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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない L4
管理番号 1036820 
審判番号 審判1999-35744
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2001-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-13 
確定日 2001-03-15 
意匠に係る物品 羽子板ボルト 
事件の表示 上記当事者間の登録第0962251号「羽子板ボルト」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯及び本件登録意匠
本件登録意匠は、平成4年5月12日に出願(意願平4-13756号)され、平成8年6月11日に設定の登録がなされ、平成8年9月3日に意匠公報が発行された意匠登録第962251号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「羽子板ボルト」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。
すなわち、本件登録意匠の構成要素を摘記すれば、次のとおりである。
(1)全体の基本構成
全体の基本構成は、矩形状平板部の一端に断面視略U字形の細幅突出部を形成した正面視略羽子板状の成型板と、やや細身のボルトから成り、突出部の背側にボルトの端部をそれぞれの中心線を揃えて重ね合わせ、両者を側面視腰高に溶接したものである。
(2)成型板の形態
成型板の形態は、突出部の起点を成形板中央付近の中心線上とし、そこから卵形のドーム状に曲面を膨出させた後、端部に至るまでの突出部を平板部に対して平行な断面視略U形のアーチ状に成形し、その裾状部両縁を平板部背面と面一に揃え、突出部の背側に横長の小突起を2個設け、矩形状平板部両側を突出部の中央付近に向けて左右対称形に収束する外側に膨らんだ緩やかな弧状に成形し、さらに矩形状平板部の中心線上に大小各1個ずつの円形孔を形成したものである。
(3)成形板とボルトの接合態様
成形板とボルトの接合態様は、突出部の背側に形成された2個の小突起上にボルトを載せた状態で点状に溶接したものである。
(4)成形板の寸法比率
成形板の寸法比率は、正面視における縦横比を略3:1程度とし、膨出部の長さを全長の略1/3程度、その横幅を平板部幅の略1/2程度、その高さを略ボルトの直径程度としたものである。
(5)各部の寸法比率
各部の寸法比率は、成形板の長さを全長の略1/2弱とし、ボルトと成形板の重ね幅を成形板全長の略1/3弱としたものである。
2.請求人の主張
これに対し、請求人は、「登録意匠第962251号(以下、本件登録意匠という)の登録は、これを無効とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として、本件登録意匠は、その出願前に日本国内において広く知られた実開昭54-36907号公報第3〜7図に記載された羽子板ボルトの形状(以下、甲第1号証意匠という、別紙2参照)に基づいて当業者が容易に創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである旨主張し、証拠方法として、甲第1〜8号証を提出している。
(1)甲第1号証 実開昭54-36907号公報(公開 昭和54年3月10日)
(2)甲第2号証 「軸組工法用金物規格(Zマーク表示金物)」(財団法人 日本住宅・木材技術センター編集発行、平成2年4月、第5刷)
(3)甲第3号証 「木造住宅用金物の使い方 Zマーク表示金物」(財団法人 日本住宅・木材技術センター 木造住宅用優良接合金物推進協会発行)
(4)甲第4号証 「住宅金融公庫融資住宅 木造住宅工事共通仕様書」(財団法人 住宅金融普及会編集発行)
(5)甲第5号証 「マルチバランス工法用 金物取付基準 プレカット加工基準(97年度版)」(住友林業株式会社住宅本部発行)
(6)甲第6号証 「機械工作法」(社団法人 雇用問題研究会発行、昭和60年2月再版)
(7)甲第7号証 「試験成績書」(財団法人 建材試験センター発行、昭和51年9月17日)
(8)甲第8号証 意匠登録第962248号公報(平成8年9月3日発行)
3.被請求人の主張
一方、被請求人は、平成12年3月17日付で答弁書を提出し、本件登録意匠は、甲第1号証意匠から当業者が容易に創作し得たものではない旨主張している。
4.当審の判断
4.1 甲第1号証意匠との対比
本件登録意匠と甲第1号証意匠を対比すると、次に示す共通点と相違点が認められる。
[共通点]
(1)矩形状平板部の一端に断面視略U字形の細幅突出部を形成した略羽子板状の成型板と、やや細身のボルトから成り、両者をそれぞれの中心線を揃えて重ね合わせ、側面視腰高に溶接して成る全体の基本構成。
(2)成型板の形態について、平板部の中心線上に大小各1個ずつの円形孔を形成していること。
