しているものとは到底いえない。
なお、被請求人は、全体の基本的構成態様について、「長さ方向に連続する板片部の上部に、同じく長さ方向に連続する溝付頭部を続かせたという基本的構成態様において共通するが、このような基本的構成態様は、乙第5号証(特に、第4図、第6図)に見られるように、この種溝蓋用格子材として何等新規なものではなく、この点に意匠の要部がないことはあまりにも明白である。」旨の主張をするので乙第5号証について検討する。乙第5号証は、昭和59年7月10日に公開の公開実用新案公報に所載の実用新案出願公開昭59-102681に記載の第4図及び第6図の意匠であって、まず、第4図の意匠は、全体の基本形状を肉厚の略T字状体とし、全体の基本的構成態様は、この略T字状体の縦棒(本件登録意匠でいう「板片部」を指す)の高さに対する頂部の横棒の厚さを約1/3とし、全体の高さに対する横棒の側面幅を約2/3として上面は平坦面とし、縦棒は下方に向かって漸次先細状に形成したものである。次に、第6図の意匠を見ると、全体の基本的構成態様は、第4図の意匠の横棒の上面に大きく間隔を設けた両端部分の長手方向に略四角柱状の小突条を平行に設けたものである。さらに、小突条を詳細に観察すると内側面を僅かに傾斜していることが認められる。
そこで、審案するに、前記の被請求人の主張は、無効事由1及び同2の意匠と乙第5号証に記載の意匠とが同一及び類似の意匠、又は乙第5号証に記載の意匠に基づいて容易に創作できたものと認められる場合において成り立つものである。ところが、この乙第5号証に記載の第4図及び第6図の意匠の全体の基本的構成態様は、前記の認定のとおりであって、乙第5号証に記載の第4図及び第6図の意匠の全体の基本的構成態様を無効事由1及び同2の意匠のごとく、長手方向に連続する板片部の上端の前後に、長手方向に連続する略細帯状の板状体でなる溝片を斜め上方に向け突出して側面視して略V字状を呈する溝を形成し、形態全体を溝部に比し板片部を長めとし、側面形状を縦長の略Y字状に形成したものとは認められない。また、無効事由2の意匠と乙第5号証に記載の第4図及び第6図の意匠とは、共通点が乏しく同一または類似の意匠とは認められないから、同証拠に基づいて容易に創作できたものとする被請求人の主張には無理があるといわねばならない。
してみると、無効事由2の意匠は、全体の基本的構成態様おいて、この種の「溝蓋用格子材」の意匠にあっては、無効事由2の意匠の出願前においては存在しなかった新規で特徴ある態様といえるので、無効事由2の意匠にのみ見られる格別の特徴を現し、形態全体の基調を決定づけるところと認められ、かつ、両意匠に見られる各部の具体的な構成態様の差異点が前記の如く軽微で微弱な場合は、類否判断に影響を及ぼす要素とし大きなものとはならず、両意匠の特徴と認められる全体の基本的構成態様の共通点が、両意匠の類否判断を左右する支配的要素となるものであるから、被請求人の主張は採用できない。
したがって、本件登録意匠は、無効事由2の意匠と意匠に係る物品が一致し、形態においても、形態全体の基調を形成し類否判断を決定づける支配的要素といえる全体の基本的構成態様及び各部の具体的な構成態様において共通するものであるから、両意匠は、類似するものと言わざるを得ない。
4.むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し、同法同条同項の規定に違背して登録されたものであり、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2000-02-01 
結審通知日 2000-02-15 
審決日 2000-03-01 
出願番号 意願平10-9947 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (L6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 橘 崇生 
特許庁審判長 瀬尾 和子
特許庁審判官 伊勢 孝俊
松原 至
登録日 1999-06-11 
登録番号 意匠登録第1049525号(D1049525) 
代理人 後藤 憲秋 
代理人 山本 文夫 
代理人 名嶋 明郎 
代理人 綿貫 達雄 
代理人 植村 元雄 
代理人 吉田 吏規夫 

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