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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) A1
管理番号 1043421 
判定請求番号 判定2000-60164
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2001-09-28 
種別 判定 
判定請求日 2000-12-06 
確定日 2001-07-12 
意匠に係る物品 アイスクリーム用コーンカップ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1010297号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面に示す「アイスクリーム用コーンカップ」の意匠は、登録第1010297号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、「イ号図面に示すアイスクリーム用コーンカップの意匠(以下「イ号意匠」という)は、意匠登録第1010297号の意匠(以下「本件登録意匠」という)及びこれに類似する意匠の範囲に属しない、との判定を求める。」と申し立て、その理由として要旨以下のように主張し、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第3号証の書証を提出した。
1.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明
(1)両意匠の共通点
(A)両意匠は、その意匠に係る物品が「アイスクリーム用コーンカップ」で一致している。
(B)両意匠の盛り付け部の勾配は把持部のそれと比べて緩やかになっている。つまり、盛り付け部を把持部に比べより広がった形状に形成している。
(C)両意匠の正面略中央上端にコーンの重ね合わせ部分がある。
(D)両意匠の重ね合わせによる線は、開ロ縁部の延長線上に延びている。
(2)両意匠の差異点
(ア)本件登録意匠は、一枚の皮状のコーン生地を巻くことにより全体を略逆円錐形状とした所謂ワッフルコーン/ロールコーンをベースとしているのに対して、イ号意匠は、把持部と盛り付け部を連繋してなる金型より形成した所謂フレアートップコーンをベースとしている。
(イ)本件登録意匠において、勾配切替え線が把持部と盛り付け部の境界線として明瞭にあらわれるのに対して、イ号意匠は、勾配切替え線が把持部と盛り付け部が滑らかな曲線で連結され上方に向かって自然に広がる形状となっており、境界線はあらわれない。
(ウ)本件登録意匠において、開ロ緑部は背面上方を最上部とする大きな凸部を1つ有するのに対して、イ号意匠において、開ロ縁部は波状に形成され、背面上方及び左右側面の緩やかな3箇所の凸部を有する。
(エ)本件登録意匠において、開ロ縁部は急傾斜しており背面から正面にかけての高低差が大きいのに対し、イ号意匠において、開ロ縁部は緩やかに傾斜しており背面から正面にかけての高低差は小さい。
(オ)本件登録意匠において、正面略中央に位置する重ね合わせ部分は所謂右前状態であるのに対し、イ号意匠において、正面略中央表面に位置する重ね合わせ部分は所謂左前状態になっている。
(カ)本件登録意匠において、重ね合わせによる線はコーン正面略中央から始まり左側面及び背面を伝い底部に至っているのに対し、イ号意匠において、重ね合わせによる線はコーン正面中央上端から下方へ少し延びて消滅するものとなっている。つまり、本件登録意匠における重ね合わせ部分は上端から底部にまでわたっているのに対し、イ号意匠における重ね合わせ部分は盛り付け部上端から把持部上端付近までに限られている。
(キ)本件登録意匠において、関口縁部及び重ね合わせによる線として現れるコーン縁部はギザギザの凹凸形状に形成されているのに対し、イ号意匠において、開ロ縁部及び重ね合わせによる線として現れるコーン縁部は滑らかな曲線状に形成されている。
(ク)本件登録意匠において、底部は若干丸みをおびているものの略尖頭状に形成されているのに対し、イ号意匠において、底部は平らに形成されている。
2.イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由
そこで、本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに、まず、両意匠には、上記差異点(ア)に示したように、ワッフルコーンをベースにするかフレアートップコーンをベースにするかという基本的態様における大きな相違点を有している。