[相違点]
(1)成形板の形態について、本件登録意匠においては、突出部の起点を成形板中央付近の中心線上とし、そこから卵形のドーム状に曲面を膨出させ、さらに端部に至るまでの突出部を平板部に対して平行な断面視略U形のアーチ状に成形し、その裾状部両縁を平板部背面と面一に揃え、突出部の背側に横長の小突起を2個設け、矩形状平板部両側を突出部の中央付近に向けて左右対称形に収束する外側に膨らんだ緩やかな弧状に成形しているのに対し、甲第1号証意匠においては、突出部の起点を成形板両側の縁部中央付近とし、そこから両側を対称形に絞り込んで立ち上がり部を内側に凹んだ緩やかな弧状に成形し、さらに端部に至るまでの突出部を両縁が平板部に対して平行な断面視略U字形の溝状に成形し、その谷部を平板部と面一に揃えていること。
(2)成形板とボルトの接合態様について、本件登録意匠においては、突出部背側に形成された2個の小突起上にボルトの端部付近を載せた状態で点状に溶接しているのに対し、甲第1号意匠においては、溝状部の両縁でボルトを受け止めるように線状に溶接していること。
(3)羽子板ボルトの全長に占める成形板の寸法比率について、本件登録意匠においては、成形板の長さを全長の略1/2弱としているのに対し、甲第1号証意匠においては、成形板の長さを全長の略1/3弱としていること。
4.2 判断
これらの共通点及び相違点を踏まえて本件登録意匠の構成要素を検討すると、構成要素(1)の全体の基本構成については、共通点(1)に示すように甲第1号証意匠と一致し、さらに甲第2〜3号証にも示されるように、本件登録意匠の出願前に広く知られていたものであり、構成要素(4)の成形板の寸法比率及び、構成要素(5)の各部の寸法比率については、甲各号証によるまでもなく、この種物品において普遍化した寸法比率の範囲内のものと認められる
また、構成要素(2)の成型板の形態のうち、「矩形状平板部の中心線上に大小各1個ずつの円形孔を形成」した点については、共通点(2)に示すように、甲第1号証意匠と一致し、さらに甲第2〜3号証等にも示されるように、本件登録意匠の出願前に広く知られていたものと認められる。
しかしながら、「突出部の起点を成形板中央付近の中心線上とし、そこから卵形のドーム状に曲面を膨出させた後、端部に至るまでの突出部を平板部に対して平行な断面視略U形のアーチ状に成形し、その裾状部両縁を平板部背面と面一に揃え、突出部の背側に横長の小突起を2個設け、矩形状平板部両側を突出部の中央付近に向けて左右対称形に収束する外側に膨らんだ緩やかな弧状に成形」した点については、相違点(1)に示すように、甲第1号証意匠とは顕著に異なるものであり、さらに、甲第5及び8号証(これらは本件登録意匠の出願より後に公知となったものである)を除く甲各号証にも示されておらず、本件登録意匠の出願前に広く知られていた形態であると認めることはできない。また、たとえその形態が従来のプレス装置を用いて成形できたものであるとしても、公知の金型及びプレス方法をそのまま用いるだけで必然的に生成される形態であることを示す証拠は無い。
つぎに、構成要素(3)の成形板とボルトの接合態様については、形態的には一見脆弱とも思える不安定感を観察者に与えながらも、所定の強度を備えた特筆すべき態様であって、相違点(1)に係る甲第1号証意匠の態様とは顕著に異なるものであり、しかも突出部の背側にボルトを載せた状態で溶接した本件登録意匠の接合態様が出願前に広く知られていた証拠は無い。また、たとえボルトを腰高に接合した典型的な接合態様を周知の溶接法を用いて具現化するとしても、生成される具体的な形態が一様に定まるものではないことは、甲第1〜3,8号証等からも明らかである。
したがって、構成要素(2)及び(3)を併せ持つ本件登録意匠は、広く知られた形態に基づいて当業者が容易に創作できたものであるとすることはできない。
5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件登録意匠を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2000-12-25 
結審通知日 2001-01-12 
審決日 2001-01-23 
出願番号 意願平4-13756 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (L4)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須田 紳 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 伊藤 栄子
岩井 芳紀
登録日 1996-06-11 
登録番号 意匠登録第962251号(D962251) 
代理人 湯田 浩一 
代理人 竹本 松司 
代理人 塩野入 章夫 
代理人 魚住 高博 
代理人 鈴木 正次 
代理人 涌井 謙一 
代理人 杉山 秀雄 
代理人 手島 直彦 

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