また、具体的態様としては、(A)盛り付け部を把持部に比べより広がった形状に形成し、(B)開ロ縁部が背面上方から正面下方に向かって傾斜しており、側面から見ると、左右非対称であり、(C)正面略中央上端にコーンの重ね合わせ部分があり、(D)重ね合わせによる線は、開□縁部の延長線上に延びている、等の共通点があるものの、差異点(イ)乃至(ク)が存在する。
以上の認定、判断を前提として両意匠を全体的に考察すると、両意匠の共通点は類否の判断に与える影響はいずれも微弱なものであって、差異点を凌駕しているものとはいえず、それらが両意匠の判断に及ぼす影響はその結論を左右するまでに至らないものである。したがって、両意匠は全く別異の意匠と認識されるものであり、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しない。
なお、甲第3号証の1及び甲第3号証の2として、本件登録意匠の後行意匠を示したが、これらの意匠が登録されていることからも、イ号意匠の本件登録意匠との非類似を確信する次第である。
3.結び
以上のように、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないので、請求の趣旨どおりの判定を求める。
第2.被請求人の答弁
本件判定請求書の副本を被請求人に送付し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、答弁はなかった。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成9年5月30日の意匠登録出願に係り、平成10年3月6日に意匠登録第1010297号として意匠権の設定の登録がなされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「アイスクリーム用コーンカップ」とし、その形態を別紙第一に示すとおりとするものである。
2.イ号意匠
イ号意匠は、イ号図面に記載されたものであって、それによれば、意匠に係る物品を「アイスクリーム用コーンカップ」とし、その形態を別紙第二に示すとおりとするものである。
3.本件登録意匠とイ号意匠の比較検討
(1)本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点について
両意匠は、その意匠に係る物品については、共に「アイスクリーム用コーンカップ」であって同一と認められ、その形態については、主として次のような共通点及び差異点があると認められる。
まず、両意匠の共通点として、
(A)全体を、下方から上方に向かって拡開するやや縦長で略逆円錐形状の薄肉厚有底筒状の把持部を形成し、その把持部から上方に向けて連続的に、よりなだらかな勾配に拡開して盛り付け部を形成している点、
(B)その把持部と盛り付け部の上下方向の比率を、約7:3としている点、
(C)正面視中央上方付近について、開ロ縁部を左右から中央に向けて浅く下降させ、一方の開ロ縁部の先端をそのまま下方に延ばして重ね合わせ状に形成している点、
が認められる。
一方、両意匠の差異点として、
(ア)盛り付け部の態様について、本件登録意匠は、開ロ部の正面視後方を高く前方を低く襟状に形成しているのに対して、イ号意匠は、開ロ部の正面視後方及び左右を花弁状に形成している点、
(イ)盛り付け部開ロ縁部の態様について、本件登録意匠は、細かい不規則な凹凸状(ギザギザ状)に形成しているのに対して、イ号意匠は、滑らかな波状に形成している点、
(ウ)重ね合わせ状に形成している態様について、本件登録意匠は、1枚の生地状のものを巻くようにして重ね合わせたような態様とし、開ロ縁部の細かい不規則な凹凸状(ギザギザ状)線が把持部周面を螺旋状に延びて把持部下端まで形成されているのに対して、イ号意匠は、花弁状のものを重ね合わせたような態様とし、滑らかな波状線の先端が盛り付け部周面に形成されていて、把持部周面には形成されていない点、
(エ)把持部から盛り付け部にかけての境界周面について、本件登録意匠は、交わるようにして交差線を形成しているのに対して、イ号意匠は、連続状に滑らかな曲面状に形成している点、
(オ)把持部底部について、本件登録意匠は、略逆円錐形状の下方先端をごく小さい半球形状に形成しているのに対して、イ号意匠は、同先端を僅かに略逆円錐台形状に形成している点、
が認められる。
(2)本件登録意匠とイ号意匠の類否について
そこで、以上の共通点及び差異点を総合して、本件登録意匠とイ号意匠との類否を意匠全体として検討する。
まず、両意匠における前記共通点について検討すると、まず、この種意匠においては、ときに基本的な態様とその具体的な態様が相俟って醸し出す特徴を捉え、そこに看者に別異の感を抱かせるものがあれば、類否判断を左右する主要な要素になりうると言えるところ、両意匠の共通とする態様、すなわち、(A)全体を、下方から上方に向かって拡開するやや縦長で略逆円錐形状の薄肉厚有底筒状の把持部を形成し、その把持部から上方に向けて連続的に、よりなだらかな勾配に拡開して盛り付け部を形成し、(B)その把持部と盛り付け部の上下方向の比率を、約7:3とする構成態様は、通常行われる普通の範囲の変更にすぎず、また、本件登録意匠の出願前においても種々みられる(例えば、意匠登録第597483号、同713258号、同724987号)ものであることから、これらの態様をもって両意匠のみの特徴とすることはできないので、未だ類否判断に与える影響は小さいものと言わざるを得ない。
また、(C)正面視中央上方付近を重ね合わせ状に形成している点についても、確かに両意匠とも重ね合わせ状に形成してはいるものの、差異点(ウ)で挙げているようにその重ね合わせ状にかかる態様は顕著に異なる態様を示しており、共通感よりむしろ差異感のほうが強いことからして、重ね合わせ状に形成していることのみをもって類否を左右すると言うことはできず、結局、全体の類否に与える影響は極めて微弱なものと言わざるを得ない。
そうとすると、これらの共通点は、総合して相俟った効果を考慮しても両意匠の類否判断を支配するということはできない。
一方、両意匠の差異点について検討すると、まず、本件登録意匠の態様は、すなわち差異点として挙げている(ア)盛り付け部の態様について、開ロ部の正面視後方を高く前方を低く襟状に形成し、(イ)盛り付け部開ロ縁部の態様について、細かい不規則な凹凸状(ギザギザ状)に形成し、(ウ)重ね合わせ状に形成している態様について、1枚の生地状のものを巻くようにして重ね合わせたような態様とし、開ロ縁部の細かい不規則な凹凸状(ギザギザ状)線が把持部周面を螺旋状に延びて下方先端まで形成されている態様は、当審の
調査によれば、本件登録意匠の特徴ということができ、そして、これらの態様はこの種物品の形態上の主要なところを形成していると認められ、さらに、これらの態様と差異点として挙げている、(エ)把持部から盛り付け部にかけての境界周面について、本件登録意匠は、交わるようにして交差線を形成し、(オ)把持部底部について、略逆円錐形状の下方先端をごく小さい半球形状に形成している態様と相俟った態様を含めて意匠全体を見た場合、本件登録意匠の基調を醸成するところに深く係わっているものと認められる。
一方、イ号意匠の態様は、すなわち差異点として挙げている(ア)盛り付け部の態様について、開ロ部の正面視後方及び左右を花弁状に形成し、(イ)盛り付け部開ロ縁部の態様について、滑らかな波状に形成し、(ウ)重ね合わせ状に形成している態様について、花弁状のものを重ね合わせたような態様とし、滑らかな波状線が盛り付け部周面に形成されている態様としていることから、本件登録意匠の特徴とは明らかに異なる態様を表しており、さらに、(エ)把持部から盛り付け部にかけての境界周面について、連続状に滑らかな曲面状に形成している点、(オ)把持部底部について、僅かに略逆円錐台形状に形成している態様と相俟った態様を含めて意匠全体として見た場合、イ号意匠は本件登録意匠とは明らかにその基調を異にすると言うことができる。
そうとすると、本件登録意匠とイ号意匠は、意匠に係る物品が同一で、形態においても共通点があるものの、形態における意匠全体の基調を醸成し類否判断を支配しているところにおいて明らかに差異があり、前記共通点を凌駕していると認められるので、イ号意匠は本件登録意匠に類似しない、とするのが相当である。
(3) むすび
以上のとおりであるので、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2001-06-28 
出願番号 意願平9-56482 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (A1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高野 善民下村 圭子 
特許庁審判長 山田 啓治
特許庁審判官 市村 節子
西本 幸男
登録日 1998-03-06 
登録番号 意匠登録第1010297号(D1010297) 
代理人 原 謙三 

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